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Radio OK?NO!! Podcast #062「2050年のシティポップ」特集文字起こし(後編)

宅録ユニット・OK?NO!!の上野翔とカンノアキオでSpotifyで聴けるポッドキャスト番組『Radio OK?NO!!』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。今回は2050年に「これがシティポップだ」と間違って解釈されそうな曲を紹介する「2050年のシティポップ」特集(後編)を掲載します。(前編)は下記リンクから。

 

Radio OK?NO!! Podcast #062「2050年のシティポップ」特集音声は下記リンクから。ポッドキャスト登録を是非、よろしくお願いします!

 

 

上野:これまで紹介した曲とはちょっと毛色を変えてみました。お聴きください、Nujabesで「Island」

カンノ:これはチルっていうこと?

上野:この曲は聴いても「たしかにシティポップだ」とはならないと思うの。

カンノ:ならないね。

上野:でも、これからのシティポップを考えたときに、そこに入り込む可能性があるジャンルってなにかなと思ったら、Lo-fi HIPHOPってシティポップに入り込む可能性があるなって思ったの。

カンノ:これは前編でも話した絵の話にも通ずるね。

上野:そうだね。Lo-fi HIPHOPには欠かせない女の子が勉強机に向かって猫がいるサムネ画像ね。で、NujabesがいたときってまだLo-fi HIPHOPとして語られてなかったと思うんだけど、今はLo-fi HIPHOPの祖みたいな感じじゃん。あと前編でカンノが言ってた「深夜の東京」みたいなニュアンスがシティポップっぽさを作っているなら、Lo-fi HIPHOPってまさにそこに当てはまるじゃん。

カンノ:そっか。「深夜東京の6畳半」ってNujabesのことだったのか!

上野:それは飛躍しすぎてるけど(笑)

上野:で、さっきの絵の話とかも含めて、2050年にはLo-fi HIPHOPもひっくるめてシティポップとして再発見されるんじゃないかな。

カンノ:2050年に間違った歴史の語られ方!

上野:なんか2050年にはLo-fi HIPHOPにわかりやすい歌メロが乗っかってシティポップになるんじゃないかって思うんだよね。

カンノ:あと売れてるJ-POPをLo-fi HIPHOPアレンジでカバーして、それがシティポップという語られ方になるとかね。アジカンの「ソラニン」をLo-fi HIPHOP風なアレンジでハスキーな女性ボーカリストがカバーしたりさ(笑)

上野:その世界はヤバいね(笑)そういうものが後々、シティポップに再び括られるっていう。

カンノ:Lo-fi HIPHOPのあの絵が企業広告で出てきたらもう終わりだね。コンビニとか牛丼屋で見かけるようになったら。あの勉強机に座っている女の子が、松屋のカウンターだったっていう(笑)Lo-fi 松屋

上野:Lo-fi 松屋ってなに?(笑)一杯50円とか?(笑)

カンノ:そっか、200円台だった牛丼並盛の時代ってLo-fi 吉野家だったんだね(笑)

上野:もう国として終わってるけどね(笑)

カンノ:この話面白いですね。Lo-fi HIPHOPがシティポップになる話でしたが、お次は強気なシティポップを聴きましょう。喧嘩が強そうなシティポップです(笑)お聴きください、Suchmosで「STAY TUNE」

上野:久々に聴きましたね。

カンノ:そうですね。ロックバンドがシティポップという道具を手に取って「こんな面白いものがあるんだ~」っていう感じですね。

上野:なるほど(笑)

カンノ:これは僕も上野も当時感じてたことだけど、Suchmosが登場してきたときに「あっ。シティポップの終わりが始まった」という感覚があったよね。

上野:そうだね。シティポップと呼ばれる音楽を作っている人はたくさんいたし、そのジャンル解釈もちょっとずつズレていって、シティポップの定義もぼんやりしてきて、「このジャンルはこれからどうなるのかな?」と思っていたらSuchmosが登場してきて「この人たち以上にマスに届けるシティポップは存在しない」って思ったから「これでシティポップは終わり」って思ったんだよね。

カンノ:バンド方向でいうと、東京インディーっていう文化があって、これが僕からすると二分化した印象なの。それはD'Angelo方向のブラックミュージック沼みたいな。リズムがすごく変な方向に行くか、メジャーアーティストになってポップに見せるか。沼にズブズブに深まっていくか、軽薄化するかの二択が主ななかで、Suchmos「I so good~♪ He so good~♪」って出てきたんだよ(笑)

カンノ:で、あえてこんな言い方しますが、こんな馬鹿っぽいメロディと歌詞(笑)「何それ?」みたいな歌い方で出てきたときに、前述した二択でもないものが出てきて、「あっ、荒らされた!」って思ったんだよね。

上野:なるほど。

カンノ:あれは終わりの始まり感があったんだよね。そこからシティポップがどんどん言葉だけのものになっていくというか。ジャンル沼でも軽薄化されたものでもなく、道端に落ちてたシティポップを拾って「面白そうなもの、みっけ」みたいな感じ。これは上野が言ってたんだけど、ジャイアンのび太から「お前、面白そうなもの持ってんじゃん」って言われてひみつ道具を使われた感じ(笑)それまでシティポップを扱っていたのはのび太だったんだけど、ジャイアンに取られた感じがしたんだよね。その結果、ジャイアンが「STAY TUNE」という大ヒット曲を作っちゃった(笑)

上野:それが車のCMに使われるところまで行ったから「もう終わり」って思ったんだよね。

カンノ:でも結局それは終わりの第一陣で、このあとに第二陣、第三陣と続くって感じなんだよね。

上野:今振り返ると、たしかに全然続いたよね。

カンノ:そうそう。終わりの段階だったんだよね。でも「シティポップは、なんかオシャレっぽいもの」と定義してしまったのがSuchmosだったと思うんだよね。

上野:たしかに「STAY TUNE」は後世に再発見されそうだよね。

カンノ:「Plastic Love」と同じくらいすごかったと間違った言われ方をしてね(笑)

上野:では3曲目ですね。お聴きください、緑黄色社会で「Mela!」

カンノ:これはどういうことですか?

上野:これはシティポップでもなんでもないです(笑)

カンノ:そうだよね(笑)

上野:普通に正統なJ-POPバンドですね。で、僕らOK?NO!!が活発に活動していたころもわりとシティポップに括られがちだったんですよ。

カンノ:そうだったっけ?

上野:明確に「シティポップだ」と言われてたわけじゃないけど、なんとなくのグルーピングはされてたんだよね。僕らとかほかの周りの若い世代のギターポップをやるようなバンドも、なんか当時は一瞬だけシティポップというグループに入る空気があったんだよね。そうなると、いよいよ概念の幅をどこまで広げられるかって究極的に考えたら「J-POPはシティポップだ」と言われかねないなと思ったんだよね。

カンノ:多分、当時僕らがシティポップで語られた部分で音楽性は関係ないんだよ。人脈なんだよ。

上野:人脈は間違いなくあるよね。

カンノ:「どういう系統と仲が良くてつながりがあるか」という見られ方をされていて、それが東京インディー系とつながってしまったんだよ。

上野:で、人脈だろうがなんだろうが、「そういうふうに語られていたことがあった」という事実は残るから。

カンノ:「なんでthe band apartがCD屋のラウド・パンクコーナーに置いてあるのか?」っていう問題があるじゃん。

カンノ:ようはもともとメタルとかをやっていて、その系統と仲がいいからラウド・パンクコーナーに置いてあるけど、聴いてみたらめちゃくちゃセブンスコード多用していてカッティングも多くてすごくオシャレっていう(笑)全然違うっていう。

上野:全然違うんだけど、そういうCD棚に置いてある事実があるっていうことは、そういうことなんだよ。

カンノ:YOUR SONG IS GOODがなぜラウド・パンクコーナーに置いてあったかというと、前そんな感じのバンドをやってたからだけだし(笑)

カンノ:人脈がジャンルになってしまう怖さってあるよね。そうなるとジャンルが関係なくなるという。

上野:「ギターポップがシティポップに括られていたらなら、明るいギターが入っていろんな楽器が鳴っていたら、もうそれはシティポップなんじゃないの?」と思う人がいるのも自然なことだよね。その究極が「緑黄色社会はシティポップだ」ということかなと。

カンノ:もう終わりだね。終わり。こんな企画、やめよう!

上野:さすがに例としては極端かもしれないけど、でもその可能性も実験的に考えてみたらっていう。

カンノ:「明るいギターと鍵盤が入ったらシティポップ」っていうね。怖いね~。ということで2050年のシティポップの解釈はバグってるんじゃないかという話をしてきました(笑)

上野:勝手な妄想だけどね(笑)

カンノ:では最後に私の選曲で終わりなんですが、UNCHAINの「エイリアンズ」です。

上野:なるほど(笑)

カンノ:2050年までに歴史を改ざんすることが可能なのであれば、僕たちは「UNCHAINはシティポップである」ということを言い続けたいなと思います!

上野:なるほど、これに関しては再発見とかじゃなくて俺たちがでっち上げていく(笑)

カンノ:なんでみんな、「UNCHAINはシティポップだ」と語ってあげないんだよ?

上野:アハハハハッ!

カンノ:それが彼らの本望なんだから。

上野:だから勝手に決めつけるなよ(笑)

カンノ:結局、シティポップブームってその土壌ができた瞬間にワナビーが集まるんですよ。「シティポップっぽいものを作ったら流行ってるからそういうプレイリストにも入るし自分たちもそんな語られ方するし最高じゃね」っていうさ。手っ取り早いじゃん。今それがかっこいいんだし。で、若者だけがそのワナビーになってるわけじゃないんです。おじさんだってワナビーなんですよ。

上野:(笑)

カンノ:しかも「エイリアンズ」ですよ。キリンジの「エイリアンズ」はシティポップになったという歴史改ざんが行われたじゃないですか(笑)

カンノ:ということは「エイリアンズ」のカバーも改ざんは可能ですよ。しかもこういうアレンジですから。「俺たちをシティポップで語って!」という声なき声を読み取ろうよ!

上野:声なき声を聞いたんだ(笑)

カンノ:「俺たちもシティポップに入れて~!」っていう(笑)そう語ってほしいんですから。これは優しさですよ。

上野:全然優しくないですね(笑)

カンノ:だから今日はちゃんとUNCHAINさんをシティポップの棚に入れて終わりたいなと思います。それでは最後の曲、UNCHAINで「エイリアンズ」

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『Radio OK?NO!!』はパーソナリティーの上野翔とカンノアキオが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#okno」をつけてツイートしてください!お問い合わせはメール:radiookno830@gmail.com まで。