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サムオブ井戸端話#006「スピリチュアルと根性①」

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週火曜日にアップします。

 

「スピっていて根性のある人がアーティストを続けられると思う」とカンノメンバー。とあるアーティスト同士を対談を垣間見るなかで、小さな偶然にちゃんと盛り上がれること、自分だけの理屈に確固たるものが持てる人がアーティストとして存在し得るのではないかということを語り合いました。

 

カンノ:僕は4×4=16(シシジュウロク)という名義でラップをやっております。つまり僕ってアーティストじゃないですか。

YOU:そうだね、正しいよ。

カンノ:その「はいはい」っていう呆れた態度やめてくれよ(笑)

YOU:まぁ、人類皆アーティストですよ。

オノウエ:その坂口恭平みたいな表現はなに?(笑)

カンノ:いい言葉だね。たしかに皆アーティストです。そのなかでも一応、僕は音楽をやっているわけですよ。べつにそれで食べていけてるわけではないですし、今後もどうなるか分かりませんが。でも主に表現みたいなことをやり続ける方法、それを諦めずに持続させることのできる方法というのを最近見つけたんです。

YOU:おお、マジ?

カンノ:やめないでも大丈夫な方法ですね。これが最近はっきりと分かりました。

YOU:すごいね。

オノウエ:なんでしょうか?

カンノ:スピっていて根性のある人が続けられます。

YOU・オノウエ:(笑)

YOU:ちょっと待ってくれよ…。

カンノ:さぁ、これからスピリチュアルと根性の話をしましょう!

YOU:うわぁ…(笑)

オノウエ:スピリチュアルと根性(笑)

カンノ:逆になんでやめちゃうかっていうと、変に冷静になったり覚めちゃうからだと思うんです。

オノウエ:それはそうだね。

カンノ:「スピっている」って「覚めていない」ってことだと思うんです。

YOU:なるほど。

カンノ:それで「スピ」と「根性」はリンクするなと思ったんですよね。ちょっと前にとある海外在住の現代アーティストとミュージシャンの対談の司会をやったんです。その対談の本題に入るまえに、現代アーティストの人のほうはそのミュージシャンのことはもともと知らなかったんです。でもこの仕事が入る前に知人のMVのディレクターからこのミュージシャンのことをオススメされたらしいんですね。それで「かっこいいな~」と思っていたらこの仕事が舞い込んできたと。それでそのミュージシャンのほうも、そのMVのディレクターのことは知っててテンション上がってたの。僕からするとそのミュージシャンの方々は頭の切れる人たちでインテリなイメージのある人たちだったから、「たかがそれくらいのことで盛り上がれるんだな」と思ったの。

YOU:人間だからね。

カンノ:まぁ、良い雰囲気で進めるためにという意識ももちろんあったと思うんだけどね。でもいざそれを目の当たりにすると、ちょっとイメージと違って僕は若干戸惑ったんですよね。

YOU:パブリックイメージと違う姿を見るとそうなるのかもね。

カンノ:対談の内容も批評的なテーマだったからさ。ちょっとした偶然で盛り上がれる姿を見て「おぉ」って思ったのよ。それで対談を進めていくなかで、そのミュージシャンの人が自作PCを使っていると。今まで貰いもののMacを使っていたけれど、「なぜここにあるものしか使っちゃいけないんだろう?」と疑問を思って自分でPCを作ったらしいんだけど。それで作り方をYouTubeで調べたら、1発目に出たのが”シミラボ”っていうYouTuberだったらしいの(笑)そのミュージシャンの人はヒップホップグループのSIMI LABが大好きだったから、それもあってその動画を参考にして自分でPCを作ったらしいんだけど。そういうことを無邪気に喋ってるんだよね。やっている音楽はとても批評的なのに、純粋な人柄も伺える部分というのは、むしろアーティスト的なのかなって思ったりしたんですよね。

オノウエ:それはある気がするね。

カンノ:「これとこれがこうつながって、こうなるからこれはイケる!」みたいな理屈って、ただの自分の確信でしかないじゃん。客観的な根拠にはならないと思うの。でも自分のなかだけでは確固たる根拠にはなってるの。こういうご都合さって非常に大事だなと思ったんだよね。

YOU:それが「スピ」になるのか。

カンノ:それは「スピ」だよね。

YOU:周りにとっては非現実だけど、その人にとっては歴とした現実というか。

カンノ:「だってこうでこうでこうだからこうじゃん!」って言ってるけど、周りからすると「はぁ?なに言ってんだコイツ」みたいなさ。一人だけ亜空間に入っちゃってる状態というかさ。でも表現をするって、この亜空間に入れるかどうかなんだろうなと思うんだよ。

YOU:面白いね。それはそうかもしれない。

カンノ:そしてこの理屈も俺の亜空間なんだよ。アーティストたちが喋っている姿を見て、「これはこうでこういうことなんだろうな」と俺も勝手に思っているという。だから俺も俺で音楽を続けられているのかなと。

オノウエ:スピれる才能があるっていうことだね。

YOU:ふと現実を見たり、我に帰っちゃったりするとダメなんだ。

カンノ:そうだね。そういうときに表現をやめちゃうのかなって。「もう無理だ」って思いやすくなる。たとえば人間関係の問題があるとします。表現を続けられる人っていうのは、問題のある人と関わらなければ自分の表現をし続けることは可能だと思うの。でもやめちゃう人はやめちゃうよね。人間関係で躓くことで変に冷静になって、覚めちゃうから。そういうところでスピの才能があるかないかで分かれると思うんだよね。人間関係とか金銭とかある程度は相対的だと思うの。でも「こうでこうでこうなるからこうだ!」という思いつきはどことも比べられない絶対的なもので、その絶対の境地に入れる人が、売れる売れないは置いといて、表現活動を続けるための一要素なんだろうなと思うんですよね。

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