カンノ:この曲のストーリーとしては、自分の人生の変遷ですよね。小中高大学と経て就職して、結婚して子供もできて家も買ってみたいな。それで老後過ごして、「私の人生はこれで良かったのか?」と平凡でありきたりな人生を反芻するみたいな歌詞なんですけど、「良いに決まってんじゃねーか!」みたいな(笑)で、何でそんな風なことを歌っちゃうのかと勝手に考えてみました。2003年のSOFFetについて考えてみましょう。2003年のSOFFetというのは、ワーナーミュージックジャパンからCDをリリースしてるわけです。それで2003年のワーナーというのは、RIP SLYMEやKICK THE CAN CREWがドカドカ売れてるときなんですね。
カンノ:それでAwesome City Clubの女性ボーカルのPORINさんが、麦くんと絹ちゃんが付き合うきっかけになる運命のファミレスがあるんだけど、そこの店員さん役で出てるんです。
上野:あっ、映画に出てるんだね。
カンノ:それで「私こんなバンドやってて~」みたいな。「Awesome City Clubっていうバンドを~」みたいなことを言ってて。で、麦くんと絹ちゃんが「すごいですね~」みたいな。
上野:それは名前として出てるんだ。
カンノ:そうそう。Awesome City Clubとして映画に出て演奏もしてる。それでここがちょっとリアルだなと思ったのが、麦くんと絹ちゃんはずっと「ファミレスのお姉さん、すごいね~」という言い方をしてるの。「Awesome City Clubすごいね~」っていう具体的にバンド名を出した言い方はしないの。
カンノ:Awesome City Clubの音楽が好きだったら、「うわぁ~、オーサムこんなところまで行ったよ!」っていう言い方とかするんじゃないかなと思うんです。
上野:確かにね。
カンノ:でもそこまでは言ってない。だから、バイトしているときを知っている人がどんどん芸能の道を突き進んでいく様は、「ファミレスのお姉さんすごいね!」という言い方になるのかなと。この身内感だけはあるのよ。もっと具体的に言うと、「ceroの高城さんがやっている阿佐ヶ谷のRojiっていうお店知ってる?」とか、「TBSラジオの粋な夜電波聞いてる?」っていう会話が映画内であるわけですよ。で、「Roji」とか「粋な夜電波」とかの話をする人はAwesome City Clubは聴かないんじゃないか。それは好みとしては別なのではないかと思ったんです。
上野:それは分かるね。
カンノ:で、ここから全く映画で描かれていないシーンの話なんだけど(笑)、全然サブカルとかポップカルチャーとかに興味がない人に対してAwesome City Clubの動画を見せて、「俺、この人がバイトしている時、知ってるんだよ~」って友達に自慢してるはず(笑)