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サムオブ井戸端話 #047「ポルノグラフィティから考えるバンドと個人の”ひっぺ剝がし”」(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

ポルノグラフィティ岡野昭仁King Gnuの井口理の「MELODY」を聴いたポルノファンのYOU-SUCKメンバー。バンドの一員の人がソロで別の空気を醸し出すことを「バンドからのひっぺ剝がし」という言葉で説明しながら、バンドとソロで語られ方が変わっていく様の話をしました。

 

YOU:ポルノグラフィティのボーカルの岡野昭仁さんと、King Gnuのボーカルの井口理さんが一緒にやってる曲って知ってますか?

カンノ:「MELODY」だね。今日聴きましたよ。

YOU:BREIMENというバンドがプロデュースでやってて、これ今っぽくてかっこいいんですよ。最近、アキヒトのソロ活動が活発で。3年前くらいにポルノってほぼ活動休止状態でソロ活動をしてて。新藤晴一はnoteで小説とか書いたりしてて。

YOU:アキヒトが2021年くらいからソロで楽曲も発表していて、今回のこの曲はその流れの曲なのね。

YOU:あとKing Gnuのラジオにアキヒトが出て、一緒に「ミュージック・アワー」を歌ったんだよね。

YOU:そういう流れがいろいろあって今回の曲につながってると思うんだけど。で、アキヒトって独特なボーカリストだと思うの。華もあるし、聴いて一発で「アキヒトだな」って思うし、個人的にすごく好きなボーカリストなんだけど、結局「ポルノグラフィティ=岡野昭仁」っていう結びつきがすごく強くてさ。この”バンドの一員”っていう状態から自身をひっぺ剥がすために、俺はアキヒトってYouTubeでカバー曲をあげてたと思うの。

カンノ:ひっぺ剥がすって?

YOU:”バンドに所属している一個人”というのと”ボーカリストとしての一個人”の結びつきをひっぺ剥がすこと。

オノウエ:その話、面白いね。

YOU:で、ついにアキヒトはそのひっぺ剥がしをされ始めたんだなって思ったの。

カンノ:あぁ、わかったぞ。最近の成功例はエレカシの宮本さんでしょ。

YOU:そうそう!で、宮本のひっぺ剥がしはどこから始まったのかというと、椎名林檎なんですよ。

カンノ:その付近でエレカシアミューズに移籍してるんだっけな(椎名林檎との楽曲は2018年10月2日リリース、前所属事務所フェイスとの契約満了が2019年1月31日で2月からアミューズへ移籍)。

YOU:エレカシに関してはアミューズに行ったことも大きいかもね。あと椎名林檎って自分の曲で人とバンドをひっぺ剥がすのが上手で。宮本のほかにウルフルズトータス松本とかBUCK-TICK櫻井敦司とかね。

YOU:この人と歌ったらどうなるのかみたいなプロデュース力が高い人だから。そういう感じでアキヒトが若手のミュージシャンからひっぺ剥がしを喰らって表舞台に引きずり出されてソロとかカバーとかやり始めたなと思ったんだよね。そういうことは面白いと思うの。だから今後はアキヒトが誰に曲を作ってもらうのかとか、誰をカバーするのかとかが面白いと思うんだよね。

カンノ:ポルノグラフィティの若い人への目配せは近年あったよね。井口さんのオールナイトニッポンに出て「ミュージック・アワー」を歌うのもそうだし、あと『THE FIRST TAKE』も出たでしょ。

カンノ:自分たちの立ち位置がわかったうえでの振る舞い方というか、ある種の懐メロとしての姿勢を辞さないでいく感じというかね。

YOU:その点に関しては、2010年代からポルノグラフィティってak.honma(本間昭光)のプロデュース楽曲がガクンと減って、というかもうほとんど離れてるのね。

カンノ:今はもうほとんどセルフプロデュースなのか。

YOU:それもそうだし、今プロデュースとかアレンジで入っている人たちって、結構若手なんですよ。だから若手とやることで一線で居続けたいという思いは、彼らのインタビューで結構言ってることなの。ずっと「自分たちでやりたい」とは言ってたの。ポルノがデビュー初期に出した『ワイラノクロニクル』というインタビュー本で、「本間さんの曲もいいんだけど、いつかは俺らだけでやりたいんだよね」みたいなことは言ってて。だから十何年越しにようやくそれが叶って、今楽しくやれてるんじゃないかなというのがファンとして思ってる。

YOU:という感じで、King Gnu井口によりひっぺ剝がしによってアキヒトはかなり自由がきいた活動ができるんじゃないかなって思ったんですよね。そういうポルノグラフィティは俺にとってはかなり理想的なんだよね。

カンノ:やっぱり懐メロのみに特化するとキツいもんね。ポルノグラフィティが青春だった人向けに特化しちゃうと。

YOU:「メリッサってアニソンだよね~」とか「アゲハ蝶懐かしいよね~」だけになっちゃうよりは「ここに混じってボーカルに参加してるのめっちゃ良いよね」ってなったほうがいいし、そういう意味で「MELODY」はすごくうまくできていると思うんだよな。

カンノ:あと「MELODY」は僕が今まで聴いていたポルノグラフィティとは全然違う歌い方な気がしたんだけど。

YOU:そうなんですよ!アキヒトはどんどん歌がうまくなってる。「MELODY」は今までとは違う歌い方してるからね。BREIMENというファンクバンドとKing Gnu井口という飛び道具と一緒に曲をやることに成功しているわけだから。なんかこのままシティポップ方向に引きずられたらめちゃくちゃ笑うけど。

カンノ:アキヒトの「プラスティック・ラブ」ね。

YOU:アキヒトの「プラスティック・ラブ」は爆笑するね。

カンノ:僕はアキヒトのことを「歌筋肉の人だな~」って思ってたの。このニュアンスわかる?

YOU:わかるよ。歌うとき血管浮き出てるし。

カンノ:自分の力でもって歌を遠くへ飛ばす人のイメージなんだよね。それこそ血管を浮き出しながら。そのイメージだったから「MELODY」は全然違う歌い方で来たなと思ったかな。

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