くるりのニューアルバム『天才の愛』に収録されている「野球」という曲がかなり好きだ。
岸田さんの野球愛が炸裂していて、応援歌をベースに「バースかっ飛ばせよ」とか「ゴジラ ゴジラ ゴジラ」など愛称を連呼して、バンドで応援歌をアップデートしたような曲になっている。その景気の良さに胸打たれながら、毎日ニコニコしながら聴いている。
だけどなんだか「この曲がアルバムの中で一番良い!」って言うのはどうも気恥ずかしい。どうしても飛び道具感は否めない曲だし、それを抜群に褒めちゃうのは「あのキャラ芸人、キャラが面白いから好き!」みたいな軽薄な感想に思えてしまう。それでも誰もが知っている応援歌のバンド再構築楽曲だからか、やっぱり人気みたい。
分かりやすい故にすっと身体に入ってきて「良い!最高!」って言うことの精髄反射っぷりをSNSで言ってもなぁ~、という思いと、かといってカレーや焼肉は美味しいしキャラ芸人も突き抜けたら面白いし、という思いが交錯する。
なんだかサブスクってインスタントやレトルトっぽい。お腹が減ったらその場でぱっと食べられるもののような。そうなったら味付けは分かりやすい方が断然良いですよね。シリアスなものよりはライトなものを欲する。
コロナ禍になって痛感したことは、音楽でも演劇でも演芸でも映画でも、その現場に行って退出しない限りは逃れられない状況に自分を追い込んで鑑賞することが僕は本当に好きだったんだなと。つまらないものを観たときも「なんでこれをつまらないと思ってしまうのか」を考える時間がまた楽しかったりする。
SpotifyもネトフリもアマプラもTVerも試聴機感覚なので、見ててちょっと嫌だと思ったらすぐに再生をやめれてしまうことの残念感を思えば思うほど、やっぱりライブに行きたい。そして帰り道で観たものを振り返り噛みしめながら、あわよくば自分へのアウトプットにつながるようなこととかを考えることをまたしたい。実は観ている最中よりも、その帰り道が好きだったりする。
カンノアキオ