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Radio OK?NO!! Podcast #071「平成のディーバ、令和のディーバ」特集文字起こし(後編)

宅録ユニット・OK?NO!!の上野翔とカンノアキオでSpotifyで聴けるポッドキャスト番組『Radio OK?NO!!』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。今回は時代によってラッパー像も変われば、その横で高らかに歌い上げる女性R&Bシンガー、つまりディーバ像も変わるということで、男性ラッパーと女性歌手の組み合わせ楽曲を平成と令和で聴き比べる「平成のディーバ、令和のディーバ」特集の文字起こし(後編)を掲載します。(前編)は下記リンクから。

 

Radio OK?NO!! Podcast #071「平成のディーバ、令和のディーバ」特集音声は下記リンクから。ポッドキャスト登録を是非、よろしくお願いします!

 

 

カンノ:では続いての令和ディーバの楽曲をお聴きください。ぜったくんで「sleep sleep feat.さとうもか」

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カンノ:さとうもかさんは「melt bitter」という楽曲がTikTokで使用された総再生回数が20億回ですって。

カンノ:今はこうやって音楽が売れていくんだね。

上野:20億回だもんね。

カンノ:さとうもかさんはジャズ方向から音楽に興味を持って、サックス、ピアノ、ギターが弾けると。で、ぜったくん等のラッパーやトラックメイカーとの共作も多数あると。やっぱりkojikoji、さとうもか流れで考えると、声がハスキーであるとかガーリーな印象であるとかって今の時代は結構強いなって思いますね。そして思ったのは、さっき流したm-floもそうだし、これから流れる平成ディーバ楽曲も全部そうかと思うんですが、HIPHOPR&Bというジャンルのなかの人たちで集まっていると。だからクラブみたいな現場感があるんですよね。強そうな女性と大きく見せるラッパーと、みたいな。これがセットになる傾向が平成にはあったなと。

上野:その2組が広い意味での同じ世界にいるっていうことだね。

カンノ:それに対して令和はTikTokみたいなプラットフォームで一緒になる感じかなと思うんです。TikTokで流行ったラッパーとTikTokで流行ったシンガーソングライターみたいなところがセットになるから、ジャンルは別々というか、今の時代はジャンルっていう概念もそんなにないんだろうなと。弾き語り女子の人がラッパーの曲を弾き語るし、もう誰でもラップはデフォルトでできる時代かなと。もうダンスとラップはできちゃうんだろうなって。

上野:たしかに、それはありそうだね。

カンノ:弾き語り女子だろうがラッパーだろうが、リズムの乗りこなし方はもう一緒なのかもしれない。そこで通じているリズム感とかビート感は、もう言語不要な勢いで通じてるんだろうなって。平成はそれがジャンルを横断できなかったんだよね。同じ文化圏にいないから。で、その括りが音楽ジャンルからプラットフォームに変ったから、もう音楽ジャンルがあんまり機能しなくなったように思えるんだよね。だから「ディーバ」という言葉は消えかかっているんだと思うの。

上野:なるほどね。

カンノ:だから無理矢理、平成の価値観の物差しを令和に当てはめようとするなら、そういった女性が今の時代のディーバということになるのかなと。

上野:ラップできることはもう普通なんだよね。特別なことじゃない。カラオケに行ったらもう誰かはラップするもんね。

カンノ:もう特技でもないんだろうね。で、TikTokにより手遊びくらいのダンスは誰でもできるようになったと。

上野:そうだね。令和はプラットフォームによって状況が変わってきてるのかもね。

カンノ:プラットフォームの効力が強いから「こことここがセットになるよね」という音楽の販売の仕方になっているのかなって思いましたね。あれ?今、ちゃんとした話をしてる?

上野:そうだね、なんかちゃんと考察しちゃってるね(笑)ということで一方、平成サイドはこの人の曲です。青山テルマ feat. Souljaで「そばにいるね」

上野:この曲は「2008年」特集でも流しましたね。

カンノ:短スパンで流れてきたのでちょっと笑っちゃいました。

上野:ディーバがバラードを歌い上げることは多かったですよね。

カンノ:ディーバはアンサーソングを歌うからね。

上野:アンサーソングという文化が、J-POPの世界のなかでは勘違いされて発展していきましたよね。

カンノ:ディスとアンサーじゃなくてね。「あなたが好きよ」「私も」というアンサーね(笑)

上野:そういう話もしましたね。

カンノ:青山テルマさんもどちらかと言えばハスキー系だね。

上野:そうかもね。

カンノ:あと、のちの青山テルマさんのキャラ変具合もすさまじいんだけどね。

上野:この頃は女子高生のカリスマみたいな位置だもんね。

カンノ:なんか連綿と続いてるよね。加藤ミリヤから青山テルマまで、女子高生とか携帯とかアンサーソングとか。

上野:たしかに、連想されるパーツは変わってないかもね。

カンノ:今日は流れないけど、たとえばMay J.さんとかもこの辺りの出身じゃん。

上野:そうだね。

カンノ:それがキャラ変の果てにカバー女王みたいなことになったわけじゃん。

上野:May J.さんもキャリアのスタートはR&B歌手ですもんね。

カンノ:そうですよ。ずっとヘソを出した服を着てましたよ。

上野:あの頃のMay J.の話をしているのはマジでカンノだけだよ(笑)

カンノ:だからやっぱり平成ディーバみたいなものは市場としてあまり広がらなかったんだよね。

上野:そうだね。

カンノ:ということで平成ディーバが広げられなかった市場、令和はこのように広がっております。とは言いつつ、3人目は完全にディーバじゃありません。R&B性は皆無です。TikTokerが手前で踊るために存在する、後ろの歌い手とラッパーということだよね。

上野:まあね。

カンノ:その代表格はこの女性かなと思うのでお聴きください。Rin音で「earth meal feat. asmi」

カンノ:この曲はasmiさんがデビューしてすぐにラッパーのRin音さんとコラボした楽曲ですね。asmiさんという人はMAISONdes(メゾンデ)という、6畳アパートの設定のプロジェクトで、〇号室の住人が出した楽曲という形でリリースされているんですね。で、部屋ごとでアーティストも変わっていくという。そういうシステムであり、プラットフォームですね。そこで「ヨワネハキ feat.和ぬか、asmi」がリリースされて、これがTikTokで大バズりと。

カンノ:こういう打ち込みから出てきた人も、アコギを抱えた人も、みんなラッパーとなにかやる時代ですね。というくらい、ラップという歌唱法が本当に土着化したんでしょうね。誰も彼もできるという。そうなるとHIPHOPのジャンルが云々じゃなくて、TikTokHIPHOPが結びついてるし、TikTOKと女性シンガーソングライターが結びついてるし、ということはTikTok内でHIPHOPと女性シンガーソングライターが結びつく時代だし。で、そこで作られた楽曲がバックで鳴っているなかで、TikTokをやる人はそこで振付をしたり手遊びをしたりするわけですよね。

上野:そういうラッパーとそういう女性シンガーソングライターが結びついているという話が続いていますが、そのラッパーというのは基本マジのHIPHOPをやっていたりするの?

カンノ:いや、そんなゴリゴリな感じじゃないね。

上野:そうだよね。だからラップという歌唱法とHIPHOPという文化的背景とか音楽ジャンルみたいなものは完全に分離されているということだよね。

カンノ:もともとは『高校生RAP選手権』に空音さんが出ていたり、最近だとクボタカイさんという歌うようなラッパーもいますが、彼もUMBの地方予選とか出ているので、だからフリースタイルはできるわけですよね。

上野:なるほどね。

カンノ:でも結局やっている音像はJ-POPなんだよね。逆に言うと、「やっぱそこに収まっていくんだな」という印象なんですよね。サビとかも普通にオートチューンかけて歌ってるし。「歌うことが当たり前」と同じくらい「ラップするのは当たり前」ということなんでしょうね。

上野:僕らのときだとKREVAがその方向性で、メジャーフィールドだけどHIPHOPマインドを提示しつつ、ラップと歌の並立を推進していったように思えますね。

カンノ:それでいうと、当時RIP SLYMEにいたPESさんが「One」という楽曲で歌メロとラップの並立をやり、そのあとにDef Techがメロディが強いラップを打ち出したんだよ。

上野:あ~、なるほどね。

カンノ:で、KREVAはあえてのつもりで「瞬間Speechless」という曲を出したと思うんだよね。もう歌なのかラップなのか全編わからなくさせる手法だから。これは狙ってると思う。

カンノ:でももうそれもデフォルト。

上野:そういうことだよね。

カンノ:ここまで分析できてるんだけどね!

上野:「ね!」って(笑)

カンノ:この前、友達に「あとはカンノ、それをやるだけだよ」って言われてヌーンってなっちゃった。

上野:「痛いところ突かれたな」じゃないんだよ(笑)

カンノ:もうアイツと絶交しようかな…。

上野:アハハハハッ!小学生じゃないんだからさ(笑)では一方平成です。それではお聴きください、Heartdalesで「CANDY POP feat. SOUL’d OUT

カンノ:令和の人たちって歌うときとラップするときってあんまり声質が変らないと思うんだよね。

上野:はいはい。

カンノ:ラップから歌、または歌からラップへスムーズに移行できると思うのね。で、Heartdalesは歌うときとラップするときで声が変わるんだよ。

上野:たしかに声変わるね。

カンノ:女性R&Bシンガーがあえてラップするタームってあるじゃん。

上野:そうだね。そもそもの発声方法が変わってるんだよね。

カンノ:ラップになった途端、一気に声が低くなるんだよね。で、歌うときはすごく女性っぽくなるよね。あの変わる感じは今ないかも。だからまだ平成って男性っぽいラップだったんだよね。発声法が変ったり声質が変ったりすると、同じ人感がないんだよね。AIも歌とラップやってたけど、「Story」のときの声はラップでは出ないんだよね。

上野:それは令和サイドで考えると、歌い方のスイッチや切り替わりってあんまりなくて、ずっと地続きなまま歌もラップもできるってことだね。

カンノ:ということで「平成のディーバ、令和のディーバ」特集をお送りしました。で、平成のR&B歌手っぽい像で令和に君臨する人ってやっぱりなかなかいないんですよ。みんなJ-POPのニュアンスになっちゃったんだよね。ただ女性ラッパーですごくディーバだなと思える人がいます。

上野:ほうほう。

カンノ:Awich!

上野:あ~、なるほど。

カンノ:Awichは大きい声で歌うっしょ!

上野:それはそうだろうね(笑)

カンノ:昨年のフジロックとかすごかったですね。めちゃくちゃ下ネタ方向の曲をやったあとで自分の娘を出すんだもん(笑)

上野:振る舞いの破天荒さとかが、なんか平成のあの感じを思い出すよね(笑)

カンノ:やっぱり演出が強い人ですよね。令和ディーバはちょっとか弱さが軸かなと思ったんですよ。ハスキーボイスでガーリーな印象のある女性が多かったから。それと比べたときの女性性の強さ、そして演出の強さを持ったAwichを見ていると、なんだか平成のときに見ていたディーバ像に近いかなと思いまして、最後に流したいなと思います。Awichで「Queendom」

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『Radio OK?NO!!』はパーソナリティーの上野翔とカンノアキオが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#okno」をつけてツイートしてください!お問い合わせはメール:radiookno830@gmail.com まで。