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サムオブ井戸端話 #031「令和4年に54-71の話をしよう」(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

オノウエメンバーを中心に54-71が大好きなサムオブメンバー。後編では54-71を通してのバンドのあり方や音楽をやる人の才能について、最後に54-71の歌詞に関してちょっといい話をしました。(前編)は下記リンクから。

 

オノウエ:あと54-71でやっている技術って54-71でしか通用しないっていうか。だからミュージシャンとして生きていくことと相反してきちゃうよね。

カンノ:なにかに特化するよりは、手広くやれる人のほうが求められるのかもね。54-71ってある意味、54-71という専門職なのかもしれないね。

オノウエ:鉄をすごく薄く研磨する技術みたいな(笑)

カンノ:鉄をすごく薄く研磨する技術ってあいみょんとかには必要ないじゃん(笑)

オノウエ:それを考えると技術のあり方って難しいし、続けていくことと技術を磨くことが必ずしもリンクしないとかってあるよなと思うね。

カンノ:あと年を取ると考え方とかも変化するじゃん。たとえばバンドみたいな組織で考え方も一致していて4人組でスタートとかするんだと思うけど、そんなのそれぞれで考え方とか変わっちゃうじゃん。たとえば続いてるバンドで、4人組から1人抜けて3人組になってるバンドとか多いじゃん。もちろん体力的なこととか病気みたいなパターンで抜けることもあるんだけど、なんか1人だけ抜けるって、木を全体から見たときに変な方向に伸びちゃった枝を切ってるようなイメージなのね。「なんか1本だけあっちの方向に伸びちゃって美しくないな」みたいな。だからプチンと切るみたいな。

YOU:バンドってどうしてもキャラクター消費されちゃうじゃん。「ジョンレノンはこういう人で~」みたいな。でもバンドも人間だから老いるし成長するし考え方も変わるじゃん。それって当たり前だけど、それが許されない感じは残酷だよね。

オノウエ:調べていくと面白いというか、変なアカウントを見つけて。54-71のインタビュー記事とかをスクショしてひたすらにアップし続けているアカウントがあるんだよ(笑)

YOU:はぁ?(笑)

カンノ:狂ったアカウントだ(笑)

オノウエ:今どきだよ。今だよ?やっぱりヤバい人っているんだよ(笑)全ツイート読んだけどね。最高すぎて。

カンノ:でもそれだけ求心力のあったバンドだったのは間違いないよね。

オノウエ:求心力はあったよね。それでインタビューをいろいろ調べてみると、当時のミュージシャンたちも「54-71は唯一無二で世界に誇れるバンドだ」ってみんな言ってるのに、本人たちはどんだけ練習しても自信がなくて、「自分たちは天才側じゃなくて凡人側だ」とずっと言ってて、その結果あそこまで積み上げたものを全部ゼロにしてやめていくっていうのがすごいなと思ってさ。

YOU:でもなにかを研ぎ澄ましていくみたいなアティチュードは活きてるよね。VICE Japanも手探りでやったとか。

カンノ:なんか音楽をやり続けることを考えるうえで、先天的と後天的ってあると思ってて。たとえば超絶に歌がうまかったり、音楽を感覚的に乗りこなせる人みたいな先天的な人もいれば、そうはなれないからこそ音楽的な勉強とか練習とかを自分が納得するくらいまでやって音楽を発表する後天的な人もいるわけだよ。僕なんかは自分が音楽をやる理由をちゃんと言葉にして噛み砕いて自分で納得した状態じゃないとできない側の人間なんだけど。でも54-71って発想は後天的だと思うんだけど、納得のハードルがあまりに高すぎて、また別の先天的な天才になってるよね。

オノウエ:自分に課したハードルがあまりに高すぎて、もうそのフォーマットも飽きちゃったんだよね。恐ろしく品質狂なんだと思う。でもあそこまでやっても後天的だから残酷だなって思うよね。

カンノ:後天的な人はどこかで納得しなくちゃいけないんだよね。そのハードルが高すぎて、納得がほぼ存在しない人はそりゃ辛いよね。

YOU:ちなみにどのアルバムが一番好き?

オノウエ:僕は2枚目の『untitled』が一番好きですね。

YOU:僕は『enClorox』なんですよ。

オノウエ:おっ、メジャーファーストですね。

カンノ:僕はあんまり54-71は通ってきてないんですけど、54-71が作業用BGMに向いてるというのは面白いなと思いました。

オノウエ:仕事に集中できますよ。

YOU:たしかに54-71ってどういうときに聴いたらいいかイマイチわからないよね(笑)でも言われてみれば、勉強中とかに聴いてた印象あるわ。高2、高3のとき一番聴いてたもんね。

カンノ:今振り返ると、今言われているようなシティポップ的なものは勉強BGMとかで聴いてたと思うの。多分、聴いててそれが風景になりやすいんだよね。意味性が薄いんだと思う。海を見てる気分だったと思う。

オノウエ:多分俺の場合は風景もいらないんだよね。54-71を聴いてるとなにも考えないでいい状態に入れるんだよ。仕事してると、会議の時間とどうすればいいかを考える時間と決まったことをやっている時間とに分かれるじゃん。そう仮定したときに、決まったことをやっていればいい時間はなにも考えずに粛々と仕事したいの。そのために54-71を聴いてると、なにも考えないで済む。

YOU:この前さ、「54-71の歌詞がいい」って言ってたじゃん。あれはなに?

オノウエ:「What Color」って曲があって、それもインタビューをさらってたら、普通に良い話してたんだよ。

カンノ:でもそれってオノウエが54-71が好きである理由と反対じゃん。

オノウエ:それはこの曲の歌詞の意味をそのときに初めて知ったから。54-71の歌詞の意味なんて基本的に考えたことないよ(笑)

YOU:歌詞に辿り着くまでに情報が多すぎるから(笑)

カンノ:ヌメヌメしてるし(笑)

オノウエ:この曲のサビ以外の歌詞は別の詩人の詩を使っていて、サビだけリーダーが作ったらしいんだけど。その理由がリーダーのいとこが結婚して、「なんで結婚を決めたの?」って聞いたら「私と相手の魂の色が同じだから」って言ってて。

YOU:なにその話、かっこよすぎるな。

カンノ:リリシストだね。

オノウエ:「54-71に関してこんなに良い話があるんだ」と思ってね。

YOU:そっち側の話も誰かもっと伝えろよ!(笑)その話が掘り起こせただけで成果だよ。

カンノ:オノウエが54-71をディグした成果(笑)

オノウエ:そういう良い話があった。

カンノ:いいね、令和4年に54-71の話をたくさんしました(笑)

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