SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
「今年リリースされてる女性ミュージシャンの新譜を結構好きになってる」とカンノメンバー。「音楽として好き」なのか「異性として好き」なのかがわからないことから、女性ミュージシャンに対して持っていた自意識について語り合いました。
カンノ:今年リリースされてる女性ミュージシャンの新譜を結構好きになってるんですよね。
オノウエ:たとえば誰?
カンノ:元ねごとのボーカルの蒼山幸子さんのアルバムとか。あとリーガルリリーのアルバムも好きでした。
カンノ:女性ミュージシャンのアルバムは今年好きなものが多いんですけど、正直に言いますね。音楽が好きなのか顔が好きなのか全然よくわかんなくなっています。
オノウエ:これはすごい微妙な話だな…(苦笑)
カンノ:僕はずっと「女性ミュージシャンが好き」ということに関して自意識があるんですよ。
YOU:というと?
カンノ:これも正直に言うと、昔からあんまり好きな女性ミュージシャンっていなかったの。
オノウエ:女性ミュージシャンに対してなにかずっとアンビバレンツな思いがあったんだね。それは言葉にすると何なの?
カンノ:「本当にその人たちの音楽が好きってことじゃないんじゃないか?」という自分への疑い。
オノウエ:一言でいうと「本当にこの女性ミュージシャンのこの曲が好き」と言い切れない何かがあるってことか。
カンノ:っていうか「顔が好き」ってことに集約されちゃうんじゃないかってこと。
YOU:気持ち悪いな(笑)
オノウエ:この話、本当に大丈夫なのか…?(笑)
カンノ:でも本当にリーガルリリーや蒼山さんのアルバムが好きで。とくに蒼山さんのアルバムは毎日聴いてた。でも何気なく聴く感じでもないの。聴くことに照れてるんだよね。
オノウエ:音楽を聴くのに照れてるのね?
カンノ:照れてます。僕は好きな女性ミュージシャンの音楽を聴くのに照れてます。
YOU:マジか…(笑)
オノウエ:それはやっぱり大変な自意識だよ(笑)
YOU:いや、べつに「かわいいから」っていう理由で聴くのは全然いいと思うんだけど、「それはいけないことなんじゃないか?」というアンビバレンツな感情を持っていること自体が、シンガーソングライターおじさんの1歩目な気がするな(笑)
カンノ:「かわいいと思って聴いてるな、これは危ないな…」と思ってること自体が危ないんだよね(笑)
YOU:そうだよ、好きなら好きでいいんだよ(笑)
オノウエ:その枠に入る人、入らない人ってあったりする?
カンノ:それが最近わかった。ずっと真夜中でいいのに。の新譜もすごい好きなの。これは照れない。
YOU:ずとまよは身体性がないからね。
カンノ:っていうことはやっぱり「顔」という情報ってすごい強いんだなって思った。
オノウエ:はっきりと「顔」って言ったな…(苦笑)僕らが10代で過ごしたのは2000年代だけど、そのあたりでは誰か該当するミュージシャンはいる?
カンノ:高校生のとき、安藤裕子の曲が好きだったときは「危ないな」と思ってた。
オノウエ:安藤裕子の曲が好きなのか、安藤裕子の顔が好きなのかわからないってことね。
カンノ:あと多分顔だし(笑)
YOU:安藤裕子は美人だからね。
カンノ:もとは女優さんだしね。でもそのころから女性ミュージシャンを好きになることに関してずっと難しさを思ってたんだよね。
オノウエ:俺は「女性ミュージシャン」という括りで捉えてなかったかも。たとえば高校生のころ、チャットモンチーのベースの福岡晃子さんが好きだったの。
オノウエ:でもそれは福岡晃子さんのことが好きなだけで、「女性ミュージシャンとして好き」みたいなことは関係なかったなと思ってね。
カンノ:多分中学高校のころって、いろんなカルチャーのなかでも特に音楽が好きで聴いてたときだから、「音楽が好き」なのか、「異性として好き」なのか自分でも全然判別できなかったんだよね。それが嫌だったんだと思う。だから女性ミュージシャンの話とか、全然してこなかったもんね。
オノウエ:俺、カンノからそういう話をこれまでほとんど聞いてこなかったもん。カンノから聞いた女性ミュージシャンの話は安藤裕子くらいじゃない?
YOU:たしかにそれぐらいかも。俺はたとえば椎名林檎が普通に好きなんですよ。あとコロナ禍で流れちゃったけど吉澤嘉代子のライブも行こうとしたし。あと最近だと4s4ki(アサキ)にもハマってるし。でも「好きになることが恥ずかしい」とか「聴いてて照れちゃう」とかはない。なんだろ、好きになる女性ミュージシャンはルックがかっこいい傾向があるかも。そのかっこよさに憧れる節はあるかな。「かっこいいなぁ~」と思って見てる感じ。まぁ、あえていうと吉澤嘉代子は色気を感じるかも。
カンノ:なるほどね。普通に音楽が好きで聴いてたら、たとえばどこかで椎名林檎か宇多田ヒカルか浜崎あゆみかaikoかYUKIかは好きになると思うんだよ。でも自意識が邪魔して好きになれなかった。
オノウエ:あれは?2000年代のR&Bディーバ方向はどうだった?
カンノ:あれは好きでも大丈夫だったね!あれでしょ、m-flo loves系でしょ?(笑)
オノウエ:そうそう(笑)
カンノ:あの人たちは好きだった!なんだろ、僕のジメジメとした自意識とかもカラッとさせてくれる(笑)
YOU:それはお前がギャルが好きってことじゃないのか?(笑)
カンノ:ギャルは大丈夫だった(笑)
オノウエ:「ギャルが好き」というよりは「ギャルは大丈夫」ってことだよね。
カンノ:ギャルは生々しくなかったんだよ。
YOU:気持ち悪いこと言ってるな(笑)
オノウエ:「こんな人たちは周りにいなかった」ってことだよね。
カンノ:チャットモンチーとかって隣にいそうで生々しかったんだよね。