SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
FMラジオ番組を模したアルバムを作ったカンノメンバー。後編では具体的なラップやラジオ台本の作り方について、またラジオの体をしたアルバムの今後の目標について語りました。前編、中編、4×4=16アルバム『RADIO』は下記リンクから。
オノウエ:このアルバム、いやこの番組は、何回聞かれるんだろうね?
カンノ:何回聞かれても全部同じ内容だしね。
オノウエ:でもさ、10回聞いても内容が全く覚えられないんだよね(笑)
カンノ:本のタイトルとか(笑)
オノウエ:話してる内容とか(笑)
カンノ:フェスの名前とかなにも覚えられない(笑)
オノウエ:このアルバムの準備期間はどれくらいなの?
カンノ:去年の夏くらいからちょっとずつ作り始めて、秋頃には録音してたね。トラックも結構頂いたものがあったので。
オノウエ:協力してもらったトラックメイカーの人がいたってことだよね。
カンノ:そうそう。それでトラックはほぼ編集なしで、頂いたものをわりとそのままラップ乗っけましたね。普通は「この部分を16小節使ってラップして、ここは8小節でサビ部分にします」って言ってループしてもらうんだよ。それを一切しないで、ほぼノー編集で来たデモトラックまんまにラップを乗せました(笑)
オノウエ:やっぱりカンノは変だよね、考える順番が(笑)
カンノ:だから1曲1曲が3分もない短さなのはそういうこと。デモトラックを全然伸ばしてないから。
オノウエ:貰ったトラックを全部言葉で埋める(笑)
カンノ:埋めたね(笑)あとはもらったトラックをそのまま使ってるので、意外とどの曲も展開が多いです。それはわりと自慢な作り方かな。
オノウエ:ラジオパートの台本はどんな感じで作ったの?
カンノ:台本の半分は1日で書いたね。
YOU:すげえな。
カンノ:その日は頭使いすぎて知恵熱が出たね(笑)「知恵熱って本当に熱が出ることなんだ」って実感したね(笑)
オノウエ:本当に熱が出たんだ(笑)
カンノ:脳が沸騰したね(笑)でも存在するフォーマットに則って作るのはすごく性に合ってると思ったね。多分、もう正しいアルバムの作り方ができない。
YOU:正しいアルバムってなに?
カンノ:とりあえずこのアルバムは間違った作り方のアルバムなんだよ。
YOU:それはそうだね(笑)
カンノ:そういう作り方じゃないと制作してて楽しくないかも。曲ができて溜まってアルバムになるという作り方はもう納得できない気がする。自分で設定を作るとかさ。
YOU:やっぱりカンノは構造主導なんだよね。
オノウエ:でもこのラジオっていうフォーマットは発明したじゃん。これを四半期に1回出せたりしたら面白くない?
カンノ:それやりたいんだよね〜。
オノウエ:曲を作るのは大変だけど。
カンノ:まぁ、今オノウエ君が言ったのでやってもらって(笑)なんか、こういうアルバムを出しまくって、結果架空のFMラジオ局の1日のタイムテーブル作ろうよ(笑)今は土曜の14:30~15:00が埋まったから、次は1時間のリクエスト番組を作ったりさ。
オノウエ:土曜のTOKYO FMを埋めるみたいなことね。
カンノ:朝は健康番組を置いたりさ。架空のがん予防のレシピを紹介したり。で、過払金のCMは全部同じで(笑)
オノウエ:全番組同じスポンサー(笑)
YOU:それでわかる人にはわかるボケになってる(笑)
カンノ:ちなみに過払金のCMは僕からオノウエ君にオーダーして、「もしもDJ松永が過払金のCMを作ったら」というお題を振ったの(笑)「HIPHOP過払金がやりたい」って話をしたらオノウエ君がスクラッチの過払金のCMを作ってくれましたね(笑)
オノウエ:そういうオーダーだったね。
カンノ:やっぱり過払金のCMでスクラッチが入るの、すげえ面白いね。あ、忘れてた、曲の話を全然してない(笑)
YOU:構造の話ばかりしちゃったね(笑)
オノウエ:このアルバムは曲がどうのこうのってやつじゃないからね(笑)でも曲は普通にかっこいいよね。
YOU:楽曲自体もさ、たとえば「Music」なら「音楽が好きで〜」みたいなことを歌ってるけど、実は全然その部分は楽曲の核なる部分じゃないよね。
カンノ:「Travel」は「旅行に行きたいね〜」って言ってるけど全然行こうとはしない人の話だしね。
YOU:あと「Music」は邦楽の歌詞やタイトルをサンプリング的に入れ込みまくっててすごいよね。
カンノ:でも「音楽さえあれば充分」みたいなことを言ってて最後に「でも音楽を聴くには人とか金とかいるし…」みたいな歌詞になってる(笑)
YOU:悪意あるよね〜。それをなんで「Music」っていうタイトルにするんだよ(笑)
カンノ:やっぱり大ネタのタイトルがいいと思ってるからね。
YOU:曲名は全部大ネタだもんね。
カンノ:「Movie」も映画あるあるしか歌ってないし。
YOU:「Movie」も本当にたちが悪いよね(笑)「映画を評価するところまでが映画」とか。
カンノ:「映画のレビュー書くまでが映画」
YOU:俺はめっちゃFilmarksを使ってるんだからさ(笑)
オノウエ:対象じゃん(笑)
YOU:対象化しないでくれよ(笑)
カンノ:やっぱり僕がアルバム作るとしたらそういうことですよ。聴く人を全然気持ちよくしない珍しい音楽体験(笑)
オノウエ:珍しい音楽体験であることは間違いないけどね。
カンノ:自分では曲は「Movie」が一番好きかな。で、曲として一番最初にできたのは「Food」でしたね。
YOU:「Food」もさ、ラジオパートでせっかく美味そうな食レポみたいな前振りをしてるじゃん。それが最後の「おまんまくれ~!」で全部台無しになってるよね(笑)
カンノ:最後応援歌っぽくなってるのくだらないよね。
YOU:くだらないね(笑)なんかラジオのトーク部分で大したことのない話をしたうえで、曲にいくじゃん。その曲も全然大したこと言ってないのはすごいよね(笑)トーク部分を喋り手、楽曲を受け手って考えたときに、この噛み合わなさはコミュニケーションの本質かもしれないなと思ったよ。
カンノ:喋り部分でなにも言ってないかと思ったら、曲でもなにも言ってない(笑)
YOU:「Food」でいろいろ食い物の話してるけど、なんか全体的にカップラーメンみたいな曲なんだよ(笑)
カンノ:そのはしゃぎっぷりだよね(笑)オシャレさは全然ない。
YOU:ラップは誰か参照したの?
カンノ:曲によりますね。「Book」ならあるぱちかぶととか。
YOU:やっぱそうだよね!この感じのラップ、久々に聴いたよ。
カンノ:この手のラップがやっぱり好きなんだよ。
YOU:2000年代後半にあったようなね。
カンノ:ポエトリーが混ざったような。
YOU:あと「Food」は初期の環ROYっぽいよね。
カンノ:『少年モンスター』のころね。
YOU:「Travel」は若干フローが鎮座DOPENESSっぽいかな。オシャレじゃない鎮座DOPENESSみたいなね。
カンノ:サビのゆるさとかはそうかもね。でも2個目のサビでまた応援歌になる(笑)
YOU:やっぱりラジオって勝手なことを言うし、聞き手も聞き流すし、でもそんなもんだよねっていうのがすごく具現化されたアルバムだよね。遊びだよ。
カンノ:結果なにも残らないものになったと思いますね。
オノウエ:大変な思いをしてなにも残らないっていう(笑)
YOU:FMラジオってリスナーからのお便りとか読まないの?
カンノ:読むよ。次またラジオアルバム作るならそれをやりたいね。
YOU:そのコミュニケーションが今回はなかったもんね。
カンノ:今回は情報番組という体で進めたので。「今回は」って言ってるから第2弾あるかもね(笑)
YOU:恐ろしいね(笑)
カンノ:でもラジオフォーマットはマジで行けるかもね。また考えますよ。まぁ、そんなアルバムを作ったので是非聴いてください。
オノウエ:すごく良いアルバムだと思います。