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サムオブ井戸端話 #049「あの頃のスペシャに出たい!」(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

スペースシャワーTVを見ていて「スペシャ発のバラエティ番組が減ったな」と思ったカンノメンバー。スペシャが担っていたバラエティ対応ができるミュージシャンを育てる場がなぜなくなってしまったのかを、『熱血!スペシャ中学』やマキシマムザホルモンをとおして考えてみました。

 

カンノ:最近は家で作業するとき、スペースシャワーTVをつけっぱなしにして作業することが増えたんです。でね、スペシャ発の番組って本当に減ったなと思ったんです。

YOU:そうなの?

カンノ:MUSIC ON! TVもそうかもしれないけど、ほぼMVばっかり流れるチャンネルになった印象です。

YOU:あれは?マキシマムザホルモンのナヲとダイスケはんの番組はまだあるんじゃないの?

カンノ:僕らがスペシャを見ていたゼロ年代からすると、もう残っているのはナヲとダイスケはんだけじゃないかな?

YOU:逆にそこは残ってるのね(笑)

カンノ:僕らのなかで表立って音楽をやっているのは僕だけですが、音楽をやるうえでの夢とか目標みたいなものってじつはあんまりなくて。「このライブハウスでやりたい!」とか「〇〇と共演したい!」とかあんまりないんですよ。だけど、昔持っていた原動力の一つが「スペースシャワーTVでレギュラー番組を持ちたい!」だったんですよ(笑)

YOU:なるほどね(笑)

オノウエ:僕は実家がスペシャを見れなかったのでわからないんですが、スペシャってどういう番組があったんですか?

カンノ:スペシャ独自のチャートを発表する2~3時間のワイド番組はありましたね、やまだひさしや鹿野淳がMCで。あと毎日の帯番組でミュージシャンが日替わりMCをしていたり。僕が見ていた番組でいうと『STUDIO GROWN』っていうやつとか。たとえばその組み合わせがイルリメ×安藤裕子とか、レミオロメンのドラムの神宮寺さんとか、椿屋四重奏の中田さんとか。怒髪天の増子さんも当然やってました。あとビークルのヒダカさんとユアソンのJ×J×さんの組み合わせね。これは鉄板よ。あと全国的に売れる前の芸人さんのMCも多かったね。小籔千豊さんとかカリカ家城さんとか。あとはなんて言ったって『熱血!スペシャ中学』ですよ。

YOU:やっぱりスぺ中だよね。

カンノ:いとうせいこうさんが中学校の担任教師で、生徒がレキシの池ちゃん、スネオヘアーグローバー麻波25のHUNTER、スクービーのMOBYNANANINE大野憲太郎BEAN BAGのYUMI、小向美奈子が3ヶ月ですぐ抜けて代わりに安めぐみ

YOU:おいおい、ちょっと待て、小向美奈子いたの?信じられない…(笑)

カンノ:で、2代目で生徒が替わって、キャプテンストライダムとかフジファブリックとか風味堂とかポメラニアンズとかミドリカワ書房とかSalyuとか…

オノウエ:さすが、めちゃくちゃ覚えてるね(笑)

カンノ:僕の今の目標は「あの頃のスペシャに出たい!」です(笑)

YOU:もうSFの世界だ…(笑)

カンノ:まぁ、こうなったのはYouTubeが大きいんだろうけどね。

YOU:もうアーティストがいくらでも発信できる時代だからね。

カンノ:「もうわざわざスペシャじゃなくても」っていう感じになっちゃったのかもしれないね。

オノウエ:でもスぺ中ってミュージシャンによるバラエティ番組でしょ?そういうのってじつはない気がするんだけど。

カンノ:たしかにミュージシャンが大勢で集まってバラエティ的なことをするのはないよね。

オノウエ:そういうのっていつからなくなったんだろう?

カンノ:ちょっと話は変わるんだけど、2000年代後半辺りからマキシマムザホルモンがMCをする番組が出てくるんだよね。で、ほかのミュージシャンとホルモンの違うところって、ホルモンはものすごくサービス精神があると思うの。

YOU:そうだね。

カンノ:で、この人たちが残るっていうのはとても象徴的だなって思うの。

オノウエ:それこそ地上波で見かけるからね。

カンノ:結局思うのが、とっつきにくいミュージシャンは使えないってことなんだよなって。たとえばスぺ中だったら、せいこうさんがスネオヘアーのキャラクターを引き出すために突っついたりね。池ちゃん以外はキャラクターを引き出される人たちだったんだよ。池ちゃんはそれに対して自分で完結できる人だったと思うの。あの人って全然表情変えないで突拍子のないことを言って笑いが取れる人じゃん。ツッコまれたら返せるし。

オノウエ:最初からバラエティ対応ができる人だったよね。

カンノ:ほかの人はもっとガチガチな状態というか。せいこうさんに突かれて、うまく返せなくて、でもその”うまくなさ”がキャラクターになるというかね。で、今はそうやってキャラクターを引き出されるような人も、せいこうさんみたいにキャラクターを引き出す人も音楽の場ではいないなと思っていて。

オノウエ:それはたしかにいないね。

カンノ:そういう意味で第2のいとうせいこうが不在なんだよね。

オノウエ:あと自分が素材として引き出されたいと思うミュージシャンがいない気がするね。

カンノ:いないよね。イジられ側にいかなきゃいけないから。だからスぺ中って学校という設定だったけど、本当に育てる場だったと思うんだよね。YouTubeで自分で発信できるかもしれないけど、そういった育成場みたいなものがないというか。っていうかそもそもそんなことを育成する必要がないっていう話なんだけどね(笑)ミュージシャンでバラエティ対応能力を育成したい人、育成されたい人、育成の場、すべてがない。

YOU:市場縮小の話だね。

オノウエ:一言で言ったな(笑)

カンノ:でもなんでなくなっちゃったんだろう?

YOU:音楽の人がバラエティをやるって余裕のある時代じゃん。もうそんな余裕がないからな気がするな。

カンノ:あとやっぱりゼロ年代から見て、ホルモンだけが残ったのが面白いなと思ってね。ひょうきんなロックバンドの人が残るっていうのはどういうことなんだろう?

YOU:それね。俺はヒダカさんの洋楽の話とか聞きたかったんだけどね。

カンノ:逆に言うと、「教える」みたいなことはなくなったね。それは説教っぽくなっちゃうのかな?「教える」という態度が。「知らねえよ」っていう。

オノウエ:でもYouTubeだったらみのミュージックみたいなものがあるじゃん。

オノウエ:あそこでやってるのは名盤紹介みたいなことだから、教えることではあると思うんだけど。でもそこで語られる情報の深さとかは全然違うのかもしれないね。

カンノ:あとYouTubeで見るのとテレビで見るのとじゃ違うよね。YouTubeになった途端、初心者向けにならない?

オノウエ:あ~、わかるな。それによって情報の深さが変わるもんね。結局ニッチになりすぎちゃうと再生回数に影響しちゃうし。だからどれだけ全体のパイを取りにいけるかっていう話になるもんね。

カンノ:どうしたって勝ち負けみたいなものがはっきりしちゃうからさ。「門戸が開けていないといけない」というのはある気がするね。

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