SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
RIP SLYMEのダンサー由来の身体性について語るサムオブメンバー。後編では環ROYや岡村靖幸などを通して、身体性溢れるミュージシャンの歌唱表現やステージングについて語りました。前編は下記リンクから。
YOU:また俺が好きな人の話をするけど、環ROYのラップってすごく動くじゃん。あとステージングも。
YOU:あの人の動きってすごくいいじゃん。柔らかい身体の動きをするというか。
カンノ:環ROYのラップってすごくコンテンポラリーダンスっぽいんだよな。
YOU:それはおもしろいね。
カンノ:身体のどの部分が伸びてるのかよくわからないラップするんだよ。あとマジで息継ぎの場所がわからなかったりする。
YOU:そうなんだ。
カンノ:ダメレコのマイクリレー曲で圧倒的にラップが上手かったのが環ROYだったと思うんだけど、あれはどこで息継ぎしてるのかわからないくらい16小節ずっとラップしてるんだよね。
カンノ:メリハリがあるというよりは、柳が揺れた状態のままラップして終わるみたいな。
YOU:そもそもHIPHOPのトラックってクラブみたいな踊る空間で流れるもので、そういう踊ることを志向した作りになっているから、ラップという歌唱法はさらにそれを踊れるものにするっていうことじゃなくて、意味を持たせるものが正攻法じゃん。だから前編で話したRYO-Zのラップみたいなものってかなり珍しいものかもしれないね。
カンノ:踊りに特化したラップって今はあんまりないかもしれない。
YOU:「踊れるラップ」という言い方もないもんね。日本のメインストリームにおいて、ダンサー由来ということを踏まえたうえでラップの分析がなされていることってあんまりないかもしれないね。
カンノ:別ジャンルの話で、これもよく言われていることだけど、ビートたけしが舞台袖でずっとタップダンスをしていることと、漫才というのは間の取り方がすべてみたいな話のリンクのさせ方ってよくあるじゃん。
YOU:あるね。
カンノ:あと、ナインティナインがABCお笑い新人グランプリで優勝したときに、どれだけタイムを計っても4分55秒に終わるような漫才に仕上げて、それはツッコミの間とかをとにかく岡村隆史が矢部浩之に訂正し続けたみたいな話があって。
YOU:めっちゃすごいな。
カンノ:で、岡村隆史はブレイクダンサーじゃん。
YOU:めちゃイケとかでダンス企画もあったもんね。
カンノ:お笑いの世界でよく言われる「間の取り方」「拍の取り方」みたいなもののダンスの素養っていろんな表現において通じるのかなって思ってきたかもな。それがRYO-Zのラップもそうだし。「なんでこんな節回しのラップが可能なんだろう?」みたいなことがあの人は多いから。それは体感的に身体がこういう動きをしたら気持ち良いみたいなことと同じように、こういう口の動きで発声をしたら気持ち良いっていうのがリンクしてるのかなって。頭と身体と口がリンクしてる気がしてね。
YOU:ラップと身体の話はおもしろいね。
カンノ:ラップという口の身体性と、実際のステージングでの身体性はリンクするんだよね。それが気持ち良くハマる人がかっこいいラッパーなんだろうなと思って。それが人前に立ったときにバッチリハマれるラッパーに来世はなりたいですね。
YOU:今世ではできない(笑)
カンノ:はい、そういう素養が無いのでこれからもできません(笑)僕は人前に立ったらただただ口数の多い人なので(笑)
YOU:それがある種、カンノの身体性な気もするけどね。その昔、リズム歌謡っていう音楽ジャンルがあったけど、そもそもこの言葉も当時のレコード会社が作ったもので、おもしろいのがそのレコードには必ずダンスのやり方みたいなものが載っているという。「この曲はこういうふうに踊ります」みたいな説明書きがね。当時のダンスホールを主催している人が必ず評論を書いていたり。
カンノ:「〇〇のマンボ」とか「〇〇のチャチャチャ」とかね。
YOU:そう。「スクスク」とか。どう考えても海外には存在しない概念の踊りなんだけど、「海外ではこれがナウなヤングにウケています」みたいなさ(笑)ようは踊りとセットでレコードを売っていたということなんだけど。
カンノ:現代だと「TikTokだとこの曲はこういうふうに踊る」みたいなね。でもそれはどっちにしても決められた踊りなんだよね。
YOU:TikTokもリズム歌謡も、音楽と踊りがセットだもんね。でもHIPHOPはそこはもうちょっと自由な解釈な気がするよね。
カンノ:それが決められたものになると途端にLDH化しちゃうというか。踊りで支配してるじゃん(笑)だって教育にまで手を出してくるわけでしょ。吉本とLDHが教育にまでやって来たんだから。
YOU:本当にすごいよね。で、ジワジワ効いてきてるもんね。
カンノ:だから、おもしろくて踊れる奴が最強なんだよ。
YOU:恐ろしいよ、本当。
カンノ:そういう「決まった踊り」を見ることはそんなに楽しくないんだけど、RYO-Zや環ROYのラップを聴いて「どうなってんの?」っていう感覚が好きだし。もっとわかりやすい例だと岡村靖幸とかね。
YOU:岡村靖幸の肩書きは”シンガーソングライターダンサー”ですからね。
カンノ:なるほどね。そうなると僕はRYO-Zを”ダンサーラッパー”として捉えてるね。
YOU:”ダンサーラッパー”ってありそうでなかった考え方だね。
カンノ:RYO-Zが”ダンサーラッパー”で、環ROYが”コンテンポラリーダンサーラッパー”ですね。
YOU:アハハハハッ!
カンノ:半分冗談だけど、結構しっくり来るな。
YOU:言いたいことはわかるよ。環ROYのライブでの動きがカッコ良すぎたね。
カンノ:間接のどこが動いてるのかよくわからない人の動きとかに目が行っちゃうんだよね。それは岡村ちゃんは典型だし。そういう人がもっと見たいな。
YOU:圧倒的な身体性を持った人っておもしろいという話でしたね。
カンノ:その観点で音楽も見ていったほうがいいからね。知らない動きとか、「この人は変な動きだな~」とか。それはRYO-Zだし環ROYだし岡村ちゃんだし武田鉄矢だし。