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サムオブ井戸端話 #109『ミュージシャンを信じたい vs 信じるな』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

弱っている状態で音楽に救いを求めることの危うさについて話すサムオブメンバー。後編はミュージシャンや音楽現場のスキャンダルな報道や、「ウケたい」気持ちから発生するバズに対してしんどくなったカンノメンバーのカウンセリング回になりました。前編は下記リンクから。

 

 

カンノ:NUMBER GIRLが復活したときにTwitter上でアヒトイナザワ問題の右傾化批判みたいなものが拡散されたじゃん。あれは僕は見過ごしたもんね。

YOU:ちゃんと見過ごしてない人もいたもんね。

カンノ:そうそう。

YOU:話が逸れるけど、有名人のイデオロギーの表明や失言について、真面目な人は「そういう人をフェスに呼ぶと、そういう思想を肯定してるように思えてなりませんか?」と意見表明したりするよね。それはそれでいいんだけどさ、たとえばトランプをTwitterから排除したら、トランプ自身がべつのTwitterっぽいメディアを作ったり、Twitterの社長がイーロン・マスクになったら結局Twitterに戻ってきたみたいな。ある程度声のデカい人が差別的なことを言ってたら、べつのメディアでも言うんだよ。だから排除してもしょうがない気がする。べつの過激なもっと悪いなにかが生まれるだけな気がするんだよね。もちろんなにか暴力を振るったり、性加害をしたりするのは絶対にダメだけど、誰かの発言を切り取って外野の人が「それは差別だ!」って言っても、「表現の自由だ!」みたいな不毛な問答がはじまるだけな気もするんだよね。

カンノ:そういう意味でDJ SODAの件も本当にしんどかったじゃん。

カンノ:「あれは良くない」とか、「あんな群衆に行ったらそりゃ触るよ」とか、「そもそもあれは性犯罪だから」とかさ。いろんな意見が出たけど、結果なにも解決してないし。あのニュースは精神的に本当にとどめ刺されたというか…

YOU:喰らっちゃったんだね…(苦笑)

カンノ:だから自分の大好きな音楽に逃げ込むんだけど、それはそれで精神的に危うい現象だなと思ったんだよね。

YOU:なるほどね。

カンノ:まぁ、いろいろ辛いですよ。で、今の日本で「人生楽しいです~!」「悩みないです~!」っていう人は、なにか間違ってる気がするんだよ(笑)

YOU:メンタルヘルスの問題でよく言われるけど「そもそもそんな状態にさせた世の中がおかしい」っていうことがあまり問われないよね。

カンノ:だから自分が「弱っているからこそ音楽を聴いている」という感覚が強くて。この状態はあんまり良くないなと思ってるの。「救いを求める」みたいなつもりで音楽を聴いちゃうのはちょっとマズいかなと思ってるね。

YOU:もちろん瞬間ではそういうふうに音楽を聴くことはいっぱいあるんだけどね。「落ち込んだときにこれを聴いて救われた」とかね。そういう効能が音楽にあるのは間違いないんだけど、その状態が常になっちゃうのは健康的じゃないよね。

カンノ:そうなんだよ。

YOU:なにかに救いを求めているときって、自分のやらなきゃいけないことがなくなっちゃうというか、自分を苦しめているものに立ち向かう時間を作れないんだよね。だから推し活は危ないんですよ。

カンノ:推し活は際限ないからね。

YOU:でも賢い人は、楽しく推し活ができるんだよ。

カンノ:悲しいかな、すべてにおいてバランスが取れているとか、効率が良いとか、そういう知恵が働く人が強いなと思うんだよね。音楽の話に戻すけど、やっぱり新着プレイリストに掲載される楽曲が「1発バズるぞ~!」と意気込んでる気がして聴けなくて。もちろん数字を気にしていない楽曲なんて存在していないのかもしれないけど。

YOU:いや、あるにはあるよ。インターネットの片隅には毎日ノイズの音源をアップしている人もいるんですよ。

カンノ:でもそれも、ある種の”病み”でしょ。

YOU:そうかもしれないね(苦笑)でもその人は、その人自身のために音楽を鳴らしてるから、それはそれで良いと思うんだけどね。

カンノ:たとえばなにかのコレクターの人がSNSを始めたら「ウケたい」が発生しちゃうじゃん。これは知り合いのコレクターの人が「ホンモノのコレクターはネットにいない」と言っていて、本当その通りだなと思うんです。だって自分のために収拾している行為だから。人に見られるとか、ウケたいとかがないんだもん。だから、ここで音楽にまつわる喋りを僕らはやっているけど、「音楽をこの観点で喋ってる人はいないだろう」という野心とかはちょっと思っちゃったりするじゃん。

YOU:そりゃそうだ。

カンノ:それは「1発バズ狙うぞ」っていう意識となんら変わらないから。これは自分たちに対するメタな認識だけど。このSOMEOFTHEMというブログをやっている理由はいろいろあるかもしれないけど、本当はただ一つだけで「ウケたい」なんだよね。喋ったことをわざわざ文字起こししてブログにアップする理由なんてないんだから。そういうこととの付き合い方だなって思いますね。

YOU:で、これはどういう回だったんだ…?(笑)

カンノ:これは僕のカウンセリング回です(笑)