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SOMEOFTHEM OF PODCAST 第4回「ケツメイシ概要」特集(前編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。第4回はケツメイシのアルバムをすべて聴いたカンノが、ケツメイシのアルバムがどういった曲で構成されているかを解説するケツメイシ概要」特集の文字起こし(前編)を掲載します。ポッドキャストは下記リンクから。

 

 

カンノ:今回から2024年発売楽曲を紹介していきたいなと思います。で、早速1曲聴いてもらおうと思います。ケツメイシで「We GO」

カンノ:ということで2024年リリースで最初にこの番組で流した楽曲はケツメイシの今の曲となりました。まぁ、2024年を感じる1曲ですね。

オノウエ:とても懐かしい気持ちになったんですけど(笑)

カンノ:これはケツメイシの最新シングルです(笑)

オノウエ:すごく中学生時代を思い出しました(笑)

カンノ:めちゃくちゃ平成中期みたいな曲だったよね。

オノウエ:本当にそんな感じ。

カンノ:こちらは1月31日にリリースされたアルバム『ケツノポリス13』の先行配信楽曲でございます。

カンノ:ちょっとこの曲の話をします。1月半ばくらいに1~2時間程度雪が降った日があったんですよ。そのときに僕は外にいる用事があって、寒くて寒くて。もう辛くて。身も心もやられているときに、新着プレイリストでケツメイシの今の曲が流れてきたの。そうしたら「なんて良い曲なんだ」と思ってちょっと泣いちゃったんですよ。

オノウエ:普通に沁みてるじゃないですか(笑)

カンノ:「すごい良い曲だ」と思ったのと同時に、「こういう心情の人が高い壺を買うんだな」とも思ったの。

オノウエ:ちょっと言ってることがよくわからないんですが…(笑)

カンノ:J-POPの効能ってそういうことなんだよ。つまり、どんなにダメな状況でも「大丈夫」って言い続けるのがJ-POP。「これはダメだ」と歌ったらメッセージソングになってしまうから。ずっと「大丈夫だよ」とか「君はそのままでいいんだよ」と言い続けることがJ-POPなの。人はそこに金を落とすから。だからJ-POPって心が弱くなってしまった人に合わせて作られてるものだなと思うの。それだけハードルを下げたときに商売になる場所だなと思いました。で、それからケツメイシのことが気になって、アルバムを全部聴き返したんです。

オノウエ:13枚?すごいね。

カンノ:「ケツメイシってどういう感じだったっけ?」と思って聴き込んだ結果、一つわかったことがあります。

オノウエ:なんですか?

カンノ:ケツメイシってカスタム可能なんです。

オノウエ:カスタム可能?

カンノ:アルバム楽曲の取り換えが可能なんです。

オノウエ:なるほど。

カンノ:ケツメイシのアルバムってどういうもので構成されているかという話です。まず、主に夏の季節曲。次に恋愛曲。で、友情曲。これがシングル曲です。

オノウエ:なるほど。

カンノ:で、アルバム曲。水商売曲、リズム歌謡曲大義曲。

オノウエ:大義

カンノ:これは歌われてる主語が国とかアジアとか、クソバカデカ主語。

オノウエ:なるほどね(笑)

カンノ:あとは社会派風曲。

オノウエ:社会派ではなく、社会派風ね(笑)

カンノ:あとは自然曲。この自然曲はすごく大義曲に絡んできやすいです。あとは親父ギャグ曲。

オノウエ:それはイメージあるかも。

カンノ:これらがアルバムのなかに1~2曲入ってケツノポリスが出来上がっています。今のような曲が1~2曲ずつ入ったものが定期的にケツメイシから届けられるのがケツメイシのアルバムなんです。だから取り換えが可能なんです。

オノウエ:アルバムの中身が入れ替わったとしても、構成比率が変わらなければ、それはケツノポリスであると。

カンノ:そうです。だって今の要素から外れた曲、全然ないからね。で、今日はその構成要素の代表曲を紹介する「ケツメイシ概要」という特集です。

オノウエ:なるほどね。2024年の楽曲を最初に流しただけだったんだね(笑)

カンノ:ここからは古いケツメイシの曲を流します(笑)もっと言うと、新しい曲も古い曲も一緒だから。

オノウエ:たしかにね。さっきの曲も懐かしかったからね。

カンノ:ずっと古典をやってるんだよ。聴く相手が変わらないから。それで言うと、RIP SLYMEKICK THE CAN CREWケツメイシの同期的なものと考えたときに、この2組はヒップホップシーンに戻ってきた感はあるんだよ。KREVAPUNPEEやOZROSAURUSとやったり、LITTLEが韻のことについて語ったり。

カンノ:RIPも「あのときのビーフはどうだった」みたいな話をしたりね。

カンノ:それはヒップホップが大衆にやっと根付き始めたから。で、2000年代のヒップホップは大衆を振り向かせるためにやらざるを得なかった。この前も話したけど、何故KICK THE CAN CREWが「マルシェ」で「上がってんの?下がってんの?皆はっきり言っとけ!(上がってる!)」と歌わなきゃいけなかったのかというと、こういうわかりやすいことを歌わないと客層を掴み取れなかったからであって、今はもっとスキルフルなことをやっても理解が追いつくから。

オノウエ:ヒップホップ自体の理解が広がったからね。

カンノ:そんな感じでみんなシーンに回帰しているのに、ケツメイシだけ全然戻らない。元々はレゲエシーンの人たちだけど、そのバックボーンについて語るとか一切ない。

オノウエ:あんまり見たことないね。

カンノ:あと、これがケツメイシの唯一の変化なんだけど、自身のラップスキルをどんどん見せなくなった。昔はRYOさんのラップはすごくテクニカルだった。それが年月を経るたびに、上手いとされるラップスキルを全然見せなくなっていった。それはケツメイシの市場が変わったことを意味してると思うの。ケツメイシの商売相手が変わった。ヒップホップの人たちを相手にしてるんじゃない。音楽を聴いていない人に向けて音楽をやってるの。

オノウエ:すごくパラドキシカルな話ですね(笑)

カンノ:音楽を進んで理解しようとしていない人に対しての音楽に徹したんだよね。だからさっき流した「We GO」みたいな曲ができるんだよ。そう思うとケツメイシが一層味わい深い。で、アルバムの内容も全然変わらない。安心・安定のケツメイシブランドを提供する。それはチェーン店の牛丼屋と同じ。その安定供給源としての自覚をどこかで腹決めたんだろうなと思うんです。今日は具体的に曲を聴いて、その変わらなさを見てみようと思います。

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!