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サムオブ井戸端話 #042「令和4年にSTAnの話をしよう」(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

令和4年にSTAnの話をして盛り上がるサムオブメンバー。後編では歌詞の話から、ロックバンド然として振る舞うこととメタ的に振る舞うことの違いを様々なバンドを例に考えてみました。前編は下記リンクから。

 

オノウエ:俺とYOU-SUCKはSTAnが好きだったけど、カンノはどう思ってたの?

カンノ:STAnが出てきたのは2000年代後半でしょ?2人がSTAnにハマってるときは、僕は邦ロックバンドが苦手になってあんまり聴いてなかった時期だからさ。

YOU:「NUMBER GIRL影響下バンドの出現はもうコリゴリだ」って高校生のときから言ってたもんな(笑)

カンノ:変なませ方してたから(笑)「改めてKICK THE CAN CREWってちゃんと聴くとドープじゃね?」とか言ってるときですね(笑)あとこれは憶測なんだけど、STAnって「あのアルバムが1番いいよね」みたいな感じのバンドじゃないよね。満遍なく好きな感じがするんだけど。

YOU:STAnはじつはアルバムとして傑作は1枚もないですね。「このアルバムが良い」っていうのは1枚もない。すごく歪なの。

カンノ:良い曲と悪い曲がはっきり分かれてるってこと?

YOU:いや、そういうことでもない。1曲1曲としてはすごくいいの。でもアルバムとして聴くとそうでもないというか。

カンノ:1曲1曲のコンセプトがはっきりしちゃうとアルバムとしてまとめづらかったりするよね。

YOU:そうだね。だから個人的な最高傑作は『THE FIRE』かも。

YOU:これはEPなんだよ。

カンノ:EPのサイズ感がいいっていう話はわかる気がする。

YOU:テーマも一貫してて良い曲がきゅっとまとまってるのはこのEPかな。

カンノ:さっきから話してるけど、僕もアルバムを作ったわけですよ。

カンノ:架空のラジオ番組設定のアルバムを作ったんですけど。で、こういうアルバムの作り方しかもうわからないんだよね。曲が溜まってアルバムになるわけじゃん。どういう理屈でそれを良しとしてるのかがさっぱりわからないんだよね。だから「アルバムを通して聴くとあんまりだな~」ってすごくよくあるじゃん。4,5曲くらいがちょうどいいパターンも全然あるし。とくに今の時代なんかはミニアルバムで区切りにしてるミュージシャンもむちゃくちゃ多いし。

YOU:STAnってじつはアルバムでも9曲しか入っていないパターンが多くて。

カンノ:それは本人たちもそのくらいがちょうどいいのはわかってたのかな?

YOU:いや、多分作れなかったんじゃないかな。べつに本人に聞いたわけじゃないからわからないんだけど(笑)そのなかでも妙に心に残る曲がいくつもあるんだよね。あと1曲紹介したいんだけど「タイガーアイ」って曲があって。

YOU:その歌詞ですごくいいことを言ってて、「僕と君が正気を失わなければ 森羅万象は好転するようにできている」って言ってて、もう泣いちゃうよね(笑)だってこの歌詞が出てくるってことは、その裏には正気を失わせるなにかしらの状況があるってことなんだよ。

カンノ:今の時代なんてまさしくそうだもんね。

YOU:それを知ったうえで「森羅万象が好転する」って言われたら、もうそんな気しかしなくなるというか。

カンノ:自分たちのスタンスをメタ的に発するものもあれば、芯を喰ったものも歌えるんだね。

オノウエ:カンノってこういう歌詞に対してどう思ってるの?所謂ロックバンド然とした歌詞の良さ/悪さってあるわけじゃん。そういうものってカンノはどう思ってるの?

カンノ:僕は当時、ロックバンド然とした人たちの歌詞の距離感は基本的に近すぎて熱すぎて苦手でしたね。で、一番ちょうど良くてハマったのがアジカンの歌詞だったから。アジカンの歌詞の距離感ってあるじゃん。

YOU:あるね。直接言わない感じとかね。

カンノ:そうそう。ちょっと遠回りした言い方がちょうどいいっていうのがベースであったから。だから高校生当時は厳しかったかも。唯一例外的にハマったのはScoobie Doだったかな。

カンノ:こんなに直接語りかけるミュージシャンを好きになるとは思わなかった。あとそもそもボーカルの人がギターを持っていないバンドは全然認めてなかったから(笑)

オノウエ:それでいうとSTAnってビッグマウスというスタンスがあるじゃん。それに対して思うことってなにかある?

カンノ:そういうものを好きになるっていうのは高校生のころじゃ早すぎてできないね。だから今までチャンスを逃してたから聴いてみたくなってます。だって「こう振る舞う」というメタ視点が本人たちにあるわけじゃん。「自分たちがビッグマウスをすることでこういう見られ方になる」ということがわかったうえでビッグマウスをするわけでしょ?天然じゃないじゃん。

オノウエ:そうなんだよ。今になったらわかるよね。

カンノ:その距離感をわかったうえで聴くってことでしょ。その趣きを楽しむために。もちろん高校生当時はそんなハイコンテクストな楽しみ方、絶対無理ですよ(笑)今になってわかることだから。僕はそんな見方でしか音楽を楽しめなくなったわけだけど(笑)YOU-SUCKはちゃんと真正面から音楽を受け止めてるよね。

YOU:それはそうだね。

カンノ:ストレートとひねくれの塩梅ってあるじゃん。僕はひねくれが何周かしちゃってるんだと思うけど、YOU-SUCKはちゃんといい塩梅でストレートとひねくれを受け止めてる気がするな。

YOU:基本的にはストレートのいいことを言ってほしいと思ってるけど、あまりにストレートだとムカつくね(笑)

カンノ:YOU-SUCKがリスナーとして一番自分なりのロックのロマンを持ってると思うの。ロックロマン。

YOU:それはあるね。

カンノ:僕はそれが圧倒的に足りてない。「嘘くせえ」という目線が最初から大きい。たとえば僕はNUMBER GIRLをロックロマンで全然捉えてないんですよ。

YOU:NUMBER GIRLって自分たちでそんなことを全然歌ってないのに、周りの人たちによって完全に物語にしてるもんね。

カンノ:僕は向井秀徳を演技の人だと思ってるからさ。

オノウエ:演技の人って「こう思われる」ようにする余白を残す行為だよね。

カンノ:その意図がないわけないと思うんだよ。やっぱり自分の素の言葉として全然語らないところが大好きだったと思うんだよね。舞台に立ってなにかをする時点で「こう見られる」という意図を持って振る舞うことだと思うからさ。でもそこから醸し出されるいやらしさはないし自然だしちゃんと面白いし。全然ロックミュージシャンの振る舞いじゃないと思うんだよ。

オノウエ:ロックミュージシャンのド真ん中な振る舞いと向井秀徳の違いはとてもわかるね。

カンノ:そこから僕は結局クチロロが好きになる道筋になってると思うし。

カンノ:だって向井秀徳はコントやってたんだもん(笑)

オノウエ:「万力で押しつぶして~」って(笑)

カンノ:腹抱えて笑ってたもんね(笑)

カンノ:どうですか?最後にSTAnの話で言い残したことはありますか?

YOU:以前のブログで書いたSTAnの記事に書いてあることがすべてなので、それを読んでください!

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