カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第14回は今のヒップホップブームで語られない、日本語が聞き取りやすくて技術で圧倒しないラップ曲を聴く「日本語のラップ曲」特集の書き起こし(前編)を掲載します。ポッドキャストは下記リンクから。
カンノ:今回は日本語ラップの話をしたいなと思います。昨今言われている日本語ラップ、ジャパニーズヒップホップ、僕はあんまり好きじゃないです。
オノウエ:言わなくていいです(笑)
カンノ:で、なんで好きじゃないかを考えてるんですが。
オノウエ:言うんですね(笑)
カンノ:『フリースタイルダンジョン』や『高校生RAP選手権』以降だとは思うんですが、ラップの技術合戦になっちゃったなと。あとそれによって、ヒップホップ用語が世間に定着してきてますよね。だからある程度、大衆に広まって、その文化のリテラシーも上がったのかなと思うんです。
オノウエ:なるほど。
カンノ:ただ僕は、決められた尺度やルールから漏れてしまったものが好きだったりするんですけど、ものの見方が固定されちゃうと、そこから漏れたものが「よくない」ものとされる評価になってしまうと思うんです。そうなると、技術点が高いことが可視化されるわけじゃないですか。
オノウエ:そうですね。
カンノ:もちろんうまいラップに越したことはないんだけど、「もうちょっとべつの軸で見てもいいんじゃない?」という思いもあって、だから今のジャパニーズヒップホップシーンはとりあえずそんなに追わなくてもいいかなという気がしています。
オノウエ:はい。
カンノ:で、僕が好きな日本語ラップというのは、昨今言われているようなヒップホップの文脈からは外れたものだったりします。今回はそういう曲を紹介したいなと思います。で、「日本語ラップ」や「ジャパニーズヒップホップ」という言われ方をしてるじゃないですか。それとはべつの言い方はないかなと思いまして、一旦この言い方をさせてください。「日本語のラップ」
オノウエ:「日本語ラップ」ではなく「日本語のラップ」
カンノ:「日本語のラップ」という言い方で、シーンから外れた日本語ラップを考えたい。ということで今回は「日本語のラップ曲」特集です。僕の言う「日本語のラップ」はどういう定義なのか。ざっくり2つあります。「技術で圧倒しない」「日本語が聞き取りやすい」この2点です。この定義で僕の好きなものを紹介します。なので、いわゆる「日本語ラップ特集」で流されるような楽曲は流れません。ではまず、最初にこちらをお聴きください。SUBMARINEで「Midnight Tour Guide」
カンノ:失恋模様を丁寧に聞き取りやすい日本語でラップしてくれている名曲だと思います。なにを言ってるのか、一語一語はっきりわかるラップも珍しいかなと。そしてヒップホップ用語も使っていない。
オノウエ:SUBMARINEってヒップホップ用語を全然使わないよね。
カンノ:平易な言葉でやってくれるラップはいいですよね。だからこそ、語られる場所がないのがもったいないし、カテゴライズしにくい。
オノウエ:たしかに。
カンノ:ヒップホップの世界って縦横のつながりで語られたりもするじゃん。関係性とか。そういうところが見えにくいと喋られる土壌もない世界だからさ。
オノウエ:そうだね。
カンノ:で、じつは僕らはこの人たちのアルバムのリリースパーティーに行ってるんだよね。
オノウエ:行きましたね。
カンノ:客層が全然怖くなくてね(笑)
オノウエ:場所もいわゆるクラブみたいなところじゃなくてね。
カンノ:三軒茶屋の小さいスペースでしたね。ただ、お客さんの文化度は高いというか、関係者だらけというか、あれは僕のカルチャー原体験と言えるかもしれない。
オノウエ:だってファーストサマーウイカがいたでしょ。
カンノ:いた(笑)この「Midnight Tour Guide」のボーカルをやってたんじゃないかな…?
オノウエ:そうだよね。「派手な人が出てきたなぁ~」と思ってたらファーストサマーウイカだった覚えがあるもん。
カンノ:この前近所のカレー屋行ったら、テレビでNHK出てたよ(笑)で、これは「日本語ラップ」ではなくて「日本語のラップ」と括りたい。こういう感覚の楽曲を紹介できたらなと思います。では、続いての曲をお聴きください。イルリメで「トリミング」
カンノ:言葉は聞き取れるのに、なにを歌っているのかがさっぱりわからない名曲だなと思います。
オノウエ:イルリメってわりとそういう曲多いよね(笑)
カンノ:抽象的で叙情的ですね。
オノウエ:なるほど(笑)
カンノ:LABCRYの「ハートのビート」という曲のイントロ部分をサンプリングしてループさせていますが、それでこの歌詞がハマるって思うの、天才ですよね。
オノウエ:たしかに。
カンノ:この曲はジャパニーズヒップホップや日本語ラップとはべつの文化圏の曲だと思うんだよね。
オノウエ:もはやイルリメはジャパニーズヒップホップの人じゃないよね。
カンノ:だって海外レーベルからハウスの楽曲をリリースしてる人でしょ。
オノウエ:この人のやってることは幅広いもんね。
カンノ:そうあってほしいんだよね。ヒップホップだけっていうことでもないとか。なんか、ヒップホップだけで生きることが良しとされちゃう感じとか、そのなかの縦社会な感じとかさ、なんだろう、任侠っぽい世界になっちゃってるのかな。僕の苦手な部分としては。裏社会とのつながり的な意味も含め。
オノウエ:フフッ。
カンノ:技術と絆的なつながりの話よりも、もっと文化が感じられるところの意味でイルリメという人は「日本語のラップ」の人と考えていいのかなと思います。
『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!