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「こういう楽しみ方あるよ」という音楽啓蒙 〜「アレコード」系譜のコーナー〜

様々なライブやレコーディングに参加しているミュージシャン・三浦千明さん屁理屈音楽語りグループのLL教室・ハシノさんをお招きして、SOMEOFTHEM・カンノと「音楽ラジオ」についての駄話会。第2回は様々な番組の音楽を面白がるコーナーについての話。 

 

 

ハシノ:ラジオを聴き始めたのってどこからになる?

三浦:最初は車の中かな。そこでトップ40みたいなのを聞いて。当時小学4年生ぐらいで、レコードからCDになるならないぐらいで。自分で買うという年齢じゃなかったから、ラジオをカセットテープに録音して聞いてた。トップ40みたいな番組だと、ベスト5はフルコーラスかかるんだけど、その前の曲だとピックアップしてサビだけみたいな。だからフルコーラスで聴きたいから、リクエストするんだよね。トップ10ぐらいになって、なんとかワンコーラスは聴けるみたいな。「競ってます、競ってます!」とか言いながら、リスナーを煽ってリクエストさせるみたいなのを聞いてたのが原体験かな。

カンノ:本当、今の時代ってめちゃくちゃ贅沢なんですね。

三浦:本当だよ、夢のようだよ(笑)「ちゃんと音楽が聴きたい」と思って聞き始めたラジオは『赤坂泰彦のミリオンナイツ』(※1)だね。圧倒的な入り口。TOKYO FMの今の『SCHOOL OF LOCK! 』の時間帯の番組だね。曲もオールディーズみたいなのがたくさんかかるんだけど、リスナーからお悩み相談を受けながら、そいつに向けて曲をかけるんだよね。

カンノ:赤坂泰彦がお悩み相談…?あんな軽薄な人が?(笑)

三浦:違うんだよ!ラジオだと軽薄じゃないんだよ!(笑)

ハシノ:ラジオとテレビでキャラクターが全然違う人っているよね。

三浦:もう全然違うの!『THE夜もヒッパレ』の人じゃないの!(笑)

カンノ:最初のM-1で漫才師の名前間違えまくる感じじゃなくて?(笑)

三浦:全然違う!めちゃくちゃ熱くて面白い。

カンノ:そこは若者のためのパーソナリティな感じがありますね。

三浦:そう。あと、火曜の夜に「うさんくさいポップス」というコーナーがあって。それは今でいう「アレコード」(※2)をかけるコーナーで。それはワクワクしながら聞いてたね。

カンノ:「音楽って変だよね」みたいな見方はずっとあるわけですね。

三浦:そうそう。それで「うさんくさいポップス」をかけながら、変な歌詞に対して赤坂がツッコむの。

カンノ:あぁ〜、曲中に。

三浦:そうそう。「そりゃねえだろ!」みたいなことを。

カンノ:ナイツの歌ネタみたいな感じですね(笑)

ハシノ:たしかに(笑)

三浦:そういうことをガンガンにやってて。それで曲の面白さも増すんだよね。曲を紹介するだけじゃなくてね。2小節のブレイクで赤坂がツッコんでいくんだよ(笑)歌詞の矛盾とか突いたりね。そういう面白さにハマっていったね。それでいろいろ記憶を辿ったんだけど(笑)、バレンタインデーの日に、あの番組は女の子を応援してくれるんだよ。

カンノ:赤坂が?(笑)

三浦:赤坂が!(笑)「ガンバレ!ガンバレ!」って(笑)それでThe Rubinoosの「I wanna be your boyfriend」をかけるんですよ。

I Wanna Be Your Boyfriend

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三浦:で、ホワイトデーの日に「どうだったか?」とか聞いて、そのカバーにあたるLushの「I wanna be your girlfriend」をかけるんです。

三浦:同じ曲で違うバンドが歌っているんだけど、歌詞をバレンタインデーに「ボーイフレンドになりたい」、ホワイトデーに「ガールフレンドになりたい」と変えてて。もう、「うわぁ!」っていう感じだよね。「こういう曲があるんだよ」と紹介するのと同時に、「1ヶ月前に聞いてたお前たちは分かるよな?」ということも込みで。

カンノ:アンサーソングを気の利いたエッセンス込みで紹介してたんですね。

三浦:そうそう。「こういうのがあるよ」ということじゃなくて、バレンタインデーとホワイトデーにかけるっていう。それはラジオでしかない音楽の楽しみ方だったなって。

カンノ:それって文脈遊びですよね。そう考えると、やっぱりDJって言葉の意味を思っちゃいますよね。

三浦:そうそう。喋り手というよりは、ディスクジョッキーだったんだよね。

カンノ:ディクスジョッキーという呼び方、あんまり聞かなくなりましたね。パーソナリティになっちゃいましたね。

ハシノ:そうだね。パーソナリティって音楽かけなくていいもんね。

三浦:ディスクが関係ないからね。

カンノ:パーソナルを出す人ですよね。

ハシノ:本当だ、ディスクがいらないんだ。

 

ハシノ:「アレコード」の流れってあるよね。面白いラジオの鉄板企画として。

三浦:「アレコード」も、紹介の仕方によって面白いときとそうでもないときがはっきり分かれてくることがあるんだよね。笑っていいのかダメなのかとか。その紹介によって変わるから、曲のパワーというよりはディスクジョッキーの紹介の仕方で結構変わるかな。

ハシノ:当時ヒットしていて何の気なしに聴いていた曲も、角度変えるとめっちゃおかしなことを言っているということってあるよね。俺が中学生のときに聞いてた『大槻ケンヂオールナイトニッポン』(※3)で、「かっちょいい曲のコーナー」というのがあって。要は「アレコード」なんだけど。

カンノ:「かっちょいい」って言葉はそういうことですよね(笑)

三浦:「かっこいい」ではない(笑)

ハシノ:それで左とん平「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」とかね。

ハシノ:あと、坂上二郎の「学校の先生」という曲があって。「この学校に赴任してきました」みたいな語りから始まる曲なんだけど。その自己紹介のときに生徒がガヤを飛ばすのね。そのガヤが「何言ってるのか分からない」ということでめちゃくちゃ引っ張るのね(笑)「何て言ってると思う?」とリスナーに投げかけるのよ。

 

学校の先生

学校の先生

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カンノ:テーマメール化するんですね(笑)

ハシノ:そうそう(笑)

カンノ:音楽を通して「こういう楽しみ方あるよ」っていう啓蒙ですよね。

ハシノ:そんな曲って誰も思ってなかったやつね。

カンノ:「こういう物の見方もあるぞ」っていう。それを面白おかしく伝えてね。

ハシノ:『マキタスポーツラジオはたらくおじさん』(※4)に昔出たとき、プレゼンをする場面があって。「”あばずれ歌謡”ってあるよね」って話でスタッフと盛り上がってさ(笑)

カンノ:「えっ?何それ?」となるところが盛り上がるという(笑)

ハシノ:たとえば中森明菜のツッパリイメージで、性的にも奔放みたいなさ。桃井かおりとかさ。そういうのを持って行ったんだけど。それは皆がイメージしやすいところなんだけど。その中で1つ持って行ったのが、石野真子の「春ラ!ラ!ラ!」という曲で。マキタさんは「えっ?この曲知ってるよ」みたいな。「普通に流行ったアイドルソングだよ。あばずれ感あったかな?」って言ってたんだけど、あの曲の歌詞をよく読むと「三人そろって春ラ!ラ!ラ!」、その三人というのは私と今の彼氏と昔の彼氏なの(笑)

三浦・カンノ:アハハハハッ!

春ラ!ラ!ラ!

春ラ!ラ!ラ!

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ハシノ:「会ってみたいな久しぶり あなたも話が合うでしょう」だから(笑)

カンノ:ヤベェなぁ(笑)

ハシノ:マキタさんも「本当だ!」ってなって(笑)あれは角度つけるの大成功したなって。「あばずれだ!」って(笑)

三浦:知ってる曲の再解釈みたいなのってラジオ特有だよね。

カンノ:『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(※5)で、真心ブラザーズの「ENDLESS SUMMER NUDE」でその話してましたね。たしか宇多丸さんが「あれ、青姦の歌だ」って(笑)

ハシノ:そうだったね!

ENDLESS SUMMER NUDE

ENDLESS SUMMER NUDE

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カンノ:そうそう。「浜辺で」みたいな。「別に本人に直接聞いたわけじゃないけどね!」みたいな(笑)

三浦:勝手な解釈ね(笑)

 

 

(※1)TOKYO FMで放送されていたリクエスト番組。期間は1993年4月1日 - 1997年9月30日。赤坂泰彦が自身の憧れのラジオスター「ウルフマンジャック」の様に若者の悩みをとにかく応援してオールディーズを流す番組。

(※2)TBSラジオ伊集院光とらじおと』内で放送されている、風変わりな歌謡曲を紹介するコーナー。

(※3)筋肉少女帯でメジャーデビューしたばかりの大槻ケンヂがいきなり抜擢され、他愛もない下ネタが中心だったがそこそこ人気を博した。「かっちょいい曲のコーナー」は1990年6月4日 - 1991年10月7日の月曜1部時代に放送。

(※4)ラジオ日本で2011年から2015年まで放送されていた音楽バラエティ番組。この番組のゲストでよく出られていたハシノさんと批評家・矢野利裕さん、そして番組の構成スタッフだった森野誠一さんで組んだユニットがLL教室。

(※5)TBSラジオで2007年から2018年まで放送されていた音楽情報番組。カンノは西寺郷太さんゲスト回の「マイケル・ジャクソン-小沢一郎、ほぼ同一人物説」にえらい衝撃を受ける。後継番組『アフター6ジャンクション』は現在も放送。