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サムオブ井戸端話 #025「良い音楽番組だった紅白歌合戦2021」(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

2021年の紅白歌合戦の話をしているサムオブメンバー。後編では武田砂鉄の紅白評で感じたことやネタ枠の少なさ、パロディ演出の多さなどについて語りました。(前編)は下記リンクから。

 

カンノ:2人は紅白をどういう視点で見てた?

オノウエ:カンノの言う「芸能の視点で見てた」っていう見方まではしてないけど、普通に音楽番組としてよかったかな。出てる人も好きだったし。あと俺が引っ掛かった紅白評があって、武田砂鉄のcakesの連載で紅白のことが書かれてて、俺あれがすげえ嫌だったんだよね(笑)

オノウエ:あれを読んで「お前、紅白見てねえだろ」って思ったんだよね(笑)なんか言いたいことがあらかじめ決まっていて、紅白で起こったことをそこに合わせて批判している感じじゃん。

カンノ:あの評は武田砂鉄のプロフェッショナルだなと思ったかな。武田砂鉄がcakesで紅白をとおしてなにか言わなきゃいけないんだよ。完全なる武田砂鉄私観だよ。そしてもっというと、この記事を批判とか皮肉るようなことを言うのもその人の私観でしかないような気もする。

オノウエ:それを言ったら全部そうなんだけどね(笑)でも武田砂鉄はちょっとやりすぎな気がするな。すぎやまこういちをああいう感じで出してくることとかさ。

YOU:ドラクエの楽曲をすぎやまこういちが作曲していて、すぎやまこういちがちょっとウヨっぽいことを言っているなんて知ってる人はほとんどいないだろっていうさ。

オノウエ:それにたいして「カラフルっていうテーマは合ってない」という言い方をしちゃうと、そもそも紅組白組と分けてる時点で合ってないわけだから。なんかいろいろ無理だよね。

カンノ:まぁ、そこに触れないという気持ち悪さもあるじゃん。そこに触れるのが武田砂鉄の仕事だから。武田砂鉄は自分がなにを求められて武田砂鉄をやってるのかはもう分かってるじゃん。武田砂鉄に限ったことじゃないけど、求められることにたいして自分の認知されている能力をプロフェッショナルとして全うすることが仕事じゃん。

オノウエ:分かるけどね。

カンノ:で、なにか表明するって絶対に反対も起こるからさ。

オノウエ:だから紅白を腐すような評にたいしてあんまり良いように思えないとなるくらい、良い音楽番組だったと思ったね。そして武田砂鉄は紅白を音楽番組として見てなかったんだなとも思った。

YOU:俺が今年の紅白を見て「2018年の紅白はよかったな~」って思ったの。この年はサザンとユーミンが出た年なんだよね。

カンノ:キスした回ね。

オノウエ:伝説の回だ。

YOU:クソ強いじゃん。歌の力とかじゃないんだよ(笑)

オノウエ:生放送ゆえの事件感、事故感みたいなものだよね。たしかに今回の紅白はそれはなかった気がするね。進行もスムーズだったし。

カンノ:一番の事故は大泉洋エヴァンゲリオンか(笑)

オノウエ:あれはただの事故じゃん(笑)

YOU:あとは紅白って未だにある種の権威だと思うんですよ。じゃなかったらまふまふも「紅白で初顔出し」とかしないだろうし。でも権威であることを置いて、若者にたいしてちょっとかわいい顔をしているというか。「かわいいおじさんで~す」みたいな感じですり寄ってる気はした。選曲が「若い人はこういうの好きなんでしょ?」みたいな感じがしたかな。Adoが出てないのが不思議なくらい。若い人が真面目にやっている音楽がすごく選ばれてる感じがした。なんか氣志團とかゴールデンボンバーみたいなメタ視点で面白おかしくやっている人が少なく感じたかな。

オノウエ:たしかにネタ枠は少ないよね。

YOU:今回の紅白だと「マツケンサンバⅡ」かな~。

オノウエ:お祭り枠だね。

YOU:マツケンサンバのとき、いろんな人が出てたじゃん。「カラフル」がテーマで多様性とかSDGsとか流行り言葉があるじゃないですか。なんかそういうものの出しに使われちゃったなと思ったかな。

カンノ:マツケンサンバはもうちょっとバカっぽく聴きたかったかな~。スケボーはテンション上がったけどね(笑)

YOU:あと結局「ゲーム」とか「アニメ」とか「サブカルチャー」みたいな括り方をしないと音楽が認識されないんだなとかね。

カンノ:これはプレイリストのときに結構話したけど、結局括られないと聴かれないっていうね。ゾーン化させないと伝わらないんだよね。

カンノ:じゃあここからはマジの雑感でいきましょう。宮本さん、外寒そうだったね(笑)

YOU:雑感だ…(笑)宮本さんってエレカシの人というよりは、今更だけど歌のうまい人として認知されたよね。

カンノ:歌うまカバーの人だよね。

YOU:徳永英明流れのなかにいるっていうね。それを彼が引き受けているのもすごいんだけど。昔の宮本さんからしたら今の宮本さんって考えられないよね。

カンノ:芸能人化したよね。だから紅白に合ってるよ。

オノウエ:あと、ちゃんと尺を考えて喋ってたじゃん。「うわ、この人、大人になった…!」って思ったよ(笑)

カンノ:「大泉さ~ん!」みたいな中継のやり取りでしょ(笑)

オノウエ:今までだったら自分で続けて喋っちゃうところを、ちゃんと喋り終えてるんだよ。

カンノ:もう宮本さんはテレ東の歌番組流れから紅白に出てもいいよね。

YOU:もう普通に出そうだよね。

カンノ:藤井風はどうでしたか?

YOU:やっぱり膝上キーボードは天才だよね(笑)あんなの絶対に弾きにくいでしょ(笑)

カンノ:僕は自宅からYouTubeっぽく弾き語りしたあとに紅白の会場に登場する演出はあんまり好きじゃなかった。

YOU:それはなんで?

カンノ:YouTubeから出てきた出自の紅白によるセルフパロディーみたいなことだと思うんだけど、そういうことを紅白で見たくないんだよね。ちゃんとNHKの画角で紅白を見たいんだよ。あとこっちはYouTubeを見てるんじゃなくてテレビを見てるから、急にYouTubeの画角を入れられるとなんかよく分かんなくなっちゃうんだよね。

オノウエ:カンノはそういう演出が根本的に好きじゃないもんね。

カンノ:そうだね、好きじゃない。

YOU:昔はどんなアーティストが出ても紅白サイズに収まったものだったじゃん。紅白ナイズされるというか。

オノウエ:それがNHKホールでやることや、NHKで放送されることの画角だよね。

YOU:そういうものは今はたしかにないかもね。

オノウエ:今回はとくになかったね。

YOU:東京事変が「緑酒」を歌ってたけど、歌詞の字幕が縦表記だったじゃん。

YOU:それってこれまでのNHK的なクリエイティブをねじ曲げてるわけじゃん。横表記なんだから。それって東京事変はすごいなと思ったね。あとNHKもそこを曲げるっていうね。

カンノ:まふまふがバックにプロジェクター的なもので歌詞を出してたりね。

YOU:あれは動画で流れてるような感じでしょ。このあたりは俺が言ってる、紅白が権威なんだけどかわいいおじさんとして若者にすり寄ってきてる結果だと思うな。

カンノ:パロディって全部そういう演出になると思うの。紅白自体を小さくかわいく見せる戦法だよね。それが僕は苦手ですね。

オノウエ:最後に司会はどうだった?

カンノ:川口春奈は良かったよね。

オノウエ:大泉洋はところどころ危なっかしかったよね。

カンノ:まぁ、これも大泉洋の仕事だし求められてることだよね。武田砂鉄と同じだと思うな。求められた大泉洋を全うしたまでだよ。

オノウエ:そういう人だよね。

カンノ:だからトイレで飯食ってるんじゃない?

オノウエ:そういうタイプじゃないよ、ネアカだよ(笑)

カンノ:だからやっぱり紅白で司会の仕事をするって相当タフじゃなきゃできないよなと思うよね。普通なら参っちゃうと思うよ。

オノウエ:大泉さんはそこは完全に守ってるって。SNSは一切やらないし、メールとかも事務所がOKしたものしか回さないらしいし。最後は芸能人が壊れちゃわないようにするための話になっちゃったね(笑)

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