SOMEOFTHEM

野良メディア / ブログ / 音楽を中心に

サムオブ井戸端話 #041「令和4年にSTAnの話をしよう」(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

STAnというバンドの大ファンだったYOU-SUCKメンバー。2000年代にいろんなバンドがメジャーデビューしては消えていったなかで、冗談めかしながらたまに突き刺すことを歌うのが妙に印象に残っていたSTAnについて令和4年に熱く語りました。

 

YOU:STAnというバンドがいたんです。

カンノ:この記事のタイトルは「令和4年にSTAnの話をしよう」でいいですね?(笑)

カンノ:僕はじつは全然STAnは通ってません。

YOU:たしかにカンノとは全然STAnの話をしてこなかったね。STAnはメジャーデビューしてたし、タワレコ限定のシングルも出してて、知ってる人は普通に知ってるんだよね。

カンノ:NHKの『ポップジャム』にも出てたよね。

YOU:そうだね。2000年代はロックバンドがいっぱいメジャーデビューしていて、そのなかの1つって感じではあるんだけど。でも個人的には妙に印象に残るバンドで、「STAnっていいよね」って話はたまにするし、今でも全然聴き返します。あと僕は1回『SOMEOFTHEM』でも記事を書きましたね。

オノウエ:僕もSTAnは好きなんですけど、今のロックバンドってお行儀良いじゃん。でもSTAnってスタンスとしてナメてたんだよね。あれは最初のフックとしてすごく面白かった。

カンノ:「やる気ないです」みたいなこと?

オノウエ:いや、めちゃくちゃビッグマウスだったの。

YOU:「ダルい男」って曲があって、ずっと「ダリィ~」って歌ってる曲なんだけど(笑)

YOU:でもやたらとギターのリフがかっこいいの。STAnの特徴って音だけでいうと、ギターのリフが独特で。ボーカル・ギターのkygのリフが神がかってて、唯一無二なんだよ。それをシンプルなベースとドラムでやり切るスタイルで。で、一番の特徴が歌詞で、すごい粗雑なんだけど良い。「ULTRAMAGNETICSTANS」って曲が「STAnマジヤバい~」って歌ってるんだけど(笑)

YOU:「俺らが一番だ」みたいなことをずっと気だるい調子で歌うんですよ。こんなスタンスのバンドっていなくてさ。サウンド面は超気合入ってるのに歌詞は気だるいの。妙なリアリズムと投げやりと「お前らに判断委ねるから」みたいな。それが心地良くてね。

カンノ:たしかにほかにそんなバンドいないかも。

YOU:「とにかく俺はメロディがいい」って歌詞で言っちゃえるのもいいし。STAnは基本、自己肯定ソングなんですよ。

オノウエ:圧倒的な無根拠の自信のすごさだよね。

YOU:あとSTAnの良さは大体のアルバムの1曲目で自分たちのスタンスを表明しているんです。「俺らってこんだけすげえんだ」っていうことを1曲目に持ってくる傾向がある。1stが「ULTRAMAGNETICSTANS」でしょ。2ndの1曲目が「STAN’S HOUSE」でしょ。

YOU:4枚目のアルバムが「S.T.An」っていう「俺たちに従え」っていう曲で(笑)

YOU:6枚目のラストアルバムがインディーズからでサブスクにないんだけど、その1曲目が「After all」って曲で。

YOU:この曲の歌詞が本当に最高で、Cメロかどこかで出る歌詞で「結局STAnとストーンズだけが全てに絶妙な距離保ってる」って歌っててさ(笑)こんなこと歌えるのはマジですごいし合ってる。ドライでもウェットでもないし、突き放すでも共依存でもない。ある意味ですごく誠実なバンドだと思う。そういうところが今聴いても色褪せないね。そんなスタンスのバンドはSTAnとMO'SOME TONEBENDERくらいじゃないかな? 

YOU:全てと適切な距離を保って、冗談めかしてたまに刺すみたいな。 

カンノ:たしかに、寄り添う系か冷笑系しかいないかもな。

YOU:そうそう、近いやつか遠いやつしかいないの。残酷なことを言うやつか共依存ロックバンドしかいないじゃん(笑)その点、STAnは受け入れられなかったのもわかるんだけどね。kygがブログを書いてて、「これから占い師やります」という旨のことを書いてて。

YOU:そこで「音楽じゃ全然食えなかった」って書いてて。で、STAnを経てkygが自分のソロアルバムを作ったのね。その制作秘話ブログみたいなので、「歌詞は納得いくまですごく時間がかかる」って言ってるの。これはちょっとビックリした。なぜなら適当に見えるから。適当に見えるんだけどすごく良いことを言ってて。これが練られたものだとしたらヤバいなと思って。

カンノ:意図してたんだね。

YOU:しかも今、占い師として食ってるわけでしょ。占い師ってさ「あなたってこうですよ」ということで納得させてお金をもらうわけじゃん。よっぽど言葉に誠実な人だったんだなと改めて思ったね。

オノウエ:ボーカル・ギターのkygって変に声が低くて太かったじゃん。で、やってる音楽的にもうちょっと軽やかな声が乗ってるほうが聴きやすくて気持ちよかった可能性はあるの。でも低くて太い声が乗ってるから気持ち悪くて、プラスkygのビッグマウス感とやろうとしてることの謎のスケールのデカさの塩梅が好きだったなと思ってね。

YOU:やっぱりSTAn的な人っていなくてさ。賢くふざけられる人が今は不在だね。ガチかふざけ1本かじゃん。

カンノ:あとロックバンドのお行儀の良さの話もしたけど、ロックスター然とした人がいないよね。

オノウエ:でもSTAnはロックスターともちょっと違うかな。トリックスターかな。今はトリックスターが不在かも。

YOU:「痛快」って言葉が一番似合うバンドだったね。

f:id:someofthem:20220511163606j:image