カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第12回は当時売れたのに懐メロに括られることなく、今では誰も喋らない楽曲を紹介する「誰も語らないヒット曲」特集の書き起こし（後編）を掲載します。ポッドキャストと（前編）は下記リンクから。
カンノ：では全然系統が違う曲を聴きましょう。元ちとせで「ワダツミの木」
カンノ：オリコンは初登場19位ですが、発売2ヶ月で1位。2002年の年間ランキング2位です。
オノウエ：ジワジワ売れたんだ。
カンノ：その結果バカ売れですね。奄美大島出身で民謡調の歌唱法で歌われていますが、だからこそ当時からある種色物っぽい見られ方をされたんだと思うんです。ただ、よく聴いたらめちゃくちゃダブ、レゲエ、スカサウンド。
オノウエ：そうそう。サビしか印象になかったんですけど、ちゃんと聴くとカッコいいですね。普通にダブ、レゲエとしてカッコいい。これは知らなかった。
カンノ：じつはたまにDJイベントに行くとかかっているときがあるんですよ。で、ゆらゆら聴けるんですよ。この曲のプロデューサーは上田現さんという2008年に亡くなっちゃった方なんですが、レピッシュというスカグループの人がプロデューサーとして活躍されていました。
カンノ：だから民謡歌手とスカ、ダブ、レゲエのミックスを狙ってやってたわけですね。で、これを2002年にやってるのが早すぎる。今聴いたら、これすごくオシャレじゃん。
オノウエ：そうだね。
カンノ：結局、売れすぎて良さが伝わってないよね。
オノウエ：あ～、そうかもしれないね。
カンノ：珍しい現象だけど。だから変な話だけど、一発屋の名残があることが非常にもったいない。全然その文脈で語られる人じゃないから。でもそこに入ってしまったことによるもったいなさ。これは不幸だなと。よく聴いたら超カッコいいから。
オノウエ：元ちとせのほかの曲はあまり知らないけど、「ワダツミの木」だけ聴いたらフィッシュマンズの影響下なのかなとかで飛びついて「カッコいい！」という評価につながってよさそうだもんね。
カンノ：そこに刺さればよかったんだけどね。だから逆に、当時の消費のされ方がまったく意味がわからない。僕は当時、小6だったから「ワダツミの木」は大人すぎてよくわからなかったですね。
オノウエ：その感覚はすごくわかる。「俺の聴く曲じゃねえな」って感覚はあったかも。
カンノ：今聴いたらすごく味わい深いんだけど、当時はわからなかったですね。で、その感覚で2002年に同じように、「この曲のよさは大人すぎてよくわかんねえわ」と思っていた楽曲、そして今聴くと「なんていい曲なんだ」と染み入るような2002年の大ヒット曲であるので、それを聴いてください。桑田佳祐で「東京」
カンノ：オリコン週間ランキング1位を2週連続で取り、2002年度のオリコン年間ランキングは11位。
オノウエ：この曲、そんなに売れたんですね。
カンノ：で、この前の桑田のソロが「波乗りジョニー」「白い恋人達」なんですよね。
カンノ：語られるのはこの2曲なんだよ。「東京」について語られることがほぼない。ただこの曲の情感は半端ないね。桑田佳祐にとっての昭和歌謡だし、むしろ演歌とかブルースの情感ですよね。
オノウエ：そうだね。
カンノ：この曲についてすごく覚えているのが、この曲のMVってサスペンスチックなんだよ。タクシー運転手の桑田佳祐と、刑事役で犯人でもある中尾彬。で、殺される女の人が出てきて、中尾彬が女の人の首を絞めるシーンがあるんだけど、『めざましテレビ』のエンタメコーナーで「今週の1位は桑田佳祐さんの東京でした」みたいなことを言うんだよ。で、そのときに中尾彬が首絞めてるの、朝っぱらから（笑）「東京は～♪」って歌われながら中尾彬が首を絞めていて、軽部アナが「今週の1位は桑田佳祐さんで東京でした」って言ってて（笑）
オノウエ：すごい時代だよね（笑）それを朝の7時半とかに放送してるんでしょ（笑）
カンノ：あれも小6だったけど、超怖かったよ（笑）これは何度か話したことあるけど、音楽を聴く情感として「怖い」と思わせるものってあんまりないんだよね。
オノウエ：そうだね。
カンノ：サービス性が優先されすぎてて。でも怖い情感って昭和歌謡とか演歌とかってあると思ってて。その人の情念がある感じ。不倫の歌とかそういうことじゃん。「東京」の情感ってそういうことだと思ってて。そういう情感が今売れてるJ-POPで聴けたらいいなと思うんだけどね。オノウエ君はこの曲どうですか？
オノウエ：たしかに、桑田佳祐楽曲としてあんまり名前が挙がらない曲ですよね。でも意外と桑田が好きな人はこの曲は上位に入ってくるよね。
カンノ：そうだね。「波乗りジョニー」「白い恋人達」が入門編だとしたら、この曲はハードルが高いけどいい曲ってことだよね。ということで「誰も語らないヒット曲」特集でした。
『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ（？）、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください！ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください！
