SOMEOFTHEM

野良メディア / ブログ / 音楽を中心に

サムオブ井戸端話 #148『J-POP界のコラボレーション供給過多』(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

B'zの「Get Wild」のカバーやMY FIRST STORYとhydeのコラボ楽曲など、ミュージシャン同士の横のつながりを見せてくる楽曲が多いと思ったカンノメンバー。音楽市場の規模が小さくなるなか、コラボやカバーで話題性を出すやり方があまりにも多いため、ミュージシャンのコラボ楽曲に驚かなくなったことについて語りました。

 

 

カンノ:僕は普段、サブスクの新着プレイリストを聴き流しながら生活しています。その新着プレイリストの頭のほうではなく、聴き流して1時間くらい経った中間部分くらいのときに、なんか聞き覚えのない「Get Wild」が流れてきたんです。まぁすぐにB’z稲葉さんがTM NETWORKの「Get Wild」をカバーしていたということがわかったんだけど、ビックリしましたね。

カンノ:で、その次に流れてきた曲がMY FIRST STORYとhydeのコラボ楽曲だったんです。

カンノ:連続で「マジ?」って思いました。「何これ、超味濃いんだけど」みたいな(笑)でね、この2曲って世間的に話題になってた?

YOU:B’zの「Get Wild」のカバーはラジオで流れてたのを聴いたけど、世間的にどうかはわからないな。

カンノ:この手のコラボレーションって、たとえば2000年代だったらめっちゃ世間的に「えっ?何これ?」みたいな話題になったり、ワイドショーで取り上げられたりしてそうなイメージなんだよ。

YOU:2000年代だったらかなり大ニュースな気がするね。

カンノ:そうだよね。「B’zTM NETWORKをカバー!」「ラルクhydeと森進一の次男率いるバンドがコラボレーション!」ってめざましテレビで言っててもよさそうじゃん。でもそれが、なんか通り過ぎちゃってる気がしたの。「何でかな?」と思ったときに、ちょっと前まではそんなにコラボレーションとかカバーって多くなかったと思うんだよね。それはミュージシャン同士のコラボもそうだし、カバーとかトリビュートアルバムもそう。人の横のつながり系で驚くことがなくなったなと思った。「こことここが組み合わさった!」ということに関して、なにも思わなくなった。で、それはコラボの供給過多なののせいなのかなと思ったんです。だって、B’zって縦のつながりとか横のつながりとか全然わかんないじゃん。

YOU:そうだね、B’zは真面目に聴いたことがないけど、孤高な印象だよね。

カンノ:hydeとかは、昔のワイドショーでよく取り上げられてたやつでいうと、L'Arc〜en〜CielとLUNA SEAGLAYの野外コンサートやツアーの動員記録を競う合うような報道のされ方とかしてましたね。

YOU:そんなこともあったね〜。

カンノ:そういう横のつながり感のあるニュースの数は増えたけど、規模は小さくなって、結局あんまり驚かなくなったなと思う。言ってしまえば、一つひとつの価値が落ちてる気がする。たとえばフィーチャリングって言葉も、ヒップホップの世界で使われていた用語だったけど、今やそんなこと誰も思ってないでしょ。

YOU:そうだね。でもUSのポップシンガーとかはフィーチャリングやコラボレーションを普通にやってるじゃん。J-POPにおいてコラボレーションはそもそも珍しいものだったよね。ただ、これが歌謡曲になるとまた話は別だけどね。郷ひろみ樹木希林とか(笑)

YOU:それは置いといて、90年代以降のJ-POPだと、コラボレーションが話題になることを見越してやってるよね。めちゃくちゃ狙ってやってる。「ただ単に仲が良いから」みたいなパターンは基本ない。

カンノ:そこには政治があるよね。どう話題を取っていくかという。

YOU:GLAYEXILEというもはや誰も覚えていないコラボレーションとか。

カンノ:アハハハハッ!例えがそれかよ(笑)

YOU:でも当時、めっちゃ話題になったじゃん。かなり売れたでしょ。

カンノ:めっちゃ久しぶりに思い出したな(笑)あれは「Choo Choo TRAIN」の翌々年くらいだったと思うから、今から考えるとEXILEの勝負期だもんね。たしかTBSの大型バラエティ番組の主題歌みたいな感じだったよ。

YOU:あれは話題になったからまだいいけど、話題になってないコラボって腐るほどあるじゃん。

カンノ:GLAY×EXILEは新着プレイリストで今の時代流れてきたら、B’zが「Get Wild」をカバーしたときの味の濃さは同じくらいな気がするんだけど、下手したらそのコラボも新着プレイリストの中間で流れてくるかもね。頭のほうではない。1発目に来ないかもしれない。

YOU:でも「Get Wild」のカバーはさすがに話題になってたでしょ。

カンノ:そうなの?

YOU:もちろん若い子は聴いてないと思うよ。だってどちらもそんなに知らないでしょ。

f:id:someofthem:20240718111707j:image

サムオブ井戸端話 #147『近年のスチャダラパーのヤバさとファストフード的大喜利表現』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

スチャダラパーの企業案件楽曲の怖さと軽さを語るサムオブメンバー。(後編)では、J-POPの世界で大喜利やものの例えが蔓延っていることから、ファストフード的な表現がますます強くなっていることについて語りました。(前編)と(中編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:スチャダラパーって言葉遊び、構造遊び、取捨選択のセンスが抜群だと思うんだけど、そういう表現に触れると逆に大喜利って厳しくて難しいものだなと思うんです。Mrs. GREEN APPLEの「コロンブス」はその大喜利に失敗した感じに思えるの。

カンノ:大喜利というか、「ものの例え合戦」みたいな。

YOU:わかる。ヒゲダンとかRADWIMPSの歌詞も、ものの例えが過ぎてかえってややこしくなっているものもあるよね。

カンノ:ものの例えはすごくセンス問われるなと思って。今の日本って誰もがラップできて、誰もが大喜利できる国だなと思うの。X(旧・Twitter)で流れてくるフリースタイルラップの動画と大喜利的なものを見るのがとても疲れる。

YOU:疲れるよね(笑)

カンノ:みんな大喜利が大好きじゃん。

YOU:わかるけど、俺も大学生のころを考えると、「うまいこと言ったろう!」みたいな感じだったから、仕方ないなとも思っている。

カンノ:大学生ならまだかわいいけど、大人も大喜利したがってるでしょ。

YOU:大人もやってるの?それは気持ち悪いな(笑)

カンノ:でね、大喜利やものの例え的な考え方は、大衆動員に使いやすいツールにもなってるなと思うの。それでババを引いたのがミセスな気がするんだよね。これまでものの例えでうまく大衆を動員できていたんだけど、今回はしくじったんだと思うの。

YOU:同意しますね。本当にものの例え合戦の果てにあるのが今回の話だと思う。これに関しては、ちょっと音楽の話から離れちゃうんだけど、吉本隆明っていう亡くなっている詩人で思想家が、娘の吉本ばななの小説がすごく話題になっていたときに、「これはマクドナルドのハンバーガーみたいな文学だ」って評したの。

カンノ:ほぉ。

YOU:それはどういうことかというと、吉本ばななの代表作の『キッチン』って当時としてはすごくリーダブルな文章で、話の内容も入ってきやすいし、わかりやすく勇気が出るというか、「読んで良かったなぁ」と思う本なんだよね(笑)全然本を読まない僕の両親ですら『キッチン』の単行本は持っていた。そのくらい売れた本なんだよね。

YOU:では、なんでそんなに一般の人にウケたのかというと、使われている表現や言葉が回りくどいものではなくなったというのもあると思う。『キッチン』は87年の作品だけど、それ以前の、いわゆる純文学と言われる領域の作品って回りくどいことを言ったり、直接言わなかったり、そういうことを読者が読み解く必要があった。だからこそ、吉本ばななの登場は純文学の世界においてとても新しかったのだと思うけど、そこから30年以上経過して、その歴史を振り返ることができないくらいに、みんなの身体に染み込んでいる状態だと思う。そうなると、リーダブルなのは当たり前だけど、文学作品として成り立たせるためには、日常の機微をうまく表現する必要が生じた。吉本隆明は、文学作品を日常の言葉と遊離した独自の世界としてみていたけど、自分の娘がそれを日常の世界に持ってきたということを危惧している。それが「ハンバーガー」という言葉に表れている。だから、吉本ばななが出てきて以降のJ-POPって、わかりやすくて読み解く必要がない「大丈夫ソング」に溢れているんじゃないかと思うんだけど。カンノも「大丈夫ソング」と揶揄した遊びをポッドキャストでやってたけどさ(笑)

カンノ:「いつだって大丈夫 この世界はダンスホール

YOU:そういう言葉が広まった果ての世界。

カンノ:ハンバーガー、つまりファストフード的な言葉だね。

YOU:それがかつて「それはハンバーガーだから、ハンバーガー以外のもの食べなくちゃだめだ」って指摘した人がいたとは思えないくらい、ハンバーガーかそれに類するファストフードばかりになっちゃった。

カンノ:なるほどね。

YOU:ファストフードの世界のなかで芸術点を競い合っている感じ。しかもファン心理として、みんな自分の好きなものをいいものと思いたいわけじゃん。自分の推しを絶対視しないなんて小難しいことを考えてる人はそんなにいないんですよ。まぁ、それはある程度仕方ないんだけど。そのわかりやすい言葉を発するなかでの競争というか、それが前提じゃないとゲームのスタートにも立てられない状態。ただ、「これはダメじゃない?」というリテラシーはネットでは見ることができるので、ファストフードを作り続ける業界と、ある程度リテラシーのある受け手というズレ。リテラシーのある作り手と受け手にとっては、「こういうことを言ってはいけません」「それは歴史的にダメとされています」みたいなことを踏まえたうえで楽曲を作らなきゃいけないのが当たり前になっている。そこを踏み外すと、炎上につながる。リテラシーがあって、耳や目が肥えた人たちがMVを見て「あれはダメでしょ」って言うこと。業界と受け手の乖離だと思いましたね。

カンノ:大喜利とか、ものの例えとか、その構造がどれだけ身体に入ってるかだと思うんだよね。たとえば、いっちょ前に「お笑い風情でございます」でなにかやろうとすると失敗するんだよ。やり方とか、それによってなにかを蔑ろにしてしまう部分がないかとか、そういう判断をちゃんと持たないと、単純に面白がりで全部通過させちゃうからさ。そういうことがセンスにつながるから。「歴史の偉人を使って普遍的なメッセージっぽい歌詞で、エクストリームな歌と展開のJ-POPにしよう」となると、いい曲として成立させたつもりがセンスのないものになってしまうという。だから大喜利脳やものの例えで作ろうとすると危なっかしい。

YOU:なるほどね。

カンノ:あと最後に話したいんだけど、僕が最近音楽に求めていることなんだけど、ファストフードの話になりましたが、それってみんながしっかり理解しているような濃い目の味を安価で買えるようにして、口に運んで「あの味だ」と思わせるということだと思うの。

YOU:ファストフードってそういうことだね。

カンノ:J-POPもそういうことだと思うんだけど、僕はなにを求めているかというと、新食感だなと思うんです。

YOU:新食感(笑)

カンノ:「この噛み応え、全然知らないんだけど」みたいな音楽を聴いたときの興奮度合いは半端ないですよ(笑)

YOU:「こういう切り口で来たか」みたいなね。

カンノ:そうそう。それってファストフードからはなかなか生まれないよね。安定してないから。全然知らない地方のお菓子メーカーから、とんでもないお菓子が生まれて、「これヤバいぞ、ふわふわ食感で甘じょっぱい」とか言いたいんだよ(笑)

YOU:なるほどね(笑)

カンノ:そういうニュアンスを音楽から得たいんだよね。

YOU:俺とカンノは高校生からの付き合いで、過ごしてきた期間も長いし、見たもの聞いたものも似てるはずなのに、微妙に好みにズレがあるのがわかった気がした。俺は結局、オーソドックスな味を求めている気がする。高い店に行ったら高いものが食べたいし、安い店に行ったら安くて早く出してほしいし。

カンノ:たとえば僕たちは生まれてないので知る由もないけど、サザンオールスターズのデビュー当時って新食感だったと思うの。

YOU:それはそうだね。その新食感がいつの間にか国民食になったわけでしょ。

カンノ:そういう新食感って、たとえばスチャダラパーってずっと存在し続けてる気がするんだよね。

YOU:所謂ヘッズと呼ばれる人たちが、めちゃくちゃフォローする人たちじゃないからね。

カンノ:みんな当たり前に「今夜はブギー・バック」とか「サマージャム95’」とか聴いてるけど、もっとあることを全然知られてないからね。知らない食感の音楽。もっと噛んで聴いてもいいんじゃないかなと思いまして、近年のスチャダラパーのヤバさの話をしました。

f:id:someofthem:20240708030010j:image

SOMEOFTHEM OF PODCAST 第19回『カバ者のすべて』特集(後編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。第19回はフジファブリック若者のすべて」のカバーを聴いて、誰が歌っているのかを当てる「カバ者のすべて」特集(後編)を掲載します。ポッドキャストと(前編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:では続いての「若者のすべて」のカバーです、お聴きください。

(試聴)

カンノ:さぁ、どうでしょうか?軽い気持ちで考えてみてください。

オノウエ:そうですね、所々気になる節回しというか。なんでしょう、「この人、カバー歌い慣れてるな」と思う場面と言いますか…(笑)

カンノ:カバーっぷりがね。

オノウエ:歌い出しのハスキーな女性の声を聴いて、絶対に違うけどYUIっぽいなと思ったんです。

カンノ:なるほど。

オノウエ:でもそこから、YUIは絶対使わないような若干裏返った感じとか、カバーを歌い慣れた人のテクニックを見せられた感じがしてね。

カンノ:カバーテクニック(笑)

オノウエ:カバーテクがあるような気がしてね。でも、僕が浮かんでるカバーを歌い慣れた女性歌手って一人しかいないので(笑)カバーの女王がいるんですけど、その人がこの曲をやっているのかどうかがわからなくてですね…。僕らのカバー女王ってMay J.さんじゃないですか。「若者のすべて」をやってるのかどうかわからないんですが、僕の頭に浮かんでいるのがMay J.さんしかいないので、May J.さんで!

カンノ:なるほど。残念!違いました~。惜しかった。良い読みでしたね。

オノウエ:そうですか。

カンノ:正解は、春猿火さんによる「若者のすべて」でございました。

オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:では続いての問題へ…

オノウエ:もう、むしろ次の問題へ行ってください(笑)

カンノ:アハハハハッ!

オノウエ:それは誰ですか?

カンノ:この人はVtuberのラップシンガーですね。「バーチャルラップシンガー」という肩書きだそうです。

オノウエ:なるほど(笑)

カンノ:2000年2月生まれ。

オノウエ:おぉ。

カンノ:彼女のVTuberと言ってもいいんでしょうね。この人のソロのワンマンライブがヒューリックホール東京。だからちゃんとインターネット世界で人気になったうえで、リアルな世界でも集客を集めている。で、そういう人も「若者のすべて」をカバーしてると。

オノウエ:そうなんだね。もう恥ずかしいですね。

カンノ:アハハハハッ!

オノウエ:さっきの僕(笑)

カンノ:May J.さんもリアルにいるけどバーチャルみたいなところはありますから。

オノウエ:たしかに(笑)

カンノ:なので広い意味で惜しかったです(笑)では問題としては最後です。誰が歌っている「若者のすべて」でしょうか。

(試聴)

カンノ:4曲目の「若者のすべて」をお聴きいただきました。

オノウエ:誰ですか?

カンノ:アハハハハッ!

オノウエ:おそらく男性ですよね。それくらいですね。

カンノ:フフッ。ちゃんと刺さってないですね。

オノウエ:それを言うなら、今日のは全部刺さってないですよ(笑)

カンノ:アハハハハッ!

オノウエ:だって知ってる曲だから(笑)

カンノ:あと僕らはフジファブリックの「若者のすべて」も正直、そんなに刺さってないですから(笑)

オノウエ:もともとはフジファブリックの地味サイドの曲だからね。

カンノ:どうですか?なにもわからないですか?

オノウエ:僕は最近の、とくにVTuberとかTikTokerとかに関しては疎いので、もうまったく知らない誰かなんだろうなと思うので、早く知りたいです…(笑)

カンノ:バレました?このクイズの意図。

オノウエ:だから僕が知りたいのは、YouTuberなのかVTuberなのかTikTokerなのかインスタグラマーなのか。

カンノ:これは僕も教えてほしいです。

オノウエ:お前がわかんなかったら、もうわからないよ(笑)

カンノ:正解はUniteUp!という多次元アイドルプロジェクトのすずさんという方が歌っている「若者のすべて」でございました。

カンノ:僕もこの手のプロジェクトはまったくわからないんですけど、二次元と三次元を行ったり来たりしてるのかな?

オノウエ:あぁ~。

カンノ:声優さんとか舞台に出られたりする方とかの移り変わりなのかな。で、アニメとか劇中の間の歌、みたいな感じですかね。

オノウエ:僕らがなんとなく知ってるところでいうと、ヒプノシスマイクのあり方とかに近いのかな?僕らの理解できる境域というか、知ってる知識のところでいうとそこくらいしかないからな~。

カンノ:それをソニーミュージックグループのプロジェクトとしてやってるということですかね。いろいろ調べたけど、結局よくわからなかったです(笑)でもアニメはTOKYO MXで放送していたみたいですよ。

カンノ:まぁ、そんなことはどうでもいいです。「若者のすべて」のカバーを流したかっただけなので(笑)ということで今回のテーマは、自分たちの思っている以上に知らない世界で「若者のすべて」が飛んでいるということです。

オノウエ:そうですね。まったくわかりませんでした。

カンノ:邦ロック界とか、J-POP界とか、全然そういうところじゃないところへ飛んでる。

オノウエ:飛び越えてるね。

カンノ:すごい不思議な感じだよね。

オノウエ:そもそも「若者のすべて」が学校の教科書に載ってたりするからね。

カンノ:もう自分たちの把握しきれない領域、VTuberとかアイドルグループとかに歌われている。やっぱり僕が気になるのは、インターネットとか多次元アイドルプロジェクトみたいな最先端なことと、ノスタルジーの相性ね。

オノウエ:なるほどね。

カンノ:最先端の技術を使って、古典的なことを歌うってね。

オノウエ:逆に言うと「若者のすべて」はJ-POPとして、とても理想的な広まり方をしてるよね。っていうか「若者のすべて」以外でこんな広まり方した曲ってあるのかしらね?

カンノ:たとえば古のインターネット話でいうと、BUMP OF CHICKENの「K」は2000年代のインターネットを経由してものすごい聴かれ方をしたのはありましたけど。

カンノ:でも全然それ以上の広まり方だもんね。アンダーグラウンドのところじゃないから。もう逆にフジファブリックの存在がアンダーグラウンドなものに見えてくる。

オノウエ:たしかにね。

カンノ:不思議な感じですよね。フジファブリック若者のすべて」をカバーする層がこんなにも増えていることに驚きを隠せない企画、その名も「カバ者のすべて」特集をお送りしました。

オノウエ:そんなタイトルでしたね(笑)

f:id:someofthem:20240704195716j:image

サムオブ井戸端話 #146『近年のスチャダラパーのヤバさとファストフード的大喜利表現』(中編)

 

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

近年のスチャダラパーの素晴らしさを語るサムオブメンバー。(中編)では、Mrs. GREEN APPLEコロンブス」MVの炎上の件から、スチャダラパーの企業案件楽曲での遊び方の怖さと、30年ぶりの小沢健二とのコラボ楽曲の軽さについて語りました。(前編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:企業案件においてまったく損をしていないのって、本当にスチャダラパーしかいないのでは?

YOU:フフッ。

カンノ:この前もMrs. GREEN APPLEが大炎上しましたけど。

YOU:今の時代、少しでも上手いことやろうとか、人と差異化を図ろうとしてはっちゃけたりすると、その粗を指摘されて拡散されるじゃないですか。これは色んな人が指摘しているけど、良い面と悪い面があって。良い面としては、コロンブスの歴史的な捉え方が批判的に捉えられるようになったのは欧米でもここ最近なのだけど、日本でもこのような批判が起きるようになったということ自体、日本人の人権意識が向上していると言える。一方、悪い面としては、そもそも過去のものも今あるものも、「倫理的に良いか/悪いか」を誰がどうやってジャッジするのは本来はすごく難しいのに、SNSではすぐに断罪しようとする人が湧いてくること。「これはアウト!」という物言いって本当はほとんどの人はできないはずだよね。その評価が間違っていたときに責任なんて取れないし。だからこそ、そのようなチェックをする団体とか機関があるわけで。でも、だからと言って、コンプライアンスポリシーみたいなものをあらかじめ作ったうえで表現しているものって、「それってなんなの?」っていう。単なる企業の広告とあんまり変わらないじゃん。もちろん、プロのミュージシャンや広告業の人たちは自分のクリエイティブを「広告と芸術」の間で成り立たせているわけなので、なんでもかんでもコンプライアンスなしでいいかっていうとそうではないけど、でもあまりにもコンプライアンス側に寄せちゃうと、それはそれで表現の幅が狭まるよね。もちろん表現の幅と称して差別とか歴史を蔑ろにするのは言語道断だけど。そういう倫理的な基準ではなくて、端的に楽曲やMVのセンスがないとか、そういう批判の仕方がいいんだと思う。だが、スチャダラパーはセンスとかクオリティとか、善悪を判断するみたいなところから一歩飛び抜けているというか、やっぱり飄々としているよね。

カンノ:僕が好きなスチャダラパーの案件曲で「その日その時」という曲があるんだけど、防災プロジェクトの書き下ろし曲なの。

カンノ:「ちゃんと地震に備えていきましょう」というメッセージの曲で、かっこいいトラックのうえでラップしているんです。そのCM部分はBoseとANIが掛け合いで「こういうふうに備えましょう」という内容を16小節ラップして、サビを歌って終わるんだけど、これがフルコーラスサイズでアルバムに収録されたら、今の備えについて歌った部分が最終バースなんだけど、1バース、2バースがそれぞれBoseとANIがラップしていて、2011年3月11日をどう過ごしていたかについて歌ってるんだけど、「あのときはこういうことを備えようと思ったけど、今やってねえわ」っていう歌になってるの。

YOU:すげえな(笑)CMとは真逆のことを歌ってるんだね。

カンノ:ちゃんとリアルを歌ってるの。この人たち、企業案件でメッセージと真逆のことを歌ってる。超怖いよね(笑)

YOU:案件で遊んでるね。

カンノ:でもリアルだからこそ、最終バースの「備えよう」が活きてくる。だから「本音と建前」の使い分け方が半端ない。つまりセンスが良すぎる。

YOU:よく思いつくよね、そういうことを。

カンノ:そういう怖いことをするのがスチャダラパーなんです(笑)あとべつの意味の怖さなんだけど、2020年に『シン・スチャダラ大作戦』がリリースされて以降のスチャダラパーの作品で個人的に一番「軽いな~」と思ったのが小沢健二との「ぶぎ・ばく・べいびー」だった(笑)

YOU:一番重要そうなのにね(笑)

カンノ:ただただ昔のドラマのタイトルや曲名を歌詞に入れ込んでいるだけに聴こえて、めっちゃよかった(笑)なにもメッセージがなくて、遊び感のみがあった。ただ、これが「俺って何も言ってねー」ってことだと思うとすごくいい。

YOU:なるほどね。

カンノ:「すげえいい曲!」「大好きな曲!」とはならないけど、いい温度感の曲でしたね。

f:id:someofthem:20240701215106j:image

SOMEOFTHEM OF PODCAST 第19回『カバ者のすべて』特集(前編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。第19回はフジファブリック若者のすべて」のカバーを聴いて、誰が歌っているのかを当てる「カバ者のすべて」特集(前編)を掲載します。ポッドキャストは下記リンクから。

 

 

カンノ:今回はこの曲をフィーチャーしたいなと思います。「若者のすべて

オノウエ:フジファブリック

カンノ:フジファブリック若者のすべて」ですけど、ノスタルジーになっちゃうような良い曲ですね。

オノウエ:フジファブリックの代表曲になりましたね。

カンノ:で、この曲のカバーが横行しております。犯罪級ですね(笑)この曲のカバーで手軽にノスタルジックになれる。

オノウエ:たくさんあるでしょうね。

カンノ:めちゃくちゃあります。こんなに「若者のすべて」のカバーがあることにギョッとしましたね。ということで今日は、「若者のすべて」のカバーをいっぱい聴こうかなと。で、ついでに誰が歌ってるのかクイズもやろうかなと。

オノウエ:クイズですね(笑)

カンノ:ということで今回は「カバ者のすべて」特集。

オノウエ:もうこれはタイトル先行ですね(笑)

カンノ:「カバ者のすべて」って言いたいだけ(笑)じゃあまずはこの人たちの「若者のすべて」を聴いてもらいましょう。アーティスト名は言わないので、誰が歌っているのかをオノウエ君は答えてください。では聴いてみましょう。

(試聴)

カンノ:これはとあるアーティストの「若者のすべて」のカバーでございます。誰がカバーしているかわかりますか?

オノウエ:これはエキシビジョンと言いますか。

カンノ:第ゼロ試合。

オノウエ:ルール説明ですね。

カンノ:レギュレーションの説明ですね。これで大体どういうゲームかわかってもらえましたか?

オノウエ:わかりました。そして誰が歌ってるのかもわかりました。

カンノ:ではお答えください!

オノウエ:Bank Bandですね。

カンノ:正解!Bank Bandによる「若者のすべて」でございます。

カンノ:カバーミュージシャンって徳永英明さんやMay J.さんを思い浮かべることが多いと思うんですけど、じつはカバー文化を広めたアーティストの一役を担ったのはBank Bandなんですよ。

オノウエ:Bank Bandもいっぱいやってるもんね。

カンノ:中島みゆき「糸」をここまで押し上げたのはBank Bandのカバーによるものですからね。

カンノ:この人たちはap bank fesという自分たちのフェスで、カバーした人たちを呼んでフェスに出せて一緒に歌ったりして、盛り上げられるわけですよ。しかもそれが環境問題とかと結びつけられるから、誰も責めることができない。非がない!

オノウエ:たしかに(笑)

カンノ:まぁ、ミスチルの事務所に家宅捜索があったりもしましたが…

オノウエ:大変なことがありましたね(笑)

カンノ:だから昨年、暗いアルバムを出したのか。

オノウエ:未来がわかってたんだ(笑)

カンノ:アーティストとしてなんてわかりやすいんだ!

カンノ:だからBank Bandのカバーほど大義名分が成立しているものはないなと思いますね。では続いて、この人たちの「若者のすべて」を聴いてもらいましょう。

(試聴)

カンノ:さぁ、どうですか?

オノウエ:全然わかりません!今までも「このカバー誰でしょう?」クイズってやってきましたが、この企画は一発目の声でわからなければもうわからないんですよね(笑)

カンノ:雰囲気とかどうでしたか?

オノウエ:女性ソロですよね。この人はミュージシャンですか?

カンノ:おっ?その観点ですか。

オノウエ:声は清涼感があるけど、ボーカリストとしてそこまで張るタイプじゃないような。だから歌も歌ってるけど、別の活動をメインでやられている人なのかなと思ったりしたんですが、申し上げた通り全然わかりません。

カンノ:誰っぽいとかある?

オノウエ:誰だろうな~。

カンノ:そこから当たるかもしれません。

オノウエ:えぇ~?誰ですか?ごめんなさい、出ないです。

カンノ:残念!読みはいいかもしれませんね。正解はLefty Hand Creamさんの「若者のすべて」でした。

オノウエ:ちょっと待ってください、えっ?

カンノ:では続いての…

オノウエ:説明をしてください!

カンノ:名前の由来は、周りから見ると左手で文字を書いたり左手でご飯を食べる事から以前から「レフティー」と呼ばれていて、「YouTubeに登録する際に何か良い言葉はないか?」と考えたときに「ハンドクリーム」をつけたら響きが良いのではないかと思って名付けた、ということですね。

オノウエ:僕が知りたいのは名前の由来じゃないです(笑)誰なんですか?

カンノ:YouTubeアーティストです。YouTubeにカバー動画を上げていた人で、それが話題になってカバーアルバムをヴィレッジヴァンガードで販売して、それで名が知られるようになったと。で、YouTubeの登録者数は50万人を超え、動画の総再生回数は3億回以上。

オノウエ:すごいですね。

カンノ:2020年にメジャーデビュー。で、2023年10月に体調不良により活動休止、2024年に所属事務所を退所。なので、僕たちからすると、知らない人がデビューして休止するまでという(笑)

オノウエ:コロナ禍にデビューして、コロナが収まったら退所するという(笑)

カンノ:本当に何も知らない人が、もうそこまでやってた。

オノウエ:さっきBank Bandから始めたから、もうちょっと知ってる人が来ると思ってたのに…(苦笑)全然知りませんでしたね。

カンノ:YouTubeアーティストによる「若者のすべて」でございました。

f:id:someofthem:20240701215217j:image

『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

サムオブ井戸端話 #145『近年のスチャダラパーのヤバさとファストフード的大喜利表現』(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

このブログでは何度もしているはずのスチャダラパーの話をまたしようとするカンノメンバー。近年リリースされているスチャダラパーの単発曲が素晴らしく、既発曲だけをまとめるアルバムの手法にうんざりする昨今、スチャダラパーだけはそうならず期待感ばかりが膨らむ話をしました。

 

 

カンノ:スチャダラパーの話をしてみましょう。

YOU:このブログはスチャダラパーの話ばかりしていない?(笑)

カンノ:2020年に『シン・スチャダラ大作戦』というアルバムが出て、もう4年も経つんですね。あれはコロナ禍に入ったばかりのときにリリースされたアルバムですから。年月が経つのは早い…

YOU:恐ろしいものですね。

カンノ:このアルバムは僕も非常に好きですが、それ以降でリリースされている単発曲も全部素晴らしくて。スチャダラパーはじつは今、かなりキャリアハイな状態じゃないかなと思うんです。

YOU:そうなんだ。

カンノ:直近のリリースを振り返ってみると、ロボ宙とやってる「リンネリンネリンネ」

カンノ:リリースされたものの最新作でいうと、STUTSとPUNPEEと一緒にやっている「Pointless 5」

カンノ:あとは小沢健二との「今夜はブギー・バック」のリリースから30周年を記念した「ぶぎ・ばく・べいびー」

カンノ:じつはPUSIMと曲もやってたりしています。

YOU:そうなんだね。

カンノ:あとはnever young beachとのコラボもありました。

カンノ:あとはCM案件でいうと、自動車メーカーのHondaとのコラボもありました。

カンノ:ここ最近だと、洋服ブランドのChampionとのコラボもあります。

カンノ:もしこれらの楽曲が同じアルバムに収録されるとなったら、とんでもないアルバムになりますよ。もうウキウキですね。前作から4年経ってるし。スチャはハイペースでやるキャリアでもないから、いつ出してくれてもいいんですけど。ただ、もうアルバムが出てもおかしくはないくらいの曲数はある。

YOU:はい。

カンノ:近年のミュージシャンに関して、単発リリースされたものがアルバムに収録される手法はもう常套手段と言っていいじゃないですか。

YOU:そうだね。

カンノ:カップリングという概念も、CDでリリースされることがほとんどないわけだし。単発リリースをまとめてアルバムにする手法、そこに未発表の新曲が入るのも少なくなってきた。年に1枚アルバムをリリースすることがレーベルとの契約の条件、みたいな話もかなり過去のものになってきました。

YOU:「カップリング曲が意外といいんだよ」みたいな話も聞かなくなったよね。

カンノ:そうそう。で、この手法は歴史的な流れとしてしょうがないと思いつつ、やれやれと思う部分もあるわけです。ただ、この手法でのスチャダラパーは相当うまいぞと思うんです。理由はシンプル。1曲1曲がすごくいいから、それが全部集まるの超楽しみ(笑)

YOU:フフッ。

カンノ:じつはこの手法、好きなミュージシャンに対しても全然いい手法だと思ってなくて。1曲1曲、既発曲がアルバムに収録されて新曲がほとんどない状態をあまり楽しめない。

YOU:以前も話したけど、サザンってそれをやりがちなんですよ。カップリング曲も全部アルバムに入れちゃう。だから「聴いたことあるな~」と思うアルバムになっちゃうことが多かった。

カンノ:なるほど。

YOU:カンノの言う「いい曲が集まってアルバムとして聴くの超楽しみ」という気持ちもわかる一方、これも以前話したけど、昨年リリースされたRHYMESTERのアルバムへの批判が、SNSやサブスク時代にアルバムを出すことの難しさを体現しているよね。

カンノ:これは推測の域を出ない話なんですが、RHYMESTERとしてかつて『ウワサの伴奏』というコラボレーションアルバムをリリースしたことがあります。いろんなミュージシャンを呼んで、その前にリリースしたアルバム『ウワサの真相』に収録された楽曲を中心にアレンジをし直してコラボレーションしたアルバムです。

カンノ:その第2弾を作ろうとした計画があったということは、公式HP上で公開されていました。

YOU:そうだったんだ。

カンノ:ただ、それはコロナ禍以前の話。コロナ禍になり、おそらくその計画が頓挫したと思われる。その結果、RHYMESTER単体楽曲、コラボ楽曲、企業案件楽曲が入った、あんまりまとまりがない感じがする、曲数も11曲というヒップホップアーティストにしては少ない楽曲数のアルバムになってしまった。新曲も少なかった。

YOU:それが批判の対象になってたよね。

カンノ:「魂売ったな」みたいな言い方をされていたよね。RHYMESTERスチャダラパーでコラボした曲もあるから、どうしても比較になってしまうんだけど、この上手さの違いは考えちゃいますよね。

f:id:someofthem:20240627164503j:image

サムオブ井戸端話 #144『聴覚ではなく視覚優先のJ-POP』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

J-POPの視覚情報の強さについて語るサムオブメンバー。後編では、視覚や見た目によってわかりやすさに重きが行き過ぎていることや、反対に真似したい見た目のミュージシャンについて語りました。前編は下記リンクから。

 

 

YOU:俺らは音楽の機能についてよく話すじゃん。「踊れる」とか「悲しくなる」とか「励まされる」とか。これはTikTokをはじめとするショート動画文化のせいだと思うけど、踊ることに対して無批判じゃん。「踊れるか、踊れないか」の二つしかないというか。「この振りつけがTikTokに合いそう」とか「みんなで踊れそう」という考え方が強くなりすぎてる気がするよね。たとえばカンノが言ってる緑黄色社会のCMって視覚情報が強いわけじゃん。

カンノ:「楽しそう!」とかね。

YOU:俺も踊れないし、DJをやって人を踊らせるみたいなこともできないから、みんなで同じ振りつけを踊るのを見ると「うわっ…」って思っちゃう。「それはお前が本当に楽しいのか?」っていう。「それは”楽しい”という空気に流されてるだけで、本当に”楽しい”と思っていないんじゃないか?」っていう。

カンノ:余計なお世話だね(笑)

YOU:フリースタイルならいいと思うんだよ。流れている音に対して、個人が思い思いに踊るのは。「振りつけを決めて皆で踊ろう、動画を撮ろう、SNSにあげよう」という流れは、「音楽ってそれだけじゃないよ」っていう思いがどうしても出てきちゃうんだけど、それがしばらく主流だもんね。

カンノ:でもそれを楽しそうにやってて、見ているほうも楽しい気分になって、それでいいんだよ。

YOU:そうなんだけど、べつに踊れなくてもいい曲はいっぱいあるからね。でも視覚情報で振りつけが決定づけられちゃうからさ。

カンノ:それに従うよね。

YOU:もちろん視覚情報はデカいですよ。ただ、今はより違うフェーズに行った感じはするよね。

カンノ:だから、さっきから意地悪なことを言ってるけど、「音楽はどうでもいい」ということになる。

YOU:Saucy Dogっているじゃん。

カンノ:いるね。

YOU:この前、たまたまテレビの歌番組を見てたら出てきて。「今まではバラードっぽい曲をやってたんだけど、新曲はすごいロックな曲です」みたいなことを言ってて。で、ボーカルの人が革ジャンを着てたんだよ。

カンノ:ロックだった?

YOU:「もともとパンクとか好きだったんで」みたいな。なんだろ、Saucy Dogはともかく、「周りの大人たちは止めなかったのかな…」って思ってしまった(苦笑)

カンノ:いやいや、周りの大人たちに言われたからでしょ。

YOU:「これがお前らのロック像でいいのか!?」っていう(笑)でも、それくらいわかりやすくしないといけないんだろうね。「これまでバラードとかラブソングを歌っていたSaucy Dogが、自分たちのルーツであるロックに回帰しました」みたいなストーリーを視覚的に見せなくちゃいけないわけだから。

カンノ:これまでの話って「見た目ばかり気にして、ちゃんと音楽を聴け!」みたいな説教臭い感じでしゃべってたけどさ、たとえばアジカンのボーカルが屈強な体格のイケメンだったら全然好きじゃなかったと思うんだよ(笑)

YOU:まあね。

カンノ:やっぱり背が小さくて、メガネを掛けていて、なんとなく薄ぼんやりしている浪人生風の20代後半の男性がメジャーデビューしたことに意味があるというかさ。屈強茶髪童顔イケメンが「やっぱりテレキャスのジャキジャキ感が~」とか言い出したら本当に嫌いになっちゃいそうで(笑)

YOU:フフッ。

カンノ:そんな人に「僕と君が繋がり合える5メートルの距離感」みたいなタイトルのアルバムとか出してほしくない!

YOU:逆のルッキズムだよね(笑)

カンノ:でも、本心はそうだよね。

YOU:それは間違いないね。この前、ゆらゆら帝国の亀川さんが亡くなられたけど、ゆらゆら帝国のよさの一部って、間違いなく亀川千代の見た目ってあるじゃん。

カンノ:あるね。

カンノ:そういう「見た目を真似したい」という気持ちも大事だよね。「ああなりたい」とか。今回はずっと見た目についてしゃべってきて、「見た目で音楽を聴いてるんじゃねえよ」って言い続けたけど、反面「見た目って大事だな」と思うからさ。「音楽を聴いている」の構成要素の一つに「目で見ている」は無条件で入ってくるからね。

YOU:わかる。そこは無視できないよ。

カンノ:感覚として無視できないからこそ、目で入る情報は強いんだよね。だって目があれば、曲を聴いてなくてもどんな曲かわかるんだから。薄ぼんやりした照明でバンドの人たちの動きがゆっくりになったら、「落ち着いた曲をやってるんだな」とかがわかるんだもん。赤い照明に照らされて動きが活発になったら「激しい曲なんだな」ともわかるし。すごい情報量なんだよね。

YOU:視覚情報はすごい(笑)

カンノ:だって聴かなくても大体わかるんだから。

f:id:someofthem:20240618150442j:image