SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
「サムオブ井戸端話」が2年目に入ったので、この1年の印象に残った記事を振り返ることに。後編では「今話したけど話せる人がいない」バンドとしての54-71やSTAnの記事が読まれたことや、バンドの関係性話から今はバンド内で物語を育てずに横のつながりで個人個人でやりたい音楽をやる時代になってきているという話をしました。前編、中編は下記リンクから。
カンノ:54-71回は読まれましたね~。
オノウエ:あれはビックリした。未だに「54-71の話がしたい」と思う人っていっぱいいるんだね(笑)
カンノ:「令和4年に〇〇の話をしよう」シリーズは「見つけたっ!」って気分だよ(笑)
オノウエ:やってることはただの居酒屋トークなんだけど(笑)
カンノ:そこで話してることってmixiのコミュニティみたいなことだからさ。
オノウエ:本当にそこが絶妙だったと思うんだよね。54-71とかSTAnとか。
オノウエ:54-71とかSTAnの話ができる友達ってちょうどいないんだよね。「今話したんだけど話せる人がいない」のちょうどいいラインだったと思うんだよね。
カンノ:学生のころは話せたけど、会社ではそんな話ができる人がいないって感じだよね。
オノウエ:そうそう。ほかにそういうバンドっていないかな?
カンノ:MO’SOME TONEBENDERは?
オノウエ:モーサムは活動してるけどゆるめだもんね。
YOU:なんかしれっとnoteとかでゼロ年代のバンドとかをまとめたものを書くだけで「知らなかった!」みたいな反響はありそうだよね。
カンノ:やっぱり今こそゼロ年代ですよ。あとなんだろうな、ミュージシャンの関係性の話はまだ気になってるかな。
カンノ:でも昔ほど関係性にロマンはなくなった気がするな。バンドマジックってなくなったよね?
YOU:「バンドマジックはなくなった」っていう話は定期的にしてるけど、ちゃんと表にぶん投げていきたいね(笑)
カンノ:スタジオ入ってデカい音でバーンと鳴らして「このバンド最高だな」って思えている人がどれだけいるんだ?
YOU:『音楽』っていう漫画があるんです。映画化もされています。自分は映画を観たのだけど。
YOU:この映画はちょっとオフビートで好き嫌いも分かれるんだけど、スタジオに入って最初に音を出したときの気持ち良さしか描いてない映画だった。その感じが分かられなくなる瞬間が来るのかもしれないなって。初期衝動とかがどんどん分かられなくなるというかね。
カンノ:この前、久々に僕がやってるユニットの4×4=16(シシジュウロク)のバンドリハでスタジオに入ったんですよ。いやぁ、バンドは最高だね!
YOU:アハハハハッ!
カンノ:今後、僕はバンドの関係性で売っていきます!
YOU:今更ね(笑)なんかバンドの仲の良さは置いといて、ミュージシャンのコミュニティの話はよく言われている気がするな。
カンノ:いわゆる「横のつながり」っていうやつですね。
YOU:たとえばKing Gnuってそれが顕著じゃん。millennium paradeとか、メンバーのソロ活動とか。それって2010年代以降に言われてると思うけど。「このコミュニティでこういう役割をしているから、この楽曲で参加していることにエモさがある」みたいなことが前景化しているというか、SNSで関係性が見えやすくなっているから、それを前提にファンは情報を摂取している気がするな。たとえばそれは98-9年のNUMBER GIRL、くるり、スーパーカーみたいに、共通した市場があるものの、それぞれ独立したバンドとしての物語を持っている感じとは違って、彼らほどみんな売れてなくて、でも音楽で食えている人たちが横のつながりで切磋琢磨している感じというか。ちょっとヒップホップ的かもしれないね。バンド内で物語を育てていなくて、個人個人のやりたいことの結果というか。アプリを切り替えるみたいに、「今日はこのバンド、明日はこのバンド」みたいな感じでやっている人は多いと思うね。
カンノ:一個人がいろんなバンドやサポートをやってね。ジャンルも違えど。
YOU:で、全体としてはそれはすごく良いことな気がするな。それこそ会社勤めになったら定年まで働くことが美徳だった価値観から、1歩進んだというか。
カンノ:これは古臭い考え方なのは分かって言うけど、それはロマンがないなって思っちゃうんだよね。ミュージシャン自身の効率で動いてる感じが見えちゃう。それで「どこか当たればいいです」という匂いを感じちゃう。そういう人の音楽を聴いても楽しくないかな(笑)すごく職業作曲家の人の音楽を聴いてる気分になっちゃう。それが良いか悪いかだと思うの。僕は「この人はこういう音楽をせざるを得なかったんだな」と感じたいから。だから「なんでもいいんだ」って思った瞬間にガッカリするかな。「この人、いろんな場所に合わせて音楽できるんだ。つまんね」っていう(笑)そしてこの考え方はとても古いです。
YOU:そうだね。「俺はこのバンドにかける!」みたいな考え方はかつての古い考え方で、乗り越えるべき抑圧的なものとして言われそうだね。
カンノ:だからこの考え方の表明はもうあんまりしません(笑)