SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
先日行われたカンノメンバーのアルバムリリースパーティーで、「以前のカンノならお客さんに対して絶対に言わなかった『前に出てください』という喋りをしていてビックリした」とオノウエメンバー。ある程度の型は決まっているが、そこまでの方法論が確立されていないライブMCに関してとことん話し合いました。
カンノ:私、4×4=16名義で先日アルバムのリリースパーティーを行いました。
カンノ:2人も来てくれましたね。どうでしたか?
YOU:最初にバンドセットをやって、そのあとに数の子ミュージックメイトさんのDJタイムで幼稚園児が歌う「勇気100%」でブチあがって(笑)
4×4=16アルバム『RADIO』リリースパーティーの振り返り🥳
— カンノアキオ (@akiokanno4) 2022年6月18日
転換DJに数の子ミュージックメイトさんをお呼びして、30分間身内音楽DJをブチかましてもらいました!様々な学校の合唱曲が聴けて会場がエモとノスタルジーで包まれる異様空間でしたね🤣僕も数の子さんと一緒にブチアゲましたよ🕺🏻💃 pic.twitter.com/kH97Q998LF
YOU:そのままカンノのヒップホップセットに入っていって、飽きさせない構成でよかったと思った。面白かったです。
カンノ:ありがとうございます。オノウエ君はどうですか?
オノウエ:かなりわかりやすくしてたよね。
カンノ:あっ、ちょっと恥ずかしいですね(笑)
オノウエ:以前のカンノだったら絶対にやらないことをいくつかやってたよね。特に印象に残ってるのは、ライブの最初のMCで「ライブでは守らなきゃいけないルールがいくつかあります。クスリをやらない、マリファナやらない…」とか言ってたじゃん(笑)で、最後に「一番重要なルールは一歩前に出てライブを見ることです」って言ってお客さんをステージの前のほうに来させたりしたじゃん。なんか、そういうことをちゃんと言うようになっていたのが「カンノも成長したな~」と思ってね(笑)
カンノ:そういうことを言うのは大事だなとやっと思うようになりました(笑)あのね、普通にライブを見に行ったメジャーアーティストでも「前に出てください」って言ってたの。で、メジャーアーティストでも「前に出てください」って言ってるのに僕がスカして言わないのはダメだなと思ったんだよ(笑)
YOU:なるほどね。
カンノ:「ヒップホップのライブは前に来て楽しむんだよ」みたいなことを言ってたの。でも、その言葉自体は僕の身の丈じゃないのよ。僕が言っても似合わない。そういうときに「ライブのルールはいろいろあります。クスリをやらない、マリファナやらない。でも一番守らなきゃいけないルールは前に来て見ることですよ、さぁさぁ!」っていう言い方が僕の身の丈に合った言い方だなと思ったんですよ。この遠回り具合こそが、その人のライブMCの個性なんじゃないかなと思うんです。
YOU:なるほどね。「前に来てください」って普通に言っちゃうのはダメなんだ。
カンノ:それはただの注意事項じゃん。その言い方を問われることこそが、その人のMC論じゃないかな。
オノウエ:はいはい。
カンノ:たとえばそれは告知や物販紹介にも表れると思うんです。そのリリパのときに僕が喋ったこととして、「CDを持ってきました。今日はリリパなので、なんと、特別に、えっと、定価で販売します」って言ったんです。
オノウエ・YOU:(笑)
カンノ:で、一人ひとりは失笑です。でもそれが重なると、なんとなく笑い声になるんですよ。
YOU:あぁ~、たしかに。
カンノ:そうしたら「この人はなんか面白いことを言ったんだな」っていう印象になるんです。
YOU:全体を通すと最終的にそういう印象になるのね。
カンノ:だから基本はストイック系のバンドじゃなければ、MCはちゃんと喋ったほうがいいと思います。なんか喋ったら「この人はこういう人なんだな」ってお客さんは勝手に思ってくれるから。僕らは同じ高校で軽音楽部でしたが、2人もそのときは人前でライブをやってMCをしてたじゃん。どう対処してた?
オノウエ:俺はできることならMCはしたくなかったね。喋りが下手だから。
YOU:俺は台本を作ってたね。
カンノ:えぇ!?偉いな!
YOU:あっ、覚えてない?卒業式直前くらいのライブかなんかで、普通に喋ろうとするとうまくいかないのはわかってるから、もう喋ること決め打ちでやってたよ。
オノウエ:へぇ~。
カンノ:どんなこと喋ってたか覚えてる?
YOU:ストーリーを作ってたの。たしかミドリカワ書房の「顔2005」のコピーを演奏する前に、「整形したいな~」とか言ってたのは覚えてる。
オノウエ:あぁ~。
カンノ:お前、偉いな!
YOU:やってたんですよ(笑)それはやっぱりミドリカワ書房の存在が大きいんですよ。あの人のアルバムは曲前にフリとなる、その曲にまつわることが題材になってるコントが収録されていたから。
カンノ:そこで「つなぎ」の重要性を理解するわけだ。
YOU:まぁ、それくらいだよ。俺もできたらMCはやりたくなかったから。
カンノ:ミュージシャンって基本、MCはやりたくないと思ってるよね。
YOU:でもチョケるMCをする人もいるよね。「どうも~!〇〇です!是非名前だけでも覚えて帰ってください!次はちょっと切なめな1曲です!」みたいな(笑)
カンノ:なに、そのマンガみたいな人(笑)
オノウエ:いや、いるよ。普通にいる。
カンノ:そのMCは仕方なくやってるの?
YOU:どうだろう…?そういう教科書なんじゃないかな。
オノウエ:横浜駅は路上ライブをやってる人が結構いるんだけど、路上ミュージシャンは結構そういうMCのパターンが多いね。多分それはなにかしらで見たMCの型とか、教科書的なものをそのままトレースしてるんだと思う。
カンノ:その型からエッセンスを抽出して、自分のMCにどう当てはめるかじゃないよね。
オノウエ:そこまでMCについて考えてる人のほうが少ないよ。「型通りやればいいじゃん」って思ってる人が多数だと思う。
カンノ:でも「型通りでいいしょ」だなんて、絶対にそんなことないからね!
オノウエ・YOU:アハハハハッ!
オノウエ:カンノはライブMCをやることの意識は最初から高かったよね。
カンノ:もちろん僕もいろいろ悩みながらやってましたよ。でもこの前のリリパでかなりライブMCは苦じゃなくなりましたね。さっきYOU-SUCKメンバーが「台本を作ってる」という話をしましたが、僕も似たようなところがあって、僕のライブにも「きっかけ台詞」があるんです。ヒップホップセットのライブのときに、DJの子に「ここでこういうことをMCで喋るから、このフレーズが出たら音をポン出しして」みたいな。それをほぼ全曲に指定していました。
YOU:それはすごいな…
カンノ:だから僕も台本を作ってるんですよね。
YOU:お前も作ってるのね(笑)あとMCが大事って思ってる人と、MCが大嫌いと思ってる人っているよね。
カンノ:でもMCが大嫌いって思ってる人は、大事さがわかってる故に背ているんじゃないかな?
YOU:でもMCがないほうがかっこいい人も絶対数はいるよね。
YOU:ポストロック系のインストバンドでめちゃくちゃ喋るようなMCは嫌だね(笑)
カンノ:そういうバンドが1曲終わったら「いやぁ~、今日はお足元が悪いなか来ていただき誠にありがとうございます、今日はね、ミニアルバムを持ってきたのでね!」とか言いやがったらさ(笑)
オノウエ:そいつは自分の性格とやってるバンドの空気感を大いに間違えてるよね(笑)
カンノ:「そんな喋りをしているのに、曲はストイックで超かっこいいのかよ!」っていう(笑)
YOU:たとえばNONA REEVESの西寺郷太さんはMCでめっちゃ喋るじゃん。あのノリを残響レコード系のバンドでやられたらたしかに嫌だね(笑)
カンノ:単純に分けると、エンタメかストイックかみたいなね。だから自分のキャラクターとか、やっているバンドの空気感とかをどれだけ熟知しているかって大事だと思うんだよ。
YOU:たしかにカンノはそれを実践してるよね。
カンノ:その人の骨格とかキャラクターとか空気感とかでなにを喋るべきかが決まる気がしていて。3枚目の人が2枚目なことを言うとちぐはぐだし、2枚目の人が3枚目なことをやるのもちぐはぐだし。自分の身の丈、バンドの身の丈を踏まえたうえでどういうことを喋ったら75点なのかをちゃんとわかっているかどうかは重要だと思いますよ。
YOU:75点は合格点という意味だね(笑)
オノウエ:メタ認知が大事という話ですね。