宅録ユニット・OK?NO!!の上野翔とカンノアキオでSpotifyで聴けるポッドキャスト番組『Radio OK?NO!!』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。今回は比喩表現の多いヒゲダンの歌詞に注目した「たとえ上手なOfficial髭男dism」特集(後編)を掲載します。(前編)は下記リンクから。
Radio OK?NO!! Podcast #054「たとえ上手なOfficial髭男dism」特集音声は下記リンクから。ポッドキャスト登録を是非、よろしくお願いします!
カンノ:僕のなかのヒゲダンの最上級例え楽曲があるので聴いてみましょう。Official髭男dismで「115万キロのフィルム」
カンノ:この曲は、例えすぎ!
上野:フフフッ。
カンノ:部分部分切り取って「ここがこう例えられてるんですよ」っていう話をしたいんですが、この曲は全部がそれだからさ。ちょっと無理。
上野:これは具体的にどういう内容の曲?
カンノ:歌詞でいうと「主演はもちろん君で 僕は助演で監督でカメラマン」なので、自分の目に映るものがフィルムになっていて、僕の目で君のことを撮影し続けるという。僕と一緒に居る人生を撮影し続けると。で、死ぬまでこの撮影は終わらないと。君と一緒にいる人生をフィルムに換算すると115万キロっていう。これから君との毎日がずっと映画の撮影例えになっているんですね。
上野:「きっと10年後くらいにはキャストが増えたりもするんだろう」とかね。結婚して子どもができることの例えだよね。
カンノ:ずっと例えられてるんですよ。「エンドロールなんてもん作りたくもないから」とか。もう全部具体的に例えてるんですよ!
上野:「クランクアップがいつなのか僕らには決められない」とかさ。
カンノ:情報量楽曲ですよ。
上野:情報量楽曲ね(笑)一つ強い設定、強い歌詞世界観設定をかちっと作って、そこに対してはみ出ないし、「こういう情景あるよね」を流し込んだら出来上がった感じの歌詞だよね。
カンノ:「コント!115万キロのフィルム!」みたいな感じなんだよ(笑)
上野:設定がちゃんとしすぎてね(笑)
カンノ:どこか切り取って「ここがこうで」っていう話をしたいんだけど、マジで全部がそれで構成されてるからさ。
上野:たしかに、ここまでかっちり決め込んで全部それで例えていくっていう曲ってあんまりないかもね。
カンノ:本当はもうちょっと甘いんだよ。
上野:もうちょっと甘かったり、もうちょっと現実とフィクションを混ぜたりね。
カンノ:歌詞の例え方がストイックすぎるんですよ。「絶対はみ出ちゃいけない」と思って書いてるはずだよ。それは、重い!
上野:アハハハハッ!「それがすごい」「それが好き」っていうことじゃないんだ。「それが重い」(笑)
カンノ:重たいよ!いや、すごいよ。けど、重いの(笑)もうちょっと例え方は軽くていいよ(笑)
上野:なるほどね(笑)
カンノ:ヒゲダンのこの曲を初めて聴いたときに「この人たち、めちゃくちゃ例える人たちだな~」という印象が強烈でね。ではそんなヒゲダンの最新作の例え楽曲を聴きましょう。Official髭男dismで「ミックスナッツ」
カンノ:世間とか人間関係をナッツに例えてるんですよ。
上野:例えてますね。
カンノ:ミックスナッツという世間ですよ。「ピーナッツみたいに 木の実のフリをしながら 微笑み浮かべる」と。それが世間であると。
上野:ミックスナッツの袋が世間で、そのなかに入ってる1つ1つのピーナッツが1人1人の人間関係。
カンノ:そして「本音が歯に挟まったまま」という、ピーナッツを噛んだときの詰まった感じとか。その結果「胃がもたれていく」という。ミックスナッツって意外とカロリー高いですから(笑)もう1袋でお腹いっぱいになりますから。まぁ、ミックスナッツであることの複雑さ。それが世間とリンクすると思われたのでしょう。
上野:この企画の趣旨が今更わかってきたんだけど、「やりすぎ」ってことね(笑)
カンノ:ここまで明確というかさ。なんか、曲作りをする人って、曲を作ることに関してはしっかりやると思うの。それに対して歌詞ってさ、ちょっと甘さがあったり、聴く人に委ねられてもいいと思うの。それが良いバランスな気もするの。行間がある感じというか。「リスナーに解釈は委ねます」みたいな。でもヒゲダンって「こういう明確な意図で書きました」っていう感じならまだしも「そこからズレてはいけない」という信念めいたもので書いている気がして。
上野:僕は大前提、ヒゲダン大好きなんです。そのうえで言い方は難しいんだけど、たしかに歌詞の節々を見ていくと上手いことをすごく言おうとしてるよね。
カンノ:そうそう。「これが言いたい」というのが例えから発生している。
上野:その例えの手数もめっちゃ多いし。
カンノ:どの曲も5個以上は例えてるよ。
上野:そうだね(笑)
カンノ:でも例え・比喩って、例えを使いながら「本質はこうです」って言うためにあるじゃん。例えが核じゃないはずなんだよ。でもヒゲダンの場合は「例え=本質」になってると思うの。だから例えることが目的化してる。とくに「ミックスナッツ」や「115万キロのフィルム」は。「そういう風に楽曲を成立させていくんだ」って思ったんですよね。それが面白かった。で、そういう人たちをあんまり知らない。
上野:たしかに、ここまでやる人はいないかもね。
カンノ:相当神経質に歌詞書いてるよ。「ここからズレちゃいけない」は強くあると思う。
上野:なるほどなぁ。
カンノ:ヒゲダンの緻密性ですね。曲だけでなく歌詞の面でもあるなと。で、僕が楽しみなのは年取ってからだよ。例えとかズレとか気にしなくなって「もういいや」って思ってからの歌詞(笑)
上野:「もういいや」って思うときは来るのかな?
カンノ:そうならないとしんどいでしょ?
上野:今回いろいろ話を聞いて、このままの方向性でもし突き進んだらヒゲダンってねずっちみたいになるのかなって思った(笑)
カンノ:アハハハハッ!
上野:ワンセンテンスにめっちゃ上手いことをめちゃくちゃ入れてくる人たちになってるんじゃないか(笑)
カンノ:ヒゲダンとねずっちのツーマン(笑)
上野:僕は普段音楽を聴くときに歌詞に対してはすごく鈍感なので、こういう面から捉えるのはとても面白かったですね。
カンノ:だからまだ歌詞は尖ってると思うのね。それが「もういいや」って丸くなったときに何が出るのかは楽しみですね。例えとか意味から離れていくヒゲダンっていうのもちょっと見てみたいなと。そして、もしかしたらヒゲダンが目指す境地はここなんじゃないかと。
上野:おっ。示してあげると(笑)
カンノ:もう示している人がいます。「感情のないアイムソーリー」を体現している人。
上野:アハハハハッ!
カンノ:ヒゲダンの先を行く人が、ヒゲダンのカバーをしていたと。
上野:そうだそうだ、最後の曲は予告してたんだ(笑)
カンノ:この番組は伏線回収ラジオですから(笑)ということで最後の曲です、二宮和也で「Pretender」
『Radio OK?NO!!』はパーソナリティーの上野翔とカンノアキオが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#okno」をつけてツイートしてください!お問い合わせはメール:radiookno830@gmail.com まで。