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サムオブ井戸端話 #082「スペースカンフーマンから考える音楽の”おもしろ”と場づくり」(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

スペースカンフーマンというバンドが好きなオノウエメンバー。音楽がものすごくできる人たちが組むふざけたバンドの音を聴いたうえで、音楽のことをよくわかっていないお笑い芸人の音楽ライブが「サムい」と思ってしまうことや、"音楽"と"おもしろ"を同時に感じさせることについて考えました。

 

 

オノウエ:スペースカンフーマンというバンドがいたんです。ライブの動画を2人に送ったんですが、どうでしたか?

カンノ:オノウエ君が好きそうなバンドだと思いました(笑)

YOU:以下同文です(笑)

オノウエ:そうです、好きです(笑)

カンノ:今は活動しているの?

オノウエ:今は活動してないね。たまにお祭り的にやる感じで、2018年以降はやってないかな。メンバーはギターのAxSxEさんがNATSUMENのリーダーです。この人は木村カエラlyrical schoolとかに楽曲提供をしたりしています。

オノウエ:で、ドラムの人も「この人が師匠だ」と言っているミュージシャンの人も多いです。つまり、普通に音楽ができるすごい人たちなんです。そんな人たちが”スペースカンフーマン”というふざけたバンドを組んでいたんです。

YOU:それは元々すごい人たちとして組んでたの?

オノウエ:いや、最初はそうではなかったと思う。このバンドはすごくふざけてるんだけど、頭良いなとも思うの。スペースカンフーマンは『スポイツ』というアルバムを出したあとに『スポイ2』というリミックスアルバムを出すんですが、そのリミキサーにBuffalo Daughterのシュガー吉永さんとか、羅針盤の人とか、あと浅野忠信がいたりするの。

オノウエ:この辺りのアンダーグラウンドのヒーローたちをリミキサーとして呼んでいて、リミックスの内容がもう全然違う曲になっていたりするんです。

YOU:「リミックスってどういう意味だったっけ?」と問われる感じね。

オノウエ:そうそう。「リミックス」という言葉を使えばなんでもできるみたいな(笑)そういう意味で、地頭の良さが「ふざける」の方向に行ってて、批評性を発揮してるなって思ったの。送ったライブ映像もめちゃくちゃ笑い取ってるじゃん。それもその場でのMC力の高さとか、曲もふざけてるけどハードコアを模しながらという前提だから、音楽のフォーマットを用いながら笑いを提示してて、それらすべてがまるっと批評性が高いなと思ったんです。音楽のアプローチからそういうことを上手くできる人たちだなって思ったの。でね、なんでスペースカンフーマンの話をしようと思ったのかというと、お笑い側の人が音楽を用いたときの”サムさ”ってあるじゃん。

YOU:ほぉ。

オノウエ:お笑いの人が「音楽活動もやってるんです」と言ってライブをやるんだけど、それがなんか面白くなくて…。

カンノ:それはたとえば誰ですか?たとえば誰ですか?

オノウエ:えっと…(苦笑)この前とある芸人さんの音楽ライブを見たんですけど、それが非常に辛くて…(笑)「お笑いのネタを音楽のフィルターを通したとき、そのアプローチは絶対に間違ってるよな」というのが見てて辛くて。

カンノ:その芸人さんは音楽のことを全然知らない感じ?

オノウエ:そうだね、音楽のことを知らない感じだし、音楽を使ったときに「こうしたら面白がられる」という感覚を音楽側からわかってない感じかな。お笑いの視点でしかものを見てないから、それが音楽になると全然的外れなことになってたんだよね。そこから逆に考えて、音楽の人なのに笑えることをする能力ってものすごいなって思ったの。それがスペースカンフーマンかなって。

カンノ:この話で僕が思い起こすのはトリプルファイヤーかな。

オノウエ:あぁ、なるほど。

カンノ:ちょっと前にライブを見る機会があったんですけど、楽器の演奏がミニマムじゃん。だからボーカルの吉田さんが言う大喜利なのかエッセイなのかわからない歌詞が聞き取りやすいんだよね。初めて生で見たんだけど、そのクリアさにビックリしたの。言ってることがわかるし面白い。それはバンドがループだったりミニマムに徹しているのは大きいんだろうなと思ったね。ギターもストロークというよりは単音を鳴らしてる感じで、その音のアホっぽさと吉田さんの腑抜けたエッセイみたいな言語感覚がすごくマッチしてるなって思ったの。これは「笑える音楽ってなにか?」を考えた結果の出し物に感じたね。

オノウエ:スペースカンフーマンにしろ、トリプルファイヤーにしろ、その能力って何なんだろうね?

カンノ:「どれだけ自覚的か?」というのはある気がするな。「これを言ったら、お客からこういう反応が来る」ということはある程度わかってると思うんだよね。

オノウエ:それにプラス、音楽自体をイジくっていることをしていると思っていて。それがお客もわかっているかどうかはある気がする。

カンノ:ちなみにオノウエが見た芸人の音楽ライブって、良い曲をやりたい方向なのか、ウケを取りたい方向なのか、どっちだった?

オノウエ:ウケを取りたいだね。

カンノ:ということは、お客の笑いが起きれば起きるほど合格ってことね。で、笑いは起きてた?それともファンだけ笑ってた?

オノウエ:ファンだけ笑ってたね。

カンノ:じゃあ結果的にサムいバンドみたいなことになってるね。

オノウエ:そうなんだよ。音楽ライブじゃなくて、お笑いライブの1ネタとしてやっていれば違ってたかもしれないけど。スベってる音ネタを音楽ライブで見せられる感覚かな。

YOU:なかなかシビアだな(笑)スペースカンフーマンは演奏の上手い下手とかでもなく、あれをやることもファンもわかってるコミュニティだよね。

オノウエ:そうそう。

カンノ:これは悪口のつもりで言ってるんじゃないけど、スペースカンフーマンは金持ちの道楽に見えた。

オノウエ:あぁ、そうそう。それはそうだと思う。俺は「好きだった」と言ってるけど、実際に生でライブは見たことないし、映像も最近のやつしか見たことないので、出始めた当時はどのように受け入れられていたのかさっぱりわからないんだけど、最近のライブ映像を見る限り、もうファンが受け入れられる体制はできていて、スペースカンフーマンもそれぞれのメンバーがプロとして活躍している状態であれをやっているから、金持ちの道楽とか神々の遊びに見えるのはとてもわかる話だね。

カンノ:余裕から出るやつだよね。

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