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サムオブ井戸端話 #044「関ジャム平成最強ソングベスト30雑感」(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

『関ジャム』の「令和に活躍する若手アーティストが選ぶ最強平成ソングベスト30」について語るサムオブメンバー。後編ではアーティストのコメントについて引っ掛かったことや、何かが塗り替えられて以降のランキングである故、その塗り替えられる前の歴史を言葉にする必要性について考えました。前編は下記リンクから。

 

YOU:2位にキリンジの「エイリアンズ」が入ってることにいろいろ言われてるけど、4位のフジファブリック若者のすべて」もこのランキングに入ってるのはおかしいよね。発売当時はそんなに話題になってないじゃん。わりと地味な曲の扱いというか。

オノウエ:「若者のすべて」は確実に歴史の改ざんが行われてるとしか思えないよね。

カンノ:Bank Bandのカバーが大きいよね。

カンノ:それでいうと「エイリアンズ」再評価のきっかけって何なの?

オノウエ:それはのんのCMカバーなんじゃない?

カンノ:あと2位で「エイリアンズ」が選ばれたときに関ジャニの人が「この番組でめちゃめちゃ取り上げてたからアーティストの人も選ぶんやな~」みたいなことを言ってたのも気になったかな。

YOU:音楽の初心者向け番組であることは間違いないんだけど、「このマニアックなところも突きますよ」というスタンスが入ってきちゃうと難しいよね。それでちぐはぐになっちゃうというか。

カンノ:大衆に向けた「啓蒙」と大衆に向けてるゆえに「大味」であることの塩梅だよね。それが一番よかったのは『SMAP×SMAP』の最後の音楽コーナーだったと思うんだよね。

YOU:あれはちょうどよかったね。

カンノ:SMAPと一緒に電気グルーヴとかceroとかスチャダラパーが1,2曲歌うっていうのが一番ちょうどよかった。ああいう塩梅がなくなった感じはするね。

YOU:そういう伝え方の番組がなくなっちゃったよね。関ジャムは「もっと音楽の話をしようぜ!」的な番組だし。

カンノ:そんなに言葉はいらないよね。行間がなくなっちゃった。行間がないテレビの時代にマッチしてるのがヒャダインっていう感じがする。

YOU:ヒャダインは行間がない音楽を作ってるからね(笑)

カンノ:個人的にはいろんなアーティストが分析チックでランクインしている楽曲を語っているなか、アイナ・ジ・エンドだけ自分の実感というか、楽曲へのコメントが学校の作文みたいになってたのがよかったな(笑)

YOU:BUMP OF CHECKEN「天体観測」のコメントが「子どもの時よく分からなかった歌詞が、大人になってから聴くと意味が深く理解できていく気がして、そういうのも味わい深い」と言ってて、これは「天体観測」へのコメントじゃないよね?(笑)なんにでも言えちゃうじゃん。

カンノ:あと「天体観測」は結構わかりやすい(笑)

オノウエ:「天体観測」はそういう曲じゃないよね(笑)

カンノ:だからアイナ・ジ・エンドへは好感が持てたというか、アーティストのコメントじゃなくて一般リスナーみたいなコメントだったんだよね。本当の言葉ってこっち側だと思うんだよ。

オノウエ:自分の実感を喋っているのはアイナ・ジ・エンドだけで、ほかのアーティストは小賢しく分析めいたコメントをしていることにカンノは引っ掛かってるんだね。

カンノ:結局ここで選曲しなきゃいけないものってある程度は決まっていて、言うコメントもある程度決まっちゃってると思うんだよ。そのなかでこの仕事を全うしなくちゃいけない。そして自分のどこか斜に構えたアー写から吹き出しが出てそのコメントが出されるんだよ。「これぞ平成の伝説」みたいなコメントが(笑)

YOU:あれは見てて恥ずかしくなったな(笑)

カンノ:それができる人が今の時代のミュージシャンなんだなと思うのと同時に、芸能人の要素もかなり大きく持ってるなと思ったの。ミュージシャンの要素、芸能人の要素、コピーライター的な広告屋の要素も全部持ってるなと思った。

YOU:そういうミュージシャンが多いのは事実だと思うけど、これは演出側の問題も大きくある気がするな。

カンノ:その演出にノレるかノレないかだと思うんだよね。で、今回テレビに出た人たちはその演出にノレた人たちってことなんだと思う。

YOU:コメントだけならまだしも、自分のアー写から吹き出しが出てコメントが表示されることに関して、多分あのなかの何人かは「恥ずかしいからやめてくれ…」と思っている人はいると思うの。

カンノ:そういうことを考えるとアイナ・ジ・エンドが一番潔かったと思いますね。

YOU:ただこの手の企画においてアイナ・ジ・エンドのコメントは本当は全然ダメだと思うよ(笑)

カンノ:やっぱりテレビに出るからにはテレビ的な取り繕いはしなくちゃいけないんだな…(笑)

オノウエ:ほかに思うことはある?

YOU:ラップ曲が全然ランクインしなかったことに関してカンノはどう思うの?

カンノ:個人的な平成最強1位はKICK THE CAN CREW「マルシェ」ですからね。

カンノ:あとラップ曲の1位がORANGE RANGEの「ロコローション」でしょ?そんなランキング、信じねえよ!!

オノウエ・YOU:アハハハハッ!

YOU:っていうかそもそもORANGE RANGEってみんな嫌いじゃなかったの?とくに軽音楽部にいたような人たちは。

カンノ:でもコメントでは「教室でみんなでノッて楽しかった」みたいなことを言ってたよ。

YOU:俺はむちゃくちゃ嫌いだったし、今でも正直変らないよ。「逆にORANGE RANGEいいよね!」みたいな流れもあったけど、今でも全然よくわからない。

カンノ:ORANGE RANGEって好きな人と嫌いな人ではっきり分かれる、今のミュージシャンとしてはわりと珍しい人たちだったよね。ラップの話でいうと、「マルシェ」はまだしもRIP SLYME「楽園ベイベー」が入っていないのはかなり意外だったね。だから「楽園ベイベー」が入らずに「ロコローション」が入るランキングだったということだよね。

YOU:あとアジカンが入ってなかったじゃん。絶対「リライト」は入ってくると思ったもん。

YOU:このランキングって”誰がエポックメイキングだったのか”っていうことが重要な気がして。それが最近だとヒゲダンやSuchmosだった。

カンノ:結局アジカンバンプのエポックさに比べたら足りなかったということだよね。

YOU:アジカンバンプに敵わなかったんだよね、この2組を同属性としたときに。

カンノ:それでいうとORANGE RANGEDragon AshRIP SLYMEに比べたらエポックだったということなんだろうね。

YOU:そんな結論は本当ダメだよ。

カンノ・オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:まあでも、そういうエポック以降のランキングだよね。小室哲哉宇多田ヒカルが塗り替えたみたいな。

YOU:塗り替えた以降のランキングであることは間違いないね。

カンノ:だからこそ塗り替えられる前とか塗り替えの過程の話を言葉にすることはすごく重要だと思った。このランキングだけ見ると、塗り替えた以降の歴史だけが残っちゃうから。

YOU:それは本当そうだね。

カンノ:このランキングをとおして、そこから漏れちゃったものこそ重要というか。たとえば2000年代前半でいうと、Dragon AshRIP SLYMEKICK THE CAN CREWみたいなグループヒップホップが盛り上がった時代があって、みんな「第2のRIP SLYME」になりたかった時代があったはずなんだよ。そういうことは言葉にしなくちゃいけないなと思った。あとBUMP OF CHICKENが今回はエポックだったけど、それによっていなくなってしまったハイラインレコーズ周りの下北沢ギターロックバンドもたくさんいたし、たくさんメジャーデビューしたし、たくさん解散していったんだよ。そこもちゃんと言葉にしないとマジでなかったことになるのかもしれないなと思いましたね。

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