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サムオブ井戸端話 #137『PERFECT DAYS』と音楽(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

映画『PERFECT DAYS』を観たサムオブメンバー。内容的には大満足の2人が、映画内の音楽にまつわる部分で良かったところと引っかかったところについて語りました。

 

 

YOU:『PERFECT DAYS』という映画を観ました。これはカンノに勧められて、公開されてだいぶ経ってから観たんだけど。俺はこの映画、めちゃくちゃ好きで。

カンノ:僕も好きですね。

YOU:ただ、観る前は「おそらく嫌いな系統の映画だろうな」と思っていました。この映画が役所広司演じる男が一人暮らしを満喫している映画ということは知っていて、「丁寧な暮らし」を礼賛するものかと思っていました。そういうものだけを描いていたら、俺は小さい子どもがいて、日々の暮らしがライオット過ぎるので、「丁寧な暮らし」礼賛なモードには乗れないので、まったく共感できないだろうなと思っていたの。でも観てみたら、そんなこと以上に、この映画の東東京の画が好きだったんだよね。俺もこの近くに住んでいたことがあって、とても東東京が好きだったので、好きな部分が描かれててありがたかった。あと、この「丁寧な暮らし」的な生活も永遠ではない感じが出ていたのがよかった気がする。これまであった建物がなくなったり、行きつけのスナックもママの前の旦那が来て続くのかどうか怪しくなったり。あと主人公の平山の妹がセレブで、平山とお父さんの関係がよくないことが示唆されていたじゃん。ということは、平山はただ単にやりたいからこの生活をしているわけではなくて、どこか追い詰められてこういう生活になったと取れると思ったんだよね。

カンノ:そうならざるを得なかった。

YOU:だから、ただおじさんが都合のいい生活をするだけの映画には見えなかった。で、サムオブ的に音楽にまつわるところでいうと、スナックのママ役の石川さゆりの歌声が映画として今後の世の中に残り続けること、そしてそこにギターで演奏しているのがあがた森魚っていうのがヤバい。「こことここがつながるんだ!」っていう興奮はあったね。石川さゆりという稀代の演歌歌手とあがた森魚というアングラとメジャーの橋渡し的なシンガーが同時に映っているのは興奮しました。

カンノ:あのスナックのシーンね。そこにいるのが役所広司モロ師岡っていうのがいいじゃない(笑)

YOU:キャスティングが素晴らしいよね(笑)平山がお昼を食べる公園にいつも横で座っているOL役の長井短もよかったな。

カンノ:絶妙に不幸そうな顔しているの、天下一品にうまかったよね(笑)あと柄本時生演じるタカシの代わりにトイレ清掃の仕事に来た安藤玉恵もよかったな、5秒くらいしか映ってないけど。

YOU:カッコよかったよね(笑)

カンノ:次のパーフェクトデイズを歩みそうだなって思った。

YOU:たしかに(笑)で、もう一つ音楽の話なんだけど、アオイヤマダ演じるアヤっていう女の子がいたじゃん。

カンノ:どうやらガールズバーで働いているらしい、タカシが好きな女の子。

YOU:アヤが平山の車に入って、パティ・スミスの『Horses』っていう有名なアルバムのカセットを聴くんだよね。それを「好き」って言って口ずさむじゃん。「そんなわけねえだろ」って思ってしまった。

カンノ:フフッ。

YOU:パティ・スミスを口ずさむ女の子、いる?

カンノ:それは物語だからさ(笑)

YOU:たとえば映画でも流れてたけど、金延幸子だったら「この人の言ってること、不思議」とか言うのはまだリアリティあるけどさ。

YOU:パティ・スミスを口ずさむのは嘘じゃん(笑)

カンノ:好きなノリだったんだからいいじゃない(笑)

YOU:パティ・スミスを聴いて口ずさんで、頬にチュッとして帰るのは可愛らしいシーンではあるんだけどさ、あれこそおじさんに対して都合のいいシーンに思えちゃってね。

カンノ:たしかに、あのシーンは結構ファンタジーだよね。

YOU:たしかにこの映画はおじさんの妄想の部分は大きいと思う。ただその一方で、そういうおじさんファンタジー性をすべて排して、超リアルなトイレ清掃員の映画にしたらジャンルが変わっちゃうじゃん。たとえばこの映画は「大資本が入っていて、トイレ清掃員のリアルで惨めな部分が全然扱われていない」みたいな批判もあるみたいだけど、それは別ジャンルのところでそういう映画を観ればいい気がする。もちろん、ケッて思う部分もあの映画にはなくはないけど、それよりも東東京の風景をあのタッチの画で残してくれてありがとうという思いのほうが強いし、音楽のセンスもよかったし、終わりの予感も感じられたし。

カンノ:撮り方がうますぎて批判が集まる部分もあるのかもね。画もきれいで、音楽の使い方もセンスがあるからこその批判というかね。音楽がBGMじゃなくて、平山の車のなかで流れているというギミックもいいじゃん。だから、BGMとしてフェードアウトするんじゃなくて、車を止めたら停止ボタンが押されるという意味でカットアウトされるという。で、そこから仕事に入るというね。

YOU:音楽を流す瞬間も、車を走り出したらではなくて、「この場所で」というのがあるよね。

カンノ:スカイツリーのふもと辺りで流し始めるんだよね。

YOU:あの感覚、わかるんだよな。「この場所から音楽を聴く」っていう感覚は久々に思い出しましたね。

カンノ:その感覚がおもしろいなと思ったのは、駐車場を出るのと同時ではなくて、ある程度走ってスピードに乗ったタイミングでカセットを流し始めるんだよね。走ってるときの音楽なんだよね。音楽を止めるときは、車を停めるときなんだよね。それすらもルーティンになっているという。で、そのルーティンを崩されたら怒っちゃうんだから。「こんなシフトできねえよ!」って。

YOU:アハハハハッ!

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SOMEOFTHEM OF PODCAST 第12回「誰も語らないヒット曲」特集(前編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第12回は当時売れたのに懐メロに括られることなく、今では誰も喋らない楽曲を紹介する「誰も語らないヒット曲」特集の書き起こし(前編)を掲載します。ポッドキャストは下記リンクから。

 

 

カンノ:今回は僕の大得意なジャンル、2000年代の話をします。

オノウエ:2000年代から抜け出せない男ことカンノアキオ(笑)

カンノ:まだハラスメントをしていい時代。

オノウエ:そんな時代があったんですね(笑)

カンノ:立ちションしたり、川にゴミを投げていい時代。

オノウエ:そんな時代はないんだよ(笑)

カンノ:そんな2000年代の話をしたいんですが、「そういえばあの曲あったね」っていうことが懐メロとして語られる土壌じゃないですか。で、そこに2000年代の楽曲が入ってきてるんだよ。もう振り返りの対象。たとえば今の時代、MDやCDで音楽を聴いてないわけじゃん。iPodもそうかもしれない。だから今の子からすると、2000年代は振り返りの対象。たとえば『ぼっち・ざ・ろっく!』とかで2000年代邦ロックが振り返られるわけだ。

オノウエ:そうですね。

カンノ:だから2000年代はリバイバルになってる。で、また別のジャンルだと、今のヒップホップブームに乗っかるかたちで、SEAMOnobody knows+とかが一緒にやるみたいな。

カンノ:で、そこすらも漏れている楽曲。「2000年代ってあの曲あったよね」で語られる楽曲が懐メロになると思うんだけど、そうならない楽曲ってあると思っていて。今日はそこを紹介したい。今日は「誰も語らないヒット曲」特集。今このポッドキャストを聞いているあなた、マジで何年ぶりに聴く曲をいっぱい聴かせてあげます。

オノウエ:それは楽しみですね。

カンノ:ではまず、最初の何年ぶり楽曲。この曲から始めたいと思います、お聴きください。GIRL NEXT DOORで「偶然の確率」

カンノ:Wikipediaの情報を読みますね。「4つ打ちやハウスを軸にロックテイストのエレクトリック・ギターを取り入れた、通称エイベックスサウンドを体現するテーマで活動した」らしいです。

オノウエ:知らなかったです(笑)

カンノ:なんだろ、すき家が昔出していた「焼きそば牛丼」みたいな感じですよね。

オノウエ:それはなんて言うんでしたっけ?

カンノ:エイベックスサウンドです!

オノウエ:そんなものがあったんだね(笑)

カンノ:で、コンポーザーの人のコメントで、他のユニットはロック系統のボーカリストだが、千紗は踊れるボーカリスト。そういう意味では『エイベックスサウンド2008』だと思う」というのがあるので、もう賞味期限が決まっていたという(笑)

オノウエ:2008年までだったんだ(笑)

カンノ:そりゃ活動期間も短いよな(笑)

オノウエ:あの、GIRL NEXT DOORは聞かないです。

カンノ:だいぶ語られないよね(笑)

オノウエ:この曲っていうことではなくて、GIRL NEXT DOORという名前を聞かないです。

カンノ:もはやavexも語らない。

オノウエ:知らない単語がいっぱい出てきたもん、エイベックスサウンドとか(笑)

カンノ:やっぱりこの曲の最大の特徴として、サビに2回も「偶然の確率」という言葉が出てくるくらいの偶然の確率(笑)すごい偶然だから。

オノウエ:全然偶然じゃないけどな(笑)必然だから。

カンノ:昔やってた遊びで、「偶然の確率~♪、偶然の確率~♪」という「偶然の確率」の短縮版っていうネタがあったな(笑)

オノウエ:忙しい人のための偶然の確率(笑)

カンノ:この曲のことをずっと思っていたい。誰も語らない曲こそ、「あれは何だったのか?」というね。

オノウエ:この曲ってタイアップあったんだっけ?

カンノ:あったと思いますよ。ちゃんと売れてたし。

オノウエ:まぁ、そうだよね。

カンノ:でも今残ってないというね。そういう曲を聴いていきたい。では次の曲です。HIGH and MIGHTY COLORで「PRIDE」

オノウエ:ハイカラですね。

カンノ:そもそも「ハイカラ」と呼ばれるために逆算でバンド名を決めた、でお馴染みのHIGH and MIGHTY COLOR

オノウエ:その話も今の今まで忘れてた(笑)

カンノ:みなさんは今、ミニディスクで聞いてますね。

オノウエ:MDをミニディスクって言ってるよ(笑)

カンノ:でもすごいのが、2004年に結成して、翌年この曲でデビューなんですよ。

オノウエ:そうなんだね。それはかなりのスピード出世だ。

カンノ:オリコン初登場2位、2005年年間ランキング40位。で、ボーカルのマーキーさんがドリカムの中村正人さんと結婚して、2008年に引退。それで別のボーカリストが入って、2010年に解散という流れですね。

オノウエ:なるほど、早かったんだね。

カンノ:マジで2000年代を駆け抜けていった人たち。

オノウエ:だから僕らがイメージするHIGH and MIGHTY COLORは2008年で終わったんだ。

カンノ:で、当時ソニー所属の新人ミュージシャンはアニソンで食わせてもらってたんですよね。これももちろんガンダムの曲ですから。当時それを揶揄する言葉で「ソニー利権」みたいな言葉がありましたけどね。アニメのタイアップをすごくやるみたいな。でも今となってはどのミュージシャンもアニソンやってるわけだから。先見の明はあったわけですが、あの当時はアニソンをやっているミュージシャンが若干馬鹿にされてる時代でしたね。

オノウエ:たしかにそうかもね。

カンノ:それは今は無効だから。そのうえで今この曲を聴くと、すごく海外で売れそうだなって思う。

オノウエ:たしかにそうかもしれないね。

カンノ:昔読んだweb記事で、FLOWとDOESがツーマンライブをやってて、「俺たちは盟友だからな」みたいな会話をしていて、絶対違うじゃん。

オノウエ:絶対違うね(笑)

カンノ:絶対FLOWとハイカラじゃん。DOESなわけねえじゃん(笑)

オノウエ:すなわちアニソンフレンズってことだよね(笑)

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

SOMEOFTHEM OF PODCAST 第11回「ギョッとするカバーソング」特集(後編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第11回はカンノが聴いてギョッとしたカバー曲を紹介する「ギョッとするカバーソング」特集の書き起こし(後編)を掲載します。ポッドキャストと(前編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:続いてのカバー曲は、オノウエ君が教えてくれたやつですね。

オノウエ:おっ、なんだろう?

カンノ:あまりにもよくわからない人たちだったので、いろいろ調べてみました。B.B.S.B.(バスケットボールストリートボーイズ)という人たちによるm-floのカバーです。「come again」

カンノ:これはなんですか?

オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:もともとは何なの?

オノウエ:僕がたまに出させてもらってるDJイベントで、なにを選曲しようかなと思ったときに、そのときは全曲m-floの「come again」のリミックスとかカバーを使ってやろうと思っていろいろ調べたの。そのなかにこれがあって、「こんなの見つけたぞ」とカンノに連絡を入れました(笑)

カンノ:それでこの人たちのことを調べてみたんですが、この曲が収録されているアルバムはOVERLAP RECORDというレーベルからリリースされていて、ほかにどんなCDが出てるかというと、『カフェで聞きたいJazz Violin』とか『午後のBossa cool&Sweet』とかが出てました。

オノウエ:より訳がわからない(笑)

カンノ:だから軽薄インスト集ですね(笑)

オノウエ:いわゆるBGMもの。

カンノ:そういうものを出しているところからリリースされてましたね。

オノウエ:それも不思議な話ですね(笑)

カンノ:この曲で僕が気になるところは、デスボイスm-flo crew is the 集団」って歌ってて「嘘じゃん」って思いました(笑)

オノウエ:僕が聴いてビックリしたのは、「あのラップ部分をこれにするんだ」っていう。

カンノ:デスボイスで(笑)

オノウエ:初めて聴いたときに想像しない展開じゃん(笑)思わず笑っちゃうよね。「マジか…」っていう(笑)

カンノ:意外と原曲に忠実なんだよね。

オノウエ:展開とかね。

カンノ:原曲も節操ないじゃん。組曲みたいな作りだからさ。

オノウエ:「come again」自体がLISAパートとVERBALパートでトラックが違うからね。

カンノ:その感じをそのままトレースしたような曲にはなってるよね。

オノウエ:たしかに、デスボイスのパートが終わってメロのパートになったときの爽快感は「come again」と一緒だよね。「戻ってきた」っていう(笑)

カンノ:これはラウド系のミュージシャンがクラブミュージックに手を出したパターンだと思うんですけど、なにか別ジャンルのものに手を出すとギョッとすることって多いかなと思います。そういう意味でこの曲を紹介したいです。お聴きください、UNCHAINで「狩りから稲作へ」

オノウエ:UNCHAINが帰ってきましたね!

カンノ:この曲が入っているカバーアルバムだけSpotifyで配信されてなかったんですが、やっと聴けるようになってました!

カンノ:マジでやる必要のないカバー!

オノウエ:UNCHAINといえば、前身番組時代からずっと言ってましたが、「なんでこれをやったのか?」という謎カバーの宝庫でしたから(笑)そのなかでもトップクラスの謎カバー(笑)

カンノ:もう意味がわからない!

オノウエ:レキシをカバーするってさ…

カンノ:ミュージシャンであるならば、レキシをカバーすることには躊躇いがあると思うんだよ。

オノウエ:普通は怖くてできないよ。

カンノ:それを「俺たちがレキシやったらおもしろくない?」っていう魂胆が見え透いてしまう(笑)

オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:なんだろ、本当にこの人たちはなんでもやるんだね。

オノウエ:なんでもやる人たちだとは思ってたけど、まさかここまでやるとは…

カンノ:だって自分たちで「狩りから稲作へ」をやって、まだその”おもしろ”が担保されると思ってるんでしょ?その自信はどこから来るの?だってレキシがやるからおもしろいやつだもんね。

オノウエ:レキシ以外の人がやって「よくなる」って誰も思わないよね。

カンノ:カバーって「この手札を切る」という意識が重要じゃん。そこに考えが及んでない感じがね。

オノウエ:それで「上手い!」っていう。

カンノ:「上手い!」って「つまんない!」だから。さっきの梅田サイファーの「SAKURA」もそうだけど、「上手いはつまらない」っていうことにカバー曲ってすごく陥りやすい。上手いものを聴かされた瞬間、その音が右から左へ通り過ぎていく。だからBGM化する。これは上手い故に。ちょっと下手なほうが印象に残る場合があるから。

オノウエ:言ってることはわかるね。

カンノ:さっきの「come again」のほうが残るじゃん。力づくだし。

オノウエ:そうだね。だから「狩りから稲作へ」のカバーを聴いて、「上手くてどうするんだ」っていうね。

カンノ:これを指摘し続けることが、カバー曲を聴く者としての特権というか使命ですね。ということで「ギョッとするカバーソング」特集でした。

オノウエ:今週も流石でしたね。

カンノ:フジテレビに『ほんとにあった怖い話』という番組がありますが、「ほんとにあったカバーソング」特集ですね(笑)

オノウエ:また最後に特集変わっちゃったよ(笑)

カンノ:これは良いタイトルですね(笑)「ほんとにあったカバーソング」特集、略して「ほんカバ」(笑)次回からはこれでいきたいと思います。

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

サムオブ井戸端話 #136『J-POPが嫌いだったときを思い出す』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

J-POPが嫌いになったときのことを語るサムオブメンバー。後編では、カンノメンバーがもともと好きだったお笑いやヒップホップがブームになったことによって、好きなものが誰かに取られてしまった感覚について語りました。前編は下記リンクから。

 

 

カンノ:虐げられるっていうことではないんだけど、僕にとってそれはお笑いかもしれない。今「ラジオリスナー」と呼ばれる人たちと僕は全然話が合わない自信があるの。ラジオリスナーと呼ばれる人たちと全然一緒にされたくない(笑)

YOU:フフッ。

カンノ:で、今僕が言った「ラジオリスナー」という言葉の頭には”お笑い”って言葉がつくの。僕は今、お笑い芸人のラジオを全然聞いてなくて。音楽のラジオばかりを聞いてる。でもこの「ラジオリスナー」という言葉のニュアンスって「オードリー好きなんですか?リトルトゥースなんですか?伊集院は?爆笑問題は?」みたいなことだと思うのよ。もうそのあたりは全然聞いてない。僕が今聞いてるのは、桑田、ヤマタツ草野マサムネクリス松村

YOU:もう20代があまり聞いてなさそうな番組ばかりだよね(笑)

カンノ:でも今のラジオリスナーって確実に頭に”お笑い”がつくからね。

YOU:みんなお笑いだもんね。

カンノ:虐げられるではないんだけど、好きだったものがずっと誰かに取られちゃってる気がする。ここ最近だとお笑いとヒップホップがそうかも。ずっと好きでコソコソ見たり聞いたりしていたものが、なんだか力のある人に取られちゃったような気がする。で、自分がそのジャンルにおいて思い描いていた世界にどんどんならなくなっていった。

YOU:なるほど。

カンノ:それは一時期、邦ロックもそうだった。2000年代後半くらいに目新しさを感じなくなっちゃって。そのときに邦ロックを聴くのをやめて、インディーズの日本語ラップを聴くようになっていった。ただ、ここ数年で価値観が統一されちゃって、ラップとトラックの「これがいい」が確定されちゃった感があって、「オルタナティブなものが見られなくなったな」と思ってね。お笑いも同じ感じ。

YOU:「お前、それ全然好きじゃなかったじゃん」みたいな人に自分が好きだったものを取られちゃった感じがあるってことね。

カンノ:その文化やジャンルが流行った途端に、自分が思い描いていたことにならなくなっていった、ということは結構あるかも。ラジオもね。だって誰も聞いてなかったから聞いてたんだもん。で、みんなが聞くようになって「こっち行っちゃったな」と思ったから聞かなくなった。お笑い、ヒップホップ、ラジオ。テレビもそうだったけどね。だから文化やジャンルのことについて、基本誰とも話したくないのかも(笑)

YOU:そうだよね。いまやカルチャー的なものを話すのにも、関係性が必要な感じがするよね。よほど気の合いそうな人じゃないと細かいギャップで躓いちゃう。

カンノ:好きなもの同士のはずなのに、話が詰まっちゃうと余計にストレスだからね。「それ、どういうこと?」みたいなのも面倒だし。だからあんまり喋んなくなっちゃった(笑)

YOU:面倒臭くてね(笑)

カンノ:あと「良いものは良いって言えばいいじゃん」という世界とか嫌い(笑)だって、みんなが「良い」って言うものが「嫌」なんだから。

YOU:わかるわ~。

カンノ:こういう感覚ってあるでしょ?

YOU:でも、もうそれを言えなくなってる空気だよね。

カンノ:オードリーが東京ドームで5万人集客してライブやってたけど、「それが嫌」って言う人もいたっていいじゃん。「そんなのラジオじゃない!」とか(笑)

カンノ:もちろん、オードリーがラジオで東京ドームを埋めるのは素晴らしいことだよ。でも、「5万人集めるラジオ番組って果たして本当に好きだったっけ?」って思ってしまう。あと僕は、深夜ラジオは、年齢を重ねたら、どこかで卒業したほうがいいものという古臭い考えを持ってる人間なので。

YOU:わかるよ。だってオードリーって2人とも子どもいなかったっけ?

カンノ:いるよ。

YOU:その状態で深夜ラジオってなにも言えなくない?

カンノ:その温度感がちょうどいいんじゃない?「なにも言っていない」の温度感のちょうどよさってわかるし。「友達同士の話の感じがすごく好きです」っていうコンテンツって多いじゃん。現に、今僕らはこうやってリモートで収録してますけど、僕の画面の後ろのほうでテレビをつけっ放しにしてますが、そこではずっとタイムマシーン3号YouTubeを無音で流してますから(笑)

YOU:一種のアンビエントだね(笑)

カンノ:タイムマシーン3号YouTubeを流すことで、後ろで友達がなにか喋っているという感覚で僕は作業してたりするから。だから、「友達同士の話の感じが好き」ってこの程度の温度感なんだよ。それが僕にとってはタイムマシーン3号YouTubeだし、ほかの人からしたらオードリーのラジオ、ほかの人は爆笑問題、ハライチ、バナナマン霜降り明星…。まぁ、お笑い芸人が強いんだろうけどね。YouTuberでもいいですよ。なんでもいいんだけど、それを何個も持つものでもないな、とは思うかな。

YOU:わかるし、それをむやみやたらに他人と共有したいとも思わない。

カンノ:共有って強要されるもんね。

YOU:でも難しいのは、誰かが共有しないと知り得ないことばかりだよね。誰かが共有してくれるから、自分が好きなものが見つけられる。恩恵を受けている。

カンノ:そうだね。でも、自分が好きなものの話はべつに誰ともしたくないですね(笑)

YOU:カンノの場合は、その感覚を腹に据えてもの作りするのがいいんだろうね。

カンノ:今日話してていろいろ思い出した。好きだったものが誰かに取られて嫌いになっていく感覚は本当にある。すべては自分の勝手だから。他人には関係ないからさ。「わかろうとしないでいいよ」っていう。自分の中で好き嫌いは移り変わるんですよ。じゃあ逆にJ-POPが好きになっていく方向でいうと、KICK THE CAN CREWRIP SLYMEが2000年代のJ-POPの世界で現れたとき、新鮮だったもん。ラップという歌唱法が。たとえばKICK THE CAN CREWの『マルシェ』というマキシシングルが一番最初にお小遣いで買ったCDだったけど、超かっこよかったんだよ。でも今聴くとサビが「上がってんの? 下がってんの? 皆はっきり言っとけ!(上がってる!)」だよ(笑)これを「かっこいい!」と思うという(笑)

YOU:フフッ。

カンノ:そのJ-POPっぽいものと、でも掛け合いのラップは非常にスキルフルという。その結果「ラップって楽しいな」と思わせること。そういうところからだんだんとMステも普通に見れるようになったりするんだけど、最初は「音楽ってつまんねえな」と思ってた。その感覚を久々に思い出しました。

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SOMEOFTHEM OF PODCAST 第11回「ギョッとするカバーソング」特集(前編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第11回はカンノが聴いてギョッとしたカバー曲を紹介する「ギョッとするカバーソング」特集の書き起こし(前編)を掲載します。ポッドキャストは下記リンクから。

 

 

カンノ:今回は久々にカバーソング特集をやりたいなと思います。

オノウエ:たしかに久々ですね。かつてはカバー番組でしたから。

カンノ:前身番組時代はほぼカバー曲しか流してないですから(笑)まぁ、いろんなカバー曲があるんですが、正直「んんっ?」と疑問に思うカバー曲もいっぱいあります。ただ、もっとそれを超えてくる「うわっ!」「こわっ!」と思うカバー曲もいくつかあります。ということで今回は「ギョッとするカバーソング」特集をやりたいなと思います。

オノウエ:なるほど(笑)

カンノ:まず1曲目なんですけど、今年ギョッとしたカバーソングからいきたいと思います。厳密に言うとカバーじゃないんですけど、お聴きください。梅田サイファーで「SAKURA」

オノウエ:なかなか強いものを持ってきましたね。

カンノ:聴いてる人はわかりますかね?これにギョッとする感覚。

オノウエ:たしかに結構難しいかもね(笑)

カンノ:オノウエ君はわかるよね?

オノウエ:わかりますよ。これはすごいですね。

カンノ:まずは一旦概要を説明します。今年の2月14日にリリースされたトリビュートアルバム『いきものがかり meets』に収録された楽曲です。

カンノ:ここで梅田サイファーがいきものがかりの「SAKURA」をサンプリングして、そこにラップを乗せた楽曲です。

カンノ:ちなみにこのトリビュートアルバム、最高です。J-POPのいろんな面が見られる素晴らしいアルバムで、そこに梅田サイファーの「SAKURA」が収録されてるわけですが、誤解を恐れずに言うと、この曲は個人的に今年のワーストです。

オノウエ:アハハハハッ!「誤解を恐れずに」と前置きしたけど、ストレートに言いましたね(笑)

カンノ:この曲を聴いて最初に思ったのは、いものがかり「SAKURA」というJ-POPの王道曲に、血気盛んな若者が混ざるとまったくろくでもないことになるという。

オノウエ:なるほどね(笑)

カンノ:でね、『いきものがかり meets』というアルバム自体が楽曲の解釈も全部、プロデューサーとか編曲家とかに委ねてて、「どうにでもしてください」というスタンスだから、このアルバムがおもしろいのは、すげえ良い曲とすげえ悪い曲と何にも残らない曲がまだら模様に入ってて、実験作として100点。

オノウエ:なるほど。

カンノ:実験作として超最高、本当に正しい姿勢だと思う。で、梅田サイファーがまったく歌う必要のないことを歌っていることも含めて、実験作として最高。

オノウエ:はいはい。

カンノ:僕が思うにこれは、ただテクニックの上がったケツメイシの「さくら」だと思う。

オノウエ:それでいうと、もはやケツメイシの「さくら」ですらないというか、たとえば、元のいきものがかりの「SAKURA」に寄せるならもっとストリングスを入れたり、それこそケツメイシの「さくら」っぽいトラックにすればいいし。で、「なんでこんなトラックにしたんだろう?」って思った。

カンノ:今っぽいトラックのうえで、今っぽいラップをやってるのがヤバい。

オノウエ:なんでそれを「SAKURA」でやってるのかが不思議。

カンノ:本当に梅田サイファーは仕事選んだほうがいいと思う。

オノウエ:そうだね(笑)どっちもじゃない?いきものがかりも頼まないほうがいい。

カンノ:これがいきものがかりの悪い癖の部分だと思うけど、今のトレンドを意識したことの失敗。

オノウエ:オファーをするな、しても受けるな。

カンノ:この曲は何かことわざになる気がするんだ。

オノウエ:なるほどね(笑)「結果的に上手くいかない様」みたいな(笑)

カンノ:いろんな意味を全部ひっくるめて、実験作として最高でギョッとしたという曲ですね。では続いてのギョッとしたカバー曲。これはオノウエ君もギョッとしたことがあります。

オノウエ:おっ、そうですか。

カンノ:それではお聴きください、槇原敬之で「夢の中へ」

オノウエ:これもすごい!

カンノ:みなさんが今お聴きのイヤホンないしヘッドホンの不調ではございません。正常です。不調なのはマッキーです。

オノウエ:そうですね(笑)

カンノ:急に音が大きくなるんだよ。

オノウエ:なんでこんなサイケデリックな音になるの?

カンノ:そもそも都市伝説的に言われているのは、「探しものは何ですか?」と歌われていますが、ガサ入れの曲って言われてるじゃないですか。まぁ、そりゃこんな曲聴いたら見つかるよ。

オノウエ:このバージョンを聴いたらね(笑)

カンノ:そうですよ。

オノウエ:なんで途中でフェイザーが「キュイーン」ってかかったりするんだろう(笑)

カンノ:「さぁ~~~~」

オノウエ:最後のね(笑)

カンノ:声だけ残ったんだよ(笑)

オノウエ:「風邪を引いたときに見る悪夢」っていう例えってあるじゃないですか。この曲のことだよね。

カンノ:「風邪を引いたときに見る曲」

オノウエ:それが「夢の中へ」ってヤバいね。

カンノ:アハハハハッ!

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

SOMEOFTHEM OF PODCAST 第10回「闇堕ちミュージシャン」特集(後編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第10回はリスナーを明るくさせるはずのJ-POPミュージシャンが、すごく暗い歌を歌っている楽曲を紹介する「闇堕ちミュージシャン」特集の書き起こし(後編)を掲載します。ポッドキャストと(前編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:続いての闇堕ち曲をお聴きください。大塚愛で「つくね70円」

カンノ:シングル『黒毛和牛上塩タン焼680円』のカップリング曲です。

オノウエ:あったね~。

カンノ:これはCD発売当時は歌詞表記がなかったみたいです。

オノウエ:へぇ~。

カンノ:これがサブスクになると見られます。で、曲を聴いてもらいましたがほぼノイズです。

オノウエ:なにを歌ってるかわからないようにされてましたね。

カンノ:「ずっとくわえていたい味 あなたまだ動いてるこれ ずっとくわえていたい味 ああずっとくわえたい」「溢れるゴムを お腹いっぱいいっぱいいっぱいいっぱい…」「だからLove Juiceならアンアン」と歌ってます。というくらい、つくねが美味しいという。

オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:肉汁がね。もうここで言う「肉汁」はダメだろっていう(笑)

オノウエ:「黒毛和牛~」のほうも直接的じゃないにせよ、そういう感じだったよね。

カンノ:大塚愛の思われているイメージ像を壊したかったんだろうね。当時はアイドル歌手みたいな見られ方だったわけじゃん。可愛らしい女の子像をぶっ壊すための装置としてのシングルだったんだよね、きっと。

オノウエ:だから「黒毛和牛~」は若干エロチックな暗喩が入った歌詞になっていたのが、「つくね70円」はより直接的になっていったんだね。で、この曲、普通にかっこいいし好きだな。

カンノ:良いときの椎名林檎を思い出すよね。

オノウエ:そうそう!

カンノ:そんな大塚愛さんの曲でした。では続いて、正確には闇堕ちではないんだけど、落ちていく曲を流したいなと思います。なにかの真ん中に落ちていく曲です。

オノウエ:なに?蟻地獄みたいなこと?(笑)

カンノ:ちょっと聴いてみてください。ACIDMANで「廻る、巡る、その核へ」

オノウエ:これは闇堕ちなんですか?

カンノ:これは闇堕ちというか、自然と一体化。

オノウエ:闇堕ちじゃないじゃん(笑)

カンノ:闇堕ちというか、地球のコアにACIDMANドリルがキュイーンと向かってる感じ。

オノウエ:ACIDMANドリル…(笑)

カンノ:地中深くへ…(笑)

オノウエ:それは映画『ザ・コア』みたいな…

カンノ:船員が一人ずつ死んでいくんですよ!あのね…

オノウエ:その話は関係ないから!

カンノ:日曜洋画劇場木曜洋画劇場でやってたんですよ。『ザ・コア』という2003年公開の…

オノウエ:もういいです!

カンノ:あの映画って大江戸線の開通のドキュメントだよね?

オノウエ:地中深いからね(笑)

カンノ:大江戸線新宿駅がどう作られたかという映画です。

オノウエ:違うよ!

カンノ:あの曲10分くらいあるから、ちょうど地上からホームに着くまでの尺だよね。

オノウエ:たしかにそのくらいだね(笑)

カンノ:この曲だけ闇堕ちじゃなくて、エクスタシー楽曲ですね(笑)

オノウエ:お前、ACIDMANが好きなだけだろ(笑)

カンノ:ACIDMANというよりは、自然を愛しすぎているバンドがいるっていうことだよね(笑)ということで今日はネイチャーバンド特集でした。

オノウエ:最近、コロコロ特集が変わるね(笑)

カンノ:飽きちゃうの(笑)ということで「闇堕ちミュージシャン」特集でございました。

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

サムオブ井戸端話 #135『J-POPが嫌いだったときを思い出す』(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

前回の井戸端話で「J-POPが嫌いになったときのことを次に話そう」となったサムオブメンバー。そもそもMステが嫌いだったカンノメンバーと、多感な思春期の人間関係によってJ-POPが嫌いになったYOU-SUCKメンバーで、なぜJ-POPが嫌になったかを語りました。

 

 

カンノ:先ほどまで、「J-POPと体調」というタイトルの井戸端話をしておりました。

カンノ:そこでは、音楽を聴いているときの悦の浸り方の話になったとき、マニアックで知的好奇心をくすぐるような音楽を聴いて悦に浸る気持ちと、いわゆるJ-POPを聴いて悦に浸る気持ちって、次元は違うかもしれないけど同じなのではないかという話をしたときに、YOU-SUCKメンバーから「リスナーを突き放してくるミュージシャンっているよね」という話が出ました。加えて、「そういうミュージシャンを好きになるときは、これまで普通に聴いていたJ-POPミュージシャンを嫌いになるときだ」という話が出たので、一旦区切って、これから改めて深堀りして話そうということになりました。

YOU:J-POPが嫌いになるのって通過儀礼っぽいよねという話ですね。

カンノ:この話になった途端、すごく思い出したことがいっぱいありました。このサムオブ井戸端話も130回を超えて、2年くらい続いてます。ずっと音楽についてのおしゃべりを記事にしていますが、「そもそも子どものころの僕たちはそんなに音楽を聴く人たちだったっけ?」っていうね。少なくとも僕は音楽とかJ-POPが好きな人間じゃなかった。むしろ嫌いでした。それを思い出した。まず僕はMステが嫌いでしたから。

YOU:へぇ~、そうだったんだ。

カンノ:ひな壇にいろんなミュージシャンが座っていて、出番になったら歌って、ひな壇にいる人がそれを聴くのを毎回繰り返すじゃん。全部嘘臭くて嫌いだったんだよね。

YOU:そういう理由で嫌いだったんだ(笑)

カンノ:さっきの話のテーマで散々J-POPミュージシャンの話をしてきたけど、そもそもMステに出るようなミュージシャンが嫌いだったんだよね。

YOU:俺らが中学生のときって、クラスでORENGE RANGEとか大塚愛が流行ってて、みんな聴いてたじゃん。

YOU:で、中学生のときってスクールカーストがうっすら意識され始める時期じゃないですか。クラス内のイケてるやつとイケてないやつの格差、彼氏彼女ができるやつとできないやつで分かれてしまう話。で、当然僕はイケてない側だった。流石に今、大人になってそれを引きずったりしているわけではないけどね。で、イケてないやつを虐げるイケてる側の人間が聴いてたのが当時流行っているJ-POPだった。最初は普通に俺もJ-POPを好んで聴いてたんだけど、だんだんムカつくようになってくる。「虐げるやつが関わっているものはクソだ」みたいな気持ちになる。「だったら俺は違うものを聴いてやる」という逆張り的な気持ちで、クラスの数少ない友達から教えてもらったアジカンストレイテナーをはじめとした、ロッキング・オン・ジャパンにとりあげられるバンドを聴き始めるんですよ(笑)

カンノ:それは中学生のとき?

YOU:中3くらいだね。だから「こいつらとは違うものを選んでいる」という感覚だよね。もちろん今にして思えばかわいいもんだし、2005年くらいのアジカンストレイテナーならイケてるやつだて普通に聴いてたと思うけど(笑)だけど、「お前らが聴いてるものより、俺が聴いてるもののほうが重いぞ」という気持ちがあったというか。そういう意味でいうとJ-POPが嫌いというよりは、J-POPが受け入れられている土壌が嫌いだったかも。「お前らノッてるし聴いて感動してるっぽいけど、お前らのやっていることは本当にクソみたいなものだぞ」と思っていた気がする。「俺は違う」と。もちろんこれを「ただの中二病」と切り捨てることは簡単だしそれは正しいけどね。で、「俺は違う」と思ったときに、「この違った俺を受け入れてくれる音楽もあるはず」って思ったんですよ(笑)

カンノ:アハハハハッ!

YOU:それがART-SCHOOLとかSyrup16gとかね。

YOU:もちろん、何かが嫌いだから、別のなにかを好きになるっていうのは、また違った問題があると思うけど。でも今になって、この一度なにかを「嫌いだ」と思うこと、そうじゃない別のなにかかを逃げるように好きになるのは、自分にとって必要だったと思ってるんだよね。むしろ嫌いになってよかったなとも思うし。だって自分が虐げられているやつと同じものを好んで聴いてたりしたらさ、今後もそいつらとずっと同じ価値観なのになんとなく虐げられ続けていくわけでしょ。超辛いよ、そんな人生は(笑)

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