SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
FMラジオ番組を模したアルバムを作ったカンノメンバー。 中編では何故このようなアルバムを作ったのかという話から、昼のFMラジオが求められる”つまらなさ”を文学YouTuberなどに絡めながら語りました。 前編、4×4=16アルバム『RADIO』は下記リンクから。
オノウエ:っていうかなんでこんなアルバムを作ろうと思ったの? (笑)
カンノ:最初はもともと曲の合間にコントっぽいことがしたかったからだよ。 何年か前に作ろうとしたもともとのラジオアルバムは台本がボケてたの。
オノウエ:ボケてたね。
カンノ:それが頓挫して何年か経って、こういう機会をもらったのでラジオアルバムをもう一度作ろうとなったときに、今一番ボケたものを作ろうとしたときに「ボケてないラジオだな」と思ったんだよね。 ガチのラジオ。
オノウエ:その結果、めちゃくちゃ怖いものができたんだけど(笑)
カンノ:1曲1曲の印象というよりは、全体を通しての印象の強さを持ったアルバムは作りたかったかな。
オノウエ:それがFMラジオっていうのもね。
カンノ:ここまでFMラジオをフィーチャーしたものはない気がするね。 所謂ラジオ好きって「AMラジオ好き」とかでしょ。 『オールナイトニッポン』とかTBSラジオとか。 そこはやりたくなかった。
オノウエ:能動的に聞くものだもんね。 参考にした番組は何?
カンノ:LOVEちゃんですよ。
オノウエ:もうちょっと説明してください(笑)
カンノ:TOKYO FMのリクエスト番組で『ALL-TIME BEST』って番組があるんですよ。この番組は平日の昼の帯で、番組内容自体を参考にしたというよりは雰囲気だね。 パーソナリティーのLOVEちゃんって人がいるんですけど、僕は毎日のように聞いていて。
オノウエ:なんで毎日のように聞いてるの? (笑)
カンノ:やっぱりLOVEちゃんから元気もらってるからさ(笑)でも本当に最大公約数のことを言うメカニックさがあるんだよ。 それが本当に好きで。 昔から好きなんだよ。
オノウエ:LOVEちゃんの話、本当にずっと前からカンノはしてるもんね(笑)
YOU:最大公約数のことを言っているのが好きなんだ。
カンノ:うん、なんかクセになっちゃった。 何も言っていないことを聞きたいっていうか。 でもこれが求められるのってすごいわかるの。 この帯をもう10年くらい担当してるんじゃないかな? なんかさ、昼のラジオってそのパーソナリティーの人がずっといるということが一番重要なんだよ。 たとえばTBSラジオの伊集院さんとかジェーン・スーさんとかって昼のラジオという観点からすると面白すぎるんだよ。 ニッポン放送だと『ナイツ ザ・ラジオショー』でお笑いを打ち出すことをやってるけど、お笑いを中心とした面白の濃縮が高まりすぎてる気がしてて。 ラーメン屋のラーメンが全部旨すぎることに近い気がする。 僕は昼のラジオはもうちょっとつまらないものが聞きたいんだよ(笑)
オノウエ:アハハハハッ!
YOU:意味のあるものはそんなに聞きたくないってことだよね。
カンノ:全てのラジオが深夜ラジオみたくなってるんだよね。 それが「面白い」という価値統一が起きちゃってるの、リスナーにとって。
YOU:それはたしかに。 ちょっと怖いこと言ってるね。
カンノ:これはradikoのタイムフリー機能の影響はものすごくあると思うけど。 『アトロク』もそうだし。 TBSラジオって全部が深夜ラジオの匂いがするじゃん。 やっぱり昼の匂いのする人っていいなと思うんだよね。
YOU:ラジオに関してそんなこと言ってるの、マジでお前だけだよ(笑)
カンノ:やっぱり昼のラジオを担当している人のメカ感はもっと注目されるべきですよ! マジでなにを食ったらそういうことを毎日のようにできるんだろう?
オノウエ・YOU:(笑)
カンノ:人前に立つからには面白いことを喋ろうとするって結構当たり前の原理だと思うの。 その当たり前を感じないの。 それってすごいよ。
オノウエ:FMラジオのパーソナリティーって毎日なにを反省してるんだろう? 深夜ラジオだったら「面白いことが喋れなかった」とか「エピソードトークが薄かった」とかあるじゃん。 でもFMラジオのパーソナリティーってなにがうまくいって、なにがうまくいかないのかっていう判断基準が全然わからないよね。
カンノ:なにを高めているのかとかね。 このFMラジオの世界が今一番興味がありますよ。 そういうことが面白いなとずっと思ってたんだよね。 それが作品として結実したのが『RADIO』というアルバムですね。 これはラジオ版の『王様のブランチ』です。
YOU:たしかに『王様のブランチ』だね。
オノウエ:存在しないロックフェスとか熱いよね。
カンノ:そのロックフェスから具体的なエピソードがなにも出てこないっていうね(笑)飯食って酒飲んで演奏見て「ウェーイ」って言って帰るっていう(笑)
YOU:ちゃんと内容と構造で遊び切ってるのがいいよね。 FMラジオというお題で。
カンノ:台本も基本は一筆書きでしたね。
YOU:すげえな。 っていうか頭おかしいだろ(笑)
カンノ:ほぼ直してません。
YOU:マジで怖いよ。
オノウエ:まず「台本」っていう概念は何なんだよ(笑)あれって一言一句書いてるんでしょ?
カンノ:うん。
オノウエ:アハハハハッ!
YOU:いや~、めっちゃ怖いな。
オノウエ:演技指導もしてるんでしょ?
カンノ:しました。
YOU:あのパーソナリティーの人の喋りのタイミングとか間がうますぎるよね。
カンノ:あの人はうまかったね。 喋ってほしいニュアンスとかも全部ちゃんと汲み取ってくれた。
YOU:オススメ本を紹介するときに「一見ハートウォーミングなタイトルですが、バッキバキのサスペンスです」の言い方とか「すげえ言いそう~」って思った(笑)
カンノ:FMパーソナリティーの人がちょっとボケたときのニュアンスで言う言葉だよね。
YOU:あと、あの手の本を紹介するときは絶対ミステリーだよね(笑)
カンノ:この辺りでありがたかったのは、文学YouTuberとか映画YouTuberでさ。 「どういうものが取り上げやすいのか?」をそこで調べたね。
YOU:あの人たちもまさか自分が批評の対象になってるとは思わないよね。
カンノ:でも文学YouTuberとか映画YouTuberの持つノリはやりたかったんだよね。
YOU:そういうことだよね(笑)FMパーソナリティーもYouTuberも自分の好きなものを拡散して、それで稼いでいけたらいいなと思ってるわけじゃん。 すごくポジティブじゃん。 その邪魔すんなよ(笑)
カンノ:なんでもいいんだけど、表に立つような人なんて基本は変な人だと思うんだよ。 どこかまともじゃないところがあるというか。 文学YouTuberとか映画YouTuberとかから醸し出されるどこかヤバそうな感じとかあるじゃん。それをどうやったら出せるかなってことだねラジオパーソナリティーも含め。