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サムオブ井戸端話 #072「NUMBER GIRLと菊地成孔から”散り際”を考える」(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

NUMBER GIRLが再度解散することや、菊地成孔が「最後のバンド」と銘打って始めた"ラディカルな意志のスタイルズ"のライブ映像を見て、「こんなに綺麗な老いの形があるんだ」と思ったオノウエメンバー。以前「ミュージシャンの老いと引退」の話をしてから一定期間を置いて、また改めてミュージシャンの"散り際"ついて語りました。

 

 

オノウエ:以前、「ミュージシャンの老いと引退」という話をしたじゃないですか。

オノウエ:今この収録をしているのは12月11日の午前中で、NUMBER GIRLがこのあと解散するじゃないですか。

カンノ:私はこのライブ行ってきますよ!(終演後、カンノメンバーは泣きながら帰宅しました)

オノウエ:再結成したNUMBER GIRLがまた解散すると。それともう一つ。これは僕は直接見たわけじゃないですが、ちょっと前に菊地成孔が「最後のバンド」と言って始めた”ラディカルな意志のスタイルズ”っていうバンドのライブ映像が上がってるんですよ。

オノウエ:で、「ミュージシャンの老いと引退」で話したときは「ロックミュージシャンが全盛期のときより太った見た目になってまでも続けていくのはカッコ悪いって思っちゃうんだよね」みたいなことを言ったんだけど、ナンバガが再度解散するとか、菊地成孔が「最後のバンドだ」って言ってバンドをやることとかを見て、「こういう形でバンドをやるのは美学があって綺麗な老いだな」って思ったんだよね。NUMBER GIRLが再度解散するのはそれはそれで良いことだなと思ってね。

カンノ:あれは特例だよね。あんな解散は見たことないよ。

オノウエ:あんな綺麗な解散は見たことないね。

カンノ:新曲を出さずに。そして2002年にバンド脱退を申し入れた中尾憲太郎が「新曲作らないの?」って言うっていうこととかさ。

オノウエ:『スッキリ』で言ってたね。

カンノ:こんなに丸く収まることってあるんだね。

オノウエ:そうだよね。それぞれミュージシャンと老いの話は、以前サムオブで話してから一定期間経ったうえで、いろんなこと思ってるんじゃないかなと思ってね。

カンノ:ミュージシャンは一旦置いといて、「死」の話をしていい?

オノウエ・YOU:アハハハハッ!

カンノ:今年は宮沢章夫が亡くなって、三遊亭円楽が亡くなって、アントニオ猪木が亡くなって、この前は渡辺徹が亡くなったでしょ。あとは志垣太郎も。なんか考えちゃうよ。子どものころにブラウン管のテレビで見てた人たちがこんなに亡くなるのかって思っちゃったね。僕らは平成2年生まれですけど、そういう年齢ってことなんだね。

オノウエ:僕らが見ていた人たちが死ぬっていうことは今年はたくさんあったね。そういう訃報のニュースを見るときにどういう気持ちになる?

カンノ:僕は引っ張られちゃいますね。なぜって私は『64マリオスタジアム』世代ですから。

オノウエ・YOU:アハハハハッ!

カンノ:円楽さんや猪木さんはその世界のカリスマだから、そこに対して思い入れのある人もいっぱいいるからここでは特に喋らないけど、渡辺徹は僕にとってゲームの伝道師でしたから。

オノウエ:めちゃくちゃ特殊な認識だけどね(笑)

カンノ:渡辺徹って任天堂の人でしょ?

YOU:違うよ(笑)

カンノ:でも子どものころはそういう認識でしたよ。最初の印象はそこからだから。いろんな任天堂のゲームを教えてくれたんだから。そういう人が61歳で亡くなっちゃうんだもん。

オノウエ:若いよね。

カンノ:でもそうなんだよね。60代って全然死んじゃう可能性があるんだよね。それで言ったらミュージシャンの話に戻すと、僕たちが中学高校のころにMDで聴いていた2000年代のミュージシャンたちって今は40代50代になってるわけだもんね。そのなかでもいろんな形で亡くなっているミュージシャンを見てるからね。

オノウエ:亡くなってしまうことは当然起こるんだけど、それとはまた別で「この散り際は綺麗だな」みたいなことってほかにどういうことがあったかを考えたくてね。菊地成孔のラディカルな意志のスタイルズっていうバンドは、もともとあの人はセルフブランディングが上手い人だと思うんだけど、いろんなバンドを経てきた菊地成孔が「これが自分の最後のバンドです」と言ってバンドを始めることの上手さというか、「これをもって自分のバンドとしての音楽キャリアを終わらせます」ということを前もって言うながら若いスーパープレイヤーを集めて演奏するっていうのはすごいなと思ってね。

カンノ:菊地成孔もコロナで重症になったよね。そういうこともあるのかしら?

オノウエ:どうなんだろうな~。菊地成孔が以前やっていたDC/PRGっていうバンドがマンネリ化してきたから終わらせて、その代わりに最後のバンドを始めたから、コロナは直接関係はないと思うけど、もしかしたらどっかでそういうこともあるのかもしれない。ブログを読む限り壮絶だったもんね。

カンノ:ミュージシャンの散り際ってまだ難しいのは、これはその老いの話のときにもしたけど、山下達郎69歳がまだ最前線だからさ。

YOU:そうなんだよな。

カンノ:まだ全然終わり際って確立されてないよね。たとえば芸人だとさ、昔はテレビにネプチューンがめちゃくちゃ出てたじゃん。それが名倉さんは病気したからちょっとフェードアウトして、原田さんは俳優になって、ホリケンさんがお笑いを担っているというね。あんなに3人で出てたのに、だんだん年を取ると、それぞれが合った方向に行くんだなと思ったんだよね。宮迫がもうテレビに出てないんだよ?

オノウエ:フフッ。

カンノ:中田敦彦が外国にいるんだよ?

オノウエ・YOU:アハハハハッ!

カンノ:「何それ?」じゃん。

オノウエ:そういうレベルのドラスティックな変化って音楽で起きてるのかな?まぁ、米津玄師ってそういうことか。

カンノ:大雑把に言うと、バンドカルチャーがだんだんと落ち着いてきてヒップホップが台頭してきて、いわゆるバンドマジック的なものよりもマルチプレイヤーという存在が重宝されていって。楽曲面だとサブスク時代に合わせることになるのでイントロが削ぎ落されて、CDが売れまくっていた時代は4~5分の尺でバラードが売れまくっていたのが3分もない楽曲が売れるようになり、そしてTikTokの台頭によりその曲で踊れるかどうかも重要視されて。手遊びみたいな動きができる曲が売れるとか。あとは情報量が多いメロディと歌詞の楽曲をハスキーボイスの女性が歌ったものがTikTokでバズるとかさ。それをどのボカロPがプロデュースしてるのかどうかっていう。”売れる”ってこういうことです。

オノウエ・YOU:アハハハハッ!

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