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SOMEOFTHEM OF PODCAST 第8回「エンターテインメント過剰」特集(後編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第8回はJ-POPミュージシャンの度が過ぎたサービス精神を感じる楽曲を紹介する「エンターテインメント過剰」特集の書き起こし(後編)を掲載します。ポッドキャストと(前編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:では続いてですが、現代のエンターテインメント過剰ないしサービス過剰J-POPはこの人たちが担っているんじゃないかなと思います。Mrs. GREEN APPLEで「ダンスホール

 

カンノ:まずは歌い出しのブレス。こんなに息吸わなくていいからね(笑)

オノウエ:あれって残すタイプと消すタイプで分かれるよね(笑)

カンノ:これは残しに行ってるブレスじゃん(笑)

オノウエ:なるほどね(笑)

カンノ:僕はこの歌い出しですべてを取りに来ている曲だと思うの。「いつだって大丈夫 この世界はダンスホールの部分でいつも僕が気になるのは「この世界は」の歌い方。

オノウエ:歌い方?

カンノ:印象の残し方ですね。絶妙にメロディになってるか微妙な歌い方というか、言葉の詰め方。おそらくやろうと思えばもっと普通に歌えると思うの。それをあえて変な区切り方というか、言葉の詰め方で歌ってると思うの。

オノウエ:なるほど。

カンノ:あとは過剰に韻っぽく聴かせている。「u」の母音で終わらせ続けてるんですよね。これも印象に残していると思います。あとこの楽曲にも星野源味があって。

オノウエ:星野源味(笑)

カンノ:この曲の間奏部分を聴いてください。完全に「SUN」のイントロのギターリフと合致します。

カンノ:みんな『YELLOW DANCER』が大好きなんですよ!で、タイトルが「ダンスホール」ですよ。みんなを踊らせたいんです!J-POPをサービス産業と捉えると、その方向になるんですね。

オノウエ:星野源の遺伝子が様々伝播しているんですね。

カンノ:で、悪い意味ではなく、軽薄に伝播してるね。あとはこれ、J-POP特有の大丈夫ソングですから。

オノウエ:あ~(笑)

カンノ:この世界はダンスホールだから、いつだって大丈夫なの(笑)オノウエ君の花粉症も「いつだって大丈夫♪」

オノウエ:ちげえよ、現実は止まらない涙と鼻水と皮膚のピリつきなんだぞ!

カンノ:アハハハハッ!

オノウエ:大丈夫じゃないんだよ(笑)

カンノ:だから、言い古されたことをどう新しい技術革新で歌うかがJ-POPだなと、この曲を聴いて思った次第ですね。これが最新J-POP。歌われることはまったく変わらない。「切なくてキュンキュンする」、「大丈夫」、「ありのままでいい」など。このような言い尽くされたことを、どのような現代の技術で歌うか。その最新型がミセスな気がしました。だってミセスも「大丈夫なわけねえよ」って思ってるよ(笑)

オノウエ:そりゃそうだろうね(笑)本当に大丈夫だと思ってる人は曲作らないからね(笑)

カンノ:これまで星野源さんの話が続いたので、星野源さんのエンターテインメント過剰楽曲を聴きましょう。星野源さんのエンターテインメント過剰楽曲、正直めちゃくちゃあるんですけど、とくに思った楽曲をお聴きください。星野源で「アイデア

オノウエ:この曲はエンターテインメント過剰がコンセプトみたいなものだからね。

カンノ:この曲は2018年リリースで、朝ドラ『半分、青い。』の主題歌。で、その主題歌で流れる部分はワンコーラスだけだったんですよね。それでフル尺公開となったタイミングで、2番以降でSTUTSが出てくるという見せ方。「やられたー!」と当時思いました(笑)しかも弾き語りパートも出てくる。そして最後はバンドも交えて大団円。国民はいつだって星野源の手のひらの上なんです。

オノウエ:国民(笑)

カンノ:こういう手法ばかりに着目する「星野源のアイデア」特集はいずれやりたいですね。この人の手法にずっと惹かれてましたから。今は距離取ってますけど。

オノウエ:わざわざ言わなくていいと思いますが(苦笑)

カンノ:これはエンタメですよね。では、また全然別角度のエンターテインメント過剰曲を聴きましょう。このバンドはエンターテインメント過剰だと思うのでお聴きください。9mm Parabellum Bulletで「Mr. Suicide」

オノウエ:とても久しぶりに聴いた気がします。

カンノ:メジャーデビュー前の曲ですからね。やっぱり、なんでこのサウンドにこんな昭和歌謡みたいなメロが乗るのか、さっぱりわからない。

オノウエ:9mmってその感じがありますよね。メタル影響のサウンドに、メロが歌謡曲っぽい。

カンノ:この感じ、日本人は大好きだよね。サウンドもメロも総じて古典的だと思うんだけど、掛け合わせると変なんだよね。9mmが出てきたときって「突然変異ロック」みたいな言い方されてたよね。

オノウエ:「ミュータントロック」みたいなね(笑)

カンノ:凛として時雨と並んでね(笑)

カンノ:これは日本人を相手取ったバンドな気がするんだよね。サウンドの激しさと、メロの懐かしさ。で、この感じは後々地下アイドルがやっていった気がするの。ロックサウンドに乗せて歌う地下アイドルって増えていくじゃん。そういうサウンドに日本人にとって馴染み深いメロが乗って、アイドル曲として展開させていく流れを考えたら、その先代にいるのは9mmがいるかもなと思ったの。

オノウエ:それは新説かもね。

カンノ:たとえばBiSが歌ってもいいじゃん。

カンノ:あと、ここ最近のミュージシャン、Adoや優里、ミセスもそうかな。声がジェットコースターだなと思う人が多いの。

オノウエ:それはどういう意味で?

カンノ:高い、低い、速度的なところもすべて。

オノウエ:声の高低も歌い方自体も。

カンノ:それが9mmの場合はサウンドだなと。サウンドや曲展開がジェットコースター。とくに「Mr. Suicide」がジェットコースターっぽいと思った。

オノウエ:改めて聴いたけど、これは不思議な曲だよね。

カンノ:そうだよね。で、ジェットコースター性はエンタメ過剰だよ。たとえば星野源「アイデア」はジェットコースター乗ったのに、途中でお化け屋敷になる曲だと思うの。

オノウエ:なるほどね。あの曲自体が一つのテーマパークだ。

カンノ:1曲のなかでのジェットコースターのコース作りがエンタメ性になるというかなと。そのサービス性が高ければ高いほど「エンターテインメント過剰」という意味でございます。

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!