カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。第4回はケツメイシのアルバムをすべて聴いたカンノが、ケツメイシのアルバムがどういった曲で構成されているかを解説する「ケツメイシ概要」特集の文字起こし(後編)を掲載します。ポッドキャストと(前編)は下記リンクから。
カンノ:まずはケツメイシの水商売曲を聴いてもらいましょう。ケツメイシで「夜の天使」
カンノ:これが水商売曲。つまりキャバクラですね。これは『ケツノポリス3』収録楽曲ですが、水商売曲の一番重要な特徴としてRYOさんが超活き活きしてる(笑)
オノウエ:すごく活き活きしてたよね(笑)
カンノ:本当にキャバクラとかスナックについて歌いたい人なんだろうな(笑)でね、この曲がすごいのがRYOさん、ロングバースなんですよ。まず16小節歌う。そのあとに8小節、最後にまた8小節歌ってます。
オノウエ:ほかのメンバーより量が多いんだ。
カンノ:あと、ラップのキレが倍増す。
オノウエ:アハハハハッ!
カンノ:マジでノッてるんだよね。水商売曲のRYOさんって。めちゃくちゃ活き活きしてノッていてラップが上手い。聴いてもらったけど、声の表情が豊かだったでしょ。
オノウエ:ちょっとテンション高かったよね。
カンノ:もともと甲高い声が特徴の人なんだけど、よりねっとりしてくるんだよね。この人がエロスケベジジイを演じたときのラップはすごく良いんだよね。これには親父ギャグ的な要素も絡んでくるんだけど、中年のことを歌わせたら天下一品だよね。
オノウエ:なるほど。
カンノ:でね、2000年代のヒップホップの人が歌う現場ってやっぱりクラブの情景じゃん。「DJ、音上げろ!フロア沸かせ!」みたいな曲とか、クラブでのナンパとかさ。でもケツメイシの現場ってキャバクラなんだよね(笑)
オノウエ:現場がキャバクラ(笑)
カンノ:だってヒップホップのことは全然歌ってないからね。正直、『ケツノポリス2』から歌ってない。
オノウエ:ほとんど歌ってこなかったんだね。ちなみに最新作にはお水系の曲はあるんですか?
カンノ:最新作はお水っぽい曲はないですね。最新作はギャグ系が強い印象かな。
オノウエ:あ~、そっちが多いんだね。
カンノ:あのね、全然違うベクトルで言いたい話があるんだけど、最新作におじさんあるあるについて歌った楽曲が収録されているんです。「おじさんの取説」という曲なんですが。
カンノ:でね、マキタスポーツさんの歌ネタで「トリセツおじさん」っていうものがあるんですよ。
オノウエ:えぇ~。
カンノ:西野カナ「トリセツ」、これは女の子の取扱説明書的な歌ですが、それのおじさんバージョンというネタでね。歌詞がどん被りです!
オノウエ:アハハハハッ!
カンノ:これはケツメイシに言いたいんだけど、もっとリサーチをして欲しかった!「誰かやってるかもな」ということは念頭に置いてほしい。これはちょっと熱く言うけど、お笑いが毒したものってそういうところなんだよ!これは「ちょっとおもしろいこと言おう」と思ったときに起こることなんだよ!
オノウエ:いきなりヒートアップしてるし、話の本筋からズレてるし(笑)
カンノ:「おもしろいからやってもいい」となってしまう世界だからケツメイシをこうさせたのかなと思いましたね。でね、最新作はギャグ方向が強いんだけど、コンプライアンスとかあまり言いたくないんだけどさ、「こういうこと歌うの?」って思っちゃった曲が何曲かあったね。それは辛かったね。だから「親父」っていうのも使い方だなと思いました。
オノウエ:なるほどね。
カンノ:だから『ケツノポリス13』というアルバムは、僕は聴いてて感情がぐちゃぐちゃになりましたね。「良い曲だ~!」と思った途端に「これは大丈夫なのか?」ってなったり(笑)
オノウエ:複雑なアルバムですね(笑)
カンノ:ということでお水の曲でした。では続いて、リズム歌謡曲。これはお馴染み、僕ら世代であれば絶対聴いたことがある曲を聴きましょう。ケツメイシで「君にBUMP」
カンノ:この曲を聴いて僕らは山田優とVodafoneのことを思い出しますから。
オノウエ:Vodafone…(笑)
カンノ:リズム歌謡ということで、踊り系の楽曲です。アルバム曲でこのパターンは多いんですが、これはシングルの表題曲でした。ケツメイシのアルバムを全部聴いて、これが一番「良い曲だな~」って思いましたね。ほかのラップグループのダンスの曲って当然だけどヒップホップカルチャーに根ざしたものだと思うの。B-BOYの曲だったり。でもケツメイシはリズム歌謡なんだよね。大人の社交場の匂いがするんだよ。ちゃんとドレスコードがある場所で、飲むお酒も格高い感じ。
オノウエ:なるほどね。
カンノ:互いの腰をぶつけ合うことを「BUMP」と呼ぶらしいんですが、この曲の振付はパパイヤ鈴木さんですから。
オノウエ:その時代ですね。
カンノ:で、MVには羽賀研二が出てたんですよ。だから、公式のYouTubeにこの曲だけアップされてない理由がわかりますよね(笑)
オノウエ:アハハハハッ!
カンノ:この曲も水商売感があってね。さっきも話したけど、良い意味でも悪い意味でも「おじさん」というものが軸としてずっとあるんだよね。
オノウエ:「君にBUMP」くらいってアルバムだと何になる?
カンノ:『ケツノポリス4』ですね。だから「さくら」とかですよ。
オノウエ:そのときからケツメイシはおじさんを身にまとっている感じなんですね。
カンノ:その感じはアルバム曲では垣間見えてたりしたんだけど、この辺りでシングルとかで出してきたのかなと思いますね。では続いて、大義曲。
オノウエ:これがどういう曲なのか気になりますね。
カンノ:これは久々に聴いて「やっぱり危ないな」と思った曲を紹介したなと思います(笑)ケツメイシで「侍ジャポン」
カンノ:「俺は本当に日本で良かった!」という感覚はちょっと危ないんじゃないかという(笑)
オノウエ:なるほど。
カンノ:「死に際」とかすごく歌うんですよ。「俺は日本で一生の生を終える」とかさ(笑)「もうちょっと視野広く見ていいんじゃないかな~?」っていう(笑)
オノウエ:これはいつのアルバム?
カンノ:『ケツノポリス2』ですね。2002~2003年くらい。
オノウエ:そのころならまだ分かるかな。
カンノ:人ってこういうのを聴いて「良い曲だな」と思うところから、ゆるやかな右傾化が始まるのかな?
オノウエ:フフッ。
カンノ:だってこんなに島国を強調しなくてもよくない?やっぱり歌の主語がデカいとこういうことになりがちというかね。だって括れないじゃん。「同じ肌の色を持ち」って歌ってるよ。そういう意識が危ないっていうことがいっぱいあったじゃん。なんか、富国強兵みたいな曲だなって思いました。
オノウエ:ちなみに、これの2022年バージョンがあるみたいじゃないですか。
カンノ:なんでこれの新バージョンが出るんだよ(笑)
オノウエ:当時ならまだわかるんだけど、2022年にもう1回やるのは、本当に大丈夫かどうかは思わざるを得ない。
カンノ:今回は以上になりますが、先ほど言った社会派風楽曲とか、「自然のことを歌ってるけど、じつは日本賛歌じゃん」みたいな曲とかもいっぱいありますからね。この辺りは第2弾、第3弾といくらでもできます。ということで、「人をゆるやかに危なくさせることができるのがJ-POPである」ということを学べたかなと思います。「ケツメイシ概要」という企画でございました。
『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!