SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週火曜日にアップします。
「カバーアルバムって聴く?」とカンノメンバー。本人じゃない人が歌うカバーアルバムの存在意義や機能について、主にMay J. をとおして考えてみました。
カンノ:カバーアルバムって皆さん聴いてます?
オノウエ:聴かない。
YOU:聴かないっすね。トリビュートアルバムも含め、ちょっと残念な曲が多い印象だから聴かないかな。
カンノ:そうなると、カバーアルバムってなんで存在するんだろうね。
オノウエ:本当そうだよな。
カンノ:「カバーアルバムって何なんだ?」という話がしたいです。
YOU:たとえば昔から、グループサウンズ の人が、自分たちの持ち曲が少ないときは洋楽のカバーをしていたとか。カバーという文化はずっとあるよね
オノウエ:「カバー」というか「コピー」だよね。
カンノ:それはデビューしたての修行みたいなこと?
オノウエ:修行というよりは、単純に演奏する曲がないからだよ。パブで演奏するみたいな巡業を組まされて、でも持ち曲が少ないから海外の有名な曲をコピーするみたいなのってあったという話だよね。それはなんとなく分かる。でも当時のコピーと今のカバーは種類が全然違うよね。コピーはその飲み屋でのBGMとして有名な曲をやっている感じだと思うの。
カンノ:このジョナサンのBGMみたいなね(笑)
オノウエ:それを生演奏でやっていると。でもそこからカバーになると、若干アーティスト性みたいなものが入ってくるわけよ。歌う人の。それって何で?(笑)
カンノ:カバーって、カバーされる曲に対してカバーする側の解釈論が発生するじゃん。「そもそもその解釈論って何?」っていう。
オノウエ:自分のアーティスト性を出すためのカバーを最初にやった人って誰なんだろうね。調べたら面白そう。
カンノ:自分たちがよく知っているカバーブ ームの火付け役として徳永英明 がいるわけじゃん。あれってもともとは「女性歌手楽曲のカバーだけをします」というコンセプトだったよね。
YOU:そうそう。
カンノ:「徳永英明 が女性の心を歌う」という解釈でしょ。でもそんなハイコンテクストな背景や意味性みたいなものってだんだんと薄れていくじゃない。その結果「カバーブ ーム」という形だけが残るというか。
YOU:「カバーやると売れるらしいから、こっちもやってみるか」みたいな。
カンノ:たとえばこれは知人に教えてもらったカバーですが、May J. の「波乗りジョニー 」にはどういう意味性や解釈が乗っているかって、べつに関係ないじゃないですか。
YOU:そんなカバーがあるのか(笑)
オノウエ:それはヤバいな(笑)
カンノ:曲の速度が遅いからね。
YOU:えっ、歌い上げてるの?
カンノ:そう。
YOU:ヤバいな(笑)
カンノ:だからそれというのは、桑田佳祐 の作った「波乗りジョニー 」という曲を知らなくて、May J. がカバーすることによって初めてその曲の存在を知り、「桑田佳祐 がそういう曲作ってるんだ、じゃあ聴いてみよう」ってなるの?
オノウエ:やっぱり一番謎なのは「誰が買ってるのか?」ということだよね。 たとえばビレバン で売っているようなカバーアルバムとかボサノバアレンジ集ってあるじゃないですか。そのあたりは分かる。機能として聴く。
カンノ:生活のBGMとかね。
オノウエ:徳永英明 のカバーアルバムって買う?
カンノ:これは買うと思う。
YOU:徳永英明 はファンも結構いるし、火付け役だから。
オノウエ:そっか、役割があるのか。じゃあやっぱりMay J. のカバーアルバムは誰が聴くんだろう…?
YOU:残酷なこと言ってるな(笑)
カンノ:10枚くらいカバーアルバム出してるからね。
YOU:May J. って「カラオケ女王」の異名があったじゃん。関ジャニ の番組だったかな。あれで知られたからさ。そういうのをテレビで見てると買うんだよ。うちの親とかそうなんだよ。「歌うまい王」みたいな番組でデビューした人のCDとか買ってるし。うちのクリス・ハート のアルバムとかあるもん。
オノウエ:マジか、すげえな。
YOU:でもそういう人は少なくないと思うよ。でもそれはブームの渦中の話で、May J. みたいなカバーアルバムを10枚くらい出していて「波乗りジョニー 」とか歌ってるレベルになるともう訳が分からない(笑)本人のためにもなっているか分からないし、原曲も浮かばれないカバーというか…(笑)
オノウエ:たしかにMay J. の「波乗りジョニー 」のカバーは極北感があるよね(笑)
カンノ:「夏の曲をたくさんカバーしました」みたいなコンセプトのカバーアルバムに入ってるのね。そこに使われた感というか。
オノウエ:「夏の曲縛り」とか「冬の曲縛り」とかあるじゃん。あれも何なの?(笑) 「夏の曲がたくさん入ったカバーアルバム聴きたいな」と思う人が買うの?
カンノ:先日僕が出たマキタさんの配信でも喋っていたことだけど、サービスエリアで買うCDってあるじゃん。全然違う人が有名な曲を歌っているシリーズの。あれとMay J. は同じなんじゃないか。
VIDEO
オノウエ:じゃあもうMay J. じゃなくていいんだ。「たまたまMay J. だった」というだけで。 だからMay J. のカバーってMay J. のファンが聴いているのか、そうじゃない人が聴いているのかが気になるね。
YOU:あとバンドとシンガーでもカバーの質って違うよね。バンドサウンド でアレンジから本人たちで変えていくのと、シンガーに「良い声してるからカバー歌わせてみようよ」って振るのとじゃ全然違うもんね。
カンノ:バンドもいろいろありそうだけどね。DEEN とUNCHAIN とNICO Touches the Wallsでカバーの触れ方も違うし。
オノウエ:NICO もカバー多いんだ!
カンノ:シングルのカップ リングとかね。
YOU:シングルのカップ リングパターンはあるよね。
オノウエ:シングルのカップ リングって、表題曲を聴きたいと思うファンが買うから、カップ リングでカバーが入っているというのは理屈が分かるの。あと昨年出た宮本浩次 のカバーアルバムは、曲を見たらどこがターゲットになってるか分かるじゃん。どの年代の人に向けてリリースされるのかって。
オノウエ:でも「夏の曲カバー集」って何なのか全然分からない(笑)
カンノ:今のシーズンにピッタリのものを1クールで売り切るってことだよね。
オノウエ:そのアルバムを買ってる分布図があったら見たいな~。
カンノ:ファミリーなのかな。May J. のカバーアルバムですら効能があるんだろうね。
オノウエ:ドライブとかね。
カンノ:土岐麻子 が今年カバーアルバムを出して、そのコメント動画みたいなのがYouTube に上がってるんだけど、「料理や仕事、散歩や寝る前など、ライフスタイルに溶け込めるような」とか「生活のお供に聴いていただけるような」みたいなことを言ってて、アーティスト本人が効能について触れているなと思ったの。それは潔いのね。機能性アルバムというか。「これを聴いてほっとしてください」っていう目的がある。
オノウエ:「よく眠れるCD」と広い意味で同じ使い方というかね。
カンノ:そこを認めるというのはいいと思うんだけどね。
VIDEO