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ナンバガとザゼン

先日配信が終了したNUMBER GIRLZAZEN BOYSの日比谷野音での無観客2マンライブ『THE MATSURI SESSION』をギリギリで見ることができた。

 

いや~、泣いた!マジ最高!酒飲みながら見ればよかった!次は生でナンバーガールを見たい!

 

基本的には以上のような感想なんですが、だったらブログなんてやる必要もないので、もうちょっと書きます。

 

個人的には「舞台の上に立つものは全て芸能」という視座を持っているので、音楽ライブを見るときもいつも演者がどう舞台上で振舞っているのかを見ているのだが、向井さんのMCは一切素を見せない姿勢だった。語ることのメッセージ性は皆無。このコロナ禍で無観客ライブになってしまったことにも触れず、淡々と「異常空間、Z!」と放ってからカメラワークが遠巻きの画になるという配信チームワーク芸が続く。

 

主に20代の頃に作られたナンバーガールの楽曲が40代になって歌われることについては、なんとなく思うところはある。歌詞カードで(絶唱)と書かれていたような箇所は、若い頃だったら喉から血がドバドバ出るような勢いで叫ぶように歌っていたところも、現在はそんな勢いはなく40代のおじさんがちょっと無理して歌っているようになっている。そういったところに老いを感じちゃって、復活後のナンバーガールをそんなに好きになれない気持ちがあったのは正直なところだった。

 

ナンバーガールは、主に”少女”がどのように日常を過ごしているのかを傍観者としての”オレ”が淡々と語る歌詞で、それをエモーショナルなサウンドに乗っかることで焦燥や情緒を感じられるような楽曲が多かった印象。こういった楽曲は、そりゃ40代で演奏するより20代で演奏するほうが映えるというか、キマるに決まっている。

 

個人的にナンバーガールの楽曲は”曲”でザゼンボーイズの楽曲は”ネタ”という印象がある。ナンバーガールの頃にはあった(もっというとザゼンボーイズでもアヒトイナザワが在籍している頃まではあった)情緒性が後退して、楽曲の仕組みや構成や緊張と緩和みたいなシステムの面白さ(もっというと可笑しさ)が前面に出てきたのがザゼンボーイズという感じか。ナンバーガールが”有機物”で、ザゼンボーイズが”無機物”と言ってもいいかも。

 

その”無機物性”を獲得した向井さんによる復活後のナンバーガールは、若い頃に持っていた情緒の質も変容していて、ちょっと前まで思っていた「老けたな…」という印象も”経年劣化”ではなく”経年変化”なんだなという気持ちになれた。以前のナンバーガールは期待の二つ目の落語家のような勢いがあって、今のナンバーガールには真打クラスの余裕と貫禄があるように思えた。そんなナンバーガールを早く生で見たい。

 

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カンノアキオ