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伝えたいのはランキング部分じゃない 〜J-WAVEとFM802開局以降の世界〜

様々なライブやレコーディングに参加しているミュージシャン・三浦千明さん屁理屈音楽語りグループのLL教室・ハシノさんをお招きして、SOMEOFTHEM・カンノと「音楽ラジオ」についての駄話会。第4回はJ-WAVEFM802のようなオシャレなFM局が開局することと、各ラジオ局の持ち味の出し方の話。

 

 

 

カンノ:僕はほぼ、J-WAVEがある世界しか生きてないんですよ。J-WAVEができる前の世界を知らないんですよ。J-WAVEができる前とできた後のラジオの感じって全然違いますか?

三浦・ハシノ:違う、違う。

カンノ:やっぱりそうなんですね。

ハシノ:関西でいうと、FM802(※1)と双璧を成してますね。”オシャレなFM”っていう。

カンノ:802も分家がありますよね。FM COCOLO(※2)。

ハシノ:子会社ね。802の現役を引退したベテランDJたちが集ってくる(笑)

三浦:でも分かる気がする。ミュージシャンの使い方が802っぽいとか。

カンノ:802っぽいって何ですか?

ハシノ:あのね、一言で言うとAORなの。開局当初すごく聞いてたんだけど。洋楽中心で流行っている曲をかけるんだけど、ちょいちょい局が色を出す感じがあって。802はそれがAORだったかな。90年当初ってAORはオワコンなんですよ。一番ダサいぐらいの距離感なんですよ。そのとき思ってたのが、AORってバブル世代なんですよ。802はそこに向けてたと思うのね。

カンノ:そもそもターゲットを絞ってたんですね。

ハシノ:で、若い子に「昔はこんな良い曲もあったんだよ」と啓蒙していたのね。そのやり方がたとえば、普通のランキング番組なのにちょいちょいアース(Earth, Wind & Fire)が入ってきたり。スティーリー・ダンをいきなりかけるとか。天気予報のBGMがブラジリアンフュージョン使ってたりとか。

Peg

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カンノ:「本当にお前らに知ってほしいのはランキング部分じゃねえぞ」みたいな(笑)

ハシノ:そうそう!その802臭みたいなのはあったかな。

カンノ:たしかに、そこで紹介される1位とかよりもジングルとかを覚えてたりしますよね。思ってたのが、J-WAVEとかFM802ができる前のラジオってモノクロなイメージなんですよね。

ハシノ:そうそう!

カンノ:そこからカラフルになっていくような流れがあったのかなと思ってました。

ハシノ:結局FMとはいえ、AMよりは垢抜けているといえども、本当にイケてる若い人はラジオなんか聞いてなかったから。テレビ、そしてディスコね。そういう人がラジオを聞く流れはあったかも。それこそ『タマフル』って、クラブに行くような人がAMラジオを聞くきっかけになったと思うんだよね。

カンノ:なるほど!

三浦:「J-WAVEしか聞かない」というのを自負にしている人もいただろうしね。802も同様に。ラジオリスナーというよりはその局だけみたいな。そういう人はいましたよ。ラジオだけど片足ぐらいな人。

カンノ:それって「嫌だなぁ」とか思ったりしましたか?

三浦:いやいや。そういう関わり方も大事だから。

ハシノ:パイは増えたからね。

カンノ:入り口としてですね。

三浦:そういう存在の仕方ができるようになったのはいいことだと思いますね。そしてそれによって局の棲み分けができたから、他局は「それはやらないでいいや」みたいなのはできたかもね。

カンノ:「オシャレ方向はJ-WAVEに任せて」みたいな。そのときのTOKYO FMってどうしたんですかね?

三浦:やっぱり文脈重視じゃないかな。「良い曲でしたね」だけじゃなくて。もともとのラジオ民みたいな「音楽を深めよう」という意識を持った番組が多いかもね。そのままの意味での「音楽が好きな人」はJ-WAVEに行ったから。

カンノ:「音楽好き」と「ラジオ好き」はまた違うってことですね。

三浦:ラジオ好きに対してただ曲をかけるだけだと、その時間で離れちゃうから。話の中での選曲がTOKYO FMは基本的に上手だと思う。終わっちゃったんだけど、『TIME LINE』(※3)という番組があって。

カンノ:小田嶋(隆)さんとか。

三浦:そうそう。速水(健朗)さんとかね。政治ネタが多くて。

カンノ:ニュース番組のイメージですね。

三浦:そういう社会情勢を伝える番組なのに、インディーロックをめっちゃかけてたんですよ。

ハシノ:あ〜、なるほど!

三浦:商業音楽じゃないものがかかる中でのその歪さというか。それがかかると急に、「みんな頑張って生きてるぞ」感があって(笑)

ハシノ:アハハハハッ!

三浦:見繕った美じゃない熱量みたいなものがあって。

ハシノ:ラジオから学びすぎてる!(笑)摂取しすぎ!

カンノ:なんかね、番組側にそんな意図もない気がしてきた(笑)リスナーが超えていっちゃうパターン(笑)

三浦:まぁ、選曲してる人たちが同世代ということもあってね。でもそこで商業音楽がかかっちゃうと冷めるからね。お金かけて作ったものを聴かされてもというか。

カンノ:ニュースの流れで聴く音楽っていうのが大事なんですよね。

三浦:そうそう。そうなると暗い曲が多くなるの。ということはインディーの曲しかかからないんだよね。

カンノ:そりゃそうですよね。平井堅の「POP STAR」がかかるわけないですよね(笑)

三浦:それは眩しすぎる(笑)

ハシノ:それはもはや別の意味を持っちゃってる気がするね(笑)

POP STAR

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  • 平井 堅
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(※1)1989年に大阪府で2局目の民法FMラジオ局として開局。「FM」を「FUNKY MUSIC」とかけた「FUNKY MUSIC STATION FM802」をキャッチフレーズとし、そのような選曲を得意としたDJが結集するラジオ局として認知される。

(※2)1995年に大阪府で3局目の民法FMラジオ局として開局。2010年、FM802が設立した番組制作会社に委託する新体制を発足。FM802とゆかりのあるDJが出演するラジオ局となる。

(※3)2010年から2018年まで放送されていたラジオ番組。「今日のニュースと考えるヒント」をキーワードにその日のニュースを時系列順に紹介し、紐解いていく。