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サムオブ井戸端話 #131『音楽教祖のモードと信者の受け取り方』(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

ZAZEN BOYSの12年ぶりのアルバム『らんど』を聴いたサムオブメンバー。カンノメンバーが憧れる向井秀徳の久しぶりの作品やインタビューを通して、本当に好きな人の脳みその一片や今のモードが知れる喜びを、教祖と信者の関係で捉えて語りました。

 

 

カンノ:ZAZEN BOYSの12年ぶりのアルバム『らんど』が発売されました。聴きましたか?

YOU:聴きました。最高だったね。

カンノ:僕はあのアルバムを何度も聴いて、向井秀徳が考えていることの一片でも知ることができるのがありがたくて仕方なかったです。

YOU:お前、本当に向井が好きなんだな(笑)

カンノ:そうです(笑)いろんな媒体でインタビューが載ってるじゃん。そのなかで「自分は自我の権化である」という話をしているんです。

YOU:してたね。

カンノ:そのことについてずっと考えてて。向井さんは「私は自我の権化であるから、音楽をやっている」と言ってるんだよね。これは裏を返すと「自我の権化じゃない人は音楽をやっちゃいけないよ」っていうことでもあると思うの。

YOU:なるほど。良いこと言うね。

カンノ:こちらが向井秀徳からのメッセージを深読みして受け取るとするとね。

YOU:勝手にね(笑)

カンノ:そうそう(笑)「そうか、自我の権化であるから音楽をやっているということは、自我の権化に達していない人は音楽なんてものをやっちゃいけないんだな」というね。だからこの言葉って僕にとってはとても重いものなんです。

YOU:なるほど。

カンノ:で、ここ最近考えていることなんだけど、「お金があったらどうする?」という質問に、「機材を買う」か「美味しいものを食べる」という2択で「機材を買う」を果たして自分は取れるのかどうか。

YOU:ほお。

カンノ:こういった2択を続けていった先に、音楽とか表現が残るかどうかだなと思ったの。その人が音楽を続けるかどうかって。いろんなバリエーションの2択があるなかで、自分を「自我の権化」としたときに、音楽をはじめとする表現活動を選べるかどうか。そういう人が表現をする人として残っていき、それを選べなかった人が表現を辞めていくのかなと思ったんです。「お前にとって音楽や表現は大事か?」を突きつけるタームってあると思うの。それに対して意地でも「大事だ」と言えるかどうか。で、そんなこと言ってる場合ではない状況でも、自我の権化であれば「大事だ」と言わねばならない。

YOU:たしかに普通の人なら、たまに機材を買ってそこそこに美味しいものを食べたりしてバランス取っちゃうよね。

カンノ:そうそう。で、あのインタビューを読んで、向井をただのおもしろおじさんとして消費するやつらのことは無視ですよ。そんな人と僕は会話したくないんですよ。

YOU:わかる。今回のアルバムのインタビュー、向井はかなり真剣だよね。もちろん表面はふざけてはいるんだけど。

カンノ:あの人が真剣に思われることで発生する得はあまりないからね。キャラクター的にはぐらかしたほうがいいし。

YOU:誠実だったよね。

カンノ:というわけで、今までのしゃべりを聞いてもらってわかる通り、僕はわりと教祖に対する信者に近いと思うんです。

YOU:向井信者ね。

カンノ:そう。で、いわゆる”松本信者”とか”たけし信者”とか”談志信者”の気持ちが少しわかった気がしたの。さっき「向井の脳みその一片を知れてありがたい」と言ったけどさ、つまり僕にとって向井秀徳を表現における教祖だと勝手に思うということ。もちろん向井と直接話したことはないよ。でも、今のこの人のモードは何なのか、どんなことを考えているのか、それらを作品としてどう表したのか。その作品が脳みその具現化ということであれば、その人の新作、新曲、新ネタを知れるだけで異様な喜びってあるなと。

YOU:うん、わかる…。いや、ごめん。やっぱりわからない(笑)カンノの言ってることが全然わからない(笑)お前、めっちゃファンだよ。

カンノ:アハハハハッ!

YOU:カンノはめっちゃ向井秀徳ファン(笑)

カンノ:そういう意味でいうと、僕は向井秀徳クチロロの三浦康嗣さんの脳みそをちょっとでも知れたら、それでいいやと思ったの。あとは全捨てで。

YOU:極論、あとはいらないと。

カンノ:この2人がどういうモードで、どういう脳みそで、どんなことを考えていて、それを作品で知れたときに、それを僕自身の血肉として1ミリでの入ったものを作れたら最高だなと思ったの。これから僕も音楽活動をやっていきますけど、この2人の要素が1%でも入っていたら超幸せですね。信者とか信奉者っていう言葉を使っちゃうけど、この2人を観て聴いて知ったうえで、自分がどんな振る舞いをしていくかとか、2人の思考を勝手に汲み取ったうえでどう自分の作品として表して、その結果、僕が何なのかが決まってくるなと。

YOU:まぁ、信者ってただそれだけだからさ。アーティストの信者はたくさんいるんだけど、カンノは曲がりなりにもアウトプットがあるから。音楽作ってそれをライブでやるっていう。だからとても良いことだと思うけどね。むしろ、どのアーティストにもいっちょ噛みで器用にパロって作ってるミュージシャンが今は主流な気がするから。それでもいいんだけど、深いところにいけない気がする。

カンノ:いっちょ噛みのミュージシャンは多いよね。なんか、インスタントに要素を取り込むミュージシャンって多い気がするの。手軽に音楽が聴ける時代において。「これを聴くだけでオシャレっぽくなる」とかさ。それが嫌とか否定する気もないんだけど、そういう音楽はべつに自分にとってはなくてもいいから。

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