先日、文化村オーチャードホールで行われた蓮沼執太フィルの公演に行った。
この公演は蓮沼フィルの演奏をベースに、ゲストが代わる代わる登場して歌やセッションをしていく構成なのだが、特にAokidさんというダンサーの方が3曲ほど踊っていたものがすごく良かった。
蓮沼フィルは楽団なので、基本的にはメンバーは持ち場を離れない。
その中でダンサーがいると目で追える楽しみがある。
馬鹿な言い方をすると、「動くものって目立つな」と思った。
聴覚ももちろん楽しいのだが、視覚の方がダイレクトに脳が喜ぶ体感があった。
BGMとはよく言ったもので、音楽はバックグラウンドになり、身体性のあるものが主役になる。
何かを表現するために舞台に立つ人は、それが音楽家だろうが何だろうが「板の上に立つ者は全て芸人」みたいな思いが個人的にはある。
久々に大きいホールで音楽ライブを見て、「見世物」という意識を思った。
そしてヤン富田さんとの演奏が凄まじかった。
セッションの内容は「リアルタイムで流れているラジオの音を受信し、モジュラーシンセの演奏とともにミックスしていくというもの」だった。(引用は下記リンク)
放出されるラジオ音声がノイズ化されたものがオーチャードホール全体を包み、そこにうっすら蓮沼フィルの演奏が聴こえてくる。その緊張感たるや。
客席の自分も、蓮沼さんの指揮を頼りにフィルのどの音が鳴っているのかを神経を研ぎ澄ませて聴く。
ヤン富田と蓮沼フィルの音の攻防戦が続く。
最後は完全にヤンさんのノイズが爆音で鳴り響き、「嗚呼、何もかもお終いなんだな」みたいな気持ちにならざるを得ず、何も理解ができないけど涙が止まらなくなった。
この日のこの時間には、菅総理の3回目の緊急事態宣言発令の記者会見が行われており、それもノイズ化させて鳴らしていたらしい。
音楽が怖いと思う感動体験は、配信ではなかなか伝わらない。
このタイミングで得られた素晴らしいライブ体験だった。
完全に気力と体力を持っていかれて、ヘロヘロで帰宅しながらDOMMUNEの数の子ミュージックメイトさんによる身内音楽配信を見ていた。吹奏楽部の学生さんが鳴らす「猪木ボンバイエ」でちょっと元気が出た。「猪木ボンバイエ」はすごい。
(カンノアキオ)