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サムオブ井戸端話#012「サプリメント化するJ-POPとプレイリスト」(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週火曜日にアップします。

 

最近、真心ブラザーズを聴いて自分を励ましているカンノメンバー。気分を乗らせるために聴くJ-POPをサプリメント的なものと仮定したときに、曲調と歌い手と歌詞の内容でその効能が決まるが、歌詞に比重が行き過ぎて「説明過多になってしまっていないか?」ということについて語り合いました。

 

カンノ:最近、音楽聴いて励まされたり癒されたりしてますか?

YOU:さっきヒゲダンの話をしたけど、俺はヒゲダンに人生を奪われてるからな…(笑)

カンノ:「励まされる」とか「救われる」とかそんな単純な話じゃないよね(笑)

YOU:そうそう、「人生を取られている」だから(笑)

カンノ:その話は高度すぎます(笑)もうちょっと分かりやすい話をしましょう。

オノウエ:僕はちなみにないです。

カンノ:なるほど。僕は最近、真心ブラザーズに励まされてますね。

YOU:おぉ~!最近?

カンノ:そうそう。最近ずっと「拝啓、ジョンレノン」を聴いてやる気を出してますね。YO-KINGが「ジョンレノン あのダサいおじさん」って歌うのを聴くと、なぜかすごくやる気が出るんですよ(笑)

オノウエ:それは何でなんだろう?

カンノ:で、音楽を機能として考えてみたの。「気分が乗らないときはこの曲を聴いて頑張ろう」と思うのは一般論としてあるじゃん。

オノウエ:「機能」を言い換えると「薬」みたいなことかな。

カンノ:そうだね。「肌が荒れてきたからビタミンを摂ろう」みたいな。サプリ感覚だよね。ここでは「サプリメント音楽」とでも呼びましょうか。

YOU:Lo-Fi HIPHOPってそういうことだよね。

カンノ:そうそう。「チルい気分になろう」というサプリ。「自分がこういう気分になりたいから聴く」っていう。そして、その効能みたいなものがラベリングとして書いてあるんだよ。「チルい気分になれる」とか「アゲアゲソング」とか。「肌荒れに効く」って書いてあるビタミンCのサプリみたいな。つまり「効能が書いてあるから聴く」という流れで音楽が消費されているなと思ったんですよね。でもそういうチルとか励まされるとかって「一体なにが要因なんだろう?」って思ったんですよ。結局ただの音じゃん。「ポーン」という音だけで励まされたり癒されたりしたっていいわけじゃん(笑)でもそうはいかない。そこで考えてみました。J-POPに限っていうと音楽は、「曲調」(楽曲)と「人格」(歌い手)と「歌詞」(具体的内容)の3つの規格が混ざって出来上がるとします。この3つの規格が混ざり合って、「こんな効能になりました」ってことだと思うのね。そう仮定したときに、歌詞が一番効能を引っ張りやすいなと思ったんです。

オノウエ:ヒゲダンが人生を取りに来るようにね(笑)

YOU:そうだね。たとえばドリカムの「何度でも」とか分かりやすいよね。

カンノ:ドリカムが「何度でも 何度でも~」と何度も歌うと「何度でも頑張ろう!」と思える効能ってことだよね。そういうエナジーサプリ。

YOU:話を先取りしちゃうかもしれないけど、「何度でも」って掛け算なんだよ。ドリカムの吉田美和さんが「何度でも」という歌詞を何度も歌い、曲調もアゲアゲで、歌も後半まくし立てて、それって効能が何倍にもなってるよね。

カンノ:それって「励まそう!励まそう!」という気概じゃん。

YOU:励ましの暴力だね(笑)

カンノ:そういう方向に行くよね。それで結局、歌詞や言葉が一番直接的に届いちゃうから、励ましが行きすぎてオーバードーズしちゃうときってあるよね(笑)

オノウエ:励ましすぎて、オーバードーズしてバッドトリップしちゃう(笑)でも「何度でも」でバッドトリップしてる人って絶対いると思うんだよ。

カンノ:「何度でも」で9割の人は励まされると思うの。でもそこから零れる1割の人はいると思うんだよね。その人たちは「何度でも」を聴くとすごく辛くなっちゃうんじゃないか。

YOU:それはいるだろうね。

カンノ:「J-POPは3つの規格で成り立ってる」と仮定したときに、あまりに歌詞の内容が効能に直接的すぎると、ほかの2つの規格が脆くなっちゃうなと思ったんですよ。でも、それくらい歌詞で効能を説明しないと伝わらないのかなって。たとえばエレカシの宮本さんが「俺たちの明日」という曲で「さあ頑張ろうぜ」と歌うわけじゃん。

YOU:言った。あいつはそう言ったよ。

オノウエ:「あいつはそう言った」(笑)

カンノ:でもそんなことを言わなくても、あのエレカシの曲調であの宮本さんの声で「オーイエー」と言えば、それだけで励まされるし元気出るじゃん。

YOU:そのエレカシの例えは分かりやすいね。

カンノ:それが「さあ頑張ろうぜ」になると、ちょっと過剰気味というか。

YOU:あの曲も励ましの暴力だから(笑)エレカシは明らかにあの曲でトーンが変わったもんね。

カンノ:音楽じゃなくて言葉を聴いてる感覚だよね。「こういう効能の楽曲です」という分類ありきになっているというか。そうじゃないと聴かれない。それが一番直接的にできる規格が歌詞だから、そればかりになってしまう。昔はもっと行間を読むような歌詞の曲が多かった気がするのね。それがどんどん直接的になっているというか。

オノウエ:ムカつくから「うっせぇわ」って言っちゃう。

カンノ:「オーイエー」とか「ベイベー」で伝わることってあったじゃん。でももう「ベイベー」じゃ伝わらないと思うんだよね。

YOU:忌野清志郎が「愛してるぜ」と歌うと100くらいの意味を持つんだけど、そうなるためには忌野清志郎にならなきゃいけないもんね。重みの話だね。「オーイエー」とか「ベイベー」ってバロメーターなんだよ。

カンノ:なるほど、そもそも歌い手が軽くなってるのか。あと規格の話でいうと、曲調と人格と歌詞の3つの規格が全方位で一致していないと安心感が得られないんだろうなとも思う。でもそれは個人的にはあんまり面白くないんだよね。たとえばゆるい曲調、ゆるい歌声で「Take it easy~」なんて歌われても、「いや、そもそも曲調が”Take it easy~”じゃねえか!」って思っちゃうの(笑)「”ちょっと休もうよ~”じゃねえよ!」っていう(笑)その全方位一致感は安心安全だけど面白くない。

YOU:たしかにそう言われると、真心ブラザーズって曲調と人格はそんなに一致してないよね。

カンノ:「ENDLESS SUMMER NUDE」なんてめちゃくちゃチグハグだと思うんだよ。全然一致してないと思う。で、あれが大好きなんだよ。

YOU:あれが売れてるのもよく分からない(笑)

カンノ:曲と声が全然一致してなくて好きなんだよ。

YOU:そして山下智久がカバーしてより大変なことになったしね(笑)

カンノ:あれは大変だった。YO-KING以上に一致してない奴が来たんだもん(笑)

YOU:でも山Pの「ENDLESS SUMMER NUDE」は謎の多幸感があるんだよな(笑)

カンノ:俺もすごく好きなんだよ。

YOU:あのカバーを聴いてるとすべてがどうでもよくなる(笑)

オノウエ:あのカバーはより強力なドラッグなんだね(笑)

カンノ:山Pの高音の届いてなさとかすげぇ好きなんだよな~。

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