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サムオブ井戸端話 #068「もう音楽の機微がわからなくなった」(中編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

昔はわかっていた音楽の細かい機微がもうわからなくなったことについて語るサムオブメンバー。中編では、パッケージ化されたジャンルにダイブする精神こそ重要であること、音楽の機微を剥ぎ取ったものが『関ジャム』の平成ソングランキングで、そこから起きるカラオケでの具体的な功罪について語りました。前編は下記リンクから。

 

 

YOU:俺はNetflixで配信されてる『男はつらいよ』を50作を全制覇したんだよ(笑)それで次は『釣りバカ日誌』を見てるんだけど。

オノウエ:『男はつらいよ』はどれくらいの期間で制覇したの?

YOU:1年くらいかな。

カンノ:これは思ってたんだけど、YOU-SUCKがこのなかで一番主観な人ですよ。

YOU:たしかに俺は主観の人かも。なにか来たコンテンツに対して「これは俺にとって〇〇だ!」って本気で思えてエモくなっちゃう。

カンノ:このサムオブの文字起こしをやってて思うよ、YOU-SUCKが一番語りがエモい。

YOU:そうなんだよ。俺なんだよ。

カンノ:「俺がエモなんだよ」(笑)

YOU:映画でも小説でもなんでもいいんだけど、出てきた人物に対して自分に勝手に引き寄せてエモくなっちゃう。1つの作品にハマって見続けちゃう特性なんだよね。

カンノ:YOU-SUCKは特撮が大好きで、そこから感じられる機微もわかるし、当然音楽にもそれを感じたし、最近だと『男はつらいよ』や『釣りバカ日誌』にも「うわ~、なんだこれ~、ギャー!」ってちゃんと思えてるんだよね。

YOU:『釣りバカ日誌』の今だと普通に倫理的にアウトな表現に対して超ムカついたりしてるよ(笑)

カンノ:だからやっぱり、超ムカつけるんだよね。

YOU:「マジこの脚本家、意味わかんねえ!」って思ってるんだよ、94年のコンテンツに(笑)

オノウエ:30年前にブチ切れてる(笑)

カンノ:YOU-SUCKはマジで捉えることができるんだよね。で、一方の僕はもうマジがなくなってしまった。

YOU:俺は今流行っているコンテンツからちょっと距離を取ってるんだよね。今と差異が大きいものをむしろ見るようにしていて。だってそっちのほうが今の自分にとって新しいんだもん。

カンノ:あぁ~、逆の発想ね。むしろ昔のコンテンツのほうが新しい。

YOU:前編で出たオノウエとお父さんの話でいうと、お父さんからするとオノウエの世代で聴いてた音楽はそれでパッケージ化されているし、オノウエから見たお父さんの好きな音楽はそこでパッケージ化されてるんだよ。

カンノ:「これってこうだよね」ってなっちゃうんだよね。それがパッケージ化。

YOU:で、俺はそのパッケージのなかにダイブしちゃうの。そこで「こんな豊かな世界があったんだ」って思えてるんだよね。

カンノ:ちゃんと住人になるって大事だよね。

オノウエ:パッケージのなかにダイブしないと、そのパッケージ内の差異がわからないんだ。

YOU:そうそう。でも難しいなと思うのは、いま流行っている音楽のなかにダイブしようと思っても、いま音楽を作っている人は歴史がそんなにないから、ダイブしようがないんだよね。現場に行くしかない。

カンノ:もう僕は本当にね、明日にでも2000年代に帰りたいんです。

YOU:2000年代にディープダイブしたい(笑)

オノウエ:「2000年代にディープダイブ」は全然ディープじゃないから(笑)でもさ、果たして2000年代に帰ったとして、そこでちゃんと機微を感じられるのかな?

カンノ:僕はその時代を生きた人間だからね。

オノウエ:っていうことはパッケージの話だよね。

カンノ:パッケージのなかの住人だったんだよね。「RIPもKICKもケツメイシも一緒」っていうパッケージってあるじゃん。でも僕のなかではRIPもKICKもケツメイシも全然違うから。

オノウエ:カンノはちゃんと2000年代村の人なんだよね(笑)

カンノ:だからそういう機微をちゃんと言葉にしないと『関ジャム』の平成ソングランキングでORANGE RANGEの「ロコローション」が9位に入っちゃうんだよ。

オノウエ:本当にそれずっと言い続けてるよな(笑)

カンノ:あのランキングはおかしいんだよ!

YOU:あんな曲、9位じゃねえよ!

オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:俺たちは未だに「オレンジレンジアンチスレ」に書き込んでる人だから(笑)

YOU:今、アンチスレに書いてやるよ!

オノウエ:令和4年に?(笑)

YOU:ちなみにBLEACHのアニメの主題歌だった「アスタリスク」って曲は大好きです(笑)

カンノ:べつにORANGE RANGEを悪者にしたいんじゃなくて、「ロコローション」が9位に入っているのに「Fantasista」とか「マルシェ」とか「楽園ベイベー」が入っていないのはなにかがおかしいよねっていう。

カンノ:で、僕が引っかかっているのは、「『ロコローションは良い曲だった』とポジティブにパッケージしているからOK」っていうことで流してほしくないんだよね。

YOU:なるほどね。

オノウエ:ここで具体的に起こりそうなことでいうと、2000年代が青春だった会社の先輩がいて、新入社員の人が『関ジャム』の平成ランキングを鵜呑みして、飲み会の2次会のカラオケで「エイリアンズ」を歌ったら誰も知らないっていう現象だよね(笑)

YOU:それはあるかもしれないね。

カンノ:先輩に気を遣った結果、より訳がわからないことになる(笑)

オノウエ:具体的な功罪ってこういうことだよね。

カンノ:2000年代当時はべつにキリンジは流行ってないからな。

YOU:当たり前の話かもしれないけど、付き合いでカラオケに行ったとき、わりとその場にいる人に合った選曲をすることがあるのね。反応を見る限り、大体間違った選択はしてないなと自分では思ってるんだけど。でも今の子ってそれを当てるのはわりと困難な気がするんだよね。

カンノ:今は前提がないもんね。

YOU:たとえば会社の後輩が俺への接待として、俺向けのカラオケの選曲をしたとするじゃん。多分、全部外すと思うんだよね。2000年代以降の人へ当てにいくのは結構難しいと思う。

オノウエ:困難だろうな~。

YOU:最近大学を卒業して、俺ら30代前半の世代とカラオケに行くとなったら。「その人たちに合う選曲なんだろう?」って考えたときのラインナップは難しいよ。

カンノ:たとえばレミオロメンの「粉雪」を歌われたら絶妙に違うよね(笑)

YOU:あ~、そうかもしれない。

カンノ:「歌ってもらっちゃってるな」っていう気分になるよね。でも、湘南乃風の「純恋歌」が来たら一周して楽しく一緒に歌っちゃうよね(笑)

YOU:あ~、一緒に歌っちゃうかもしれない(笑)

カンノ:これは相当ハイコンテクストな機微だけどね(笑)

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