SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
『シナぷしゅ』という番組を子どもに見せながら自分もハマってしまったことについて語るYOU-SUCKメンバー。後編では『シナぷしゅ』に選ばれるミュージシャンと『チェンソーマン』のエンディングに選ばれるミュージシャンの違いや、「モノとしての音楽」のありがたさについて語りました。前編は下記リンクから。
オノウエ:『シナぷしゅ』は子ども向けだけど親が楽しめるコンテンツなんだね。
YOU:なんかね、アニメーションが子どもに説明するにはちょっとマニアックすぎる気がするんだよね。抽象的なの。でも幼児からすると、それが流れてくるだけで見入っちゃう感じなの。意味を聞かれると難しい。親はなんとなくやろうとしていることはわかる、子どもは頭での理解は難しいけど感覚的に見入ってしまう。
カンノ:『シナぷしゅ』でKEMURIが楽曲提供してるけど、それはKEMURIが「赤ちゃんはこういう音が好き」っていうデータをもとに作ってるの?
YOU:いや、多分違うと思う。
カンノ:違うよね。KEMURIが「赤ちゃんでも喜びそうな曲」っていうのを感覚で作ってるよね。
YOU:そうだね。KEMURIはただKEMURIの曲なんだよね。
カンノ:マジでちゃんとKEMURIだったよね(笑)歌詞を多少わかりやすくしただけで。
YOU:そうなんだよね。そこにビックリした。民謡クルセイダーズもガチの民謡を当ててきてるし。
YOU:ここで『シナぷしゅ』の対立軸として持って行きたかったのが米津玄師なの。米津ってターゲットに対して当てに行ける人なんだよね。つまり発注主にね。でも『シナぷしゅ』の音楽を聴いてて思うのが、受け取る人のことをあまり考えてなさそうな感じなんだよね(笑)
カンノ:あ~。『シナぷしゅ』に楽曲提供している人って、その音像が見える人だよね。KEMURIがやりそうな音楽とか、民クルがやりそうな音楽とか。でも米津ってなんでもできちゃうから、逆に米津の色がないように思えちゃう。
YOU:「パプリカ」も作れるし、「KICK BACK」も作れるからね。あんな初期eastern youthみたいな声を出すとは思わなかったもん(笑)
カンノ:自分で全部できちゃう人って自分の色が作りにくいんだよ。Vaundyだってそうじゃん。
YOU:米津もVaundyも『チェンソーマン』に合わせて作ることができるんだよ。で、これはマーケティングが行き過ぎてると思うんだよな。
オノウエ:なるほどね。米津とかVaundyは過剰適応するってことね。
YOU:そうそう。たとえば『シナぷしゅ』の東郷清丸の曲は、アニメーションがあるから子ども向けの印象があるだけで、それがなければ普通に東郷清丸のアルバムのなかの1曲として全然聴けるの。
カンノ:『シナぷしゅ』に選ばれるミュージシャンと、『チェンソーマン』に選ばれるミュージシャンはたしかに噛み合わないな。
YOU:噛み合わないと思う。
カンノ:『チェンソーマン』に選ばれている人たちってビジネス的に音楽で成功している人たちで、『シナぷしゅ』は自分のやりたい音楽をやっている人たちの印象かもな。なんか前者は野心に満ち満ちた人たちの意気を感じちゃうんだよ。
YOU:『チェンソーマン』のエンディングは本当にクリエイティブが素晴らしいし、それと同時にお金の匂いもするっていう(笑)
カンノ:たとえば僕はPUNPEEは『チェンソーマン』にいくと思います。
YOU:うわ~、どっちかな~?PUNPEEが『チェンソーマン』にいくか『シナぷしゅ』にいくかで賭けができるね(笑)
カンノ:丁半できるね(笑)
オノウエ:ちょっと話変えるんだけど、『チェンソーマン』はマス的な人気を獲得したミュージシャンたちのある種のコンペ状態になってると思うんだけど、それとは別にそこまでの人気は獲得していない傍流にいるような人たちが幼児番組に曲を提供していたのっていつからなんだろうね。平沢進が『みんなのうた』に曲を提供したことがあったりさ。
カンノ:僕らの知ってるところだと前編で話した『天才てれびくん』や『ポンキッキーズ』がそのラインだったよね。
オノウエ:そこを今『シナぷしゅ』が担ってるんだね。
YOU:親が見てて飽きないんだよ。それって大事だなと思ったね。
カンノ:音楽っておもちゃなんだよね。
YOU:それは間違いないね。
カンノ:僕、小学校のとき音楽が嫌いだったんだよ。今思うとあれはそういう反抗期だった気がするね。音楽がつまんなかったんだよ。
YOU:資本主義に毒された音楽の機微をもう小学生のときに感じていたのか…!?
カンノ:違う(笑)小学生のときはお笑いとかバラエティ番組が好きだったんだけど、それは音楽と対極なものとして捉えてたと思う。
オノウエ:カンノはたまにその感覚の話するけど、俺はわからないんだよなぁ。
カンノ:音楽はマジ。本気のもの。お笑いは斜め目線。なにか対象を馬鹿にした目線。
オノウエ:それは何歳のときに思ったの?
カンノ:今は言葉にできるから言えるけど、当然この感覚は小学生のころじゃ言えなかったからな。でも6歳くらいから爆笑問題が好きだったから、肌感覚としてはあったかもね。
オノウエ:早熟しすぎてるけどな(笑)
カンノ:爆チュー問題ってあるじゃん。あれってそういう斜め目線で社会派の爆笑問題があえて幼児番組をやっているっていうことだもんね。で、それがすごく好きだったんだよね。それは『シナぷしゅ』という幼児番組にKEMURIというパンクロックバンドが出ている感覚と似ているかもしれない。
オノウエ:なるほどね。でもKEMURIじゃないんじゃない?爆笑問題って危険な香りがするけど、KEMURIはそんなに危ない匂いはないじゃん。たとえば『シナぷしゅ』にBAD HOPとかが出たらわかる気もするんだけど。
カンノ:それはやりすぎな気もするけどな~。
オノウエ:でも見ている側の受け止め方としては、極端かもしれないけどそれくらいのものじゃないかな。
カンノ:あれは?『シナぷしゅ』にBRAHMANが出るっていうのは。
オノウエ:それはすごくわかる!(笑)
YOU:BRAHMANが『シナぷしゅ』に出たら親側が姿勢を正して見ることになるかもしれない(笑)
オノウエ:OAUとかで出るなら可能性はゼロじゃないかもな。
YOU:いろいろ喋ったけど、子育てする人にとって『シナぷしゅ』はありがたいですね。本当に助かってます。
カンノ:なんかさ、音楽をモノとして利用することに対してまだ僕はちょっと抵抗があるんです。でもこれが親になると、本当に切実な話になるんだろうなとは思った。
YOU:切実ですね。
カンノ:「モノとしての音楽ってなんだよ?」って思ってたんだけど、「モノとしての音楽って本当にありがたい」っていうことは切実な話なんだよね。
YOU:うちの赤ちゃんはオルゴールの音を聴くと一旦落ち着くんだよ。音楽の効能って本当にあるんだよね。
カンノ:それは子どもがいないと感覚としてはわからないんだろうね。
YOU:それはわからない。俺もわからなかったから。実感がないと。
カンノ:僕もいずれ結婚して子どもができるのかもしれないけど、そうしたら”子どもができた人生”を今後歩むことになるんだもんね。だから今、子どもも結婚相手もいない状態の人生をむしろ大事に生きようと思いました!
YOU:お前、ふざけんなよ~。
オノウエ:「ふざけんなよ」で締めです(笑)