SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
女性ミュージシャンへの自意識について語り合うサムオブメンバー。後編では色んな音楽を聴き続けたカンノメンバーの変化やアイドルの見方、菊地成孔がaikoに抱く気持ちを通して、異性が表現することに対しての思いについて語りました。前編は下記リンクから。
オノウエ:たとえばカンノはこの前さ、オレンジスパイニクラブに対する萌えの話をしてたじゃん。
オノウエ:あのバンドサウンドって大学の軽音楽サークルの後輩にいそうな感じがするじゃん。あれに対する「萌え」の感情と、女性ミュージシャンに対する「照れ」の感情って近いんじゃない?
カンノ:今音楽を聴き続けて、ちょっと新しいフェーズに入ってるんだよ。多分、オレンジスパイニクラブを聴いてて「エモくてノスタルジーだな~」と萌える感覚って1年前じゃありえないんだよ。今になってそんな感情が出てきてるんだよ。あと「女性ミュージシャンのアルバム、今年良いの多いなぁ~」とかさ。なんか初めての感覚が増えたと思った。というか、今まで蓋をしていた感覚のものがパカッと開き始めたのかも。
オノウエ:女性ミュージシャンに対する思いは、今までちゃんと聴いてきたうえで思っていたのか、これまであえて聴かなかったけどちゃんと聴いてみたら良かったのか、どっちなの?
カンノ:近年、音楽をまた聴くようにしてるんだよ。そうすると「自分はこういう音楽が好きなんだ」という傾向がちゃんと掴めるようになってきて(笑)自分の音楽門戸みたいなものを改めて開き始めたタイミングと「当然だけど性別関係なく良い曲ってあるよな」っていうことと「とは言っても女性ミュージシャンを聴くのってまだまだ照れるな」って感覚を思い出すことがごっちゃになってるんだよね。
オノウエ:その感覚は面白いね。
カンノ:あと性別関係なく楽曲があるっていうのも実は最近の話じゃん。2000年代とかも女性はこういう曲を歌って、男性はこういう曲を歌う、みたいなものもまだまだ全然あったし。で、そういう固定観念がとりあえず薄まってきたのが全然最近というか。
YOU:もっと昔でいったら歌謡曲なんかはジェンダーの押しつけがすごいもんね。
カンノ:そういう押しつけとかがひとまずは段々なくなってきたのが最近で、性別関係なく「良い曲だな~」と思うことが増えてきたけど、まだまだ女性ミュージシャンを聴くことに対する照れはなくなっていないという。しかも女性ミュージシャンの新譜が良いと思うことが今年は多いから、その分照れる回数が増えてる(笑)
オノウエ:照れがなくなっていくわけじゃないんだ。
カンノ:それはこれから慣れが必要だね(笑)
YOU:ちょっと話が変わるんだけど、最近元スマイレージの和田彩花さんってフェミニズム系のイベントに出演したりしているんですよ。で、スマイレージって日本一スカートの短いアイドルっていう売り出し方だったんですよ。それで全員髪型をショートカットを強要させられていて。そういうことを和田彩花さんは糾弾してるの。糾弾というか、「当時は疑問に感じなかったけど、あれってどうなの?」みたいな。
YOU:それは正しいし、それが嫌な人は当然嫌だし。たとえば露骨に性的な冗談を言う人なんていないほうがいいと当然思うんだけど、そういうことが全部否定されるとアイドルってどうすればいいかわからないよね。これは雑な言い方だけど、異性が表現するものを愛でることや疑似恋愛的なものは否定できないんじゃないかなって思っちゃうんだよね。もちろん和田彩花さんの言うことは当事者意識として正しいし、そのときに感じた違和感をケアする大人たちがいなかったことを糾弾するのは全然いいと思うんだけど、もう構造的に排除するのは難しいんじゃないかなと同時に思うんだよね。だからカンノも変に気負わずに、堂々と「好きです」って言えばいいんじゃないかな?(笑)
カンノ:そういうことは自分で体感して気付くね。なにかを好きに思う自分の「気持ち悪い」って思いと「でも好きだからしょうがない」っていう思いのズレというか、正面衝突というか。その葛藤が好きな女性ミュージシャンを聴くときに照れてしまうということに繋がってしまう。
オノウエ:今のカンノの話ってやっぱりしょうがないよね。だって男なんだもん。
カンノ:それでしかない話だよね。
オノウエ:で、アイドル運営の話でいうと、でんぱ組.incからはそういう話は一切出てこないんだよ。あれはプロデューサーがもふくちゃんだからだよね。
カンノ:プロデューサーが女性だから。
オノウエ:そうそう。体感的にわかる配慮が女性がいるとできるんだよね。だから売りものとして女性アイドルを提示するときに、運営側に女性がいるかどうかで全然違ってくるよね。とはいってもカンノの話はしょうがないよね。男だから(笑)
カンノ:だからこれから慣れていくよ。
オノウエ:中学生や高校生の話だよ(笑)「女性と喋れるようになりました」みたいな(笑)
YOU:また違う観点の話だけど、菊地成孔がaikoと共演NGの話ってあるよね。
オノウエ:『粋な夜電波』で「基本はオファーは全部断らないけど、aikoとの共演は絶対に断る、なぜなら一緒にやったら絶対に好きなるから」って喋ってたんだけど。
YOU:それを普通の声のトーンで喋ってたのが怖かったね(笑)カンノはそういうことと違うの?
オノウエ:いや、一緒でしょ?たとえば蒼山幸子さんと一緒に曲を作りましょうってなったらどうする?
カンノ:そんなのNGですよ。
オノウエ:アハハハハッ!
カンノ:理由は、曲どころじゃないから(笑)
オノウエ:やれよ(笑)ビッグチャンスだろ(笑)
YOU:面白いな(笑)まあでも「顔が好きです」って大っぴらに言うのはマズいけど、とはいえ秘めたる思いってみんなあるからさ。そういうことをはっきりと言えないから文学とかに昇華させるわけじゃん。でも今はあらかじめそういう思いを禁止させる圧力は強すぎるよね。跳ね返りが大きくなっちゃうと思うよ。
オノウエ:それはたしかに思うな。
YOU:だからそういう思いをあらかじめ排除しようとすることが間違ってる。抗うしかないよ。
カンノ:サバイブするしかないか~(笑)まぁ、でもいろんな音楽を好きになる裾野は間違いなく広がってる気はしますね。
オノウエ:それはとてもいいね。
カンノ:だってねごとは正直あんまり聴いてなかったのに、ソロ作になって急に好きになるってあんまりないでしょ。
YOU:でも蒼山さんのアルバム、俺も聴いたけどすごい良かったよね。
カンノ:あっ、聴いた?良いよね!
YOU:「バースデイ」すごい好きだったな。
カンノ:なんかスネオヘアーを思い出すメロディーラインなんだよね。
YOU:ああ、わかるわかる。
カンノ:やっぱり僕はバンドサウンドが好きですね。
YOU:ラップやってるのにお前はやっぱ捻じれてるな(笑)