SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週水曜日にアップします。
オレンジスパイニクラブにハマったカンノメンバー。新譜を聴くことが辛くなったカンノメンバーが、オレンジスパイニクラブの軽音楽部感に「愛で」の気持ちがあることについて熱く語りました。
カンノ:オレンジスパイニクラブというバンドがとてもいいです。
YOU:それはどんなバンドなんですか?
カンノ:オレンジスパイニクラブは「キンモクセイ」という曲があって、これがTikTokでめちゃくちゃバズったんですよ。で、そのバズった理由が「エモい」の一点突破(笑)
オノウエ:今TikTokを見てみたけど、単純にエモくて好かれたっぽいね(笑)
YOU:振付がついているとかのギミックはないんだね(笑)
カンノ:あと歌詞の言葉数が詰まって歌われることでエモが加速する感じとかね。まぁ、このバンドが好きになったんですよ。
オノウエ:そうなんだね。
カンノ:でね、『Radio OK?NO!!』で音楽にまつわる企画を考えたり、ここで音楽について喋る場を設けたりしているので、僕は結構頑張って毎日新譜をチェックしてるんですよ。
YOU:それはすごいね。
カンノ:で、もう新譜が辛い!
YOU:アハハハハッ!
オノウエ:新譜が辛いんだ(笑)
カンノ:新譜を聴くのが辛いんです。で、なんで辛いのかを考えたときに、僕にとって新譜は技術が高すぎるんですよね。
YOU:最近のミュージシャンの技術は高いよね。
カンノ:まず歌い手の歌がジェットコースターみたいに上がったり下がったりしてる。優里やアイナ・ジ・エンドを聴いてると声がグワングワンしててさ。あとKing Gnuやmillennium paradeとかの声やサウンド面もちょっと高級すぎる。「こういう手札を持ってます」「私はこういうこともできます」ということをずっと見せられてる気がするの。技術品評会化してるというか。星野源が今年出したシングルは全部そんな感じがしたんだよね。
オノウエ:もう本当に音楽が聴けない身体になってるじゃん…(笑)
カンノ:新曲の「Cube」なんて本当に高度な技術が右から左へどんどん流されている感じがするんだよ。
カンノ:「すごいことをやってる」と言われても、もう正直どうでもいいんだよね(笑)「くだらないの中に」みたいなシンプルなものが欲しいんだよ。
YOU:ほんのり良い曲みたいなものってたしかにないかもね。
カンノ:そういった高度なものか、「このマーケットが今ウケているから当ててやれ」みたいな曲しか新譜にはないなって思ったんだよ。
YOU:音楽も「商品」だから結局マーケティングになっちゃうよね。
カンノ:極論かもしれないけど、基本的に「こんなこともできますよ」と「ここに当ててやれ」の2パターンしか新譜にはない。だから全然好きになれないんですよ。高度な技術や商売っ気が相まってるから、僕にとって新譜はエクストリームすぎるんだよね。
YOU:それはすごいよく分かる。たとえばAdoの「踊」はすごい好きなんだけど、あれはエクストリームだね。
YOU:この現象ってヒャダインが作ったももクロの「行くぜっ!怪盗少女」あたりからずっとそうで、曲が飛ばされないように1曲のなかで展開を多くして、引っ掛かりを少しでも多く作る工夫がされてるよね。
オノウエ:エクストリームというよりはマッシブだよね(笑)
カンノ:そのマッシブ化されたものは繰り返し聴けないね。1回新着プレイリストで聴いたら「もういいや」って気分。
YOU:マッシブな新しいものを聴くと疲れるんだね(笑)
カンノ:そうそう(笑)で、ここでオレンジスパイニクラブの話に戻るんだけど、オレスパがなんでいいのかを考えたときに、さっき言ったような高度さやマッシブさがないんだよ。つまり、大したことがない。はっきり言って、やってることはそんなに大したことはないと思う。
YOU:俺は「睫毛」って曲を聴いたんだけど、後半の大サビ終わりのギターソロが、僕らくらいの軽音楽部だったら1回はやりたいと思うギターソロをそのままやってるよね。
カンノ:今いいフレーズが出たね。「軽音楽部」ですよ。僕は軽音楽部の話がしたいんだよね。このオレンジスパイニクラブが体現している軽音楽部感、つまり大したことない感じ。そういうのを久々に聴いたなと思ったんだよね。
YOU:「大したことない」ってすごく誤解を生みそうなワードだな(笑)
カンノ:ちなみに「大したことない」は完全に褒め言葉で言ってますよ!
オノウエ:カンノが「オレンジスパイニクラブにハマってる」というツイートをしてたから、それで聴いてみたんだよ。で、大したことないんだよ(笑)だから「なんでコイツ、そんなにハマってるんだろう?」って普通に疑問だったんだよね(笑)要するに、その軽音楽部感が良いってことなんだよね?
カンノ:でね、たとえば知り合いでもアイドルにハマっている人は多いんですよ。K-POPしかり、ジャニーズしかり。で、アイドルをいろいろ分析する目線で見ることもあるかもしれないけど、基本的には「かわいい」とか「キュンキュンする」とか愛でる気持ちでその対象を見ているはずなんだよ。
オノウエ:「推し」という考え方だよね。
カンノ:でね、僕はアイドルにはそういう目線はないんだけど、軽音楽部にはそういう目線がすごくあることに気付いたの。
YOU:はぁ~、なるほどね。
オノウエ:軽音楽部に萌えてるんだね。
YOU:軽音楽部に萌えてるやつ、超気持ち悪いな(笑)
カンノ:僕はオレスパをめちゃめちゃ「愛で」の目線で見ていることに気が付いたんだよね。
YOU:いろんなサブカルおじさんって危険視されてて、地下アイドルおじさんもいるし、シンガーソングライターおじさんも比較的新しめの概念だったと思うんだけど、こんな近いところに軽音楽部おじさんが出てきた(笑)
オノウエ:しかも男が男の軽音楽部に萌えている(笑)
YOU:これはデッドですね~(笑)
カンノ:僕は軽音楽部おじさんになったわけですが(笑)でも軽音楽部を「愛で」という目線で見ていたことに気が付いたのは、ちょっと面白かったんですよね。