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サムオブ井戸端話 #021「ノイズの良し悪しと怖い音楽」

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週水曜日にアップします。

 

「ノイズにも良いやつと悪いやつがあるよね」とオノウエメンバー。衝動ではなく意図をもって鳴らされるノイズや即興演奏の良さについての流れから、「音楽を怖いと思う感覚って何だ?」という話をしました。

 

オノウエ:僕はノイズの音楽が好きなんですけど、ノイズにも良いやつと悪いやつってあるよね。

YOU:それはわかるな。

カンノ:僕はノイズが初心者なのでよくわからないんですけど、どういうことですか?

オノウエ:ノイズも結局は創作物だから、「この人はこういう意図でこういうノイズを鳴らしているんだな」というのがわかるものと、なんとなく出来上がっちゃったものに分けられるの。結果なんとなく出来ちゃったものでも良いものがあったりするから、ちょっと話がややこしくもなるんだけど。なんかノイズとか即興演奏みたいなよくわからないものでも、そういう軸はあるような気はしていて。

YOU:「ノイズってプレイヤーがただデカい音を鳴らして暴れてればいいんだろ?」と思われがちだよね。

カンノ:そう思う人はいるだろうね。

YOU:やってる側はそうじゃないんだけど、結局そう思われていることは多いんだよね。

カンノ:たとえばライブでノイズを鳴らすときに、「ここでこういう演奏をしたらこんな反応がありそうだな」みたいな計算はできるの?それともなんとなくの演奏の筋はあるけど、それは当日のコンディション次第で全然変えていくの?

YOU:ノイズのジャンルにもよるんだけど、確実にグルーヴは生まれるよ。ハーシュノイズに限定するとグルーヴは間違いなく存在するね。あと複数人プレイヤーがいると、掛け合いが起こるからわかりやすいかも。それで最後みんな「ガーッ!」って鳴らして「ウォ~!!」ってなる(笑)

カンノ:エモになる(笑)

オノウエ:ノイズはわりとエモだと思うな。

YOU:みんな機材集めるじゃん。できるだけいろんな音をいろんなタイミングで流せるようにしたいと思ってるよね。機材が1つだとそれでしか鳴らせないから、結局暴れるしかないっていう(笑)まぁ、ノイズもサブジャンルたくさんあるから一概には言えないんだけど。オノウエ君はギターでフィードバックノイズを「ギャー!!」と鳴らすのが好きじゃないですか?

オノウエ:大好きですね(笑)たとえば機材1つで「ギャー!!」と鳴らすような人でMASONNAっていう人がいたけど、「ガァー!!」という声の増幅だけでディストーションかまして「ビャー!!」と鳴ってディレイもかけて、ライブが1分で終わるという(笑)逆に言うと1分間のなかですべてをバコーンと入れ込んで成立させてるんだよね。

オノウエ:それに対してギターのフィードバックノイズは30分とかかけて作るから。30分作らないといけないんだよね。で、30分のなかでバラバラなことをやっちゃったら意味わからないじゃん?自分のなかで30分をトータルするなにかを規定しなきゃいけないんだよね。

カンノ:「ここで山を作って、だんだんと展開していって、最後くだる」みたいなことだよね。

YOU:僕もノイズを演奏していたときはあったけど、こちらも聴き手も気持ちいいと思う瞬間はあったよね。

オノウエ:あった、あった。

YOU:「アンサンブルだ!」みたいな瞬間がさ(笑)

オノウエ:あと面白いのは、人は即興演奏をやるとだいたい20~30分くらいで終わっていくの。「30分にしようぜ」とか言ってなくても。

カンノ:それは時計とか見ながら演奏するの?

オノウエ:見てない、見てない。体感的に20~30分なの。「あっ、この辺でやめ時だな」と思うのがだいたいそのくらい。

カンノ:それは面白いね。1時間とかまではいかないんだ。でも10分だと足りないんだ。

オノウエ:それを総括するものって一体なんなのかは言葉にしにくい感覚なんだけど、多分時間芸術なんだろうね。

カンノ:なるほどね。ノイズでエモくなるとか、チルになれるとかあるじゃん。でも一方で、ちょっと怖い感覚もあるのね。音楽を聴いてて「怖い」と思う感覚の話なんだけど。たとえばASA-CHANG&巡礼の「影の無いヒト」って曲があるじゃないですか。あの曲が僕、すごく怖いんですよ。

YOU:あれは怖いね。

カンノ:でも、「なんで音楽を聴いて怖いと思ってるんだろう?」という疑問がずっとあるの。「音楽を聴いて怖いと思う」ということがどういうことかよくわからないんだよ。感覚的には怖いことを自覚してるんだけど、理屈で考えたときに「なんでそれが怖いと思うのか?」があんまり理解できないんだよね。

オノウエ:その話わかるな。俺も「なんで音楽を聴いて怖いと思うのか?」がずっと疑問でさ。ネットによくある「これ聴いたら死ぬ曲」とかさ。

YOU:「部屋とYシャツと私」とかは怖い曲でよく言われてるよね。

カンノ:でもそれって歌詞の深読みの話でしょ?そうじゃなくて純粋に音楽の話としてだね。

オノウエ:いろいろ怖いと言われてる曲ってあるけど、こっちが最初から「怖い」と思って聴かないと実際はあんまり怖くないよね。「怖いと言われてる理由はわかるな~」みたいな。だけどそんなに怖くない。「怖い音ってなんだ?」という話かな。それこそ僕はノイズをやっていたりするので、「バコーン!」みたいな激しい音や「ジジジジジ…」みたいな小さい音もべつに怖くないじゃん。音楽として聴けちゃうから。それによって聴ける音の範囲は普通の人よりは広がっちゃってると思うんだけど(笑)だからこそ「怖いと思う音ってなんだろう?」という疑問はずっとあるんだよね。

カンノ:たとえば緊急地震速報の音ってあるじゃん。

オノウエ:「ピュイ、ピュイ」ってやつね。

カンノ:あれはよく「怖い」って言われてるけど、地震がこれから来る怖さとか、避難の意味性が入ってきちゃうから、純粋な怖い音とかじゃないと思うんだよね。だからやっぱり僕のなかでは「影の無いヒト」ってダントツで怖いんだよね。怖いし、キモい(笑)

YOU:「怖い音楽」特集はできそうだね。

オノウエ:「怖い」って思うことはなんでなんだろうね?ずっと疑問だったんだよなぁ。

YOU:俺は教会の音楽がずっと怖いと思ってるな。クラシックの荘厳でシンプルな曲は怖いと感じる。ホラー映画のBGMってもともとクラシック畑の人たちがやっている場合が多いからね。

カンノ:ちょっと前に『爆笑問題カーボーイ』で田中さんが「いしやきいも、おいも」や「たけや、さおだけ」が怖いって話してたんだよね。

YOU:それ面白いね。

カンノ:なんかちょっとわかるよね。教会の音楽にしても「たけや、さおだけ」にしても、無機質なもの+αはあるよね。その結果怖くなってる気がする。

オノウエ:「いしやきいも、おいも」はちょっとかわいい感じがするけど、「たけや、さおだけ」ってそれだけ聴くと意味がわからないから怖い感じするよね。「竹屋です、竿竹も売ってます」みたいな意味なんだろうけど、「たけや、さおだけ」だけを聴くと全然意味がわからない(笑)

YOU:呪いの呪文っぽく聴こえるもんね(笑)

カンノ:やっぱり僕は、音楽を怖いと思うことも、音楽を聴いてアガるとかチルいもそうなんだけど、音楽に効能があることが不思議なんだよね。それを聴いて元気になるとか、悲しい気持ちになるとかって感覚ではわかるけど、理屈だと意味がわからないんだよね。

オノウエ:あと歌詞の話を外すのであれば、不協和音って何なんだろうね。だって音と音だから、結局同じ音でしょ?(笑)

カンノ:「音」という意味ではね。

オノウエ:そうそう。でも「これは協和してる」「これは協和してない」に分かれるんでしょ。それは十二音律教育を受けてしまった我々だからという話なのかもしれないけど。映画音楽とかでも十二音律技法を勉強した人が作ったりとか、現代音楽畑の人が作ったりとかって言うよね。その辺りが怖いと感じるのかもしれないけど。

カンノ:この辺りは勉強していない我々は「不思議だな」と思うばかりでございます(笑)

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