様々なライブやレコーディングに参加しているミュージシャン・三浦千明さん、屁理屈音楽語りグループのLL教室・ハシノさんをお招きして、SOMEOFTHEM・カンノと「音楽ラジオ」についての駄話会。第1回はラジオ日本の話を中心に、「本来のラジオってこういうものだよね」話。
カンノ:今回「音楽ラジオ」がテーマなんですが、例えば「音楽 ラジオ」でグーグルとかで検索かけてみても、実は全然出てこないんですね。
ハシノ:ワードが大きすぎるんじゃない?
カンノ:でも、「お笑い ラジオ」はいっぱい出てくるんですよ。
ハシノ:あぁ、そっかぁ。
カンノ:だから実はそんなに確立されていないのかなと。
ハシノ:そもそも、「ラジオって音楽聴くもんじゃん」というのがあるから、「音楽 ラジオ」で検索しても狭まらないんだろうね。
カンノ:でも、今の世代は多分、「ラジオってお笑いのものでしょ?」って感覚も強いと思うんですよね。僕もそう思っていたので。
三浦:もともとはリクエストして音楽をかけてもらう場所だからね。
カンノ:『オールナイトニッポン』がもともとは異端だったと思うんです。でもそれが、全部が『オールナイトニッポン』化しているというか。
三浦:「リクエスト待ってます」みたいな番組は減ってるかもね。
カンノ:お昼の番組とかそのパターンが多いかなと思うのですが、それも減ってスタッフの選曲パターンも増えてますよね。
ハシノ:レコード会社の推しとかね(笑)
カンノ:音楽を紹介するラジオって、その喋り手の熱量というか。パーソナリティの人が自分で選曲することが多いじゃないですか。ラジオ日本の『クリス松村の「いい音楽あります。」』(※1)を聞いてて思ったのが、クリスさんって本当に滔々とかけた曲の情報だけ言うじゃないですか(笑)ただただ垂れ流されていくだけというか。
三浦:そしてその情報は意外と世に出ていないことが多いんですよ。貴重なんだよね。
ハシノ:多分リスナーの気持ちとしては、「あの人がやっている番組であるということは、自分の好きな曲がかかるであろう」という安心感と、知らなかった情報も知りたいという好奇心の2つがあると思うの。それが絶妙なバランスで同時に来ることが理想だよね。
カンノ:そうですね。安心感と刺激ですね。
ハシノ:そうそう。多分、クリスさんはそこのさじ加減がちょうどいいんだよね。
三浦:『いい音楽あります』という番組は、自分でミックステープを作るという趣旨でA面B面を作るんだけど、曲の流れが同じアレンジャーでつなげたり、A面B面の頭を同じ年のチャートの1位2位でつなげたりしたりとか、お洒落なことをしてくるんだよね。
ハシノ:文脈を上手く使うDJみたいな。
カンノ:かっけぇやつですね(笑)音楽好きなら誰しもがやりたいやつ。
ハシノ:「ニヤリ」とするやつね(笑)
三浦:でもそれが本当のディスクジョッキーだよね。DJっぽいという意味で。
カンノ:「このつなぎの意味」ということですね。
三浦:そうそう。曲の合間をトーク解説で埋めていくみたいな。トークの合間に曲じゃなくて。
ハシノ:だから今ほど情報ソースが少ない中で、ラジオ発のヒット曲ってすごく多かったんだよね、70年代とか。シングルのB面とかアルバム曲だったんだけど、DJがかけて「これめっちゃいい曲じゃん!」ってなって急遽シングルカットされて大ヒットしたり。
カンノ:ラジオがメディアとして王道だった時代ですね。
ハシノ:そうそう。
三浦:シングルカットって聞かなくなったね。
カンノ:もうシングルがないですからね。
カンノ:クリスさんの番組の話が出ましたが、三浦さんはやっぱりラジオ日本が好きですか?
三浦:うん。土日は特に聞いてますよ。
カンノ:どんなところが好きですか?
三浦:ラジオ日本はショッピングのコーナーとかがないから、テンションが保たれたまま番組ができるんだよね。
カンノ:なるほど。番組側が作った感じがないんですね。
三浦:そうそう。コーナーみたいなのがないんだよね。その番組の時間内はその番組がちゃんとできるから、音楽もちゃんと聴けるんだよね。
カンノ:悪い意味での構成作家的なものの意図が見えない感じになるんですね。
三浦:そうそう。パーソナリティが作った時間がずっと続く感じ。
ハシノ:なんか、コーナーがないとかショッピングがないとかって、逆に言うと商売が下手ってことじゃん。
三浦:そうですね。お金はどうしてるんだろ?
ハシノ:ちょっと心配になるよね。
三浦:なくなったらどうしよう(苦笑)ラジオ日本ってデータベースがすごく多くて。古い曲をたくさん抱えてるんですよね。
カンノ:ライブラリが一番あるのはラジオ日本だって聞いたことがあります。
三浦:だからレコードで残っているものもたくさんあって。なので、貴重な音源を聴ける機会があるのもラジオ日本なんですよ。
カンノ:たしかに。クリスさんのラジオで流れる曲、全部かっこいいですよね。他局の番組とは違って、ラジオ日本の番組ってずっと聞けるし、いつでも止めていいですよね(笑)
三浦:そうそう(笑)
カンノ:オールナイトとかJUNKとかって「全部聞かなきゃ」って思っちゃいますよね。止め時が難しいですよね。
ハシノ:たしかにダラダラ聴けないかも。
カンノ:「ちゃんと聞かなきゃ」みたいな。でもラジオは本来、いつ聞くの止めてもよかったんですよね。
三浦:そうそう、真面目に聞く必要なかったんだよね。
カンノ:TBSラジオとニッポン放送は真面目に聞かなきゃいけない番組が多いかもですね。
三浦:ちゃんと聞かないと逃しちゃう感じあるよね。その分、ラジオ日本は気軽に聞けるよね。
ハシノ:あとやっぱりラジオ日本と言ったら『THE BEATLES 10』(※2)ですね(笑)
三浦:『ビー10』のなにがすごいって、リクエストの分母が決まっているという(笑)
ハシノ:「この中から選んでください、しかもそのバンドは50年前に解散しています」(笑)
カンノ:しかも別に曲数、そんなに多くはないっていう(笑)
ハシノ:それが分かった上で、リクエストしてくるリスナーのモチベーションよ(笑)
カンノ:狂っている!
三浦:『ビー10』は本当すごいよね。パーソナリティのカンケさんが、「その時間でその曲聞くと、聞こえ方変わるよね」とか言ってて(笑)
ハシノ・カンノ:アハハハハッ!
ハシノ:ヤベェ(笑)
カンノ:味の変わるガムみたいな(笑)
三浦:「日曜の7時だとこうだけど、月曜の8時に聞くとやっぱり違うよね」とか(笑)
カンノ:ヤベェな(笑)
ハシノ:1個のバンドを何年も噛み続けられるのは本当にすごいよね。
(※1)音楽に深い造詣を持つクリス松村がコレクションしているライブラリーの中から、1970・80年代のアイドルソング、また1980年代のニューミュージックや邦楽・洋楽などをかけつつ、その熱い思いを語る番組。
(※2)ザ・ビートルズの公式発表曲213曲と解散後発売のオリジナル・ソング23曲をリスナーのネット投票などを受けトップテン形式にして発表する番組。2004年の番組開始から毎週ビートルズだけのランキングを発表している。