SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
FMラジオ番組を模したアルバムを作ったカンノメンバー。FMラジオ番組の体のものを音楽媒体で聴く気持ち悪さや、昼のFMラジオ番組が紹介するカルチャーの抽象度の高さについて語りました。
カンノ:アルバム作ったんだけど、なにか質問ある?
オノウエ:「質問ある?」って聞かれると、とくにないです(笑)
カンノ:この記事が公開されるころには、私カンノアキオのソロラッププロジェクトである4×4=16(シシジュウロク)のアルバム『RADIO』が配信されていると思います。
カンノ:お二人には前もって聴いてもらいました。どうでしたか?
YOU:このアルバムは架空のFMラジオ番組のパッケージをそのままアルバムにした、コンセプトアルバムじゃないですか。で、ガチで印象に残らないラジオ番組をド真面目にパッケージ化したものじゃん。それってアルバム史上初めてなのかもしれないと思った。
カンノ:「ラジオ」という切り口はいろいろあると思うんだよ。
YOU:そうだよね。YMOとかもやってるし。あと曲と曲の間のインタールード的になにか入っていたり。僕の大好きなミドリカワ書房もやってますよ。
カンノ:あれもスネークマンショーのパロディだよね。
YOU:あれって意味のある会話だし、コントだし。
カンノ:笑わせようとする意図はあるよね。
YOU:そうそう。それに対してこの『RADIO』はマジで喫茶店で流れてて、誰のストレスにもならないけど誰の記憶にも残らないラジオをやっているのが本当にすごいよね(笑)それをガチでパッケージングしててマジで頭がおかしいなって思った。「何を聴かせてるんだ」というのが全体の感想なんだけど(笑)でもその間で挟まれるラップ曲が普通にオールドスクールな結構良い感じのものっていう。ちゃんと普通にかっこいい(笑)今っぽくないけど、90年代の固い感じで楽しくやってるのがよかった。
カンノ:単純に僕が今っぽいラップをやるとすごく背伸びした感じになっちゃうんだよね。
YOU:でも落語のラップでトラップのトラックでやってたじゃん。
カンノ:あれもパロディだから。「パロディになっちゃうな~」という思いがあるから、今はそんなに興味がないんだけどね。
YOU:あとやっぱり過払金のCMは面白いよね(笑)
カンノ:やっぱラジオといったら過払金のCMでしょ!
YOU:たしかに2000年代から2010年代のラジオって過払金のCMは本当に多かったもんね。
カンノ:そして今も全然多いのよ。
YOU:あっ、そうなんだ。で、過払金のCMはオノウエの声じゃん。それによって本当にただのラジオ番組になってるよね。変にカンノがやってなくて。なにかテーマがあるラジオ番組じゃなくて、マジでただのラジオ番組になってるのが本当にヤバい。
オノウエ:このラジオ企画って俺がまだ4×4=16のメンバーだったころからあった企画じゃん。アイデアだけあったけど結局やり切れずに俺は脱退しちゃったんだけど。でも今回カンノがそれをやり切ったというのは個人的に「すげえな」と思ったんだけど。マジで存在しない番組を丸々このパッケージでやってさ、しかもこの喋ってるパーソナリティーの人もパーソナリティー役をやってるだけでパーソナリティーじゃないし、出てくるイベントやお店や本や映画も存在しないし(笑)だんだん聴いてるとパラレルワールドに入ってくる感じがあって、このアルバム怖いよね(笑)
YOU:うん、怖い怖い(笑)このアルバムはただのラジオ番組として特化してるから、ノーボケでノーツッコミなんだよね。それがヤバい。
カンノ:そういう作りが一番ボケてるなと思ったんだよね。
YOU:この『RADIO』というアルバムにはラップ楽曲として「Travel」「Music」「Movie」「Food」「Book」「Event」って曲が入ってるけど、その前にたとえば映画に関するつまらないまとめみたいな話をしたあとに「Movie」が来たり、本をオススメする紹介パートがあったあとに「Book」って曲が来たりするじゃん。
カンノ:本のコーナーのあとに「Book」が来て、食べ物のコーナーのあとに「Food」が来たりする構造ですね。
YOU:あれって各エンターテインメントのジャンルの抽象度の高いまとめなんだよね。「旅行ってこう楽しむよね」「音楽ってこう楽しむよね」「映画ってこう楽しむよね」みたいな。この「こう楽しむよね」っていうのをちゃんと共有できた作りになってるのがヤバいよね。つまりラジオとかメディアが提供するものって、個別のエンタメにちゃんと立ち入ってるようで実はそのジャンルの抽象度を高めるというか、楽しみ方を決定づけるものになってるというか。
オノウエ:たとえば深夜のAMラジオだったら、『星野源のオールナイトニッポン』とかだったらちょっと突っ込んだマイケル・ジャクソンの話とか特集でありえると思うの。
カンノ:『アフター6ジャンクション』だったらもっと突っ込んだ特集をするよね。
YOU:そうそう。
オノウエ:でもこれは設定として昼間のFMラジオじゃん。だから誰もが受動的に聞き流している媒体じゃん。つまり最大公約数を取る説明をしてるから、結果なにも言っていない説明になっているという(笑)それをアルバムのなかでやってるじゃん。たとえばこれがCDになったら金を払って聴くわけでしょ。それってヤバいよね(笑)
カンノ:オッケー、次の目標はこれをCDにしよう(笑)
オノウエ:だから次、『RADIO2』という全く同じフォーマットで新しいアルバムを作ったらいよいよだよ(笑)
YOU:それは怖いね(笑)
カンノ:パーソナリティーを変えてね。ああいう軽薄なノリで次はリクエスト番組を作るとかね。今回のは情報番組だから。
オノウエ:FMのお昼の番組って聞き返すものじゃないからね。