SOMEOFTHEM

野良メディア / ブログ / 音楽を中心に

サムオブ井戸端話 #151『ゲスの極み乙女の新譜から考える”ファンが試される多様性”』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

ゲスの極み乙女の新作『ディスコの卵』について語るサムオブメンバー。(後編)では『ディスコの卵』の感想や、この新作に関してインターネット上にメンバーから公式の解説があまりされていないことの良さについて語りました。(前編)は下記リンクから。

 

 

YOU:このアルバムのタイトルは『ディスコの卵』だけど、ガチのシティポップというか、シティをありのままを描写したらこうなった感。「これがシティポップなんじゃないんですか?」という問いかけだし、悲しいことや理不尽なことや私情のもつれとかを、「ディスコ」というものに昇華していくための卵なんじゃないかな。

カンノ:どういうこと?

YOU:ようするに創作の卵ということです。ディスコという成果物の手前の段階にある悲しい日常。歌詞が暗いんだよ。ディスコってなんとなく明るいイメージがあるけど、それが生まれる手前のすったもんだみたいなことをありのままに描いているアルバムだなって思いました。

カンノ:いいね。いい深読みだね(笑)

YOU:あとキメの曲がすごく少なくなったのはいいよね。あとピアノの音色。ゲスの極み乙女はピアノの音が苦手で全然聴いてなかったんだけど(笑)あのMIDI鍵盤であらかじめ打ったみたいなピアノ。ただ今回はすごくオルガンを多用してるんだよね。それはディスコだからなんだけど。で、ベースもグルーヴィーで、カッティングも多用してるから、本当にディスコみたいになるんだよね。それが映える人たちだったんだよ。それがよくわかった。しかも踊らせるんじゃなくて、踊っちゃうみたいな曲だったのもよかった。

カンノ:意図が見えすぎないのもいいよね。川谷絵音の各バンドの分け方みたいなのをざっくり言うと、indigo la Endがロックバンド然。礼賛とかジェニーハイが飛び道具的な感じ、その中間にゲスがいる気がする。

YOU:2010年代にゲスが一気に売れたから、立ち位置がよくわからなくなったよね。

カンノ:だからどうしてもJ-POPに居ざるを得なかったけど、それも失墜し。

YOU:フフッ。

カンノ:それで今の位置というのは、じつはすごく健康的な気がする。

YOU:そんな気はするよね。

カンノ:それをちゃんとゲス側からリスナーに試す形で当ててきてくれてると思った。サービス業みたいなことじゃなくて。まぁ、ゲスはそのフェーズはやり切ったのかもしれないけど。

YOU:それもあるかもね。

カンノ:そのミュージシャンが「なにがしたいのか?」が見えたときが一番いいよね。で、バンドが「こういうコンセプトです」ということを、あまり言葉で説明しないかたちで提示してくれるのはいいなと思うんだよね。音で判断させるというか。それって結構大事な気がしていて。わかりやすいか、言葉が多い気がするの。

YOU:そうだね。

カンノ:わかりにくいと言うとネガティブな印象かもしれないけど、いい意味でわかりにくくて、言葉の説明も多くない状態が、表現において健康的なことだなと思うんだよね。

YOU:今いろいろ調べてみたけど、『ディスコの卵』に関してネットでほとんどインタビューが上がってないんだね。

カンノ:それはいいことですね。

YOU:もちろん雑誌のインタビューはあるんだろうけど。っていうか、6枚目のアルバムにして「いい!」と思うことってあるんだね(笑)

カンノ:フフッ。

YOU:普通は2~3枚目くらいまででよくなかったら聴かないじゃん。絶対好きにならないよ。すごいよね。

カンノ:しかもこのアルバムは、急に聴いて「いい!」じゃなくて、単発でリリースされた楽曲がその都度に新着プレイリストに載ったりして、「いい曲だな」と思ったらゲスだったことが何度も続いたの。だからずっとゲスの新譜は楽しみにしてたの。で、新曲が連発でリリースされてたから、おそらくアルバム近いなと思っていたら、リリースされて。先行配信で期待できる楽曲が多かったから楽しみにしてたんだよね。

YOU:今、とあるゲスのファンの人のブログを見かけて読んでるけど、この人はあまりピンと来てないみたい。

カンノ:そのファンの人は試されてるよ(笑)

f:id:someofthem:20240725105810j:image