SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
自分たち向けのお笑いコンテンツがなくなったことを語るサムオブメンバー。(後編)では、ヒップホップもお笑いと同じように一般人にとってデフォルトの技術になっていくことや、カンノメンバーが4×4=16のライブ後に言われた「芸人さんですか?」という問いかけから感じた"おもしろ"の必須すぎる現状について語りました。(前編)と(中編)は下記リンクから。
カンノ:文量が多いミュージシャンって醒めるよね。
YOU:フフッ。
カンノ:お笑いと同じくなんだけど、ヒップホップにもノレなくなってきているのは、ラップというそもそも歌詞の情報量が多い歌唱法が説明過多時代のものとも変にリンクするし、またフリースタイルブームと論破ブームが重なってしまうことによって、相手を倒すことが「ラップが上手い」とされてしまう状態が嫌なんだよね。これは友達と冗談で語ってたことなんだけど、お笑い芸人がお笑いの技術を使ったコミュニケーション術みたいな本とかあるじゃん。で、おそらく次はラッパーだと思うんだよ。
YOU:ラッパーの自己啓発本。
カンノ:そう。「ラッパーの聞く力」っていう本は出ると思う。
YOU:フフッ。
カンノ:「フリースタイルバトルをとおして、コミュニケーション能力が身につきました」
YOU:ありそう(笑)
カンノ:「プレゼンにおいて、重要なのは返しの力だ!」
YOU:あ~(苦笑)
カンノ:「フリースタイルバトルで相手から飛ぶディスを想定した返しのラップをするのと同じように、プレゼンの質疑応答でちょっと嫌な質問が来たときこそ、返せるかどうかなのです!」とか語りそうじゃん。もちろんこれは冗談だけど、すべて損得とか技術を欲しがるとかさ。だってお笑いの技術とかラッパーの技術とかって本来は必要ないじゃん。
YOU:でもお笑いの技術はマジでデフォルトのものになったよね。俺らの時代でもお笑いの有害性丸出しなコミュニケーションで回るクソみたいな飲み会とかあったもんね(笑)
カンノ:おもしろいことを言わなきゃいけないという同調圧力から逃れたいじゃん。でもずっとある。今後、フリースタイル同調圧力とか発生するかもしれないよ。
YOU:フリースタイル同調圧力とは?(笑)
カンノ:昔だったら上司が「ギャグやれよ」みたいなノリで、「ちょっとお前、ラップやってみろよ」みたいな。
YOU:鬱陶しい…(笑)
カンノ:そんな感じで普通の人は笑いを取らなくてもいいし、ラップできなくてもいいし、大喜利なんてできなくていいんだから。
YOU:本来できなくていいことをやらされている感じはすごくあるよね。
カンノ:そういうものが積み重なりすぎたときに、10代20代のときに好きだったお笑いとかヒップホップとかを全然通らなくなったなと思ってね。そうなると、誰もいないところへいきたい気持ちになるよね。
YOU:カンノはまだ逃げようとしてるのはすごいけどね。みんな矛盾を感じながら戦ってることが多いのに、戦う気がない(笑)
カンノ:この前、猛烈にナンセンスなコメディを観たんだけど、あれはナンセンスコメディという呼び方じゃなくて、理不尽に不条理をぶつけてくる劇だったね(笑)
YOU:マジの不条理。
『寸劇の庭』をユーロライブで鑑賞。もう何はともあれ、近現代不条理集合3人がヤバすぎた。サービス精神ゼロの不条理波状攻撃状態。途中脳がクラッシュして少し寝た。「何も見ていない」に等しいものを見る。「逆流」すぎる。お笑いに毒されてる人は見ても何も分からないと思います。 pic.twitter.com/jNWMoxAWwg
— カンノアキオ (@akiokanno4) 2024年11月22日
カンノ:脳みそがクラッシュする。訳分からない展開が続いたあと、最後に「あなたはなにも見ていなかった。ということを見ました」みたいなことを言われて終わったんだから。
YOU:なるほど(笑)ギャグテイストではあるの?
カンノ:コント公演ではあるんだけど、お笑いしか見てない人にはポカンで終わっちゃうと思う。おそらく「つまんない」という感想になる。
YOU:その演劇を観る層とお笑い好きの層は被ってないんだ。
カンノ:お笑いが好きだから観に来た人はいないと思う。
YOU:へぇ~。
カンノ:そんなものを観たから、翌日のライブでのMCは客の反応は気にせず、目ん玉を真っ黒にして言いたいことだけを言おうと思ったもんね(笑)
YOU:それで訳の分からない落語みたいなことをしたのね(笑)でも、見ている人はカンノの圧の強いパフォーマンスに思わず反応していてよかったけどね。
11.23『写真と音楽』@monarecords
— カンノアキオ (@akiokanno4) 2024年11月24日
4×4=16セトリ📝
1. 時そばブレイクビーツ
2. 痛覚
3. 午前零時
4. HOTEI THE MOVIE
5. 音楽とは
6. I feel so good
7. 忘却
8.春
ライブMC🗣️🎤
「主催・梅澤侑利」
「サポートGt. Yellow Squadron紹介」
「倖田來未落語」
「兵庫県知事から広報戦略的SNSを学んだ」 pic.twitter.com/uJTEFzWfd7
カンノ:まあね。あとでメンバーに聞いたら「カンノがどのタイミングで曲に入るかわからないから、チューニングが1回しかできなかった」って言ってた。
YOU:アハハハハッ!
カンノ:「あのライブは痺れた」って言ってた(笑)
YOU:たしかに、バンドメンバーはみんなカンノのこと見てたね(笑)
カンノ:「なにをいうかわからなかった」と言われたし、僕もなにをいうか言ってないからね。やっぱり丁寧なMCをしないって決めてたからね。
YOU:それにしては作り込まれている気がしたよ。で、カンノとべつの演者さんとの会話が漏れ聞こえてきたんだけど、共演者に「芸人さんですか?」って言われてたでしょ?
カンノ:うん、言われた。
YOU:「芸人さんですか?」っていう言葉ってさ、一昔前だと悪口だったと思うんだよ。それが褒め言葉になるってすごいなと思って。
カンノ:それは「所詮、芸人がよ」みたいなニュアンスってこと?「芸人っぽいことしやがって」みたいな。
YOU:そうそう。「あいつ芸人みたいだよね」って蔑みの言葉だった気がするんだけど、今や立て板に水を流すように話す人を「芸人さんですか?」と言う時代になったんだなと思った。
カンノ:M-1以降で芸人の地位が完全に向上したってことだよね。
YOU:善し悪しだけどね。俺のちょっと上の世代とかなら「こいつ、馬鹿にしてるのか?」と思ってしまう可能性もあるなと思ったけど、言ってる本人は全然馬鹿にした素振りじゃなかったからね。このブログではよく言うけど、芸人に河原者みたいな感じはもうないんだよね。逆に言うと、学校に行って出荷されるものにはなったんだけど(笑)
カンノ:「ライブのMCおもしろかったです、YouTuberみたいでした」は馬鹿にしてるかな?
YOU:いや~、それも半々だと思う。
カンノ:そっか~。
YOU:半々どころじゃないかも。俺はいわゆる有名YouTuberを全然見ていないんです。で、俺の周りのYouTubeを見ている人は『中田敦彦のYouTube大学』をよく見てるらしいの。俺は無料で情報を流すYouTuberの時点でいろいろ警戒しているんだけど(笑)「YouTuberみたいですね」は多分悪口とか皮肉に感じる人は少ないんじゃないかな。
カンノ:馬鹿にしちゃいけない時代だからね。
YOU:職業に貴賎なし!
カンノ:というわけで、どこに転がったのかさっぱりわからない話でした(笑)