SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
坂口恭平が原作の漫画作品を読んで「カンノのことを考えた」とYOU-SUCKメンバー。自分の理想を実現するためにお金とスケジュールの計画を立てることは好きで、やりたくないことは少しも耐えられないカンノメンバーへの「その自発はどこから来るの?」というインタビューをしてみました。
YOU:坂口恭平『生きのびるための事務』という、もともと『POPEYE』で連載されていた漫画の単行本を読みました。
YOU:坂口恭平のやりたいことの動機って全然ロジカルじゃなくて、むしろ狂ってるとも言えると思うんだけど、その狂気を実現する過程が異様にロジカルなんだよ。嫌なことは一切やらないし、金とスケジュールの計画を立てて「こういうことをする」というのを決めながらやっていくことを坂口恭平は「事務」と表現しているんだけど。今までのんべんだらりと過ごしていたが、大学を卒業してから食っていくにはどうしていくべきか、自分の好きなことをやっていくにはどうしたらいいんだということを真剣に考えてた結果と経験をこの漫画にしているんだけど。俺はこの本を読んでずっとカンノのことを考えていたの。
カンノ:ほぉ。
YOU:なぜかと言うと、カンノも金とスケジュールの話ばかりをしているから。で、カンノは俺の友人のなかで、いわゆる普通の道を外れた人たちのうちの一人だが(笑)、その段取り力というか、自分のやりたいことに対しての過程をちゃんと描いて実行に移しているのは「どこから来たの?」っていうことがいつも気になってたの。
カンノ:ふ~ん。
YOU:それで、じつは俺も最近こんな感じなの。もちろん坂口恭平みたいにはなれないんだけど、理想のスケジュールを立てて金も計画する。「この時間まではこれをやって、この時間まではあれをやる」みたいな。それを3年くらいやったらある程度、自分の理想通りになったんですよ。「この期間は働かずに子どもの面倒をみたいな」とかをちゃんとコントロール出来るようになったんですよ。もちろん忙しくて大変なときもあったけど。この考え方はある程度実践できるようになったと思うの。でもそれは仕事が辛いからやってたの。誰かに、あるいは何かに強制されてやっていた感じがするの。でもカンノは自発的じゃん。「その自発はどこから来るの?」って坂口恭平の本を読んだり、カンノを見てるといつも思う。
カンノ:金はないので、作らなきゃいけない。だから自発ではないです。
YOU:坂口恭平も金はなかったの。金はなかったんだけど、まずは生活コストを下げて、必要なお金はいくらかを計算するところから始めるの。で、あんまり働きすぎると病んじゃうし、自分の本当にやりたいことができなくなるので、労働は最低限にする。そこから金を積み上げていく。
カンノ:なんかわかるよ。たとえば僕もいろんなアルバイトをやりました。その結果、Uberや出前館みたいな配達員が一番都合よかったです。というのは、自分のやりたいこと、ここでは音楽とは音楽語りとか、もっと広くだと表現とか芸能とかの世界とまったく関係のないことにおいての人とのやり取りがこんなに苦痛なんだと思った。
YOU:アハハハハッ!
カンノ:もちろん考え方として、「あの面倒臭かったことが、後々自分のなかで活きてきた」とかさ。もちろんこの考え方もわかります。ただ、それを上回るくらい嫌だった。
YOU:それも坂口恭平も同じことを言っていて、「大学を卒業して周りの人はみんな就職していくんだけど、どうしても自分は会社に行って、三十数年間勤めあげるイメージがつかないし、それはやめたほうがいいって思った」と言ってるんです。会社員の俺からするとちょっと耳が痛い半分、うるせえなって思い半分なんだけど(笑)
カンノ:僕はもともと三十数年間、働く気だったんですよ。
YOU:カンノは一度就職してるからね。
カンノ:でも、本当に1年ちょっとでやめたくなったの。
YOU:すごいよね(笑)人ってある程度は耐えるじゃん。
カンノ:耐えるよね(笑)
YOU:折り合いつけるじゃん。
カンノ:そう。そのはずなんだけど、衝動的にやめてた(笑)
YOU:そこが不思議なんだよ。カンノの持ち合わせている生真面目さと、耐えられなさの同居が。で、カンノの生真面目さって普通の社会人も見習ったほうがいいくらいだと思うんだけど、根本のところでなぜそんなに耐えられないのかが謎なんだよね。就職先がもっと自分に合った場所だったら続けられていたと思う?
カンノ:どうだろうね。たとえば芸能プロダクションとかレコード会社とか、自分の好きなものとか芸能や表現に関連するようなところに就職したとして、20代前半でしょ。絶望しちゃうんじゃないかな。
YOU:まあね、陽キャだらけだったりするもんね。あとさ、子どものころとか耐えられなかったことはある?
カンノ:子どものころは耐えられないことだらけでしたよ。うるさくて暴れることも多かった(笑)
YOU:なるほどね~(笑)
カンノ:そのうるさくて暴れちゃうようなエネルギーを、なにか面白い方向に転換させてなにかできないかなというのは、無意識のうちに考えていたような気はするけどね。ボケ側ではありたかったからね。
YOU:マキタスポーツの言及したツッコミ全盛の時代でそう思えるのはすごいことだけどね。
カンノ:僕が好きだったテレビとかお笑いとかって、平らなところを茶化して波風を立たせることだからさ。今はそれが無効だから。
YOU:冷や水を浴びせることはできないからね。「悪いことを言ってるけど、じつはいい人」というのがセットじゃないと流通しないもんね。