SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
「最近、音楽を信じ込んでますか?」とカンノメンバー。RIP SLYME騒動の件から、内情はどうあれ人前に立った瞬間にパブリックイメージが発生することや、音楽は人を信じ込ませる芸能であることについて、宮本浩次やTHE NOVEMBERSをとおして語りました。
カンノ:お二人は最近、音楽を信じ込んでますか?
オノウエ:アハハハハッ!
YOU:歌の力を?(笑)
オノウエ:なんだよ、その究極の質問は(笑)
カンノ:でも最初に音楽を好きになるとかミュージシャンを好きになるとかって、「このミュージシャンはこういう人なんだ」って勝手に思い込んでいた節ってあると思うの。「こういうことを歌うんだから、こういう人に決まってる」って勝手に思ってなかった?
YOU:それはわかるね。たとえば下北系ギターロックバンドの人たちはみんな、ふしだらな生活をしていて、ろくに定職もつかずに酒飲んで煙草吸ってみたいな感じかと思っていた時期もありましたが(笑)、そういう人たちは普通に人一倍練習してるし、下手したら普通の人よりも生活力が高かったりするということに気付くのは30代になってからだね。
カンノ:その人たちにも演出がちゃんとあるということがわかるのって30代とかになってからかもね。本人たちにもキャラクター性とかどういう振る舞いをしたら得なのかみたいな算段があるってことにこっちが気付くのは大人になってからだよね。なんか、その成れの果てがRIP SLYMEなのかなって思うんです(笑)
YOU:リップの話か~(笑)
カンノ:リップって「仲がいい芸能」をやってたじゃん。
YOU:RIP SLYMEって結局どうなったんだっけ?
カンノ:PESがリップを4年前に抜けていたっていう。
YOU:うわ、過去形なんだ…
オノウエ:怖い話ですよ(笑)
YOU:一瞬、再結成の話もあったよね?
オノウエ:あれもリップ側が勝手に言ってただけで、PESは全然ノッてなくて、なんなら自分は辞めてるのになんで勝手に言ってるんだろうと思っていたらしいよ。
カンノ:SUが原因かと思ったら全く違う角度から来たっていう(笑)
オノウエ:PESが辞めて、それとは別にSUが問題を起こしたっていう(笑)
カンノ:二重三重に問題があったという。
オノウエ:ただ女癖が悪かった(笑)
カンノ:でね、RIP SLYMEは「仲がいい」という信じ込ませがあったと思うの。
YOU:そんなにリップのことは詳しくないけど、初期のリップが出てたロッキンオンジャパンとか読んでると、「ストリートのやんちゃなキッズたちがオーバーグラウンドに出てきた」みたいな特集のされ方をしていて、だから仲がいいイメージはあったよ。「仲いい芸能」をやってたよね。だって「ストリートでじゃれてたらこんな曲ができました」っていう感じで来たもんね。
カンノ:各々のキャラクターも立ってて、掛け合いのラップも多かったからね。っていうかRIP SLYMEってアイドル的な人気だったからね。SMAPみたいな見られ方だったと思うの。
オノウエ:アイドル的人気が強すぎて、わざわざ男性限定ライブとかやってたもんね。
YOU:福山雅治みたいなものか。
カンノ:そういう時期が2000年代前半とかにあったんだよ。でもああいう問題が起こるのって変な話、ただのコミュニティあるあるじゃん。なのに「信じてたのにガッカリです!」みたいな声がむちゃくちゃあったわけじゃん。あれは何なんだ?
YOU:そういうことって全然あるもんね。
カンノ:「いや、お前の身の回りでもあるだろ」ってことですよ。「あいつとあいつ、同じ組織にいるけど仲悪いよな」みたいなことってあるじゃん。
オノウエ:それでいうとさ、友達でありビジネスパートナーであるという状態って、普通の人からするとそこまで一般的な状態じゃないんだよ。
カンノ:なるほど、それはあるあるじゃないのか。
オノウエ:俺たちはべつに利害関係はないよ。だけどバンドを組んでたらバンドメンバーになっちゃうじゃん。そういう状態ってじつはそんなにないんじゃないかなって思ってる。
カンノ:そっか、そこはあまり理解されてないのか。
オノウエ:「本当はお前らは仲が良くて、遊びの延長で音楽をやってたんじゃないの?」ってリスナーは思うんだけど、やってる側は「いやいや、これで飯食ってるからさ」っていう。この乖離は増してく一方な気がするね。
カンノ:リスナー側からしたら、グループの関係性が友達なのかビジネスなのかと問われたら、友達だと思いたいもんね。
オノウエ:お笑い芸人なんてよりそうじゃん。
カンノ:オードリーはもともと同級生コンビであるけど楽屋では全然喋んないとかね。反面さまぁ~ずとかおぎやはぎとかくりぃむしちゅーはすげえ喋るみたいな。
オノウエ:「仲がいい2人の話が最高です~♡」みたいな(笑)
カンノ:あれは危なっかしいよな(笑)
YOU:世の中、関係性に萌える人って多いよね。
カンノ:リップってその餌食になった気がして、そういう意味であのニュースは切なくなったかな。
YOU:関係性で消費尽くされた感ね。リップってやおいの同人誌ってないの?
オノウエ:下手したらありそうだよね。
YOU:僕はポルノグラフィティのことを思い浮かべてて、ポルノってハルイチとアキヒトのやおい小説がめちゃくちゃあるんですよ。
カンノ:なるほどね、それ面白いね。
YOU:中学生のときにビックリして。「こんな世界があるのか!」って。つまりキャラ化してるわけじゃん、人間であるはずなんだけど。
オノウエ:RYO-Zが意外と攻めじゃなくて受け側で小説が書かれたり(笑)
YOU:あるよ、ある。やおい文学ってジャニーズなんかも多くてね。「この人とこの人の関係萌え」みたいな。
カンノ:話を戻すと、音楽って信じ込ませる芸能だと僕は思っていて、たとえばエレカシ宮本さんの最近の振る舞いって、今までこっちが信じていた宮本さんの振る舞いと180度違うものになってたりするじゃん。なんかこれまで信じてた宮本さんの呪縛が解けた感じがするよね(笑)
YOU:「客席に説教してたんだよ」とか誰も信じないよね(笑)歌のうまいおじさんだもんね。
カンノ:歌うまい道化師みたいになっちゃったよね。
YOU:ちょっとここでTHE NOVEMBERSの話をしていいですか?
カンノ:ください、ください。
YOU:THE NOVEMBERSって最初は下北系ギターロックバンドの延長だったんですよ。
YOU:で、これははっきりと覚えてるんだけど、デビューしたてのときのライブは客がガラガラで、Tシャツとスキニーパンツみたいな格好で髪がボサボサで、「今起きたんですよね…」みたいな暗いMCで。それでギャーンと暴れたりとか。あと1曲やる前に「この曲、あまり好きじゃないんですよね…」とか言いながら曲やったりしてたの。それで独立して自分たちでレーベルをやったりするんだけど、そのときには化粧したり眉毛剃ったりして、ヴィジュアル系がもともと好きだっていう話もしてたから、振る舞いも含めた彼らのパフォーマンスになっていったの。それで今度は「今日も生きたね」っていうバラードの曲があるんだけど。
YOU:この曲でメッセージ性が強くなったの。「今日も生きたね」っていうヘルシーなメッセージをストレートに伝えるようになって。多分子供ができたことも関係していると思うんだけど。そういう変遷ってあるよね。デビュー当時は「どう見られているのか」という観点がなかったのが、だんだんとそれも織り込んでバンドも成長するし、リスナーも「頑張ろう」と思えるようになるというか。
カンノ:反面、30代後半にもなって「今起きたばっかで…」とか言ってたらヤバいもんね(笑)年相応になっていく現象だよね。
オノウエ:あと「どう見られているのか」という視点が入ってくるのがどんどん早くなってるかもね。「今起きたばっかで…」って言ってる20代前半のバンドマンって多いかと思いきや、じつはもう今はあんまりいなそうだよね。
カンノ:いないだろうね、1曲終わるたびに「ありがとうございます」って言ってるよ(笑)
上野:あと、ちゃんと朝起きるし(笑)もうセルフプロデュースがデフォルトで入ってるよね。