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Radio OK?NO!! Podcast #072「I LOVE YOU選手権」特集文字起こし(前編)

宅録ユニット・OK?NO!!の上野翔とカンノアキオでSpotifyで聴けるポッドキャスト番組『Radio OK?NO!!』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。今回はJ-POPにおけるドベタタイトル「I LOVE YOU」という曲名がついた楽曲の中で、最もストレートに愛を伝えている楽曲を決める「I LOVE YOU選手権」特集の文字起こし(前編)を掲載します。

 

Radio OK?NO!! Podcast #072「I LOVE YOU選手権」特集音声は下記リンクから。ポッドキャスト登録を是非、よろしくお願いします!

 

 

カンノ:2月に入りました。ということで近いですね。バレンタイン。

上野:あぁ~、そうですね。

カンノ:もうあんまり男女のという感じでもないんですかね。わりと誰にでも分け隔てなく渡していたりしますよね。

上野:友達同士でチョコ渡してたりするよね。

カンノ:それも含めて、愛を伝えていますか~?それもひっくるめてね。どんな愛の形があってもいいでしょう。

上野:問いかけてますね。

カンノ:でも愛を伝えるなら、今ですよ~。伝えてますか~?僕も伝えますよ~。

上野:伝えるんですね(笑)それは素晴らしいことです(笑)

カンノ:愛を伝えるときに、愛を伝えている曲とセットで伝えるのはどうでしょうか?

上野:大丈夫ですか?それは引かれませんか?

カンノ:今日はそんな特集をしようかなと思います。題して「I  LOVE YOU選手権」

上野:選手権ですね。

カンノ:そうです。「I LOVE YOU」という曲名、いっぱいあるじゃないですか。超ドベタタイトル。音楽家誰しもが1曲は作るんじゃないんですかね、「I LOVE YOU」という曲は。で、誰が一番「I LOVE YOU」なのか決めようじゃないか。

上野:おぉ~。

カンノ:誰が一番ストレートに「I LOVE YOU」、すなわち愛を伝えているか。どの曲が「I LOVE YOU」度が高いのか。「I LOVE YOU」というタイトルをつけているくらいだから、そんなスカしたマネはいらないんですよ。

上野:この番組ではいろんな選手権をやってきたじゃないですか。ようは曲と曲を対決させるという。その判定基準となるのは…?

カンノ:「I LOVE YOU」度の強さです。

上野:なるほどね。今回はどれだけストレートに「I LOVE YOU」を表現しているかという戦い。

カンノ:それをミュージシャン同士で戦わせよう。それが「I LOVE YOU」選手権。誰が一番「I LOVE YOU」なのか?「I HATE YOU」でも「I NEED YOU」でもダメです。「I LOVE YOU」です。今回も当然対戦方式です。まずは私が思う暫定チャンピオンの「I LOVE YOU」曲を流します。で、それをいろんなチャレンジャーの「I LOVE YOU」曲と対戦させていって、最後に残った曲が真の「I LOVE YOU」。なのでこの曲をセットにチョコを渡したら確実に「I LOVE YOU」が伝わるよという。どうですか?今、聞いてるあなたに言ってますよ。「この人に告白しよう」、なんなら「この人にプロポーズしよう」というときにどうですか?もうチョコどころじゃない、結婚指輪とともにどうですか?

上野:やめてください、責任取れませんよ(笑)

カンノ:ということで今回は「I LOVE YOU」選手権を行います。まずは私が思う、そしてみんなも思う暫定チャンピオンの「I LOVE YOU」楽曲をお聴きください。

上野:「I LOVE YOU」と言ったらコレ、みたいな曲ね。

カンノ:そうです。それではお聴きください、尾崎豊で「I LOVE YOU」

上野:たしかに「I LOVE YOU」と言われて最初に思い浮かぶのはこの曲ですね。

カンノ:まずこちらが暫定チャンピオンです。改めて聴いてどうですか?

上野:まぁ暫定チャンピオンですよね。で、この曲とどう対決するのかですよね。一つ基準としては「どれだけストレートな表現なのか?」というのはあると思うので、その観点で対決を見ていこうと思います。

カンノ:この曲は歌詞を見てて面白いのは、部屋から一歩も出てないんだよね。ずっとベッドに2人でいる歌なんだよね。

上野:なんか若干、禁断の愛というか、周りから望まれていない恋愛みたいな感じがあるよね。

カンノ:そういう危なっかしさね。

上野:それがストレートとかベタというものにどう影響してくるのか。これが見所だと思います!

カンノ:たしかに安心・安全のラブソングではないことはたしかですね。さぁ、そこと誰が戦うのでしょうか。では第1対戦を行います。それではお聴きください、back numberで「アイラブユー」

カンノ:これはカタカナで「アイラブユー」ですね。予備知識で言いますと、こちらは朝の連続テレビ小説『舞いあがれ!』の主題歌で、昨年の紅白でも歌っておりました。そしてプロデュースは小林武史さんが入っています。

上野:なるほど。

カンノ:僕からすると、尾崎豊の「I LOVE YOU」は部屋の歌だとすると、back numberは超ド日常ですかね。すごく等身大。パン屋が出てきたり、公園が出てきたり、猫が横切ったり。日常のなかでどう「I LOVE YOU」を伝えるかという歌かな。これをストレートと取るかどうか。

上野:すごく悩んでます。back numberはストレートな「I LOVE YOU」表現の観点でいうと、日常のなかで真っ直ぐに伝えてるじゃないですか。だって「君に会いたくなる」とか「君に渡せたらいい」とかね。すごく表現としてわかりやすいじゃないですか。

カンノ:売れそうですよね。

上野:なんか言いましたか?

カンノ:大丈夫ですよ。

上野:大丈夫かどうかは周りが決めますから(笑)で、それで考えるとback numberのほうがストレートかなって思うんです。ただ、尾崎豊の「I LOVE YOU」が1回戦で負けていいのかという気持ちもあるんです。

カンノ:なんか思ったのが、back numberと尾崎豊では「I LOVE YOU」の覚悟が違うかなって。尾崎の「I LOVE YOU」は決死なんだよね。back numberはふと言える「アイラブユー」なのかなって。それがどっちが伝わるかっていう話かな。

上野:尾崎豊は昼ドラなんですよ。で、back numberは連続テレビ小説なんだよね。

カンノ:尾崎は『愛の劇場』だよね(笑)

上野:これのどっちが「I LOVE YOU」度が高いかってどうやって判断するんだろう?(笑)

カンノ:それは上野君のこれまでの「I LOVE YOU」体験を踏まえたうえで判断してもらえたらで。

上野:そんな経験ないのよ~(笑)

カンノ:「禁断の愛」的な「I LOVE YOU」経験はないですか?

上野:ないですよ(笑)いやでも、とはいえ尾崎豊は歌の初っ端から「I LOVE YOU」って言ってるんですよ。なのでストレート度で言ったら相当高いかもしれません。

カンノ:そっか、back numberって「アイラブユー」という歌詞は出てこないんだ。この情景すべてを「アイラブユー」としているんだな。

上野:それに対して尾崎は「I LOVE YOU」と言っているので、この対戦は尾崎豊の勝ちにしたいなと思います!

カンノ:なるほど、やっぱり「I LOVE YOU」を言うか言わないかは大事ですね。これはいい判断基準かもしれません。では次の「I LOVE YOU」、これは言います。そのうえでどちらが「I LOVE YOU」度が高いか判断してください。それではお聴きください、クリス・ハート「I LOVE YOU」

上野:曲紹介のときになにか言ってなかった?

カンノ:言ってませんよ、「恋愛の伝道師、クリス・ハート」って言ったんです。

上野:そうですか(笑)

カンノ:こちらは失恋ソングでございます。あと「I LOVE YOU」で出てくるまで約2分かかりました。

上野:サビまで約2分(笑)サビから始めないと音楽が売れないと言われている時代のなか(笑)この曲は「I LOVE YOU」が2回、「I NEED YOU」が1回とサビで出てきます。ストレートですね。

カンノ:「自分はこういう気持ちは持っているけど、君には届かない」みたいなことですね。

上野:これは男性目線の曲だよね。「どうして僕の心だけ奪ったまま」と1人称が”僕”で歌っているので、おそらくクリス・ハートは男性目線で歌っていると。たしかにこの曲は「I LOVE YOU」と歌ってますし、歌詞の内容もストレートだと思いますが、ちょっと大きく2つミスってますね。

カンノ:えっ?そんなに?

上野:ミスってますね。クリスは。

カンノ:ハートは。

上野:厳密に言うと、ハートがミスってるわけじゃないんです。まず一つ目のしくじり。クリス・ハートは作詞も作曲もしていません。

カンノ:あぁ!?ウソ?マジ?はぁ?

上野:フフッ。

カンノ:クリス・ハートの作詞家のときのペンネームじゃないの?

上野:「H.U.B.」ってクリス・ハート

カンノ:わからない…。

(カンノ、調べてみる)

カンノ:えっと、調べてみたら全然違う、普通の作詞家さんでした(笑)

上野:じゃあ大ウソってことですね(笑)ということで、ここで書かれた歌詞はクリス・ハートの気持ちではありません。

カンノ:うわ~!

上野:だからこれは人から歌えと言われた歌を歌ったに過ぎません!

カンノ:ぎゃー!!

上野:そしてもう一つ。さっきのは百歩譲って良いとして、この歌詞にどんなことが書かれているのか。「I love you I love you I need you ずっと愛されたいあの頃のように」というサビですね。「I love you」だから「私はあなたを愛しています」ですよね。その直後に「ずっと愛されたい」という歌詞ですね。本音と矛盾が出ています。

カンノ:あぁ~(笑)

上野:この人は「愛したい」んじゃなくて「愛されたい」「嫌われたくない」人なんです。

カンノ:見返りの「I LOVE YOU」だ。

上野:速攻で見返りとしての「I LOVE YOU」を求めているので、「I LOVE YOU」度は低いです。

カンノ:これはクリス・ハートさんへのイチャモンじゃなくて、H.U.B.さんへのイチャモンですね(笑)

上野:だってどうしても「I LOVE YOU」度を計るのであれば、歌詞に着目しないわけにはいかないですから。だって「愛されたい」って歌詞を書いていないクリス・ハートが歌ってるわけですから。これは破綻しています。

カンノ:ということでクリス・ハートはウソツキでした!2回もウソをつきました。1回目は過去回聞いてくださーい。

上野:ということで2回戦目も尾崎豊の勝利です!

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『Radio OK?NO!!』はパーソナリティーの上野翔とカンノアキオが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#okno」をつけてツイートしてください!お問い合わせはメール:radiookno830@gmail.com まで。

Radio OK?NO!! Podcast #071「平成のディーバ、令和のディーバ」特集文字起こし(後編)

宅録ユニット・OK?NO!!の上野翔とカンノアキオでSpotifyで聴けるポッドキャスト番組『Radio OK?NO!!』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。今回は時代によってラッパー像も変われば、その横で高らかに歌い上げる女性R&Bシンガー、つまりディーバ像も変わるということで、男性ラッパーと女性歌手の組み合わせ楽曲を平成と令和で聴き比べる「平成のディーバ、令和のディーバ」特集の文字起こし(後編)を掲載します。(前編)は下記リンクから。

 

Radio OK?NO!! Podcast #071「平成のディーバ、令和のディーバ」特集音声は下記リンクから。ポッドキャスト登録を是非、よろしくお願いします!

 

 

カンノ:では続いての令和ディーバの楽曲をお聴きください。ぜったくんで「sleep sleep feat.さとうもか」

youtu.be

カンノ:さとうもかさんは「melt bitter」という楽曲がTikTokで使用された総再生回数が20億回ですって。

カンノ:今はこうやって音楽が売れていくんだね。

上野:20億回だもんね。

カンノ:さとうもかさんはジャズ方向から音楽に興味を持って、サックス、ピアノ、ギターが弾けると。で、ぜったくん等のラッパーやトラックメイカーとの共作も多数あると。やっぱりkojikoji、さとうもか流れで考えると、声がハスキーであるとかガーリーな印象であるとかって今の時代は結構強いなって思いますね。そして思ったのは、さっき流したm-floもそうだし、これから流れる平成ディーバ楽曲も全部そうかと思うんですが、HIPHOPR&Bというジャンルのなかの人たちで集まっていると。だからクラブみたいな現場感があるんですよね。強そうな女性と大きく見せるラッパーと、みたいな。これがセットになる傾向が平成にはあったなと。

上野:その2組が広い意味での同じ世界にいるっていうことだね。

カンノ:それに対して令和はTikTokみたいなプラットフォームで一緒になる感じかなと思うんです。TikTokで流行ったラッパーとTikTokで流行ったシンガーソングライターみたいなところがセットになるから、ジャンルは別々というか、今の時代はジャンルっていう概念もそんなにないんだろうなと。弾き語り女子の人がラッパーの曲を弾き語るし、もう誰でもラップはデフォルトでできる時代かなと。もうダンスとラップはできちゃうんだろうなって。

上野:たしかに、それはありそうだね。

カンノ:弾き語り女子だろうがラッパーだろうが、リズムの乗りこなし方はもう一緒なのかもしれない。そこで通じているリズム感とかビート感は、もう言語不要な勢いで通じてるんだろうなって。平成はそれがジャンルを横断できなかったんだよね。同じ文化圏にいないから。で、その括りが音楽ジャンルからプラットフォームに変ったから、もう音楽ジャンルがあんまり機能しなくなったように思えるんだよね。だから「ディーバ」という言葉は消えかかっているんだと思うの。

上野:なるほどね。

カンノ:だから無理矢理、平成の価値観の物差しを令和に当てはめようとするなら、そういった女性が今の時代のディーバということになるのかなと。

上野:ラップできることはもう普通なんだよね。特別なことじゃない。カラオケに行ったらもう誰かはラップするもんね。

カンノ:もう特技でもないんだろうね。で、TikTokにより手遊びくらいのダンスは誰でもできるようになったと。

上野:そうだね。令和はプラットフォームによって状況が変わってきてるのかもね。

カンノ:プラットフォームの効力が強いから「こことここがセットになるよね」という音楽の販売の仕方になっているのかなって思いましたね。あれ?今、ちゃんとした話をしてる?

上野:そうだね、なんかちゃんと考察しちゃってるね(笑)ということで一方、平成サイドはこの人の曲です。青山テルマ feat. Souljaで「そばにいるね」

上野:この曲は「2008年」特集でも流しましたね。

カンノ:短スパンで流れてきたのでちょっと笑っちゃいました。

上野:ディーバがバラードを歌い上げることは多かったですよね。

カンノ:ディーバはアンサーソングを歌うからね。

上野:アンサーソングという文化が、J-POPの世界のなかでは勘違いされて発展していきましたよね。

カンノ:ディスとアンサーじゃなくてね。「あなたが好きよ」「私も」というアンサーね(笑)

上野:そういう話もしましたね。

カンノ:青山テルマさんもどちらかと言えばハスキー系だね。

上野:そうかもね。

カンノ:あと、のちの青山テルマさんのキャラ変具合もすさまじいんだけどね。

上野:この頃は女子高生のカリスマみたいな位置だもんね。

カンノ:なんか連綿と続いてるよね。加藤ミリヤから青山テルマまで、女子高生とか携帯とかアンサーソングとか。

上野:たしかに、連想されるパーツは変わってないかもね。

カンノ:今日は流れないけど、たとえばMay J.さんとかもこの辺りの出身じゃん。

上野:そうだね。

カンノ:それがキャラ変の果てにカバー女王みたいなことになったわけじゃん。

上野:May J.さんもキャリアのスタートはR&B歌手ですもんね。

カンノ:そうですよ。ずっとヘソを出した服を着てましたよ。

上野:あの頃のMay J.の話をしているのはマジでカンノだけだよ(笑)

カンノ:だからやっぱり平成ディーバみたいなものは市場としてあまり広がらなかったんだよね。

上野:そうだね。

カンノ:ということで平成ディーバが広げられなかった市場、令和はこのように広がっております。とは言いつつ、3人目は完全にディーバじゃありません。R&B性は皆無です。TikTokerが手前で踊るために存在する、後ろの歌い手とラッパーということだよね。

上野:まあね。

カンノ:その代表格はこの女性かなと思うのでお聴きください。Rin音で「earth meal feat. asmi」

カンノ:この曲はasmiさんがデビューしてすぐにラッパーのRin音さんとコラボした楽曲ですね。asmiさんという人はMAISONdes(メゾンデ)という、6畳アパートの設定のプロジェクトで、〇号室の住人が出した楽曲という形でリリースされているんですね。で、部屋ごとでアーティストも変わっていくという。そういうシステムであり、プラットフォームですね。そこで「ヨワネハキ feat.和ぬか、asmi」がリリースされて、これがTikTokで大バズりと。

カンノ:こういう打ち込みから出てきた人も、アコギを抱えた人も、みんなラッパーとなにかやる時代ですね。というくらい、ラップという歌唱法が本当に土着化したんでしょうね。誰も彼もできるという。そうなるとHIPHOPのジャンルが云々じゃなくて、TikTokHIPHOPが結びついてるし、TikTOKと女性シンガーソングライターが結びついてるし、ということはTikTok内でHIPHOPと女性シンガーソングライターが結びつく時代だし。で、そこで作られた楽曲がバックで鳴っているなかで、TikTokをやる人はそこで振付をしたり手遊びをしたりするわけですよね。

上野:そういうラッパーとそういう女性シンガーソングライターが結びついているという話が続いていますが、そのラッパーというのは基本マジのHIPHOPをやっていたりするの?

カンノ:いや、そんなゴリゴリな感じじゃないね。

上野:そうだよね。だからラップという歌唱法とHIPHOPという文化的背景とか音楽ジャンルみたいなものは完全に分離されているということだよね。

カンノ:もともとは『高校生RAP選手権』に空音さんが出ていたり、最近だとクボタカイさんという歌うようなラッパーもいますが、彼もUMBの地方予選とか出ているので、だからフリースタイルはできるわけですよね。

上野:なるほどね。

カンノ:でも結局やっている音像はJ-POPなんだよね。逆に言うと、「やっぱそこに収まっていくんだな」という印象なんですよね。サビとかも普通にオートチューンかけて歌ってるし。「歌うことが当たり前」と同じくらい「ラップするのは当たり前」ということなんでしょうね。

上野:僕らのときだとKREVAがその方向性で、メジャーフィールドだけどHIPHOPマインドを提示しつつ、ラップと歌の並立を推進していったように思えますね。

カンノ:それでいうと、当時RIP SLYMEにいたPESさんが「One」という楽曲で歌メロとラップの並立をやり、そのあとにDef Techがメロディが強いラップを打ち出したんだよ。

上野:あ~、なるほどね。

カンノ:で、KREVAはあえてのつもりで「瞬間Speechless」という曲を出したと思うんだよね。もう歌なのかラップなのか全編わからなくさせる手法だから。これは狙ってると思う。

カンノ:でももうそれもデフォルト。

上野:そういうことだよね。

カンノ:ここまで分析できてるんだけどね!

上野:「ね!」って(笑)

カンノ:この前、友達に「あとはカンノ、それをやるだけだよ」って言われてヌーンってなっちゃった。

上野:「痛いところ突かれたな」じゃないんだよ(笑)

カンノ:もうアイツと絶交しようかな…。

上野:アハハハハッ!小学生じゃないんだからさ(笑)では一方平成です。それではお聴きください、Heartdalesで「CANDY POP feat. SOUL’d OUT

カンノ:令和の人たちって歌うときとラップするときってあんまり声質が変らないと思うんだよね。

上野:はいはい。

カンノ:ラップから歌、または歌からラップへスムーズに移行できると思うのね。で、Heartdalesは歌うときとラップするときで声が変わるんだよ。

上野:たしかに声変わるね。

カンノ:女性R&Bシンガーがあえてラップするタームってあるじゃん。

上野:そうだね。そもそもの発声方法が変わってるんだよね。

カンノ:ラップになった途端、一気に声が低くなるんだよね。で、歌うときはすごく女性っぽくなるよね。あの変わる感じは今ないかも。だからまだ平成って男性っぽいラップだったんだよね。発声法が変ったり声質が変ったりすると、同じ人感がないんだよね。AIも歌とラップやってたけど、「Story」のときの声はラップでは出ないんだよね。

上野:それは令和サイドで考えると、歌い方のスイッチや切り替わりってあんまりなくて、ずっと地続きなまま歌もラップもできるってことだね。

カンノ:ということで「平成のディーバ、令和のディーバ」特集をお送りしました。で、平成のR&B歌手っぽい像で令和に君臨する人ってやっぱりなかなかいないんですよ。みんなJ-POPのニュアンスになっちゃったんだよね。ただ女性ラッパーですごくディーバだなと思える人がいます。

上野:ほうほう。

カンノ:Awich!

上野:あ~、なるほど。

カンノ:Awichは大きい声で歌うっしょ!

上野:それはそうだろうね(笑)

カンノ:昨年のフジロックとかすごかったですね。めちゃくちゃ下ネタ方向の曲をやったあとで自分の娘を出すんだもん(笑)

上野:振る舞いの破天荒さとかが、なんか平成のあの感じを思い出すよね(笑)

カンノ:やっぱり演出が強い人ですよね。令和ディーバはちょっとか弱さが軸かなと思ったんですよ。ハスキーボイスでガーリーな印象のある女性が多かったから。それと比べたときの女性性の強さ、そして演出の強さを持ったAwichを見ていると、なんだか平成のときに見ていたディーバ像に近いかなと思いまして、最後に流したいなと思います。Awichで「Queendom」

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『Radio OK?NO!!』はパーソナリティーの上野翔とカンノアキオが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#okno」をつけてツイートしてください!お問い合わせはメール:radiookno830@gmail.com まで。

サムオブ井戸端話 #078「『ぼっち・ざ・ろっく!』から考える当事者としてのキツさ」(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』を見たYOU-SUCKメンバー。下北沢ギターロック界隈にまつわるアニメを見て、街やライブハウス風景の描写の細やかさに驚きつつ、バンドの夢物語だけではなく、ライブハウスでのバイトの接客や路上ライブでのお金のやり取りを通して、暗い主人公が社会性を身につけていくことの健全性について語りました。

 

 

YOU:『ぼっち・ざ・ろっく!』というアニメがありました。

YOU:2022年の10月から12月にかけてTOKYO MX等で放送されていたアニメで、もともとは『まんがタイムきららMAX』という雑誌で連載していた漫画ですね。

カンノ:僕はアマプラでさっき見終わりました。

オノウエ:僕はすみません、3話までしか見れてないです。

YOU:そうですか。俺は結構楽しんで見れましたね。女子高生がキャンプにハマるようなアニメと同じ感じですね。入門系のアニメでよくある、そのジャンルにおける「あるある」の細かい描写がクスっと来るものがけっこうありました。たとえば『ぼっち・ざ・ろっく!』だと主人公の後藤ひとり、通称・ぼっちがライブハウスでバイトすることになって、ライブハウスのバーカンのあの感じとか、初めてのバイトだから色々言われて混乱する感じとかがよかったですね。俺もライブハウスのバイト経験があるので「わかる!」と思って見てたのと、ライブハウス特有のノルマやオーディションの感じとか、バンドをやってる人にしかわからないよね。そういうものが描かれているのが面白いなと思ったし、バンドをやっていた人ほど「そんなこともあったな~」って思うよね。

オノウエ:なるほど。

YOU:それとストーリーも良かった。まぁ、主人公がバンドを通じて成長していくベタな話なんだけど、なにに感心したかというと、俺は高校生や大学生のまだバンドをやっていたころって、ノルマとかオーディションとかが鬱陶しかったんだよね。バイトして金を貯めなきゃいけないとか。そういうことが全部なしでやれたらいいのにって思ってたの。でもあのアニメを見て、今でもバンドを続けている人とか、当時やっていた人もいちいちこういうことをちゃんと乗り越えて、ほかの人と協力しながらやってたんだなと思って感心しちゃったんだよね。ああいうお金のやり取りとかをちゃんと逃げずに描いていることとか、バンドの打ち合わせの雰囲気とか、箱がバンドを推す感じとか。俺はああいうものを避けてしまっていたので。あれを見てて、ちゃんと手続きを踏んでていいなと思ったんだよね。これが主人公のぼっちが暗いまま一人で大成功を収める話になったら嫌だったんだけど、そうじゃなくてバンドを通してちゃんと社会性を持つことの大事さを学べるようなストーリー展開になっていたのは、健全なコンテンツだと思ったんだよね。そういったところに感心したんですが、2人はどう?

オノウエ:僕が描写の細かさで思ったのは下北沢SHELTER。劇中だとSTARRYというライブハウスになっていますが、楽屋まで完璧にシェルターになっててビックリしたね。

カンノ:アニメの後半にFOLTっていう新宿LOFTがモデルのライブハウスが出てくるんだけど、あれも完全にロフトだったね。

YOU:ロフトの再現度はヤバかったね。

オノウエ:そういうのがすごかったね。あと僕が金沢八景のほうの大学に行ってたので、アニメに出てくるコンビニがもう知ってるところで(笑)バンドをやる上でのあるあるもそうだし、その地域のあるあるも詰まってたなと思いましたね。

カンノ:僕は『ぼっち・ざ・ろっく!』を見ていて、「いいぞー!」と「もうやめてくれー!」の両方を思ってましたね。

YOU:「もうやめてくれー!」のほうが聞きたいな(笑)

カンノ:この3人のなかでは僕が一番、今の下北沢の当事者じゃないですか。僕、とあるライブハウスでちょっと働かせてもらってるんですよ。バーカン初日の後藤ひとりは、先月の俺!

YOU・オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:「あれ?知ってる人が出てるな~?」って思ってたんだよ(笑)

YOU:初めてだとドリンクはムズいよね(笑)

カンノ:あれは完全に「もうやめてくれー!」事案でしたね(笑)さっき「全話見た」って言ったけど、「やめてくれー!」と思ったところは15秒スキップですよ。

YOU:やっぱりカンノはまだ当事者っていうのがウケるな。

オノウエ:フフッ。

YOU:ぼっちがドリンクを渡すシーンあるじゃん。最初はバーカンから顔も出せなかったのに、ちゃんと決意して社会性を持ってお客さんに誠心誠意ドリンクを渡そうとするところ。ちょっと成長するシーン。ああいう成長がバンドのなかじゃなくて、ドリンクを渡すところで描かれているのがいいなと思って。やっぱり俺も昔は「なんでライブハウスのドリンク、こんな高いんだよ?」みたいなことを思ってたんだよ。でももちろん、いろんな必要な事情とかわかるじゃん。

カンノ:ドリンクがいっぱい出ることで経営できているとかね。

YOU:それがいいなと思ったんだよね。ようは、今あるものからちゃんと逃げずにちゃんと乗っかってみることの大事さが描かれていて、「俺はそういうことをやってこなかったな~」と反省したんだよね。

カンノ:「ライブハウスなんだから、良い演奏が一番っしょ!」みたいな精神性だったってことかな?

YOU:まぁ、そうだね。『ぼっち・ざ・ろっく!』はバンドだけでなく、ほかのところでも成長を描いているのがいいなと思ったんだよね。あと路上ライブのシーンで、自分でチケットを手売りするシーン。あれもすごいなって。「社会に出てちゃんと商売をしてお金を得たうえで演奏をする」ということを描くってさ。

カンノ:これは音楽をやっていて「現場と経営」みたいなことを最近思ってて。バンドマンとして現場感が強めで居てしまったり、バンドのロマンが強い人であればあるほど、お金のああだこうだとかが面倒に思ってしまうし、「ギターだけ弾ければ良いでしょ」とか「演奏さえ良ければいいでしょ」とかって思いたくなるじゃん。でも「経営」とか「運営」とかの視点をインストールすると、「誰と飲みに行くことが大事だ」とかさ。

オノウエ:なるほどね。

カンノ:後藤ひとりがどれだけギターが上手かろうが、後藤ひとりが持ち合わせていない能力ほど大事なものはないということがわかってきちゃうんだよ。それは痛感する。やっぱりコミュ障過ぎるとバンドの世界でもキツいんだよね。

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Radio OK?NO!! Podcast #071「平成のディーバ、令和のディーバ」特集文字起こし

宅録ユニット・OK?NO!!の上野翔とカンノアキオでSpotifyで聴けるポッドキャスト番組『Radio OK?NO!!』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。今回は時代によってラッパー像も変われば、その横で高らかに歌い上げる女性R&Bシンガー、つまりディーバ像も変わるということで、男性ラッパーと女性歌手の組み合わせ楽曲を平成と令和で聴き比べる「平成のディーバ、令和のディーバ」特集の文字起こし(前編)を掲載します。

 

Radio OK?NO!! Podcast #071「平成のディーバ、令和のディーバ」特集音声は下記リンクから。ポッドキャスト登録を是非、よろしくお願いします!

 

 

カンノ:ゼロ年代を青春期として過ごした僕らじゃないですか。あの頃の音楽を取り上げようと思うのですが。J-R&Bとでも言いましょうか。男性ラッパーについてはこれまでいろいろ喋ってきましたが、女性R&B歌手ですね。

上野:たしかにあの頃は多かったね。

カンノ:褐色肌で、強そうな女性像で歌い上げるみたいな。いわゆるディーバですね。女性R&B歌手の人が結構2000年代は多くいましたね。で、今までは平成の話をしましたけど、平成と令和でそういうディーバ観とか、その横にいるラッパー観も変わってきているのではないかと思いましてね。

上野:「ディーバ」という言葉が指すイメージとかね。

カンノ:平成の終わりから始まった日本のヒップホップブームによって、ラッパーの横にいる女性の歌い手のイメージも変ったと思うんです。ということで今回は「平成のディーバ、令和のディーバ」特集と題しまして今のような話をしていきたいなと思います。以前に「平成のエモ、令和のエモ」特集っていうのをやりました。

カンノ:そこでは「平成における”エモ”の意味と、令和における”エモ”の意味が変わってきていますよ」という話をしました。それに近い感じで「J-POP界における平成の”ディーバ”と令和の”ディーバ”は意味が違うぞ」というところを見比べていこうかなと思います。主にメジャーフィールドで活躍している女性歌手、それを男性ラッパーと一緒に歌っている女性歌手の楽曲を僕が令和、上野君が平成を担当して、お互い3曲ずつ楽曲を流していこうと思います。じゃあまずは僕からいきましょう。令和のディーバです。これは「平成のエモ、令和のエモ」特集でも流しましたね。その曲を聴きたいと思います。空音で「Hug feat. kojikoji」

カンノ:こちらの曲、ポッドキャストの収録時点でYouTubeでのMVの再生回数が4400万回を超えて、サブスクでは1億回突破。

上野:すごいな~。

カンノ:まず前提条件を言いますね。令和にディーバはいません。

上野:そうだよね(笑)この曲はいわゆる「ディーバ」が出てくる曲じゃないもんね。

カンノ:売れているメジャーシーンで平成っぽい感じで「この人がディーバだ」という人はいないですね。なので、今の時代のラッパーと一緒に曲をやっている女性歌手を暫定的に「ディーバ」と呼ぶことにします。で、そういうことにしたときにの平成と令和の変化具合を見ていくという企画にしたいなと思います。今の売れている若いヒップホップの子、ラップをしている子の特徴として考えられるのが、『高校生RAP選手権』と『フリースタイルダンジョン』の影響を受けてラップを始める。その上で、結果J-POPみたいな音像になっていく。それはなにかというと、メロウで歌メロっぽいラップをすることがデフォルト。これは基本として入っている。そういうラッパーと、シンガーソングライター出身のハスキーなボーカルの女性。このタッグはかなり多いと思います。それが令和におけるラッパー像とディーバ像になっているかと思います。

上野:あえて呼ぶのであればね。

カンノ:いわゆる平成のディーバ感はないかもしれないけど、このパターンが多いのはわかる?

上野:多い印象はたしかにあるね。平成イメージのラッパーっていうのもそんなにいなくて、ちょっとゆるい印象の人がラップをしていたりね。

カンノ:「怖そう」とかがキャラクターになってたのが平成だったと思うんだけど、今ってもう「キャラクターだよね」っていうことがわかっちゃってるからさ。そうなると本当に怖い人か、そうじゃないかの二分化な気はしていて。合間の人がいないなと。空音とかCreepy Nutsとか「怖くない」なのか、ちゃんとアングラの「怖い」なのか。舐達麻か文化系か、みたいな(笑)

カンノ:それに比べて平成ってこの「怖い」と「怖くない」の真ん中にいるような人たちが多かった気がしてね。

上野:それでは一方、平成のディーバなんですけど、これはカンノ君も冒頭で喋ってましたが、平成はディーバがたくさんいたんですよ。ディーバの時代でしたよね(笑)

カンノ:1億総ディーバですよ!

上野:それは「ディーバ」という言葉の概念が崩壊していますが(笑)でね、その時代を知っている人はいろんなディーバを想定できると思うのですが、特に強そうな感じの人、そして褐色肌のイメージの人の楽曲を聴きたいと思います。m-floで「come again」

カンノ:このMVはね、でっかい携帯が出てくるんだよ。

上野:出てくるね(笑)

カンノ:PHSみたいな携帯ね(笑)

上野:そうだね(笑)m-floは言わずもがなですが、そのボーカルのLISAさん。このディーバ感ね。

カンノ:あとLISAさんで思い出したけど、ディーバに必要な要素ね。アメリカっぽい。

上野:そうだね(笑)

カンノ:「come again」が一つ特殊な点としては、LISAさんってさっき言った「強そう」という要素があって、のちに『アウト×デラックス』に出てちゃきちゃき系なキャラクターがウケてバラエティ番組にハマっていく流れとかあったけど、「come again」が不思議なところはLISAさんのボーカルが結構ウィスパーボイスだっていうね。

上野:たしかにそうだね。

カンノ:そんで、LISAさんの人格とkojikojiという人の人格を比べたときに、kojikojiさんは華奢でアコギを抱えてそれを爪弾きながら韻シストのBASIの曲をメロウなラップで歌って、それがTikTokでバズった人なんだよね。

カンノ:それで実際にBASIと曲をやったり、空音とやったり、あとクボタカイとかね。そういう文化系の香りのするラッパーの横にいる女性歌手の筆頭になったというか。それに対してLISAさんはさ、VERBALというラッパーの横にいるじゃん。で、体格こそは小さいかもしれないけど、めっちゃ角が生えた帽子とか被ってるじゃん(笑)

上野:そうだね(笑)

カンノ:「人間と帽子、どっちに人格があるんだろう?」って思っちゃうような帽子を被ってるじゃん。

上野:そもそも見えるのか見えないのかよくわからないサングラスをかけたりもしてるよね。

カンノ:人間と、帽子と、サングラスで、どれに人格が備わっているのかわからないよね。どれが操作してるんだろう?

上野:「本体はどれだ?」(笑)

カンノ:キャラクターの強さとかさ、着飾ることでの強さとかさ、そういうラッパー像って平成の文化だったなと思うんだよね。それこそ単純に大きい服を着ているとかさ。今の時代のラッパーってあんまりダボダボの服を着ている印象ないじゃん。

上野:「ラッパーってこういうファッションだよね」というような一括りはもうできなくなったよね。

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『Radio OK?NO!!』はパーソナリティーの上野翔とカンノアキオが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#okno」をつけてツイートしてください!お問い合わせはメール:radiookno830@gmail.com まで。

サムオブ井戸端話 #077「もうSyrup16gで笑えなくなった」(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

Syrup16gの新譜について語るサムオブメンバー。後編では、Official髭男dismとの対比や"映え"の世界をとおして、今の時代の"良し"とされるもの全てに対して逆張りし続けるSyrup16gの姿勢に「もう笑えなくなった」という話をしました。前編は下記リンクから。

 

 

YOU:Syrup16gの今回の新譜に「Maybe Understood」という曲が入っていまして。

YOU:その歌詞で「シュレッダーかけ 夢の乗車券 上書きした人生を演じ続けても 走馬灯には編集機能無いらしい」というヤバい歌詞があって。「もうやめてくれよ~」っていう(笑)

カンノ:この歌詞も10代のときに聴いたら「もうまたまた。カッコつけちゃって」みたいなことを思うじゃん。でももうこういう歌詞が普通に刺さっちゃうよね。

YOU:「人生って取り返しがつかないよな。うわ~!」っていうね(笑)

カンノ:これは危険だよね。

YOU:歌詞をそのまま読み取ると、上辺だけの人生を送ろうと思えば全然送れるんだけど、「あれ?人生って編集できなくね?」って気が付いてももう遅いみたいなことだと思うんだけど、ちょっと無理矢理話をつなげるんだけど、Official髭男dismの「115万キロのフィルム」っていう曲があるじゃないですか。

YOU:あの曲って自分が監督で主演でカメラマンで、相手の人生を撮っていく曲じゃないですか。あの曲も僕は好きなんだけど、「Maybe Understood」ってそのアンチテーゼに思えたんだよね。これはシロップの新譜の特徴だと思うんだけど、すごく自分が独身者であることを強調してるんだよね。「自分は一人だ」っていうことをずっと言ってて。で、ヒゲダンのほうは結婚ソングだけど、あの曲も人生は編集しようとする曲じゃん。ハッピーエンドの映画を作るように人生を作っていこうとする曲だよね。自分の意志で前向きに人生を作っていこうとするヒゲダンの曲に対して、シロップは過度に受動的で「もう無理っしょ」みたいな姿勢の曲だから、テーマは似てるのに対極になるのは面白いなと思ってね。

カンノ:今は1億総SNS表現時代じゃないですか。食ったものをインスタにアップし、今日過ごした日を映えた写真でもって人様に晒し、その人生を人に評価してもらう。みんな、自分の人生を人に評価してもらう人生になっちゃってるじゃないですか(笑)「115万キロのフィルム」ってその”映え”の世界を肯定的に捉えているような気がしていて、シロップは「そんなもんじゃねえよ」って言ってる気がしますね。

YOU:俺もそうだと思う。ちなみにおそらくSNSのことを歌っている曲がアルバムには入っていて、「うつして」という曲なんだけど。

YOU:「からかわれたら痛い 見過ごされるのは怖い 誰かなんていないのに お互いしかいないのに」という歌詞はSNSの不特定多数の人から見られていないと怖いっていう歌詞とも取れると思うね。

カンノ:なにか写真をSNSにアップするって「そういう演出」が施されていて、それが良しとされている時代が何年間か続いているわけじゃないですか。そんなの当然反動は起こるよね。

YOU:シロップの新譜を聴いた感想が「もうやめてくれ」なんだけど(笑)、そういう思いになるのはつまり「大人になる=演じる」ということだからさ。結局、結婚して子どもができて仕事も大変だけど「やってやろうじゃねえか!」っていう前向きな気持ちになったことも「それは演じているだけじゃない?」という水を差す気持ちが入ってくるからさ(笑)

カンノ:ミュージシャンって基本的には人に見られる仕事じゃん。人前に立ってなにかを発表する仕事を自ら選んでいるわけだし。それとSNSにいろんなものをアップして”演じている自分”というものを表すことのリンク具合ってあるような気がしていて。「お前、人前に立つ仕事してるんだからSNSやれよ」っていう言い分もわかる一方、そういうことを一切しない矜持もわかるよね。どちらかというと僕は後者側が好きなんだけど。客とコミュニケーションしないことの重要性というか。アーティスト側が一方的に曲を出すこと以外は基本なにもしないことって個人的には大事なことだと思うんだけど、そこにロマンを感じることは時代的に遅いのもわかる。たとえばカバー曲が未だに多いというのは、そういうSNSっぽい感じがするんだよね。カバー曲って人の曲だから演技面もあるような気がしていて。やっぱり映えそうなキラキラした曲がカバーされがちだよね。映える曲がどうしても重宝される時代のなかで、全然映えない地味で暗い曲とかの良さとか価値観もちゃんと届けることは大事な気がするんだよね。だから今回のシロップのアルバムは歌詞の話が中心だったけど、普通にサウンド面で僕は好きでしたね。

オノウエ:サウンド面はどんな感じなのかな?

YOU:オーソドックスなオルタナティブロックですよ。

カンノ:馬鹿っぽいことを言うと、「2022年のSyrup16g」という感じがした。

オノウエ:たしかに頭だけ聴いたんだけど、あまりにSyrup16gだったからビックリしたんだよね。

カンノ:あまりにSyrup16gなものが2022年に聴けたことにビックリしたんだよね。

オノウエ:今回はあまりにYOU-SUCKがSyrup16gの歌詞をクリアに喋ってしまったから、俺はそれに喰らっちゃってるわ。

YOU:アハハハハッ!

オノウエ:僕は音楽を聴くときにそもそも歌詞があまり入ってこない人間なので。でもこの話は歌詞が前提になることはわかっていたので、「歌詞を見ながら聴かなきゃな」とは思っていたんだけどなんとなく拒絶してたんだよ。それを明確に喋られてしまったので、今それに喰らってしまっている状態ですね(笑)

カンノ:でも「今のほうが痛感する」っていう話はよくわかるね。もうSyrup16gで笑えなくなっちゃったんだよね。

YOU:じつはシロップってずっと笑えない音楽を作ってたんだよね。

オノウエ:そういうことがわかってしまったよね。

カンノ:ちなみにART-SCHOOLはその辺りはどうなの?ART-SCHOOLとシロップって僕らが10代のときは「また鬱じみたことを言ってるよ~」って失笑しちゃってたじゃん。

YOU:ART-SCHOOLセルフパロディが多いから、同じような暗めの歌詞が散見されるね。でもART-SCHOOLSyrup16gはやっぱり違うんですよ。ART-SCHOOLってじつはサウンド面はいろいろ変わっていて。ほかに聴きどころがいっぱいあるんだよね。あと歌詞は「なんとなく悲しい」とか「なんとなく切ない」みたいな感じで、ぼかして書くことが多いかな。

カンノ:それで言ったら、ART-SCHOOLのほうがちょっとエンタメっぽいね。

YOU:そうだね。「耽美」って言い方がよくされるかな。で、2組ともボーカルがキャラクター消費されがちなんだけど、シロップの今回のアルバムは全然そんなもんじゃなかったってことですね。

カンノ:喰らったわけですね。YOU-SUCKさんは「これから頑張るぞ!」っていうときにシロップに水を差されてしまって、「もう生きるのやめようかな…」と思ったという話ですね。

YOU:はい。

オノウエ:「はい」って(笑)

カンノ:というわけでYOU-SUCKさん、今までありがとうございました!

YOU:ありがとうございました!

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Radio OK?NO!! Podcast #070「ウイスキーが、お好きでしょクイズ」特集文字起こし(後編)

宅録ユニット・OK?NO!!の上野翔とカンノアキオでSpotifyで聴けるポッドキャスト番組『Radio OK?NO!!』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。今回は流した「ウイスキーが、お好きでしょ」のカバー曲がサントリーハイボールのCMで使われているかをクイズ形式で紹介したウイスキーが、お好きでしょクイズ」特集の文字起こし(後編)を掲載します。(前編)は下記リンクから。

 

Radio OK?NO!! Podcast #070「ウイスキーが、お好きでしょクイズ」特集音声は下記リンクから。ポッドキャスト登録を是非、よろしくお願いします!

 

 

カンノ:それでは次の人はウイスキーが好きかどうかお答えください。

上野:ウイスキーが好きかどうか当てるクイズじゃないだろ(笑)

カンノ:それではお聴きください、藤巻亮太で「ウイスキーが、お好きでしょ

カンノ:レミオロメン藤巻亮太さんです。

上野:3問目になるとちょうどいいラインと言いますか。

カンノ:こういう問題、お好きでしょ?

上野:フフッ。

カンノ:まぁ、はっきり言って田島貴男さんよりはウイスキー好きじゃないと思いますけどね。

上野:ウイスキーが好きそうか好きじゃなさそうかクイズってクイズとして破綻してるからね。

カンノ:好きでしょうか?

上野:わからねえよ(笑)

カンノ:曲の印象はどうですか?

上野:これも聴いたことがある気がするんだけど、今自分を疑っていますね。聴いたことがあるという記憶が捏造な気がします。

カンノ:ということはオフィシャルではない。違うと思ったら「オフィシャル~じゃ、ないでしょう♪」と歌ってください。

上野:絶対に嫌です。

カンノ:そうですか。

上野:字余りなのが嫌です(笑)でもどっちかな~。いや、おそらくオフィシャルではない。

カンノ:オフィシャルではない。ニセモノウイスキーですね。発泡酒ですね。

上野:偽ウイスキーの反対は発泡酒じゃないですよ。

カンノ:ということでオフィシャルじゃないということですね。正解は、、、オフィシャルウイスキーでございました!

上野:そうだったか~。

カンノ:これは2019年です。

上野:わりと最近ですね。

カンノ:最近できたウイスキー

上野:ワインみたいな何年ものとかじゃないんだよ。

カンノ:since2019でした。

上野:あのCMって大体1年周期なの?

カンノ:調べる限り1年周期っぽいね。だからあとで解説しますけど、このCM歌ってる人っていっぱいいるんですよ。いっぱいいるし、オフィシャルじゃないやつもいっぱいいます。じゃあ次、こいつはオフィシャルかどうか?続いてのウイスキー好きはこの人です。折坂悠太で「ウイスキーが、お好きでしょ

カンノ:今までのウイスキーに比べたらちょっと薄めですかね。

上野:曲をハイボールだとすると、これはちょっと薄め。

カンノ:藤巻亮太の「ウイスキーが、お好きでしょ」はサウンド濃かったよね。

上野:そうそう。あんなにバンドっぽくドラムがバーンと鳴ってるやつってあったっけ?と思ったんだけど、あったんだね。

カンノ:それに比べると折坂さんのはわりとゆるやかで。

上野:そうね。空気感は踏襲しながらね。なんか、聴いたことはあるんだよな~。

カンノ:ずっとそれじゃねえか(笑)そりゃそうだよ、だっていろんな人がカバーしてるんだもん(笑)

上野:カンノはこの企画のためにめちゃくちゃ「ウイスキーが、お好きでしょ?」のカバーを聴いたわけじゃん。

カンノ:たくさん試飲しましたよ。

上野:で、僕はそれをしていないんですよ。だからCMで聴いたことがありそうか否かでしか判断ができないんです。そうなるとこの折坂悠太のカバーはテレビで聴いたことがあるような気がする。

カンノ:折坂悠太がニセモノのウイスキー好きなわけがない。

上野:あとちゃんとCMで流れてても違和感はなさそうだし。なのでオフィシャルだと思います。

カンノ:正解は、、、CMで使われています!

上野:おぉ!なるほど。

カンノ:これは2021年です。

上野:最近ですね。

カンノ:ということでこれまで全員やってるということになります。

上野:そうだね(笑)それはクイズ作家としてはどうなんですか?

カンノ:じゃあ最終問題。これは曲は流しません。

上野:おぉ?

カンノ:誰が歌っているかの名前だけ言うんで、それだけで答えてください。

上野:何その問題(笑)

カンノ:答えてください。この人は「ウイスキーが、お好きでしょ」をCMソングで歌ってるでしょうか?May J.

上野:アハハハハッ!なるほど、これがやりたかったんですね(笑)

カンノ:………

上野:今、僕の問いかけに「なにも喋りませんよ~」的なアピールで口を真一文字にしてますが(笑)May J.さん?

カンノ:May J.さんがCMで使われている格かどうかです。

上野:言い方が変わってますよ(笑)今までのクイズで出てきた人の流れを考えると、May J.さんはCMをやってないんじゃ…

カンノ:正解!

上野:あっさり言いますね(笑)

カンノ:May J.さんはCMで使われていませんでした!

上野:もっと早く答えればよかった(笑)

カンノ:この「ウイスキーが、お好きでしょ」は本当に錚々たる人たちがCMで歌われているんですよ。竹内まりやハナレグミ、GLIM SPANKY…。

上野:ほぉ。

カンノ:そして今はクラムボンがやっています。

上野:へぇ~。

カンノ:そしてゴスペラーズ田島貴男藤巻亮太、折坂悠太。ここにMay J.は入ってきませんよ。当然です。

上野:まぁ、当然だよね(笑)

カンノ:じゃあ最後はアンオフィシャルのMay J.さんの「ウイスキーが、お好きでしょ」を聴いてお別れです。

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『Radio OK?NO!!』はパーソナリティーの上野翔とカンノアキオが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#okno」をつけてツイートしてください!お問い合わせはメール:radiookno830@gmail.com まで。

サムオブ井戸端話 #076「もうSyrup16gで笑えなくなった」(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

Syrup16gの約5年ぶりの新譜を聴いて喰らってしまったYOU-SUCKメンバー。結婚して奥さんと子どもがいて一生懸命仕事を頑張ろうとしている矢先に、資本主義リアリズムについて歌うSyrup16gに引っ張られてしまうという話をしました。

 

 

YOU:Syrup16gが約5年ぶりの新譜を出しました。

カンノ:おめでとうございます!

YOU:ありがとうございます(笑)

オノウエ:YOU-SUCKさんと僕はSyrup16g好きですからね(笑)

YOU:とは言っても最近のシロップを熱心に追っていたわけではありません。「昔よく聴いていたバンドが久々に新譜を出したな」くらいだったんですよ。その感じでいうと、今年はART-SCHOOLの復活のほうが嬉しかったんですよね。

オノウエ:Syrup16gはじつは活動再開してから結構経ってるからね。

カンノ:2014年から活動再開してるよね。

YOU:活動再開してから今回の新譜で4枚目なのでまあまあ動いてるんだよね。僕とオノウエは2008年に行われた武道館解散ライブにも行ってて。

オノウエ:高校生のころに行きました。

YOU:そうそう。「解散しちゃったね~」と言いながら帰ったわけですが。まぁ、思い入れはあるんだけどかなり薄れてはいました。好きだけどなんとなく距離ができていたバンドなんですけど、なんとなく新譜を聴いたんですよ。「久々に出たな、聴くか~」くらいの心持ちで聴いたらですね、ちょっと喰らっちゃいまして。僕は今年子どもが生まれて、仕事も大変なんだけど一生懸命やってるし、「これから頑張るしかないよな」という前向きな気持ちで日々を生きていこうとしているんですよ。

カンノ:良いことじゃないですか。

YOU:かつてはSyrup16gART-SCHOOLを聴いてうなだれていた日々を過ごしてましたよ。鬱々とした気持ちを抱えていた自分も昔はいましたが、今は奥さんと子どもがいて仕事もすごく頑張ろうと思っているんですよ。でもSyrup16gの新譜はそんな気持ちの僕をすごく邪魔してくるんですよ!

オノウエ:なるほどね。

YOU:まずは歌詞がかなりキツイですね。たとえば「診断書」っていう曲があるんですが。

YOU:曲はすごくかっこいいんですけど、歌詞がめっちゃ辛いんだよ(笑)

カンノ:この出だしの歌詞がいいよね。「悩みが無いのが悩みで 引き受ける勇気が無いだけで 悩み疲れたその場所で 諦めに逃げ込みたいだけで」

YOU:この歌詞が僕、最初に喰らいましたね。「もう俺はやるしかないんだ!」という気持ちになったのに水を差された気分ですよ(笑)

カンノ:この歌詞は前向きになった人の気持ちを邪魔するよね(笑)

YOU:「やっと辿り着いたその答えすら怪しいもんで 無意識に乗っ取られた芝居じみた独白も」とかさ、マジやめてくれよ(笑)そんで、この曲のサビが「診断書待ってる 死んだっしょ 埋まってる」っていう駄洒落ですよ(笑)

カンノ:暗いねずっちみたいなことになってるもんね(笑)

YOU:でもめちゃくちゃ良い曲なんだよね。

カンノ:この曲かっこいいよね。

YOU:音的なことでいうと、今回のシロップのアルバムはかなりシンプルなオルタナティブロックなんですよ。まぁ、これまでもキャッチーなオルタナティブロックで鬱々とした歌詞を歌うバンドだったんだけど。

カンノ:今回のアルバムはかなりSyrup16g的だったよね。僕はそんなに詳しいわけじゃないんだけど、こういうバンドなのはわかる。シロップのベタな感じはした。

YOU:それで特にそのシロップのベタ感が今回のアルバムは洗練された形で出てきたね。サウンドに変な引っかかりがない分、歌詞が異様に入ってくるんだよね。

カンノ:だからこそ、五十嵐さんのちょっと上ずった声もかなり入ってくるよね。

YOU:そうそう。歌詞も声も入ってくるよね。で、「あれ?シロップってこんなに切れ味鋭かったっけ?」と思って過去作とかも振り返りながら聴いてたのね。それで思ったのが、シロップって今聴くと刺さっちゃう音楽だったっていうことですね。僕とオノウエは高校生のころに武道館の解散ライブを見に行ってなにかをわかった気になっていたけど、あのときはなにもわかってなかったね。

カンノ:今になってわかるのね。

YOU:年取ったら聴き方が変わってくるというのは月並みな話だけどね。

オノウエ:俺はそれで言うと、シロップの新譜はなんか聴けなかったんだよね。

YOU:それはどういう意味で?

オノウエ:聴こうとしたんだけど、「ちょっとこっちに来ないでくれ!」っていう気持ちになっちゃって。

YOU:アハハハハッ!

カンノ:でもそれって感じ方はYOU-SUCKと一緒なんじゃないの?

オノウエ:いや、俺の場合は「刺さるから来ないでくれ」っていうことではなかったんだよね。

カンノ:もう生理的に受け付けない感じ?

オノウエ:正直言うと、高校生のころとシロップへの感じ方が違い過ぎてね。ちょっと聴けなかった。ざっくり言うと苦手なのかもしれない。でも今のYOU-SUCKの話を聞くと、また俺の人生のステージが変わったりすると聴き方が変わるのかもしれないと思ったかな。

YOU:いや、俺もオノウエと同じで「こっちに来るな」ですよ。たとえば当時「負け犬」の歌詞とかよくわからなかったもん。

YOU:『痙攣』というZINEで李氏さんという人が書いたSyrup16gの文章があるんだけど、そこでは要するに「負け犬」の2番の歌詞で「お金を集めろ それしかもう 言われなくなった 頭ダメにする までがんばったり する必要なんてない それを早く言ってくれよ」というのがあるんだけど、これのテーマって資本主義リアリズムだよねっていう話をしていて。マークフィッシャーの言った資本主義リアリズムの世界観だと。僕らは当時、五十嵐のキャラクターとかで紛れてあまり理解していなかったけど、彼はずっと一貫して資本主義にキリキリと巻き取られて汲々とする人間の悲哀を歌った人だということを言ってるんですよね。で、聴き直すとたしかにずっとそうなんだよね。そしてなぜ僕が今それが刺さるのかというと、その自覚があるからなんですよね。悲しくなってくるんですよ。

オノウエ:なるほど、そういうことね。

YOU:シロップはもう円熟味が増してるから、正しい位置にナイフを刺してくるんだよ。そしてこっちもこっちで正しくナイフが刺されるように準備がされてある状態なんだよね。もうそういうことが合致しちゃってるのでまたCD買っちゃいましたね(笑)

カンノ:僕ら世代だと、シロップってネタ消費されるバンドの筆頭でもあったじゃん。それがマジでなくなったってことだよね。

YOU:そう。それは本当にそうなの。

カンノ:この手のバンドってどうしてもそうなりがちだったじゃん。とくにシロップとかART-SCHOOLとかって僕ら高校生のときに「またなんか鬱っぽいこと言っちゃって。太宰治みたいなこと言っちゃって」みたいなニュアンスってあったじゃない。それがこちらの斜め目線もどんどん年を取るにつれて薄くなってさ、バンド側もそういう見せ方や聴かせ方が上手くなってね。

オノウエ:今、太宰治っていう名前が出たけどさ、これは例えとしては極端だけど、当時高校生のときは「太宰の真似事とかしちゃって」と思ってるけど、年を取っていったら俺たちも太宰の気持ちもわかってきたということだよね(笑)

YOU:シロップのフロントマンの五十嵐って同時期の作家でいうと坂口安吾が好きらしく、『堕落論』をもじった「落堕」って曲がある。で、太宰も坂口安吾も取扱注意なところがあるじゃん。かぶれちゃう感じというか。そういうことをかぶれるとかじゃなくて、五十嵐は本当に正しくやっていたんだよね。

オノウエ:今のYOU-SUCKの言葉を聞いて自分でも腑に落ちたんだけど、資本主義リアリズムみたいなことを俺は直視したくなかったんだよね。

カンノ・YOU:アハハハハッ!

YOU:今回のアルバムはそれをまざまざと感じさせるからね。

オノウエ:「俺は今、そういうことを考えたくない」という深層心理が浮き彫りになった気分ですね(笑)

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