SOMEOFTHEM

音楽実感ブログ。主に「サムオブ井戸端話」と「SOMEOFTHEM OF PODCAST書き起こし」を更新。

サムオブ井戸端話 #144『聴覚ではなく視覚優先のJ-POP』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

J-POPの視覚情報の強さについて語るサムオブメンバー。後編では、視覚や見た目によってわかりやすさに重きが行き過ぎていることや、反対に真似したい見た目のミュージシャンについて語りました。前編は下記リンクから。

 

 

YOU:俺らは音楽の機能についてよく話すじゃん。「踊れる」とか「悲しくなる」とか「励まされる」とか。これはTikTokをはじめとするショート動画文化のせいだと思うけど、踊ることに対して無批判じゃん。「踊れるか、踊れないか」の二つしかないというか。「この振りつけがTikTokに合いそう」とか「みんなで踊れそう」という考え方が強くなりすぎてる気がするよね。たとえばカンノが言ってる緑黄色社会のCMって視覚情報が強いわけじゃん。

カンノ:「楽しそう!」とかね。

YOU:俺も踊れないし、DJをやって人を踊らせるみたいなこともできないから、みんなで同じ振りつけを踊るのを見ると「うわっ…」って思っちゃう。「それはお前が本当に楽しいのか?」っていう。「それは”楽しい”という空気に流されてるだけで、本当に”楽しい”と思っていないんじゃないか?」っていう。

カンノ:余計なお世話だね(笑)

YOU:フリースタイルならいいと思うんだよ。流れている音に対して、個人が思い思いに踊るのは。「振りつけを決めて皆で踊ろう、動画を撮ろう、SNSにあげよう」という流れは、「音楽ってそれだけじゃないよ」っていう思いがどうしても出てきちゃうんだけど、それがしばらく主流だもんね。

カンノ:でもそれを楽しそうにやってて、見ているほうも楽しい気分になって、それでいいんだよ。

YOU:そうなんだけど、べつに踊れなくてもいい曲はいっぱいあるからね。でも視覚情報で振りつけが決定づけられちゃうからさ。

カンノ:それに従うよね。

YOU:もちろん視覚情報はデカいですよ。ただ、今はより違うフェーズに行った感じはするよね。

カンノ:だから、さっきから意地悪なことを言ってるけど、「音楽はどうでもいい」ということになる。

YOU:Saucy Dogっているじゃん。

カンノ:いるね。

YOU:この前、たまたまテレビの歌番組を見てたら出てきて。「今まではバラードっぽい曲をやってたんだけど、新曲はすごいロックな曲です」みたいなことを言ってて。で、ボーカルの人が革ジャンを着てたんだよ。

カンノ:ロックだった?

YOU:「もともとパンクとか好きだったんで」みたいな。なんだろ、Saucy Dogはともかく、「周りの大人たちは止めなかったのかな…」って思ってしまった(苦笑)

カンノ:いやいや、周りの大人たちに言われたからでしょ。

YOU:「これがお前らのロック像でいいのか!?」っていう(笑)でも、それくらいわかりやすくしないといけないんだろうね。「これまでバラードとかラブソングを歌っていたSaucy Dogが、自分たちのルーツであるロックに回帰しました」みたいなストーリーを視覚的に見せなくちゃいけないわけだから。

カンノ:これまでの話って「見た目ばかり気にして、ちゃんと音楽を聴け!」みたいな説教臭い感じでしゃべってたけどさ、たとえばアジカンのボーカルが屈強な体格のイケメンだったら全然好きじゃなかったと思うんだよ(笑)

YOU:まあね。

カンノ:やっぱり背が小さくて、メガネを掛けていて、なんとなく薄ぼんやりしている浪人生風の20代後半の男性がメジャーデビューしたことに意味があるというかさ。屈強茶髪童顔イケメンが「やっぱりテレキャスのジャキジャキ感が~」とか言い出したら本当に嫌いになっちゃいそうで(笑)

YOU:フフッ。

カンノ:そんな人に「僕と君が繋がり合える5メートルの距離感」みたいなタイトルのアルバムとか出してほしくない!

YOU:逆のルッキズムだよね(笑)

カンノ:でも、本心はそうだよね。

YOU:それは間違いないね。この前、ゆらゆら帝国の亀川さんが亡くなられたけど、ゆらゆら帝国のよさの一部って、間違いなく亀川千代の見た目ってあるじゃん。

カンノ:あるね。

カンノ:そういう「見た目を真似したい」という気持ちも大事だよね。「ああなりたい」とか。今回はずっと見た目についてしゃべってきて、「見た目で音楽を聴いてるんじゃねえよ」って言い続けたけど、反面「見た目って大事だな」と思うからさ。「音楽を聴いている」の構成要素の一つに「目で見ている」は無条件で入ってくるからね。

YOU:わかる。そこは無視できないよ。

カンノ:感覚として無視できないからこそ、目で入る情報は強いんだよね。だって目があれば、曲を聴いてなくてもどんな曲かわかるんだから。薄ぼんやりした照明でバンドの人たちの動きがゆっくりになったら、「落ち着いた曲をやってるんだな」とかがわかるんだもん。赤い照明に照らされて動きが活発になったら「激しい曲なんだな」ともわかるし。すごい情報量なんだよね。

YOU:視覚情報はすごい(笑)

カンノ:だって聴かなくても大体わかるんだから。

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