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サムオブ井戸端話 #139『いきものがかりトリビュートと自意識』(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

いきものがかりのトリビュートアルバム『いきものがかり meets』を聴いたサムオブメンバー。各曲のサウンドプロデューサーに解釈を委ねたトリビュートアルバムを聴いて、いきものがかりのリーダーである水野良樹から感じる自意識と王道J-POPをやることの両立について考えました。

 

 

カンノ:いきものがかりの話をします。『いきものがかり meets』というトリビュートアルバムが2024年2月14日にリリースされています。

カンノ:そもそも僕が思う、いきものがかりの話をします。ギターでリーダーの水野さんという方がいらっしゃいますが、メンバーが2人になって以降が顕著な気がしますが、自分でHIROBAというプラットフォームを作り、そこで作品を発表しています。

カンノ:あと、自分で個人事務所を設立したり、小説も書いたりして、表に裏に大忙しということです。

カンノ:僕が気になるのは、そのうえでいきものがかりみたいな王道J-POPをやっていることなんです。

YOU:なるほど。

カンノ:僕のなかで乖離しているんですよ。文化度が高い動きをすることと、王道J-POPをやることって。僕のなかで王道をやる人は、それでいいというか、裏をあんまり見せないと思うの。王道のまま突っ走る。だから水野さんの場合は、ただ王道をやるだけでは気が済まない部分があるのかなと。真っ直ぐに王道をやるって、ある程度馬鹿にされてしまうことも込みだと思うんですよ。その点、水野さんの動きは自意識を感じるというか。「俺はこんなもんじゃない」という自意識。「みんなが想像する俺じゃない」ということと「想像通りのことをする」ことの両立と言いましょうか。

YOU:たまにXでポストも流れてくるけど、言いたいことがいっぱいある人なんだろうなと思う。それは曲以外のやり方で。

カンノ:たしかに曲ではやらないね。健康的にJ-POPを作りたいなら、自意識は持たないほうがいい気がするんですよ。自意識によって作る音楽って小難しくなりそうじゃん。

YOU:そうだね。

カンノ:でも、誰にでも聴いてもらえるような音楽を標榜して、あえてこの言葉を言いますけど、簡単に聴いてもらえる音楽をやるということ。でも「こんなもんじゃない」という自意識もある。その両端を持って成立させてるすごさを感じるんです。で、『いきものがかり meets』はその自我が垣間見えるようなトリビュートアルバムだなと思ったんです。

YOU:それはどのような意味で?

カンノ:そもそもこのトリビュートアルバムは、頼んだ歌い手やバンド、サウンドプロデューサーやアレンジャーにすべて委ねてるみたいですね。「みなさんの解釈でやってください」的な感じなのかな。だからいきものがかり側であまりコントロールしない作りになってるらしいです。なので、多種多様なトリビュートアルバムになっていて、水野さんの思考と直結するようないきものがかり作品になっている気がします。あんまりJ-POPのトリビュートアルバムではあまり聴いたことがないかたちな気がします。すごくおもしろかったです。

YOU:アイナ・ジ・エンドの「じょいふる」はすごいよかったね。

カンノ:めちゃくちゃよかったですね。

YOU:プロデュースしてるのは君島大空・西田修大という日本のインディー音楽好きならみんな知ってると思うけど、そういう人たちがこういうメジャーなフィールドでコラボレーションしても普通にめっちゃよくなるんだね。

カンノ:いわゆる「じょいふる」という曲で想像するモードとは全然違ったもんね。

カンノ:原曲とまったく違うアレンジって、基本的に失敗の可能性のほうが高いじゃん。そのなかでちゃんといい曲になってるという。基本的にはこの『いきものがかり meets』というアルバムを聴くときは、この曲を聴くアルバムとして機能している気がします。それくらい好きですね。ざっとこのアルバムで思ったことを話しましょう。

YOU:ゆずが浮いてたような気がした。

カンノ:ゆずが想像以上にストレートだったね。

YOU:サウンドプロデュースがトオミヨウというめちゃくちゃJ-POP畑の人。

カンノ:だから、このアレンジで菅田将暉が歌ってもいいよね。

YOU:そうだね。

カンノ:なんか、最近のゆずは変なアレンジの凝り方をしていて、そんなに好きじゃなかったんだけど、こんなストレートなものをトリビュートアルバムで聴けたのは嬉しかったですね。

YOU:ひねりがないのが逆に浮いてておもしろかったね。あとはyamaの「ブルーバード」はtofubeatsなんだね。

カンノ:これはあんまり好きじゃないかな。この曲は普通に邦ロックのサウンドで聴きたかったかもしれないし、yamaもべつの曲でよかった気がする。わざわざtofubeatsじゃなくてもいいかな。「ブルーバード」の使い方がもったいない気がしたな。

YOU:SUPER BEAVERの「コイスルオトメ」も好きでした。

カンノ:あれはめちゃくちゃSUPER BEAVERの曲になってたよね。

YOU:チャットモンチーの「恋愛スピリッツ」をはじめて聴いたときの感覚を思い出した。

カンノ:これはいきものがかりの原曲を思い出せないくらい、SUPER BEAVER化したなと思った。それはアレンジもそうだし、渋谷さんの歌の力だと思ったかな。

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