SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
印象に残ったKREVAのインタビューについて語るサムオブメンバー。後編では、ART-SCHOOLの木下理樹、ポルノグラフィティのTama、向井秀徳の印象に残ったインタビューについて語りました。前編は下記リンクから。
カンノ:ここからが本題なんだけど。
YOU:前置きが長いよ(笑)
カンノ:なにか心に残ってるミュージシャンのインタビューってある?
YOU:これは明確にあるね。2000年代後半の、ART-SCHOOLの木下理樹の生い立ちから今までを語った2万字の『ROCKIN’ ON JAPAN』のインタビュー。
https://www.fujisan.co.jp/product/2873/b/127873/
YOU:これはKREVAのインタビューと真逆で、赤裸々すぎる。
カンノ:フフッ。
YOU:これは有名なインタビューで、ストレートに言うとファンの女の子を抱きまくってたんだって。「ライブ終えて打ち上げ行って、朝起きたら知らない女が裸で寝てた」みたいなことがよくあったんだって。
カンノ:世間の思う良くないバンドマン像だね…(苦笑)
YOU:あとは「昔から本を読んでて勉強もしてたんだけど、テストで良い点を取らないと親父によく殴られていた」とか。当時そのインタビューを読んで「バンドマンの人生だな~」って思ったんだよね。でね、このインタビューは悪い意味で木下理樹の印象を決定づけてしまったと思うの。ART-SCHOOLのことを好きじゃない人が「だってあいつ、女を抱きまくってるんでしょ」みたいなことを言うようになってしまった。好きじゃない人がそういう印象だけで語るようになってしまったのはしんどかったね。俺はファンだから。
カンノ:なるほどね。
YOU:あともう一つあって、ポルノグラフィティの『ワイラノクロニクル』っていうインタビュー本があって。
YOU:これはB-PASSに掲載された1999年~2001年のインタビュー集なんだけど、メジャーデビュー前にレコード会社から「お前らデビューさせるから、東京でライブしておけ」みたいな感じで東京でずっとライブしてたんだって。でもなかなかデビューできなくて。そんな話をこのインタビュー本のなかで喋ってて。当時まだメンバーだったTamaが自棄になっちゃって「一時期ウイスキーの瓶を片手に下北沢をほっつき歩いてた」っていうことを告白していて。「いつデビューできるかわからなくて、曲も作らなくちゃいけなくて、ストレスが溜まってとても辛くて。そういう時期もありましたね」みたいなことを言ってるのだけど、これを読んで「この人は脱退する運命だったんだな…」と思っちゃってさ(笑)
カンノ:フフッ。
YOU:Tama脱退後にこのインタビュー本を読んだからそう思っただけなんだけどね(笑)でも、これも結構赤裸々なこと言ってるなと思ったね。だから20代の若者がインタビューを受けると、そういうことを言っちゃうんじゃないかなって思ったんだよね。
カンノ:僕が思うのは、とは言ってもそれは言える範囲のことだよ。
YOU:それはそうだね。おそらく彼らももっと酷いことをしているし、されてるよね。
カンノ:うん、想像に難くない。
YOU:たしかにいくら赤裸々とはいえ、言えることだけを言っている可能性はあるね。もちろんいろいろインタビューは読んだけど、今思いつくのはこの2つかな。
カンノ:赤裸々系ね。僕は今喋ってて思い出した。昔Viewsicという音楽チャンネル(現・MUSIC ON! TV)で『SELF LINER NOTES』っていうアーティストが自身のアルバム収録曲を全曲解説する番組があったんだけど、ZAZEN BOYSの向井秀徳が『ZAZEN BOYS2』収録の「安眠棒」について語っているインタビューがあるんだよね。これが死ぬほどくだらなくて(笑)
YOU:それ、知ってる!「世界格闘技選手権」(笑)
カンノ:すごいよね(笑)
YOU:なにもわからないインタビュー映像ね(笑)
カンノ:「こう、棒がありますね」って言ってたよ(笑)でさ、向井秀徳ってこういう人だよね。はぐらかすように何も言わないことで印象付ける。
YOU:それは間違いないよね。
カンノ:なにもわからないんだよ。で、それは正しいと思う。
YOU:俺は再結成のNUMBER GIRLをeastern youthの2マンライブで観たんだけど、イースタンの吉野さんは「向井君と1年に1回は酒を飲む仲で、こうやって一緒にライブができるのは嬉しいです」的なエモいMCをしていたんだけど、向井さんは「今日は天気がいいんで、自転車をレンタルして日比谷公園の周りを走ってましたよ~」って言って曲をやり始めたの(笑)すごいよね、あの煙に巻く感じ。
カンノ:絶対に自分の本性を表さない。
YOU:でも一方でちゃんと語ってるときもあるじゃん。それこそ2002年のNUMBER GIRL解散ライブのMCとかさ。
YOU:でも、あのMCは当然本気なんだけど、向井秀徳の虚構性があるからこそあの名MCが生まれたような気がするね。
カンノ:そうだね。でもあのMCも100%喋っているわけじゃないのがいいと思うの。すべてを語ってるわけじゃない。語りすぎない。またはどの部分を語るか。ちょっとセルフブランディングみたいな話になっちゃうんだけど、それが体感的にわかっている人のインタビューとか喋りっておもしろいし惹き付けられるし。KREVAも木下理樹も向井秀徳も「この人はこういう語り口だな」という色がわかるじゃん。それがインタビューに出てておもしろいなと思うんだよね。