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サムオブ井戸端話 #066「J-POPのEnglishバージョンって聴く?」(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

EnglishバージョンのJ-POP楽曲について話すサムオブメンバー。後編では「もし世界戦略の意味でのEnglishバージョンだったら、それはプロモーションとしては足りてないんじゃないか?」という話をしました。前編は下記リンクから。

 

 

カンノ:このサムオブ井戸端話の第1回目で「カバーアルバムって誰が聴くんだ?」っていう話をしたけど、それと同じだよ。「EnglishバージョンのJ-POPって誰が聴くんだ?」っていう話ですよ。

YOU:カバーアルバムはマキタスポーツさんが言ってた「国民」が聴いてるんだよ。

YOU:音楽に思想性とか嗜好を求めない人。うちの親もMay J.やクリスハートのディズニーのカバーアルバムを持ってるし。だからカバーアルバムを聴く人はなんとなく想像つくの。でもたしかにEnglishバージョンのJ-POPをあえて聴く人ってあんまり想像つかないね。日本国内に限定すると結構謎だね。

カンノ:本当にいつからかサブスクで音楽を調べると(English ver.)の文字をよく見るんだよ。秦基博のEnglishバージョンとか、[Alexandros] のEnglishバージョンとかをよく見るようになったんだよ。「ちょっと待ってくれ、本当にそれは正しいのか?」って。

オノウエ:YOU-SUCKメンバーが「元も子もないけど宣伝じゃない?」って言ってたけど、ボーカルを入れ直すだけだから低コストで商品にはできるよね。

カンノ:単純な話ね。

オノウエ:同じ曲でも、オリジナルバージョンの3分の1くらいのコストで商品になって収入になるんでしょ。めちゃくちゃざっくりした下世話な話だけど(笑)

YOU:たしかに、そうだね。

カンノ:ちょっと試してみたいのが、Englishバージョンで歌ったことのある人が、どれだけ歌詞を見ずにEnglishバージョンでちゃんと歌えるかどうかは確かめたいよね。

YOU:嫌なやつだな、お前(笑)

カンノ:バラエティ番組の企画っぽいよね(笑)半分も歌えるかどうかだと思うんだよな。

YOU:いやぁ、半分も歌えないんじゃないかな。野田洋次郎は歌えそうだけどね。

カンノ:出た。「Back in the Zenzenzense」って歌ってたから(笑)

オノウエ:戻りすぎなんだよ(笑)「Back in」だし「Zenzenzense」だし。

YOU:「前前前世」という言葉は英訳不可能だったわけだね。

カンノ:「Back in the」をつけないと成立できなかったんだね。まぁ、「Zenzenzense」を歌い替えることも厳しいもんな。

YOU:優里の「ドライフラワー」のEnglishバージョンは、ドライフラワーって歌う位置がズレちゃってるもんね。タイトルになってる歌詞は聴かせ所じゃん。それが英訳してズレてるっていう。

オノウエ:それはEnglishバージョンレベルが低いんだよね。

カンノ:低いね。全然低い。「ただ英訳しました」ってことだからね。

YOU:でも俺は、Chineseバージョンで喜ぶファンの気持ちもわからなくもないんだよね。

オノウエ:それはどういう意味で?

YOU:好きなアーティストって違うバージョンというだけで聴きたくなったりするんだよ。

カンノ:なるほどね、それはわかるな。

YOU:俺が中学生のときに、好きなアーティストの曲とか、メジャー版とは違うインディーズ版も含めて集めてたもんね。そういうバージョン違いにゾクゾクしていた自分はいたな。

オノウエ:その感覚はめちゃくちゃわかるな。

YOU:あと俺はサザンが好きなんだけど、「Japaneggae」って曲がもともとアルバムの1曲目で発表してたんだけど、別のシングルのカップリングで英語バージョンで録り直したものを入れてるの。そこでYOASOBIみたいな言葉遊びもしてるの。

カンノ:桑田さんはするよな。

YOU:そういうバージョン違いの面白さはあるよね。椎名林檎の「茎」も日本語バージョンと英語バージョンがあるし。そういうバージョン違いは俺は結構楽しんで聴いちゃうんだよね。

カンノ:でもそれは日本向けなんだよ。サザンも椎名林檎もリリース時にはサブスクってないから。べつに世界向けの発信ではなかったと思うし。僕が気になるのはサブスク以降のEnglishバージョンなんだよね。

YOU:俺、カンノの悪意がわかってきた。「それでワンチャン、世界狙ってる?」っていう目線があるのね。

カンノ:じゃあもっと言うよ。多分「世界を狙っている」という意識もない可能性がある。

YOU:それはヤバくない?どういうこと?

カンノ:もしかしたらあんまりなにも考えてないんじゃないかな…。

YOU:嘘でしょ?それは考えてるでしょ?

カンノ:サブスク以降の世界戦略でいうと、一番正しいのは星野源だと思うの。

YOU:それはどういう意味で?

カンノ:SUPERORGANISMと曲を作ったり、韓国のミュージシャンと曲を作ったり、「喜劇」のリミックスを世界的なDJに頼んだり。こういう動きは超わかるし、めちゃくちゃ正しい。

カンノ:そしてその宣伝をインスタで英文でアップするとか。それはあの人がサブスクを解禁した瞬間からそのモードだから。

YOU:世界戦略のモードね。

カンノ:野心が丸見えだけど、意図はわかるし、それが正しく動いてるよね。で、単に歌詞を英語にしただけでそれが「世界戦略です」っていうことなら全然足りてないし、めちゃくちゃおじさんが考えてそうなプロモーションだなって思うの。

YOU:出た!イケてないプロモーションのおじさん感ね(笑)

カンノ:(English ver.)という文字を見ると、それを思っちゃう。「この人、英語で歌うキャラクターか?」っていうEnglishバージョンの多さだよね。海外と関係ない人のEnglishバージョンになんの意味があるんだ?あの辺りが全然わからない。だから教えてほしいですね。EnglishバージョンのJ-POPをリリースすることのビジネス的な意味と表現的な意味の両方を。

YOU:「どうしてEnglishバージョンを出したんですか?」(笑)

オノウエ:Englishバージョンはビジネス的な意味だろうね。だって表現の意味で考えたらやる必要がないもんね。

カンノ:じゃあビジネスの意味だったら、どれだけ収益を上げてるのかを教えてほしい。

オノウエ:多分、たいして上がってないでしょう。

カンノ:だよな~(笑)だから、この5年で増えるか減るかだよね。

オノウエ:たしかに、今はお試し期かもね。

カンノ:2025年とかにはEnglishバージョンって駆逐されてるのかな?

オノウエ:だってレコーディングスタジオを1日押さえて、そこで録音しちゃえばいいわけでしょ?1日もいらないかもね。数時間スタジオを押さえて録音するくらいなら「やってみようか」ってなるかもしれないね。じゃあ2025年に期待ですね。

カンノ:答え合わせが楽しみですね(笑)

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